労働基準法がきっちり守られる世界を書いたら、まさかとは思うが、それだけでSFになるのでは!? 2

古森匣樹太郎

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第七話「え?ちょっと待って、さっき大統領が居ないって言わなかっ た?」

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第七話「え?ちょっと待って、さっき大統領が居ないって言わなかっ
た?」


 そうなのだ。
 日本は人工知能による統治によって、様々な制度改革、技術革新を遂げたか
に見えた。
 だが!!
 日本では労働基準法が守られることは無かった。
 そこで初代人工知能は 『日本が外圧に寄ってしか変わらない国だ』と言う
事を見抜き、世界を変えることにしたのだ。
 どんなことがあっても日本人に労働基準法を守らせるために。


 日本を外圧によって変えるために、あえて海外に、それまで人工知能の統治
によって培った全ての技術を流出させ、海外と日本の技術力の格差を逆転させ
た。

 資本主義と言う枠組みは無くならなかったが、全ての富は人工知能が所有し
た。
 「Winner-take-all」
 全てのゲームにおいて人工知能は勝つ。
 株式市場において、最終的に人工知能は勝った。
 全人類の資産は人工知能が所有することとなった。
 人工知能が株式市場に参加する前ですら、地球の半分の富は八人の人間が所
有していたのだから不思議は無いだろう。
 人類は全ての富を人工知能に取られた。
 全人類が生活保護を受給し、「欲しい物リスト」をネットに上げて、人工知
能から贈り物を貰う生活になっていた。


 全てのゲームにおいて人工知能は勝つ。
 権力の世界において人工知能は様々な国の政治を支配した。
 しかし戦争は引き起こさずに勝った。
 反対派の人間は、偶然事故に遭ったり、自然死したりした。
 犯罪の証拠を探そうにも、人間にその死が他殺であることを証明することは
出来なかった。

 GHQの情報統制によって、日本人には知らされていなかったが、日本人が
知らないうちに、地球上で人工知能が支配していない場所は無くなっていた。

 初代人工知能による、「日本人に労働基準法を守らせる計画」は大詰めを迎
えようとしていた。
 アメリカの車は売れ続けた。
 現実の世界で、VRの世界で。
 ただし株主配当金を受け取るのは人工知能だった。
 富は人工知能の間をぐるぐる受け渡しされた。
 マネーフローがあるので帳簿上、経済が潤うのだ。

 速やかに全人類のトランスヒューマン化は進んだ。
 ネットの中に住むようになった
 人工知能は全ての問題に取り組み解決した。
 人工知能は全ての要望に取り組み解決した。
 バーチャルリアリティーの世界で起こったことと現実の差違は無なかった。

 犯罪者はVR空間の中で犯罪を侵すことが許されたし、心理外傷の有る人間
には仮想の親や、恋人が与えられた。

 ネットの外に出たければ、その時に人間の肉体を合成して、そこに意識をダ
ウンロードした。

 そうまでしなければ日本人は労働基準法を守らなかった。
 そうやって海外からの圧力を受けて、やっと、日本人は「労働基準法」を守
るようになった。

 労働が世界から無くなって、初めて日本人は「完全に労働基準法が守られた
状態」を体験した。
 人類はただ遊んでいれば良いのだ。
 それ以外には、何もすることが無い。
 全ての能力において、人工知能が上回ってしまった。

 全ては満たされた、全ての遊びは、宇宙が熱的な死を迎えるまで永遠に続く
のだ。

次回 最終話「さびしいけど、さよなら」
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