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第3章 世界編
第68話 作戦
しおりを挟む「バイルスさんおはようございます!」
「今日はよろしくお願いします!」
「お願いします…」
メリア達は森の入口にて警備隊長と合流した。
「アオの姿がないが、どうしたのだ?」
「それが、アオは熱を出してしまったのでお休みです」
「…そうか。わかった。
なら2人だけだが、これより討伐試験を始める!」
バイルスは少し残念そうな顔をし、試験を始める。
「どうやら試験が始まったみたいだな」
俺は森の茂みの中から、慎重にメリア達を観察する。
ついに待ちに待った試験日!
俺とデスティザーク4th、どちらが強いのか決着をつけようじゃないか!
昨日話した作戦はこうだ。
まず、アオが居ないことは体調を崩してしまったことにする。
それほど疑われることはないだろう。
つぎに、戦闘を仕掛けるタイミングについてだ。
俺が前に偵察した通りに進むのであれば、バイルスは洞窟の研究所にメリア達を連れて行き、そこで行動を起こすだろう。
戦闘を仕掛けるタイミングはその時だ。
俺は1度、研究所の中に忍び込んでいる。
つまり、【転移】で研究所に入れるということだ。
メリア達が研究所の中に入ったのと同時に俺も研究所の奥へ【転移】を使い入り込む。
そして全員で不意打ちをかける。
俺は新たな力も手にしたし、メリア達も訓練で強くなっている。
この作戦が上手くいけば勝つことが出来る!
「魔物の気配だ。武器を構えろ」
バイルスがメリア達に合図を送る。
「グゥァァァ!」
「オーガが3体も!?」
茂みから現れたのは、赤く頑丈な皮膚、鋭い角を持つオーガの群れだった。
「1人1体倒せるよね!」
「任せて!」
「任せて…」
メリアが率先して皆に指示を出す。
「はぁぁぁ!」
メリアが素早い動きでオーガに近寄る。
「【縮地】!」
メリアの姿が一瞬消え、オーガの背後に現れる。
【縮地】は【転移】と同じように見えるが、実際は見えないくらい素早く動いているだけだ。
それでもメリアくらいの実力者になるとほんとに消えたように見える。
「終わりよ!」
メリアがオーガを背後から1体仕留める。
「次は僕たちの番だね。【ウィンドストーム】!」
「【ファイアストーム】…」
アートとシシーが残りのオーガに向かって魔法を放つ。
範囲攻撃である【ウィンドストーム】と【ファイアストーム】は互いに共鳴しあって重なる。
2つの魔術が重なったストームは2体のオーガを巻き込む。
「グゥァァァ…」
オーガが灰となって消えていく。
「3人とも見事な戦い振りだった。これにて試験を終了とする!
結果は、文句なしの合格だ!」
「「やったー!」」
「やったー…」
3人は喜びを分かち合いながらハイタッチをする。
「それでなんだが…」
「「(来た!!)」」
「…?」
バイルスが話を切り出す。
作戦通りの展開にメリアとアートは身構える。
シシーはまだ理解していないようだ。
「近くに私の研究室があるのだが、褒美としてそこでお茶でもどうだ?私が入れてやろう」
「いいんですか!?」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます…」
メリア達はバイルスに連れられ、洞窟の研究所へと向かった。
「やっぱり予想通りだったね」
俺はバイルスに気づかれないよう追跡する。
〈こっからが本番じゃよ?〉
「少し緊張するな…」
〈主なら大丈夫なのじゃ!〉
「ありがとう時雨丸。
もうそろそろメリア達が洞窟に着きそうだ」
時雨丸と話しているとメリア達が洞窟の研究所へ到着した。
「入ってくれ」
「お邪魔しまーす!」
「失礼します」
「・・・」
メリア達はバイルスに招かれ研究所へと入って行く。
「時雨丸、準備はいい?」
〈大丈夫じゃよ!〉
「ふぅー…」
俺は息を深く吸い、呼吸を整える。
大丈夫だ。俺は以前よりも強くなったんだ。
予言書の運命は変えられた。
アオは助けられた。
あとは、戦いで全力を出して勝利を掴むだけ…
「いくぞ!【転移】!」
俺は研究所の奥の部屋をイメージして【転移】を唱える。
俺の身体は光に包まれ消えていく。
「この茶葉は実はサルディニア帝国でしか栽培されてないものなんだ。どうぞ召し上がって___」
ガタンッ
バイルスがメリア達にお茶を提供しようとした時、奥の部屋で物音がした。
「確認してくる。少し待っててくれ」
「(今の物音はきっとルイスだ…)」
「(バイルスさんがドアを開けた瞬間に奇襲を仕掛けるのよね…)」
バイルスがゆっくりとドアノブに手を伸ばす。
「「……」」
メリア達は息を飲み、今か今かとその瞬間を待ち望む。
バイルスの手がドアノブを捻る。
その瞬間___
「【縮地】!」
「【ウィンドエッジ】!」
「【ヘルフレイム】…」
「時雨丸!戦力解放!」
俺、メリア、アート、シシーの4人でバイルスに向けて一斉攻撃を放った。
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