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真相・後編
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エヴグラフはロマノフ家主催の夜会でルフィーナと接触してみた。
ルフィーナがバルコニーで休憩しているところを確認し、ゆっくりと後ろから近付くエヴグラフ。
案の定、物音に気付きルフィーナは振り向いた。
その後、エヴグラフはルフィーナと言葉を交わし、満月を見上げる。
ようやく恋焦がれている意中の相手と過ごせてエヴグラフの心は非常に穏やかだった。
いずれ婿入りや臣籍降下予定だが、まだ婚約者がいない第三皇子エヴグラフ。
いずれクラーキン公爵家を継ぐ立場のルフィーナ。
お互い注目を浴び、異性からのアプローチが多い。
しかしルフィーナはそのことに対して特に気にした様子はない。
(ルフィーナ嬢は……自分の価値にまだ気付いていない無垢さがあるのか。……余計に気に入った)
エヴグラフは隣にルフィーナを感じながら、満月を見上げて満足そうに口角を上げた。
しかし、このペースではルフィーナと仲を深めることに時間がかかるとエヴグラフは感じた。
そこで計画を変更し、まずはルフィーナの幼馴染であるラスムスキー侯爵令息アレクサンドルと、ストロガノフ伯爵令嬢リュドミラの二人と交流し、その流れでルフィーナを紹介してもらうことにした。
目的はルフィーナと結ばれることのみだったが、ここで思わぬ副産物を得た。
エヴグラフは意外にもアレクサンドルと気が合ったのだ。
ある日、アレクサンドルを宮殿の執務室に招いていた時のこと。
「サーシャ、何をしているんだ?」
アレクサンドルは手紙か何かを書いていたので、エヴグラフは気になって聞いてみた。
「まあちょっとね」
アレクサンドルはニヤリと何かを企んだような笑みだ。
詳細を聞くと、婚約者であるリュドミラにちょっかいをかけた者がおり、アレクサンドルはその者を排除しにかかっていたのだ。
(サーシャ……結構俺に似ているな)
エヴグラフはラピスラズリの目を丸くした。
実は同じ時、エヴグラフもルフィーナに好意を寄せる令息達や、ルフィーナに嫌がらせをする令嬢達を排除する準備をしていたのである。
ルフィーナが読んだ新聞に掲載されていた令息達の事故や、ジーナ達の醜聞はエヴグラフの仕業だったのだ。
エヴグラフはアレクサンドルと予想以上に仲を深めていた。
そして何気なく聞いてみた。
「サーシャはもう一人の幼馴染……ルフィーナ・ヴァルラモヴナ嬢には気がないのか?」
「ルフィーナに? 全然ないよ。というか、ルフィーナも私もお互い家を継ぐ立場だと幼い頃から聞かされていた。だから自然とお互い恋愛対象とかにはならなかったよ。ルフィーナとは幼馴染兼ビジネスパートナーみたいな関係かな。それに、私にはリュドミラしかいないさ」
アレクサンドルはクスッと笑い、ヘーゼルの目を細めた。
「そうか……」
エヴグラフもフッと口角を上げた。
(これでもしサーシャがルフィーナ嬢に気があると答えていたら、彼を殺めていたかもしれない。気心知れた友人を手にかけることにならなくて本当に良かった)
エヴグラフのラピスラズリの目は光が灯っていなかった。
その後、アレクサンドルとリュドミラを通して改めてルフィーナと知り合った。
ルフィーナの好物などを入念に調べていたお陰で、ルフィーナの喜ぶ顔が見られたエヴグラフ。
ルフィーナの笑顔はエヴグラフの心を満たしたが、それと同時にエヴグラフには更なる独占欲が生まれていた。
ルフィーナに宮殿の図書館の常時入場許可証を発行し、彼女を宮殿に来やすくさせ、二人で話す口実を作ったエヴグラフ。
しかし、完全に二人きりになると理性を失いルフィーナを襲ってしまう可能性があった。よって、エヴグラフは理性を保つ為、護衛や侍女がいる状態でルフィーナと仲を深めていった。
しかしそれだけでは満足出来ず、キリルに命じてルフィーナがもう使用しないドレスやアクセサリーを盗ませ、宮殿の中のエヴグラフに与えられた一室に持って来させる始末。
そんなある日、ついにルフィーナはもう一人のストーカーであるマカールの視線に気付き始めた。当時はまたストーカーの正体がマカールだとは気付いておらず、一人抱え込むようになったルフィーナ。
(サーシャにリュドミラ嬢との結婚を早めるようアドバイスをして正解だった。今二人は忙しいから、ルフィーナ嬢が彼らを頼ることはないだろう。クラーキン公爵領にも、薬品で解決出来る程度の土壌トラブルを起こしてルフィーナのご両親である公爵夫妻を領地に戻すことに成功した。さあ、俺を頼るんだ、ルフィーナ嬢)
エヴグラフは期待に満ちた表情だった。
その後、エヴグラフの目論見通り、ルフィーナが頼ってくれたことで、エヴグラフは更にルフィーナとの距離を縮めた。
ルフィーナが使用しなくなったドレスなどは売却し、その利益を孤児院などに寄付するという話を聞いたエヴグラフ。彼は少し申し訳なくなり、その後はルフィーナが使用しなくなったドレスなどを適正価格で買い取っていた。
(ルフィーナ嬢との仲もかなり深まった。そろそろ頃合いだな。もうすぐ俺とルフィーナは結ばれるんだ)
エヴグラフは恍惚とした表情で、ラピスラズリの目は真っ直ぐ虚ろだった。
(だが、その前にマカールを排除しないとな)
エヴグラフはニヤリと口角を上げた。
しかしその矢先、マカールがルフィーナを誘拐する事件が発生した。
ルフィーナを守れなかった自分自身と、ルフィーナを危険な目に遭わせたマカールに対し激しい怒りを覚えたエヴグラフ。それは血管を逆流してくるような怒りだった。
(ルフィーナ……必ず助け出す……!)
エヴグラフは拳を強く握った。
エヴグラフはあらゆる手段を駆使し、ルフィーナを助けることに成功した。
「ルフィーナ嬢へのストーカー行為だけでなく、殺人罪でも裁かれることは確定だ。お前の行為はルフィーナ嬢を怖がらせるだけだった。更に人を殺めた。そんな奴にルフィーナ嬢を守れるわけがない」
自分でもどの口が言うとは思ったが、ルフィーナの前ではヒーローでいたかったエヴグラフ。
マカールはタラス殺害の件は否定していたがその通りだ。
タラスを死に追いやったのはエヴグラフ。
ルフィーナが暴力を振るわれそうになり、それが許せなかったのだ。
もちろん、ベスプチン侯爵領のダムに大規模細工をして大雨で壊れるようにしたのも、タラスを唆して領地のダムを視察するように戻らせたのもエヴグラフだった。そしてエヴグラフはその罪を全てマカールになすりつけたのだ。
更に、マカールが乗った護送馬車に細工をし、崖から転落させてマカールを亡き者にした。
ルフィーナに対して恐怖を与えた怒りはとてつもなく大きかったのだ。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
(ルーファ、俺は君を守る為ならどんなことだってしてしまうんだ。きっと君は俺の本性を知ったら怖いがるだろうな)
宮殿からクラーキン公爵家の帝都の屋敷に向かう馬車の中にて、エヴグラフは自嘲気味にフッと口角を上げた。この日、エヴグラフは拠点をクラーキン公爵家に移すのだ。
(でも大丈夫だ。ルーファに俺の本性は見せないから安心して欲しい。それよりも、ようやくルーファと一緒に生活が出来るんだ)
恐ろしい程に真っ直ぐなラピスラズリの目である。
クラーキン公爵家の帝都の屋敷では、ルフィーナが出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、グラーファ様」
エヴグラフの本性を知らないルフィーナは、おっとりと穏やかに微笑んでいる。
ペリドットの目は愛おしげにエヴグラフに向けられていた。
ルフィーナの甘やかな声と視線に、エヴグラフの心は満たされる。
「俺も、君と暮らせることを楽しみにしていたよ、ルーファ」
エヴグラフはラピスラズリの目を真っ直ぐルフィーナに向け、ルフィーナにキスをする。
(ルーファ、俺を夢中にさせた責任を取ってもらおうか。何があろうと、俺は君を一生離さないぞ)
エヴグラフはドロドロとした気持ちを隠し、ルフィーナを抱きしめるのであった。
ルフィーナがバルコニーで休憩しているところを確認し、ゆっくりと後ろから近付くエヴグラフ。
案の定、物音に気付きルフィーナは振り向いた。
その後、エヴグラフはルフィーナと言葉を交わし、満月を見上げる。
ようやく恋焦がれている意中の相手と過ごせてエヴグラフの心は非常に穏やかだった。
いずれ婿入りや臣籍降下予定だが、まだ婚約者がいない第三皇子エヴグラフ。
いずれクラーキン公爵家を継ぐ立場のルフィーナ。
お互い注目を浴び、異性からのアプローチが多い。
しかしルフィーナはそのことに対して特に気にした様子はない。
(ルフィーナ嬢は……自分の価値にまだ気付いていない無垢さがあるのか。……余計に気に入った)
エヴグラフは隣にルフィーナを感じながら、満月を見上げて満足そうに口角を上げた。
しかし、このペースではルフィーナと仲を深めることに時間がかかるとエヴグラフは感じた。
そこで計画を変更し、まずはルフィーナの幼馴染であるラスムスキー侯爵令息アレクサンドルと、ストロガノフ伯爵令嬢リュドミラの二人と交流し、その流れでルフィーナを紹介してもらうことにした。
目的はルフィーナと結ばれることのみだったが、ここで思わぬ副産物を得た。
エヴグラフは意外にもアレクサンドルと気が合ったのだ。
ある日、アレクサンドルを宮殿の執務室に招いていた時のこと。
「サーシャ、何をしているんだ?」
アレクサンドルは手紙か何かを書いていたので、エヴグラフは気になって聞いてみた。
「まあちょっとね」
アレクサンドルはニヤリと何かを企んだような笑みだ。
詳細を聞くと、婚約者であるリュドミラにちょっかいをかけた者がおり、アレクサンドルはその者を排除しにかかっていたのだ。
(サーシャ……結構俺に似ているな)
エヴグラフはラピスラズリの目を丸くした。
実は同じ時、エヴグラフもルフィーナに好意を寄せる令息達や、ルフィーナに嫌がらせをする令嬢達を排除する準備をしていたのである。
ルフィーナが読んだ新聞に掲載されていた令息達の事故や、ジーナ達の醜聞はエヴグラフの仕業だったのだ。
エヴグラフはアレクサンドルと予想以上に仲を深めていた。
そして何気なく聞いてみた。
「サーシャはもう一人の幼馴染……ルフィーナ・ヴァルラモヴナ嬢には気がないのか?」
「ルフィーナに? 全然ないよ。というか、ルフィーナも私もお互い家を継ぐ立場だと幼い頃から聞かされていた。だから自然とお互い恋愛対象とかにはならなかったよ。ルフィーナとは幼馴染兼ビジネスパートナーみたいな関係かな。それに、私にはリュドミラしかいないさ」
アレクサンドルはクスッと笑い、ヘーゼルの目を細めた。
「そうか……」
エヴグラフもフッと口角を上げた。
(これでもしサーシャがルフィーナ嬢に気があると答えていたら、彼を殺めていたかもしれない。気心知れた友人を手にかけることにならなくて本当に良かった)
エヴグラフのラピスラズリの目は光が灯っていなかった。
その後、アレクサンドルとリュドミラを通して改めてルフィーナと知り合った。
ルフィーナの好物などを入念に調べていたお陰で、ルフィーナの喜ぶ顔が見られたエヴグラフ。
ルフィーナの笑顔はエヴグラフの心を満たしたが、それと同時にエヴグラフには更なる独占欲が生まれていた。
ルフィーナに宮殿の図書館の常時入場許可証を発行し、彼女を宮殿に来やすくさせ、二人で話す口実を作ったエヴグラフ。
しかし、完全に二人きりになると理性を失いルフィーナを襲ってしまう可能性があった。よって、エヴグラフは理性を保つ為、護衛や侍女がいる状態でルフィーナと仲を深めていった。
しかしそれだけでは満足出来ず、キリルに命じてルフィーナがもう使用しないドレスやアクセサリーを盗ませ、宮殿の中のエヴグラフに与えられた一室に持って来させる始末。
そんなある日、ついにルフィーナはもう一人のストーカーであるマカールの視線に気付き始めた。当時はまたストーカーの正体がマカールだとは気付いておらず、一人抱え込むようになったルフィーナ。
(サーシャにリュドミラ嬢との結婚を早めるようアドバイスをして正解だった。今二人は忙しいから、ルフィーナ嬢が彼らを頼ることはないだろう。クラーキン公爵領にも、薬品で解決出来る程度の土壌トラブルを起こしてルフィーナのご両親である公爵夫妻を領地に戻すことに成功した。さあ、俺を頼るんだ、ルフィーナ嬢)
エヴグラフは期待に満ちた表情だった。
その後、エヴグラフの目論見通り、ルフィーナが頼ってくれたことで、エヴグラフは更にルフィーナとの距離を縮めた。
ルフィーナが使用しなくなったドレスなどは売却し、その利益を孤児院などに寄付するという話を聞いたエヴグラフ。彼は少し申し訳なくなり、その後はルフィーナが使用しなくなったドレスなどを適正価格で買い取っていた。
(ルフィーナ嬢との仲もかなり深まった。そろそろ頃合いだな。もうすぐ俺とルフィーナは結ばれるんだ)
エヴグラフは恍惚とした表情で、ラピスラズリの目は真っ直ぐ虚ろだった。
(だが、その前にマカールを排除しないとな)
エヴグラフはニヤリと口角を上げた。
しかしその矢先、マカールがルフィーナを誘拐する事件が発生した。
ルフィーナを守れなかった自分自身と、ルフィーナを危険な目に遭わせたマカールに対し激しい怒りを覚えたエヴグラフ。それは血管を逆流してくるような怒りだった。
(ルフィーナ……必ず助け出す……!)
エヴグラフは拳を強く握った。
エヴグラフはあらゆる手段を駆使し、ルフィーナを助けることに成功した。
「ルフィーナ嬢へのストーカー行為だけでなく、殺人罪でも裁かれることは確定だ。お前の行為はルフィーナ嬢を怖がらせるだけだった。更に人を殺めた。そんな奴にルフィーナ嬢を守れるわけがない」
自分でもどの口が言うとは思ったが、ルフィーナの前ではヒーローでいたかったエヴグラフ。
マカールはタラス殺害の件は否定していたがその通りだ。
タラスを死に追いやったのはエヴグラフ。
ルフィーナが暴力を振るわれそうになり、それが許せなかったのだ。
もちろん、ベスプチン侯爵領のダムに大規模細工をして大雨で壊れるようにしたのも、タラスを唆して領地のダムを視察するように戻らせたのもエヴグラフだった。そしてエヴグラフはその罪を全てマカールになすりつけたのだ。
更に、マカールが乗った護送馬車に細工をし、崖から転落させてマカールを亡き者にした。
ルフィーナに対して恐怖を与えた怒りはとてつもなく大きかったのだ。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
(ルーファ、俺は君を守る為ならどんなことだってしてしまうんだ。きっと君は俺の本性を知ったら怖いがるだろうな)
宮殿からクラーキン公爵家の帝都の屋敷に向かう馬車の中にて、エヴグラフは自嘲気味にフッと口角を上げた。この日、エヴグラフは拠点をクラーキン公爵家に移すのだ。
(でも大丈夫だ。ルーファに俺の本性は見せないから安心して欲しい。それよりも、ようやくルーファと一緒に生活が出来るんだ)
恐ろしい程に真っ直ぐなラピスラズリの目である。
クラーキン公爵家の帝都の屋敷では、ルフィーナが出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、グラーファ様」
エヴグラフの本性を知らないルフィーナは、おっとりと穏やかに微笑んでいる。
ペリドットの目は愛おしげにエヴグラフに向けられていた。
ルフィーナの甘やかな声と視線に、エヴグラフの心は満たされる。
「俺も、君と暮らせることを楽しみにしていたよ、ルーファ」
エヴグラフはラピスラズリの目を真っ直ぐルフィーナに向け、ルフィーナにキスをする。
(ルーファ、俺を夢中にさせた責任を取ってもらおうか。何があろうと、俺は君を一生離さないぞ)
エヴグラフはドロドロとした気持ちを隠し、ルフィーナを抱きしめるのであった。
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