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悪役令嬢はヒロインに負けたくない
悪役令嬢はヒロインに負けたくない・18
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学園を休んでマクシミリアンとほぼ寝台の上で過ごす不健全な(ただし未挿入)休日を過ごした翌日。
じんわりと熱を持つマクシミリアンに触られ続けた余韻を残す下腹部に、わたくしは悩まされていた。うう……だってあれからもなにかと理由をつけて触ってくるんだもの!
だけど自分のものには触らせてくれないし、ずるいわ。
腹が立って一度だけトラウザーズの上から触ったら、頬を染められキスで誤魔化されてしまったし。
今朝だって目覚めの一回とばかりにねっとりと舐められてしまったの。マクシミリアン、貴方不健全すぎるのよ。
色々思い出しながら頬を染めてため息ばかりのわたくしに、今日は教室中から何故か視線が刺さっている気がする。わたくしの顔なんて見てもなにも楽しくないわよ……?
「ビ……ビアンカ様」
声をかけてきたのはリック様だった。可愛らしいお顔を何故か真っ赤に染めている。
「あら……リック様。ごきげんよう」
答えつつも口からほうっとため息が漏れてしまう。するとリック様の赤い顔がさらに赤みを増した気がした。
「いや……その。今日はため息ばかりだからなにかあったのかなって……」
リック様が話しかけている間、周囲がなんだかソワソワとしている。
『リック、あの侍従に殺されるぞ!』
『今日のビアンカ様はしどけなさすぎるだろう……』
『空気がなんだか桃色だがどうされたんだ。青少年には刺激が強すぎるッ……』
コソコソと皆がなにか話しているようだけれど。うう、悪口かな。だったら嫌だな。
昨日の夢のような時間から現実に引き戻されてしまった気がする。
「なんでもありませんのよ、リック様。でも少し疲れてしまっていて」
「そうなんですね。えっと……その」
「リック様?」
リック様がなんだかまごまごとしてしまったので、きょとんとして見つめると先ほどから赤い彼の顔はますます赤くなってしまう。あら……汗まで滴って。
わたくしは制服のポケットからハンカチを取り出して彼の額を丁寧に拭いた。
心配になって目と目を合わせるとリック様の大きな瞳が涙目になる。
「ごめんなさい! もう耐えられません……!!」
リック様はそう言ってお友達の方に逃げていってしまった。耐えられないって、わたくしそんなに嫌われているの!? リック様はもしかしたらお友達なんじゃないかって思っていたのに……。
「ビアンカ嬢、可哀想。あんなに避けられちゃって」
くすくすと笑いながら近づいてきたのはノエル様だ。
……人の不幸を笑うなんて酷い。わたくし、ショックを受けているのよ。
ノエル様はこちらに距離を詰めると突然制服のブラウスの襟を引っ張ってわたくしの首元を覗き見た。ちょっと、乙女になにをするのよ!!
「うわ、あいつの独占欲、本当にやばいな……」
ノエル様に小声で言われて思わず首元を隠す。わたくしの首筋にはマクシミリアンにつけられた歯形がくっきり残ってしまっていたのだ。
「ビアンカ嬢。それってバレたらまずくない? バレたら嫁の行きどころなんて無くなっちゃうでしょ」
彼が楽しそうに言うのでわたくしは思わずカチンとくる。
「……将来の約束をしましたの。だからいいのですわ」
「えっ本当に? それなら残念すぎるんだけど。俺なら非処女でも気にしないから嫁に……って流れで婚約を申し込もうと思ったのに」
……この方、なにを言っているの!? それに小声とはいえそんな会話を教室でしないで欲しいわ。皆様かなり遠巻きにしているから聞こえていないとは思うけれど。それにわたくし、遺憾ながらまだ処女ですし。
あとですね、ノエル様と婚約なんて嫌ですよ。チャラ男は苦手ジャンルなの!
「フィリップ様もがっかりするだろうなぁ……」
「あのお方は昔婚約を断られたことが引っかかって、一時の気持ちでわたくしを気にしているだけでしょうし。よいのではありません?」
というか、世界の強制力なんですけどね。うん。
「うわぁ……フィリップ様、可哀想。報われないにもほどがあるでしょ」
ノエル様が悲しそうに眉を下げて言うものだから、まるでわたくしが悪者みたいだ。
「……そんなに色気を振り撒いて歩いてたら皆の目の毒だから、程ほどにね」
彼はわたくしの耳元でそう囁いた。色気!? そんなもの胸が絶壁を通り越して抉れているわたくしには無縁の言葉だ。またからかっているのね、この方。
キッとノエル様を睨みつけると、何故か少し頬を染めてやれやれ、というような呆れた顔をされてしまった。
「お嬢様、お渡ししたいものがあったのでお届けに参りました」
いつの間にか側にいたマクシミリアンがわたくしの肩をそっと抱く。
ノエル様はそれを見てとても苦々しい顔をした。
「渡したいもの? なにかしら、マクシミリアン」
マクシミリアンに手渡されたのは飴がいくつか入った小袋だった。……どうして飴……?
「昨日のことで喉をかなり痛めていたご様子なので。そこからお風邪を召してはいけませんからね。喉によいものなのでゆっくり舐めてください」
マクシミリアンはニコリと微笑みながらそう言った。確かにそうね、うちの執事は気が利くわ!……喉を痛めた原因は、貴方なのだけれど。
飴を一つ口に入れると彼の香水と同じミントの爽やかな香りがした。
『昨日のこと』の部分で教室がなんだかざわついたことを、わたくしは知らない。
じんわりと熱を持つマクシミリアンに触られ続けた余韻を残す下腹部に、わたくしは悩まされていた。うう……だってあれからもなにかと理由をつけて触ってくるんだもの!
だけど自分のものには触らせてくれないし、ずるいわ。
腹が立って一度だけトラウザーズの上から触ったら、頬を染められキスで誤魔化されてしまったし。
今朝だって目覚めの一回とばかりにねっとりと舐められてしまったの。マクシミリアン、貴方不健全すぎるのよ。
色々思い出しながら頬を染めてため息ばかりのわたくしに、今日は教室中から何故か視線が刺さっている気がする。わたくしの顔なんて見てもなにも楽しくないわよ……?
「ビ……ビアンカ様」
声をかけてきたのはリック様だった。可愛らしいお顔を何故か真っ赤に染めている。
「あら……リック様。ごきげんよう」
答えつつも口からほうっとため息が漏れてしまう。するとリック様の赤い顔がさらに赤みを増した気がした。
「いや……その。今日はため息ばかりだからなにかあったのかなって……」
リック様が話しかけている間、周囲がなんだかソワソワとしている。
『リック、あの侍従に殺されるぞ!』
『今日のビアンカ様はしどけなさすぎるだろう……』
『空気がなんだか桃色だがどうされたんだ。青少年には刺激が強すぎるッ……』
コソコソと皆がなにか話しているようだけれど。うう、悪口かな。だったら嫌だな。
昨日の夢のような時間から現実に引き戻されてしまった気がする。
「なんでもありませんのよ、リック様。でも少し疲れてしまっていて」
「そうなんですね。えっと……その」
「リック様?」
リック様がなんだかまごまごとしてしまったので、きょとんとして見つめると先ほどから赤い彼の顔はますます赤くなってしまう。あら……汗まで滴って。
わたくしは制服のポケットからハンカチを取り出して彼の額を丁寧に拭いた。
心配になって目と目を合わせるとリック様の大きな瞳が涙目になる。
「ごめんなさい! もう耐えられません……!!」
リック様はそう言ってお友達の方に逃げていってしまった。耐えられないって、わたくしそんなに嫌われているの!? リック様はもしかしたらお友達なんじゃないかって思っていたのに……。
「ビアンカ嬢、可哀想。あんなに避けられちゃって」
くすくすと笑いながら近づいてきたのはノエル様だ。
……人の不幸を笑うなんて酷い。わたくし、ショックを受けているのよ。
ノエル様はこちらに距離を詰めると突然制服のブラウスの襟を引っ張ってわたくしの首元を覗き見た。ちょっと、乙女になにをするのよ!!
「うわ、あいつの独占欲、本当にやばいな……」
ノエル様に小声で言われて思わず首元を隠す。わたくしの首筋にはマクシミリアンにつけられた歯形がくっきり残ってしまっていたのだ。
「ビアンカ嬢。それってバレたらまずくない? バレたら嫁の行きどころなんて無くなっちゃうでしょ」
彼が楽しそうに言うのでわたくしは思わずカチンとくる。
「……将来の約束をしましたの。だからいいのですわ」
「えっ本当に? それなら残念すぎるんだけど。俺なら非処女でも気にしないから嫁に……って流れで婚約を申し込もうと思ったのに」
……この方、なにを言っているの!? それに小声とはいえそんな会話を教室でしないで欲しいわ。皆様かなり遠巻きにしているから聞こえていないとは思うけれど。それにわたくし、遺憾ながらまだ処女ですし。
あとですね、ノエル様と婚約なんて嫌ですよ。チャラ男は苦手ジャンルなの!
「フィリップ様もがっかりするだろうなぁ……」
「あのお方は昔婚約を断られたことが引っかかって、一時の気持ちでわたくしを気にしているだけでしょうし。よいのではありません?」
というか、世界の強制力なんですけどね。うん。
「うわぁ……フィリップ様、可哀想。報われないにもほどがあるでしょ」
ノエル様が悲しそうに眉を下げて言うものだから、まるでわたくしが悪者みたいだ。
「……そんなに色気を振り撒いて歩いてたら皆の目の毒だから、程ほどにね」
彼はわたくしの耳元でそう囁いた。色気!? そんなもの胸が絶壁を通り越して抉れているわたくしには無縁の言葉だ。またからかっているのね、この方。
キッとノエル様を睨みつけると、何故か少し頬を染めてやれやれ、というような呆れた顔をされてしまった。
「お嬢様、お渡ししたいものがあったのでお届けに参りました」
いつの間にか側にいたマクシミリアンがわたくしの肩をそっと抱く。
ノエル様はそれを見てとても苦々しい顔をした。
「渡したいもの? なにかしら、マクシミリアン」
マクシミリアンに手渡されたのは飴がいくつか入った小袋だった。……どうして飴……?
「昨日のことで喉をかなり痛めていたご様子なので。そこからお風邪を召してはいけませんからね。喉によいものなのでゆっくり舐めてください」
マクシミリアンはニコリと微笑みながらそう言った。確かにそうね、うちの執事は気が利くわ!……喉を痛めた原因は、貴方なのだけれど。
飴を一つ口に入れると彼の香水と同じミントの爽やかな香りがした。
『昨日のこと』の部分で教室がなんだかざわついたことを、わたくしは知らない。
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