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第3章 世界編
第75話 アクトル王国
しおりを挟む「アクトル王国が見えたわ!」
「ここからなら上手く【転移】が使えそうだね」
「お水いっぱい…」
俺たちはアクトル王国が見えるよう、近くの山に登っていた。
「じゃあみんな俺の手に掴まって」
俺は右手を前に出し、みんなはその手に掴まる。
「じゃあみんな行くよ!」
俺はアクトル王国の城壁周りの、なるべく人が少ない場所を見つめイメージする。
「【転移】!」
身体が光に包まれる。
ピチャッ
「冷たっ!?」
ひんやり冷たい水が俺たちの足を覆う。
「どうやら【転移】は成功したみたいだね」
「【転移】が成功したのはいいが…魔力が…」
やはり長距離の転移は魔力消費量がとてつもないな…
しかし、これによってかなり時間を短縮できたのは大きい。
「しばらく休ませてもら…う…」
俺は魔力切れによって意識を失った。
◆◆◆
「温泉っ温泉っ~」
中性的で小さな子供のような見た目をした者が、優雅に温泉に浸かる。
「マロン様、ティフィラス様からご報告があり___」
「キャー!勝手に入ってこないでよねー!」
報告をしようと入ってきた下僕に、マロンは驚いて桶を投げつける。
「これは申し訳ありませんでした!しかし…」
「要件はなんなのさっ!」
「はい、4thのバイルス・コート様が亡くなられたとの事です」
「ふーん、それで?」
「えと…」
「まさかそれを伝えるためだけに僕のお風呂の時間を邪魔したというのかい?」
マロンの雰囲気がガラッと変わる。
「申し訳ありませんでした!」
「バイルスに関しても、死ぬ前にせめて僕が作ったザークドロップスの感想くらい言ってくれても良かったんじゃないのっ!」
「申し訳ありません!」
「まっ、今の僕にはもっと楽しみなことがあるもんねっ!」
「何かお考えで?」
「もうすぐライクリック王国の武術大会があるだろう?
そこで僕の薬の凄さを見せつけてやるのさっ!」
「それは素晴らしいお考えで!」
「お風呂から上がったら早速薬作りを始めないとねっ!」
マロンは考えていることとは裏腹に可愛い顔で笑った。
◆◆◆
「うっ…」
俺はふかふかのベッドの上で目を覚ます。
「あっ!ルイス目が覚めた!」
「ちょうどいいタイミングだね」
「温泉…」
俺は身体を起こしてみんなの方に目を向ける。
「私たちこれから温泉に入るところなのよ!」
「一緒に入りに行こうルイス」
「温泉…」
どうやら俺が気絶している間に宿を取ってくれたみたいだ。
それに空も日が沈んですっかり暗くなっていた。
「すぐ準備する!」
やっと念願の温泉だ!
魔力切れなんかで寝てられないよね!
俺はベッドから飛び起きすぐに準備をする。
「お待たせ!」
「じゃあ行きましょ!」
「「おおーー!!」」
俺たちは男女に別れそれぞれ、大浴場の風呂に入る。
「ルイス、恥ずかしいからあんまり見ないで」
「あ、ごめんアート!」
脱衣所にて、アートが服を脱いで恥ずかしがっている。
アートの身体は鍛えているわけじゃないからやっぱり細そい。
俺も脱ぐか…
「よいしょっ___」
「いい湯だったねっ!」
俺が服を脱ごうとした時、小さな子供があそこ丸出しでお風呂から上がってくる。
「…っ!?」
アートはそれを見て顔を真っ赤にして驚いている。
「混んでるかと思ったけれど、あの子以外は今は入ってなかったみたいだね」
「やっぱり早く来て正解だった…」
「早速入ろうか」
俺とアートは子供と入れ違いで温泉に入った。
一方女子風呂は…
「いい湯ね~」
「落ち着く…」
メリアとシシーは髪をお団子にしてまとめ、ゆっくりと湯船に浸かっていた。
「ねぇシシー!シシーってアートのことどう思ってるの?」
「アートは別に友達…」
「ほんとは?」
「とも…友達よりは上…」
「いいねいいね!」
「そーゆーメリアはルイスのことどう思ってるの…?」
「私?私はね~なんて言うか、ルイスは昔好きだった人にすごく似てるんだよね~」
「つまり…?」
「好き?なのかもね!」
メリアが照れながら笑う。
「そろそろのぼせちゃうし上がりましょ!」
男子風呂にて…
「なぁアート、今の聞いたか…?」
「ちゃんと聞いたよルイス…」
「まさかメリアが俺___」
「まさかシシーが僕___」
「「___のこと好きだったなんて…!?」」
「今の聞き間違いじゃないよな…?」
「僕だって信じられないよ…」
女子風呂からメリア達の声が聞こえたから、ついつい気になって聞いてみたら…まさか恋バナをしていて、おまけに俺らのことが好きだって!?
そんなことあるのか!
夢じゃないよな!?
「大して温泉に浸かってないのにのぼせそうだ…」
「僕も…」
俺たちは温泉とは別のものにのぼせ、温泉を出た。
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