【R18】うさぎのオメガは銀狼のアルファの腕の中

夕日(夕日凪)

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花屋のうさぎと赤狼の出会い1

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 リーディさんは二台目の馬車に押し込まれ、声が聞こえないところをみると猿轡でも噛まされているのか、気絶しているのかなのだろう。気にはなるけれど、他人の心配をしている余裕が僕にはない。

「さて、ハルミニア卿のお気に入り君」

 金色の瞳を光らせながら、ゆっくりと……昏い炎のような雰囲気を纏う赤狼が近づいて来る。
『逃げられない』。その存在の強大さに、心は一気に諦観に覆われた。
 リオネル様から漂う気配は清廉で、奥には優しさを纏っている。対してこのアルファの気配からは、圧倒的な『支配』が迸っていた。
 体が震え、その場に膝をつきそうになる。固い地面に額を何度も擦りつけて、『許してください』と喚き散らしてしまいそうだ。そんな衝動を必死に堪え、僕は赤狼を睨みつけた。

「……貴方は、なんなんですか」

 乾いた喉から言葉を絞り出す。そんな僕をしばし見つめて、赤狼は口角をゆるりと上げた。

「そういう話は、ここではない場所でしよう。道端では落ち着かないからね」

 彼はそう言うと、優美な仕草で手を差し出した。僕は戸惑いながらその手を見つめ……悩みつつも手を載せた。リーディさんがどういう状況なのかわからないし、彼が発した言葉を思い返すにロランが人質に取られているのだろう。
 僕の一挙手一投足が彼らの命綱なのだと想像できて、手を取らないという選択肢は選べなかった。
 ……逃げても、すぐに追いつかれてしまうだろうし。

「うん、いい子だね」

 思わずうっとりとするような、だけどどこか嗜虐的な笑みが向けられる。言葉を返さないこちらには構わず、赤狼は僕の手を引いて馬車へと乗り込んだ。
 馬車はリオネル様のものと比べても広く立派なもので、男の高貴な身分を思わせる。そしてそんな高貴な人がなぜこんなことを……とそんな疑問を同時に抱かせた。
 赤狼は正面には座らず僕の隣に腰を下ろし、優しい手つきで肩を抱いた。

「あ、あの」
「なんだい?」
「状況の説明を、お願いします……」
「ふふ、そうだねぇ」

 赤狼は楽しそうに笑うと、肩を抱く手の力を強める。その手は僕の首筋に伸びて……ハルミニア侯爵家の家紋が入った首輪を優しく撫でた。首筋がちりちりと妙な疼きを訴え、僕は思わず首を竦めた。

 ――怖い。

 頭の中で警鐘がうるさいくらいに鳴っている。なにが恐ろしいって……このアルファに対する『嫌悪感』が湧かないことがだ。自分の中のオメガの部分が、圧倒的なアルファを前にねじ伏せられ、歪められている。このままでは感情までも、このアルファに好意的な方向へと塗り替えられてしまいそうだ。
 僕はリオネル様の顔を思い浮かべ、心を必死に立て直した。
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