婚約者は無神経な転生悪役令嬢に夢中のようです

宝月 蓮

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番外編 転生悪役令嬢アミーラ

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「どうしてこんなことに……? これは私の世界のはずなのに……」
 地下牢にてアミーラはポツリと呟くが、その言葉は冷たい壁に吸い込まれるだけだった。





◇◇◇◇





 アミーラ・ストレリチアが前世の記憶を思い出したのは、五歳の時だった。
(嘘……! この顔、それにアミーラ・ストレリチアって、『君ティア』の悪役令嬢の!? どうしよう!? 私、死にたくない!)
 アミーラは死にたくないという思いでいっぱいになり、どうにかしようと必死に考えた。
(そうだわ! そもそもヒロインに代わって私が攻略対象達のコンプレックスやトラウマを払拭したら良いのよ! そうしたら、攻略対象達は私の虜になるはず! それに、最推しの隠しキャラマクシミリアンやその次に推していたオスカーとも良い雰囲気になれるかも! そうなる為にも頑張らないと!)
 アミーラはまるで妙案を思いついたかのような表情になり、早速行動を始めた。

 その甲斐があり、八歳の時には既に『君に捧げる運命のティアラ』の攻略対象全員からの好感度が高くなっていた。
 また、前世からの知識により色々な発明をしたので、その知識を高く評価されたアミーラは王太子アレクシスの婚約者となった。
(私の人生順風満帆ね。後は、ヒロインの存在が不安だわ……。あらかじめ疫病の特効薬になる原料は蓄えてあるし、後はグレン様に提供するのみね。それに、私もグレン様にもっと特効薬開発のことで協力しましょう)
 こうしてアミーラはグレンと共に疫病の特効薬開発に成功し、ヒロインであるニコラの運命も変えたのだ。

 しかし、それだけでアミーラの不安は消えなかった。
(ニコラを引き取るルピナス男爵家……あの家がなければニコラは物語の舞台に上がってこれないわよね)
 そう思ったアミーラは学園入学前、婚約者であるアレクシスに相談に行った。
「アレクシス様……私、不安なのです。ルピナス男爵家にまつわる噂を聞きまして……」
 アミーラは上目遣いで懇願する表情をアレクシスに向ける。
 前世の記憶を思い出してからの経験上、アレクシスはアミーラにベタ惚れしていることが分かった。なのでアミーラはアレクシスにお願いすれば、不安の種であるルピナス男爵家を消してくれると確信していたのだ。
 アミーラの目論見通り、アレクシスはルピナス男爵家をありもしない罪で密かに断罪し、取り潰した。
(良かった。これでニコラはもう貴族にはなれないわ。それに、ニコラが転生者だとしても、ニコラとして生きた記憶もあるだろうし、身の丈に合わない貴族の生活はきっと不幸になるだけだわ。やっぱりニコラには身の丈に合った生活をしてもらわないと)
 アミーラは満足そうな笑みだった。しかしその笑みには、どこかニコラを見下すような雰囲気が見られた。

 学園生活が始まると、アミーラは本格的に同世代の令嬢達と交流することになる。
 しかし、アレクシス、オスカー、グレン、サイモンとしか行動しないアミーラは、令嬢達から疎まれる結果になった。
「アミーラ様、貴女は王太子殿下の婚約者です。皆のお手本になる行動をすべきです。婚約者がいる令息達はご自身から遠ざけるべきです」
 サイモンの双子の姉であるエレノアからそう注意され、アミーラは戸惑ってしまった。
「どうして? みんなお友達よ。お友達と一緒にいてはいけないなんて、酷いわ」
 アミーラが涙目になると、アレクシス達がエレノアを責め立ててくれた。それにより、アミーラはエレノアから何か言われることはなくなった。

 その後もアミーラはアレクシス達としか過ごさず、令嬢達の間では孤立していた。
(でも良いわ。私にはアレクシス様達がいるのだし。それに、私はいずれ王太子妃になるのよ。仲間外れにした人達なんか、圧力をかけて苦しめてあげるんだから。それに……)
 アミーラはほんのりと頬を赤く染める。
(最推しのマクシミリアン様だって私のことを好きだと言ってくれたし、その次に推しているオスカー様も私が好きって言っていたわ)
 推しの攻略対象に好意を告げられて、アミーラは有頂天になっていた。

 その後アレクシスと結婚したアミーラは、自身の気持ちや欲望を抑えることなくマクシミリアンと関係を持ち、子を生んでしまう。
 更に、懲りずにオスカーとも関係を持ち子を生んでしまい、今に至る。





◇◇◇◇





 その後、アミーラは牢獄から騎士に引き摺り出され、断頭台に固定される。
 民衆の冷ややかな視線や怒号に晒されて、アミーラは恐怖を覚えた。
「どうしてこんなことに……? 私は、前世の記憶を持つ特別な人間なのに……。どうして……?」
 その疑問に誰も答えることなく、アミーラの首は切り落とされるのであった。
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