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花屋のうさぎとデートのお誘い1
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ガラスのポットに手作りのハーブティーを入れる。
このハーブティーは乾燥させた花とフルーツ、そしてハーブを混ぜたものだ。
丁度いい配合にたどり着くまで、結構時間がかかったんだよな。
フレーバーが強いから、狼族の敏感なお鼻には合わなかったらどうしよう。
そんなことを思いながら、僕はポットにお湯を注いだ。するとひらひらとカラフルな茶葉が容器の中で踊る。これを見るのは、毎回少し楽しい。
「いい香りだ」
リオネル様がすんと空気を嗅ぎながら言う。良かった、不快な香りではないみたいだ。
「良かったです。香りが強いものなので、お好みに合わなかったらどうしようと少し心配だったので……」
ローテーブルにポットとカップを置きながら僕は照れ笑いを浮かべた。自分が手をかけたものを褒められるのは嬉しい。花もそうだな。
そうだ、お菓子も用意しよう。ご近所からの頂き物の、ちょっとだけいいお菓子があったはずだ。良かったなぁ、もったいなくて食べられなかったものがこんなふうに役に立つなんて。
戸棚に向かって上段を開ける。するとそこには、ショートブレッドの箱があった。箱を取り出し、中身を少しお皿に移してリオネル様のところに持っていく。
「この部屋の家具は、少し規格が小さめなのだな」
リオネル様は、興味深そうに部屋を見回した。
「うさぎ族用サイズなので。他の種族よりも、僕たちは少し小さいですから」
僕はそう答えながら、ショートブレッドをローテーブルに置く。
『白熊亭』ではご主人が『白熊サイズ』の調理器具を使っているように、僕の自宅も『うさぎサイズ』の規格の家具を使っている。平均サイズの種族用では『少しだけ』高さがあったり案外不便なのだ。
ゆったりと座れる長椅子で良かったな。これが一人掛けのソファーだったら、リオネル様には大変窮屈だっただろう。
「さ、召し上がってください」
ポットからカップにハーブティーを注いで、僕はリオネル様にそう声をかけた。
すると彼は「では頂く」と言ってから、カップを手に取る。
……すごいなぁ。うちの安物のカップもリオネル様が使うと高級品みたいだ。
そんなバカなことを考えながら、リオネル様の向かいに腰を下ろす。
そして僕もハーブティーを口にした。うん、美味しい。花とフルーツの香りがとても華やか。
「……美味しいな」
一口飲んでから、リオネル様が驚いたように目を瞠る。その表情を見て僕は安堵と、少し得意げな気持ちを覚えた。お世辞かもしれないけれど、褒められるとやっぱり嬉しいのだ。
「良かったです」
安心してほにゃりと笑うと、リオネル様に優しい微笑みで返される。
……この時間は、なんだかとても穏やかだ。
自分の『巣』だから、肩から力が抜けているのもあるのかな。
「それでリオネル様。お話とはなんでしょう?」
僕が訊くとリオネル様は眉尻を少し下げる。
……なにか、悪いことでもあったのだろうか。
まさか花に不良品が混じっていた? そう思うと心臓がきゅっと縮まる心地になる。
「あー、その。だな」
リオネル様はなんだか歯切れの悪い様子だ。僕は首を傾げながらリオネル様の言葉の先を待った。
「ニルスからもらった明日の君の予定を見たのだが……どこにも行く予定はないようだな」
「は、はい」
言わんとすることがわからなくて、体が緊張してしまう。それを和らげようと、僕はハーブティーを口にした。
「それでだ。その、明日は私もたまたま休みでな。レイラさえ良ければ一緒に出かけないか、と。つまりは……誘いに来たのだ」
ごくり。
大きな音を立てて、僕は口に入れていたハーブティーを飲み下してしまう。
リオネル様が、僕を外出に誘いに? なんのために?
疑問符を浮かべながらリオネル様のお顔を見つめていると、彼は困ったように眉尻を下げた。
このハーブティーは乾燥させた花とフルーツ、そしてハーブを混ぜたものだ。
丁度いい配合にたどり着くまで、結構時間がかかったんだよな。
フレーバーが強いから、狼族の敏感なお鼻には合わなかったらどうしよう。
そんなことを思いながら、僕はポットにお湯を注いだ。するとひらひらとカラフルな茶葉が容器の中で踊る。これを見るのは、毎回少し楽しい。
「いい香りだ」
リオネル様がすんと空気を嗅ぎながら言う。良かった、不快な香りではないみたいだ。
「良かったです。香りが強いものなので、お好みに合わなかったらどうしようと少し心配だったので……」
ローテーブルにポットとカップを置きながら僕は照れ笑いを浮かべた。自分が手をかけたものを褒められるのは嬉しい。花もそうだな。
そうだ、お菓子も用意しよう。ご近所からの頂き物の、ちょっとだけいいお菓子があったはずだ。良かったなぁ、もったいなくて食べられなかったものがこんなふうに役に立つなんて。
戸棚に向かって上段を開ける。するとそこには、ショートブレッドの箱があった。箱を取り出し、中身を少しお皿に移してリオネル様のところに持っていく。
「この部屋の家具は、少し規格が小さめなのだな」
リオネル様は、興味深そうに部屋を見回した。
「うさぎ族用サイズなので。他の種族よりも、僕たちは少し小さいですから」
僕はそう答えながら、ショートブレッドをローテーブルに置く。
『白熊亭』ではご主人が『白熊サイズ』の調理器具を使っているように、僕の自宅も『うさぎサイズ』の規格の家具を使っている。平均サイズの種族用では『少しだけ』高さがあったり案外不便なのだ。
ゆったりと座れる長椅子で良かったな。これが一人掛けのソファーだったら、リオネル様には大変窮屈だっただろう。
「さ、召し上がってください」
ポットからカップにハーブティーを注いで、僕はリオネル様にそう声をかけた。
すると彼は「では頂く」と言ってから、カップを手に取る。
……すごいなぁ。うちの安物のカップもリオネル様が使うと高級品みたいだ。
そんなバカなことを考えながら、リオネル様の向かいに腰を下ろす。
そして僕もハーブティーを口にした。うん、美味しい。花とフルーツの香りがとても華やか。
「……美味しいな」
一口飲んでから、リオネル様が驚いたように目を瞠る。その表情を見て僕は安堵と、少し得意げな気持ちを覚えた。お世辞かもしれないけれど、褒められるとやっぱり嬉しいのだ。
「良かったです」
安心してほにゃりと笑うと、リオネル様に優しい微笑みで返される。
……この時間は、なんだかとても穏やかだ。
自分の『巣』だから、肩から力が抜けているのもあるのかな。
「それでリオネル様。お話とはなんでしょう?」
僕が訊くとリオネル様は眉尻を少し下げる。
……なにか、悪いことでもあったのだろうか。
まさか花に不良品が混じっていた? そう思うと心臓がきゅっと縮まる心地になる。
「あー、その。だな」
リオネル様はなんだか歯切れの悪い様子だ。僕は首を傾げながらリオネル様の言葉の先を待った。
「ニルスからもらった明日の君の予定を見たのだが……どこにも行く予定はないようだな」
「は、はい」
言わんとすることがわからなくて、体が緊張してしまう。それを和らげようと、僕はハーブティーを口にした。
「それでだ。その、明日は私もたまたま休みでな。レイラさえ良ければ一緒に出かけないか、と。つまりは……誘いに来たのだ」
ごくり。
大きな音を立てて、僕は口に入れていたハーブティーを飲み下してしまう。
リオネル様が、僕を外出に誘いに? なんのために?
疑問符を浮かべながらリオネル様のお顔を見つめていると、彼は困ったように眉尻を下げた。
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