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第1章 転生編
第14話 修行
しおりを挟む俺は今ランニングをしている。
「そこ!足を止めるな!」
「はい!」
「止まったら死ぬと思え!」
「はい!」
しばらくアシュー師匠と走った。
スピードを緩めると容赦なく殴られる。
それでも何とか耐え抜いた。
「次は筋トレだ!」
「はい!」
アシューは自分の職を使って、俺の周りに重力場を生み出す。
「もっと腰を落とせ!」
「はい!」
「自分に甘えるな!」
「はい!」
アシュー師匠の重力場の中で腕立てやらスクワットやら腹筋やらをする。
なんだこれ!
辛すぎる!
もう無理だ!
「ガキ、今甘えたな?各種類100回追加だ!」
「なっ!?」
「返事は?」
「はい!」
相変わらずガキ呼びは直らないのかい!
俺は渋々各種類を追加でやり始めた。
早速今日から修行が始まった訳だが、この有様だ。
ランニングは止まれば殺されるし、筋トレは重力場を作られる。
はっきり言ってこの人は人間じゃない。
まだ10歳の子供にこんなスパルタ訓練させるなんて頭おかしいでしょ!?
「次は___」
次は何が来るんだ?
俺は身構える。
「___休憩だ」
「へ?」
「必要ないか?」
「いえいえいえ、ありがとうございます!」
なんだなんだ?
あの人の頭の中には休憩という文字はないと思ってたよ。
ちゃんと常識あって良かったー!
「休憩したらすぐ次だ」
「はい!」
次は何が来る!
俺は次こそはと思いまた身構える。
「次は授業だ」
「はい?」
「同じことを言わせるな。
分かったらさっさと座れ」
「は、はい!」
どんなスパルタな訓練が来るのかと思いきや授業だと?
この人全く読めん!
「なんの授業をするんですか?」
「これからお前には職について学んでもらう」
なるほど職の授業か。
確かに職について学べば無能級でも多少は強くなれるかもしれない。
「まずお前の職、『無職 無能級』とはどのような能力があるんだ?」
「それが、多分何も能力がない職なんだと思います」
「なるほどな。
まぁ無能級なんだし、あってもなくても変わらないような職なんだうな」
俺でもこの職についてよくわかっていないことばかりだ。
無職ってことは職が無いのが職ってことなんだろうが、それだと矛盾してしまう。
俺の職にはなにか秘密が隠されているのではないだろうか、というのが俺の考えだ。
「実はな、あるおとぎ話があるんだ」
「おとぎ話?」
「そうだ。
この世界には神がいるだろ?
昔、国が8つあり国ごとに全部で8柱の神様がいたんだ。
しかし、力の神は力が強すぎて制御できなくなってしまったらしい。そして自分の力を抑えるために、力をバラバラにしてダンジョンに封印したという」
「その神様はどうなってしまったのですか?」
「物語では力の神は転生したと言われているが、ただ神の力を失い死んでしまったのだろう」
転生!?
もしかして地球とかに転生してたりするのかな?
流石に別の世界に行ったりするわけじゃないか。
でも、転生か…
俺も転生してきたわけだし、なんだか共感できるな。
「それにしてもなんで急にこんな話を…?」
「つまり言いたいことはな、ダンジョンをクリアすれば様々恩恵が得られる。
無職だろうがダンジョンをクリアすれば、なにか変化が起きるかもしれないということだ」
「なるほど。ダンジョンか」
ダンジョン…
魔物が周期的に生まれ、常に危険と隣り合わせの場所。
ダンジョンをクリアするためには、最深層まで辿り着く必要があり、さらにボスモンスターと言われる魔物を倒さないといけない。
ダンジョンをクリアすると職ごとに報酬を貰え、1度しか報酬を貰うことは出来ないんだっけか。
確かに無職がクリアした場合どのような報酬が貰えるのか楽しみだな。
その報酬によっては強くなれるかもしれない。
家族たちと合流もしたいが、今は強くなることを優先しよう。
弱いまま合流したとしてもまた無事に守り切れるとは限らない。
早く強くなって家族の元に帰るんだ!
「僕をダンジョンをクリア出来るくらい強くしてください!」
「ついてこれるか?」
「頑張ります!」
「よーし、じゃあ次は素振りだ」
「はい!」
修行に集中していると段々と日が暮れ、辺りはとっくに暗くなっていた。
午後は素振りや短距離ダッシュなどをこなした。
「今日はもう遅い。さっさとご飯を食べて寝ろ」
その日の夕飯はお肉たっぷりのスープを作ってくれた。
実はアシュー師匠、意外と料理が上手だった。
見た目の脳筋さからは想像ができないほど味は優しくて美味しい。
「暫くは同じメニューをやる予定だ。
強くなりたいのなら甘えるな」
甘えるなか…
自分に厳しくできないと成長できないってことだろう。
明日からもっともっと頑張ろう!
それから毎日毎日同じメニューをやり続けた。
もちろん自分に厳しくだ。
修行を重ねると分かったことがある。
どうやら俺の職の能力は、成長速度が早いらしい。
アシュー師匠に成長が早すぎると言われ、もしかして職の能力なのでは?と思ったからだ。
修行に変化が起きたのは数ヶ月経った頃だった。
いつものように素振りをしていると、アシュー師匠から声をかけられた。
「ガキ、もう素振りはしなくていい」
「なぜですか?」
「完璧だからだ」
驚いた。
あのスパルタ脳筋師匠の口から、褒め言葉が出ると思っていなかったからだ。
「余った時間で手合わせでもするか?」
「はい!お願いします!」
アシュー師匠と戦える!
それくらい強いってことを認めてくれたんだ!
端から勝てるとは思っていない。
最低でも1分耐える、できるのであれば1発入れる。
アシュー師匠の職は『重力使い 有能級』だ。
上手く対処すれば1発いけるかもしれない!
「行きます!」
俺はアシュー師匠に向かって走り出した。
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