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第3章 世界編
第104話 特別報酬
しおりを挟む「少し長引きすぎですね。
そろそろ終わらせましょうか…」
シベルトがポケットに手を入れ何かを取り出す。
「それは!?」
シベルトの手に掴まれていたのは赤色をしたキャンディー、ザークドロップスだった。
「いただきます」
シベルトはザークドロップスを口の中に入れる。
「味はあまり美味しくは無いですね。
ですが…この奥から力が湧いてくる感じは悪くない」
対面していてわかる…先程までとは比べ物にならないほど強くなっている。
「では再開しましょうか…」
こんな奴に本当に勝てるのだろうか…
「【多重詠唱】【複合魔術】【ミスト】×10!」
まずは霧を張って俺の位置を悟らせないようにしよう。
「次は【複合魔術】【サーチ】!」
光を纏った風が霧の中を通り抜けていき、シベルトの位置を示す。
これで俺がだいぶ有利な状況になった。
しかし…あいつを倒せるような決定打はあるのか?
時雨丸の全力を叩き込むか?
けれど、スピードはシベルトの方が格段に速い。
つまり攻撃を当てることは難しいだろう。
魔術も同じだ。
唱えたとしても簡単に避けられてしまう。
何か隙を作れる一手があればいいんだが…
「霧ですか…【サモン:ドラゴン】!この霧を晴らすのです」
「ドラゴンだって!?」
まさかドラゴンまでテイムしているなんて!?
ドラゴンまで出られちゃ___
「うおっ!?」
会場にものすごい風が吹き、その風と共に霧が吹き飛ばされる。
「羽ばたくだけでこれか…」
さすがドラゴン。
霧を晴らすのも朝飯前ってことか…
「やっと姿が見えました…
これで終わりにしましょう…!」
「まず___」
油断した…
ついドラゴンに気を取られ、絶対に目を離してはいけない敵から目を離してしまった。
目を離した一瞬の隙をつかれ、気づけば目の前に拳を振り上げるシベルトが居る。
身体が動かない…
でも何故だろう…
危機的状況なのに、周りがスローモーションに感じる。
もしかしてこれが走馬灯ってやつなのだろうか…
速くて目で追えないはずの拳がはっきりと自分に向かってくるのが見える。
この拳を食らったら…確実に死ぬ。
まだメリアもアオも助けていないのに…
こんなところで死んでたまるかよ…!
「うあぁぁぁぁぁぁ!!!」
ピコンッ
《致命的ダメージを感知致しました。『結界の護り』を発動致します。本日、残り使用回数0回》
拳が直撃する瞬間、俺の脳内にひとつの声が響いた。
その声が響いた直後___
ガンッ
「なんですかこれはっ!?」
俺の周りに六角形の薄い板が何枚も連なった結界が展開され、シベルトの攻撃を防いだ。
「こんな能力なんて聞いたことがないですよ!?」
俺も初めて見た…
まず自分がこんな能力を持っていることすら知らなかったぞ…
何はともあれ、今の攻撃を防いだことでシベルトに隙が出来た。
今度は俺の番だ!
ここで一気に畳み掛ける!
「【多重詠唱】【フリーズ】×10!」
「なっ!?」
シベルトの隙をつき、【フリーズ】で脚を固める。
そして動けなくなったシベルトに俺が今放てる最大の魔術を撃ち込む。
本当は武術大会で使おうと思っていたけど、反則になりそうだからやめたほどだ。
「【多重詠唱】【複合魔術】【グレイシア】×10!!」
俺の頭上にとてつもなく巨大な氷河が生成される。
【グレイシア】は【多重詠唱】で【ウォーターバレット】を無数に作り出し、それを【フリーズ】で固めて氷河を作る。
魔力消費は他と比べても少なく、【多重詠唱】をしても問題ない。
さらに威力は超級レベル
つまり【グレイシア】は俺が今使える魔術の中で間違いなく最強技だ。
「お前はこれで終わりだ!」
巨大な氷河をシベルトに向かって叩き込む。
「まだだ!【多重詠唱】【複合魔術】【グレイシア】×10!」
俺はさらに追い討ちをかける。
無数に叩き込まれた氷河によって砂煙が上がる。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
少し経つと煙が晴れ、シベルトの姿は跡形もなく消えていた。
「勝った…勝ったぞ…!」
今回はほんとに危なかった。『結界の護り』とやらがなければ確実に死んでいたな…
それにしてもこのいつそんな能力を手に入れたんだろうか…
思い当たる節は…
「あっ!」
そういえばレベルエンハンスダンジョンをクリアしたのに、特別報酬を貰ってなかったよね!?
ということはつまり、『結界の護り』が特別報酬ってことか!
なるほどな。
今まで空いていたピースが綺麗に埋まったな。
あの時のアナウンスを聞いた感じ、発動できるのは1日1回で、致命的ダメージを感知したら自動で発動する仕組みか…
また更に強くなった気がするな。
しかしまだ安心は出来ない…
一刻も早くメリアに解毒薬を届けなければならないからだ。
「シベルトとの戦いでかなり時間を使ってしまった…
今度こそメリアに解毒薬を届けるぞ!」
俺は救護室へ向かった。
メリアがまだ生きていると信じて…
「メリア!解毒剤を持ってき___」
「………」
「まし…た…」
俺は治癒術師の表情が目に入り言葉に詰まった。
治癒術師の表情は魂が抜けたように活気が無く、目元には泣いたような跡が見られた。
俺は察してしまった。
1番察したくないことを…
「まさかメリアは…」
「…はい。先程、息を引き取られました…」
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