41 / 54
第二十一夜 権力者を無理やり…… 前編
しおりを挟む
式神とは、陰陽師が使役する鬼神のことである。
ここでいう鬼神とは、位の低い神を意味する。神ではあるが、むしろ「妖怪変化」として認識されることの多い存在である。
安倍晴明は、仏教の守護神である十二神将を使役したと言われているが、ここで蔦葛が乗り移ったのはさほど高級な式神ではあるまい。
(そんなことをしている場合ではないでしょう)
晴明さまの声に、私は我に返った。
(道長さまの寝室はこちらです)
晴明さまの案内に従い、私は歩いて行く。
途中、何人かの従者とすれ違ったが、彼らには私が見えないようだった。
道長さまは、いぎたなく眠っていらした。
この方が、拾にあんなひどいことを。
この式神の肉体をもってすれば、道長さまをいかような目に遭わせることだってできる。
お命だって……。
(目には目を、歯には歯をですよ)
晴明さまの声が、私を再び我に返した。
どんなひどいことをされたからといって、何をしていいということにはならない。
私は、股間の逸物をぐっと握りしめた。
「道長どの」
私の口から出た声は、本来の私のものとは、似ても似つかぬものであった。
道長さまは、はっと目を覚まし、私の姿を見て、心底驚き、恐れているようだった。
「な、何者ぞ、うぬは……」
「鬼よ。貴様の所業に、天罰を下すために現れた」
腰を抜かし、這いずって逃げる道長さまの姿は、実にこっけいだった。
他人を、それも権力者を、暴力で言うことを聞かせるというのは、これほどまでの快感だったのか。権力や暴力に執着する、男たちの心持ちが、少しわかった気がした。
「わ、私をどうするつもりだ……」
「どうもこうも、貴様が力無き人々にしてきたのと、同じ目に遭わせてやるのだ」
あくまで自重しなければ。私は、晴明さまの教えを、もう一度心の中で繰り返した。
(目には目を、歯には歯を)
ここでいう鬼神とは、位の低い神を意味する。神ではあるが、むしろ「妖怪変化」として認識されることの多い存在である。
安倍晴明は、仏教の守護神である十二神将を使役したと言われているが、ここで蔦葛が乗り移ったのはさほど高級な式神ではあるまい。
(そんなことをしている場合ではないでしょう)
晴明さまの声に、私は我に返った。
(道長さまの寝室はこちらです)
晴明さまの案内に従い、私は歩いて行く。
途中、何人かの従者とすれ違ったが、彼らには私が見えないようだった。
道長さまは、いぎたなく眠っていらした。
この方が、拾にあんなひどいことを。
この式神の肉体をもってすれば、道長さまをいかような目に遭わせることだってできる。
お命だって……。
(目には目を、歯には歯をですよ)
晴明さまの声が、私を再び我に返した。
どんなひどいことをされたからといって、何をしていいということにはならない。
私は、股間の逸物をぐっと握りしめた。
「道長どの」
私の口から出た声は、本来の私のものとは、似ても似つかぬものであった。
道長さまは、はっと目を覚まし、私の姿を見て、心底驚き、恐れているようだった。
「な、何者ぞ、うぬは……」
「鬼よ。貴様の所業に、天罰を下すために現れた」
腰を抜かし、這いずって逃げる道長さまの姿は、実にこっけいだった。
他人を、それも権力者を、暴力で言うことを聞かせるというのは、これほどまでの快感だったのか。権力や暴力に執着する、男たちの心持ちが、少しわかった気がした。
「わ、私をどうするつもりだ……」
「どうもこうも、貴様が力無き人々にしてきたのと、同じ目に遭わせてやるのだ」
あくまで自重しなければ。私は、晴明さまの教えを、もう一度心の中で繰り返した。
(目には目を、歯には歯を)
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる