蔦葛物語

DENNY喜多川

文字の大きさ
28 / 54

第十四夜 清少納言の秘密 後編

しおりを挟む
 中宮定子(一条定子)は、藤原道長の兄、道隆の娘で、一条天皇の寵愛が、最も篤かった女性である。
 しかし、道長と道隆の政権抗争に巻き込まれ、一度は出家して、宮廷を去る。そんな定子に、一条天皇は熱いラブコールを贈り、もう一度宮廷に呼び戻す。が、それから間もなく、第二皇女を出産して亡くなった。
 清少納言は、この定子の大のお気に入りであり、清少納言が宮廷を退くと、定子は白紙の手紙に、花びらを添えたものを贈り、その情にほだされた清少納言は、再出仕したという。
 定子が亡くなると、清少納言は今度こそ宮廷を退き、二度と再出仕することはなかった。


 声の主は、神々しい後光を放っているようだった。
「へへっ、すいやせん、定子さま」
 ではこの方が、私のお仕えする、定子さまか。
 顔立ちといい、立ち居振る舞いといい、その端々から、母性があふれている。天子さまのご寵愛が、最も篤いというのも、うなずける話だ。
「後宮では、控えるように申しつけたはずですよ」
「いい男がいると……つい……ねえ?」
 私に同意を求められても困る。
 定子さまは、ぷっと吹き出されて、
「お前は、その男グセさえ何とかすれば、最高の女官なんですけどねえ」
「趣味はやめられても、性癖はやめられません」
 とうとう、定子さまはお腹を抱えて笑われはじめた。
 そのまましばらく笑い続けられ、笑い止んだ頃に、ようやく私の存在に気づかれた定子さまは、
「そなたが蔦葛か。清少納言はこのような子じゃが、仲良くしてやってたもれ」
「は、はい!」
 私は、あわてて平伏して申し上げた。


 夜になって自宅に戻り、ほっと手足を伸ばした。今宵は、中将の君の訪いもないようだ。
「奥方さま、湯殿の支度ができました」
 拾が声をかけてくる。
「拾……湯浴みを手伝っておくれ」
「はい!」
 侍女を帰し、私と拾は、湯殿で心ゆくまで愛し合った。
 私の乳に、久しぶりに拾の指が這い、私のホトを、久しぶりに拾の陽物が貫く。
 私たちの息は、以前よりも合っているようで、拾は、的確に私の弱いところを突いてきた。私はその度に、はしたない声を上げる。
 拾との間に感じていたわだかまりは、いつの間にか解けていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...