98 / 140
第3章 世界編
第98話 武術大会(8)
しおりを挟む「メリア…」
出血もしていないし、目立つ外傷は無い…
しかし、呼吸が荒く汗も多い…
さらに【ヒール】を唱えても効果がない…
「これは…毒か…?」
「どっ、毒ですか!?」
昔、本で読んだことがある。
この世界で毒を作るのは禁じられている…
なぜなら、解毒の方法がないからだ。
毒に犯されたものは高熱が出て身体が蝕まれ、やがて死に至る…
つまりメリアは…
「メリアはもう…助からない…」
「そっ、そんな…!?」
「つまり…そういう事か…そうだったんだな…」
俺は予言書の赤い文字の意味を悟る。
あの赤い文字は…
メリアを助けるか、アオを助けるか…
俺が究極の選択をしなければならないことを示していたんだ…
「くそっ…!」
なんでこうも現実は残酷なんだ…
2人の内1人なんて…選ぶことが出来るわけがない…
俺はどうするのが正解なんだよ…教えてくれよ…!
でも今は優勝を最優先で考えなければならない。
優勝出来なければ2人とも助けることが出来ない。
戦いに集中できるか分からないが、今は優勝することに全力を尽くそう。
「僕は試合があるので待機場所へ戻ります…
メリアのことをお願いします…」
「はっ、はい!全力を尽くします!」
俺は救護室を後にし、重い足取りで待機場所へと戻った。
◆◆◆
「僕も遠慮はしないよ!」
だってこれ勝ったってら次の相手がルイスなんだもん。
ルイスにはさすがに勝てそうもないかな。
だったらここで全てを出し切るのがセオリーってもんでしょ!
「【ウィンドストーム】!【ウィンドストーム】!」
「上級魔術の連続詠唱ってまじかよ…どんだけ魔力量あんだ…」
連続して放たれた【ウィンドストーム】は闘技場を次第に埋めつくしていく。
「もう逃げ場はないね?大人しく場外へ出た方が身のためだよ」
「そうか…だが残念だったな!上が空いてるんだよ!」
ボホルは地面を強く蹴り、【ウィンドストーム】を越すほど高く飛び上がる。
「お前はもう魔力が残ってないはずだ!この勝負俺の勝ちだ___」
「___僕、魔力が残ってないなんて言ったっけ?
悪いけど僕の勝ちだね。【ウィンドストーム】!」
「なにっ!?」
何も無い空中、ボホルが飛び上がった高さと同じ高さに突如【ウィンドストーム】が放たれる。
「高い位置で発動できるか不安だったけど、上手く成功したみたいだね」
「ぐぁぁぁ!」
ボホルは【ウィンドストーム】に捕まり、流されるように場外へと運ばれる。
「第2回戦3試合目、ボホル選手が場外に出たため負けとなります!よって勝者アート選手!」
「「「うぉぉぉぉ!!」」」
「おい!子供があのボホル・レーを倒しちまったぞ!」
「上級魔術を連発ってどんな魔力量してやがんだよ!」
全大会優勝者が打ち倒されたことによって観客席が盛り上がる。
「あ…僕…魔力がもう…」
僕の意識は観客の声援の中で途絶えた。
◆◆◆
「第2回戦4試合目のお知らせを致しますにゃ!
出場者のメリア選手が試合続行不可と判断されたため、無条件でルイス選手の勝利となりますにゃ!」
「まぁそうなるか…」
「ルイス選手は第3回戦の待機場所へ移動してくださいにゃ!」
第3回戦か。
アートとボホルって人はどっちが勝ったのだろうか…
たしか前に受付する時に絡まれたって言ってたっけ?
アートは負けず嫌いだからなー。
相手は全大会優勝者だし、アートのことなら全魔力使ってでも倒そうとするかも…
さすがに俺の考えすぎか…?
色々と考えているうちに着いたみたいだな。
俺は第3回戦の待機場所の扉に手をかける。
この先にいるのはアシュー師匠とヘルバーさん、そしてアートかボホルとやら…
俺はアートがいることに賭けて扉を開く。
「早かったな」
「あれ?また前の人より先に戻ってきたじゃねぇか」
待機場所にはアシュー師匠とヘルバーさんのみで、アートの姿は見当たらなかった。
「アートは?」
「いや見てねぇぞ?」
「私も見ていないな」
まさかほんとに魔力切れに!?
「第3回戦1試合目、アシュー選手とヘルバー選手は会場へお越しくださいにゃ!」
「えっ!もうかよ!?」
「お前と殺り合うのは久しぶりだな」
明らかな殺意がアシューから漂っている…
「ひっ!?ルイス!助けてくれ!俺はまだ__ぐぇ!」
アシューがヘルバーを背負い上げ、強制的に連れていく。
「決勝で会おう、ルイス」
アシューはヘルバーを背負いながら会場へと向かって行った。
「うわー、いつ見ても恐ろしいな…」
ヘルバーさん、ご愁傷さまです…
12
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる