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第3章 世界編
第105話 遺言
しおりを挟むまた更に強くなった気がするな。
しかしまだ安心は出来ない…
一刻も早くメリアに解毒薬を届けなければならないからだ。
「シベルトとの戦いでかなり時間を使ってしまった…
今度こそメリアに解毒薬を届けるぞ!」
俺は救護室へ向かった。
メリアがまだ生きていると信じて…
「メリア!解毒剤を持ってき___」
「………」
「まし…た…」
俺は治癒術師の表情が目に入り言葉に詰まった。
治癒術師の表情は魂が抜けたように活気が無く、目元には泣いたような跡が見られた。
俺は察してしまった。
1番察したくないことを…
「まさかメリアは…」
「…はい。先程、息を引き取られました…」
「そんな…」
俺は事実を受け入れられず、ゆっくりとメリアに近づく。
「メリア…?」
覗き込んだメリアの顔は青白くなっており、動く気配が感じられなかった。
「メリア、ごめん…間に合わせられなくてごめん…!」
俺はメリアの手を握る。
握った手は驚く程に冷たかった。
「俺がもっと025を注意深く見ていれば…!」
「あ、あの!メリアさんから伝言を預かっています」
「伝言…?メリアから?」
「はい。伝えてもよろしいでしょうか?」
「是非お願いします…」
伝言…
メリアが最後に伝えたかったことはなんだろうか…
「では言いますね…」
治癒術師は深く息を吸い深呼吸をした後、口を開いた。
「〈私は___」
◆◆◆
「私は、もう助からないかもしれない。この伝言を聞いている頃には亡くなっているかもしれないわ。でもね、あまり悲しまないで欲しいの。」
メリアは悲しそうな表情で外を眺める。
「私が居なくても、ルイスたちなら上手くやっていけるはずよ。
それと、これはルイスだけに伝えたいことなんだけれど…」
「どうしたのですか?」
メリアが急に頬を赤らめ言葉に詰まらせる。
「この際最後なんだから言うわ!
私はあなたのことが好きよ!
本当は直接伝えたかったけれど、叶いそうにないわ」
メリアは恥ずかしがり、枕に顔を埋める。
「武術大会に優勝したら『伝説の薬』が手に入るわよね。ルイスならきっと優勝しているわ。
けれど…その薬は、私じゃなくてアオに使いなさい。
もとよりアオのためにこの大会に参加したのよ。ちゃんと使ってあげてね…
ふぅー…」
メリアがは深く息を吐き涙をこらえる。
「ルイス、アート、シシー…今までありがとう…!すごく楽しかったわ…!」
◆◆◆
「___以上が伝言の内容です」
「うっ…メリア…!メリア…!!」
俺の目から涙が溢れ出る。
「俺も…好きだ…メリア……!」
もっと、もっと早く気持ちを伝えていればよかった…
あの時、この世界に来る前と同じだ…
あの時誓ったはずだろ…!
何一つ変わってないじゃないか…!
仲間を失った悲しさと、あの時の誓いを守れなかった自分への感情で押しつぶされそうだった。
どうしてこうなったんだ…
メリアを生き返らせることは出来ないのか…!
メリアが言うことは正しい…
この大会に参加したのはアオを助けるためだ…
メリアに薬を使ったらアオは助からない。
だからといってメリアを助けられないのは辛すぎる…
「俺は…俺はどうするのが正解なんだよ…!」
「………」
治癒術師は何も言わず、ただただ俺を見つめる。
「ルイス!メリアは大丈夫!?」
俺がうずくまっていると、救護室の扉が開いた。
「アート、シシー…」
「外の魔物はあらかた片付いたとこ___…ルイス?なんで泣いてるの…?」
アートが俺の泣き顔を見て唖然とする。
「メリアはもしかして…」
アートとシシーは思い足取りでベッドへ近づく。
「そんな…メリアが…」
「…メリア…うぅ…メリア…!」
アートに続きシシーも涙を流す。
仲間を失う辛さは何度あったとしても慣れるわけが無い。
「2人とも…伝えなければならないことがある」
俺は泣いている2人を振り向かせる。
悲しいのはみんな一緒だ…
しかし、いつまでも泣いていても変わらない。
「ボッパーが裏切り、薬を奪った…」
「ボッパーが裏切った…!?」
「ボッパー…!?」
「悲しい気持ちは分かる…けれど今は一刻も早く薬を取り戻さないと、アオもメリアも助けられない…!」
「うぐっ、わがった…」
アートとシシーは立ち上がって涙を拭う。
「急いでボッパーを見つけ出そう!」
「「おおー!!」」
そうして俺たちは、薬を取り戻しにボッパーを求めて外へ向かった。
ちなみにメリアをそのままにするのは気が置けなかったため、一応【収納】している。
ボッパーが早く見つかればいいのだが…
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