53 / 54
悪意による病弱
ステファンの苛立ち、エリアーヌの想い
しおりを挟む
「ねえ、ステファン様、お姉様よりも私とお話する方が楽しいわよね?」
デボラはニコニコと可愛らしい笑みをステファンに向けている。
「そうかな」
ステファンは曖昧に答える。
(どうして僕がこんなゴミみたいな奴と……!?)
ステファンは目の前にいるデボラを殴り殺したくなる衝動に駆られたが、デボラに見えないように拳を押さえるのであった。
ステファンは心底エリアーヌに惚れている。エリアーヌ以外の女性など、眼中にないのだ。
ふと、ステファンはデボラの首元のネックレスに目を向ける。
それはステファンがエリアーヌに贈ったネックレスだった。
(エリアーヌから奪ったんだな。そのネックレスはお前なんかより、エリアーヌの方が似合う。お前みたいなゴミの首に着けられるネックレスが可哀想だとは思わないのか?)
ステファンのラピスラズリの目は、冷たかった。
「ねえ、ステファン様、次の夜会はお姉様じゃなくて私をエスコートしてくださらない?」
上目遣いのデボラ。
心底吐き気がするステファンである。
しかし、そこは紳士の笑みで隠す。
「僕はエリアーヌの婚約者だからね」
「そんなぁ。じゃあステファン様が私の婚約者になれば良いじゃない。そうなったら私、嬉しいわ。病弱な私はステファン様と楽しく遊んで暮らして、お仕事とかきついことは全部お姉様がやるの」
嬉々とした表情のデボラである。
「へえ……。面白いこと言うね」
ステファンの心は冷えていた。
(エリアーヌのロートレック子爵家での立場が悪くならないようにこんな生きる価値のないゴミと話してあげているけれど……! エリアーヌの両親もゴミ同然だ! ああ、ロデーズ伯爵家や僕自身にもっと力があれば、今すぐエリアーヌを救えるのに!)
ステファンは自分の無力さにも苛立っていた。
(いや、待てよ……)
ステファンは先程のデボラの発言により、あることを思い付く。
(このゴミは最近病弱だと言われている。それならば……)
ステファンは心の中でニヤリとほくそ笑んだ。
(待っててね、エリアーヌ。君を取り巻く状況を僕が変えてみせるよ)
ラピスラズリの目からは、光が消えていた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
数日後、再びロートレック子爵邸にて。
「ああ! お姉様、ステファン様から髪飾りをもらったのね! 狡いわ! その髪飾り、私にもちょうだい!」
いつものように、デボラはエリアーヌがもらったものを欲しがっている。
当然のように両親もデボラに譲るよう強要されてしまうエリアーヌだ。
もうすっかり慣れているので、エリアーヌは諦めてデボラに髪飾りを渡すしかない。
(このまま奪われ続ける人生は嫌よ。どうにかしないと……!)
エリアーヌは拳を握りしめていた。
しかし、ふと最近ステファンからもらった手紙を思い出す。
《エリアーヌ、少し時間はかかってしまうかもしれないけれど、僕を信じて待っていて欲しい》
ステファンからもらった手紙には、そう書かれていた。
(僕を信じて待っていて欲しい……ね。ステファン様……助けてくれるのかしら……?)
エリアーヌの中で、少しだけ期待が生まれていた。
その後もエリアーヌはデボラにものを奪われたり、ステファンとの時間も奪われたりしたが、ステファンからの手紙のお陰で心を保つことが出来た。
そしてステファンから手紙をもらった一ヶ月後、デボラが調子を崩しベッドの上で過ごすことが増えた。
まるで本当に病弱になったかのようだ。
そこから更に二ヶ月後、デボラの体はどんどん衰弱し、ついには亡くなってしまう。
(まあ……! デボラが亡くなってしまうなんて……! では、病弱だと言っていたことは本当のことだったのね……)
棺桶の中で眠るデボラは、すっかり頬がこけている。
デボラからは色々と奪われ続けていたが、一応家族。亡くなったとなると、少しは悲しさを感じるエリアーヌであった。
「エリアーヌ、大丈夫かい?」
ステファンはそっとエリアーヌに寄り添ってくれている。
「ありがとうございます、ステファン様。……デボラ、本当に病弱だったのですね。気付きませんでしたわ」
エリアーヌは少しだけ肩を落とす。
「エリアーヌが気に病む必要はないよ」
ステファンはそっとエリアーヌを抱きしめた。
大きな体に包み込まれ、エリアーヌの心は少しだけ落ち着く。
「ありがとうございます、ステファン様。……これからが大変になりそうですわね」
「そうだね。君のお父上とお母上は、デボラ嬢が亡くなって完全に憔悴している。ロートレック子爵家の仕事が出来る状態ではなさそうだね」
「ええ……」
エリアーヌにとって、今の両親の状態も気がかりだ。
妙なことをしてロートレック子爵家に損害を及ぼさないかが不安である。
「エリアーヌ、僕がロートレック子爵家のことを手伝うよ。婿入りする立場だし、ロートレック子爵家のことは、ある程度勉強しているからね」
フッと笑うステファンの表情、とても頼もしく見えた。
「ありがとうございます、ステファン様」
エリアーヌはステファンが自分の婚約者で本当に良かったと心のそこから思うのであった。
デボラはニコニコと可愛らしい笑みをステファンに向けている。
「そうかな」
ステファンは曖昧に答える。
(どうして僕がこんなゴミみたいな奴と……!?)
ステファンは目の前にいるデボラを殴り殺したくなる衝動に駆られたが、デボラに見えないように拳を押さえるのであった。
ステファンは心底エリアーヌに惚れている。エリアーヌ以外の女性など、眼中にないのだ。
ふと、ステファンはデボラの首元のネックレスに目を向ける。
それはステファンがエリアーヌに贈ったネックレスだった。
(エリアーヌから奪ったんだな。そのネックレスはお前なんかより、エリアーヌの方が似合う。お前みたいなゴミの首に着けられるネックレスが可哀想だとは思わないのか?)
ステファンのラピスラズリの目は、冷たかった。
「ねえ、ステファン様、次の夜会はお姉様じゃなくて私をエスコートしてくださらない?」
上目遣いのデボラ。
心底吐き気がするステファンである。
しかし、そこは紳士の笑みで隠す。
「僕はエリアーヌの婚約者だからね」
「そんなぁ。じゃあステファン様が私の婚約者になれば良いじゃない。そうなったら私、嬉しいわ。病弱な私はステファン様と楽しく遊んで暮らして、お仕事とかきついことは全部お姉様がやるの」
嬉々とした表情のデボラである。
「へえ……。面白いこと言うね」
ステファンの心は冷えていた。
(エリアーヌのロートレック子爵家での立場が悪くならないようにこんな生きる価値のないゴミと話してあげているけれど……! エリアーヌの両親もゴミ同然だ! ああ、ロデーズ伯爵家や僕自身にもっと力があれば、今すぐエリアーヌを救えるのに!)
ステファンは自分の無力さにも苛立っていた。
(いや、待てよ……)
ステファンは先程のデボラの発言により、あることを思い付く。
(このゴミは最近病弱だと言われている。それならば……)
ステファンは心の中でニヤリとほくそ笑んだ。
(待っててね、エリアーヌ。君を取り巻く状況を僕が変えてみせるよ)
ラピスラズリの目からは、光が消えていた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
数日後、再びロートレック子爵邸にて。
「ああ! お姉様、ステファン様から髪飾りをもらったのね! 狡いわ! その髪飾り、私にもちょうだい!」
いつものように、デボラはエリアーヌがもらったものを欲しがっている。
当然のように両親もデボラに譲るよう強要されてしまうエリアーヌだ。
もうすっかり慣れているので、エリアーヌは諦めてデボラに髪飾りを渡すしかない。
(このまま奪われ続ける人生は嫌よ。どうにかしないと……!)
エリアーヌは拳を握りしめていた。
しかし、ふと最近ステファンからもらった手紙を思い出す。
《エリアーヌ、少し時間はかかってしまうかもしれないけれど、僕を信じて待っていて欲しい》
ステファンからもらった手紙には、そう書かれていた。
(僕を信じて待っていて欲しい……ね。ステファン様……助けてくれるのかしら……?)
エリアーヌの中で、少しだけ期待が生まれていた。
その後もエリアーヌはデボラにものを奪われたり、ステファンとの時間も奪われたりしたが、ステファンからの手紙のお陰で心を保つことが出来た。
そしてステファンから手紙をもらった一ヶ月後、デボラが調子を崩しベッドの上で過ごすことが増えた。
まるで本当に病弱になったかのようだ。
そこから更に二ヶ月後、デボラの体はどんどん衰弱し、ついには亡くなってしまう。
(まあ……! デボラが亡くなってしまうなんて……! では、病弱だと言っていたことは本当のことだったのね……)
棺桶の中で眠るデボラは、すっかり頬がこけている。
デボラからは色々と奪われ続けていたが、一応家族。亡くなったとなると、少しは悲しさを感じるエリアーヌであった。
「エリアーヌ、大丈夫かい?」
ステファンはそっとエリアーヌに寄り添ってくれている。
「ありがとうございます、ステファン様。……デボラ、本当に病弱だったのですね。気付きませんでしたわ」
エリアーヌは少しだけ肩を落とす。
「エリアーヌが気に病む必要はないよ」
ステファンはそっとエリアーヌを抱きしめた。
大きな体に包み込まれ、エリアーヌの心は少しだけ落ち着く。
「ありがとうございます、ステファン様。……これからが大変になりそうですわね」
「そうだね。君のお父上とお母上は、デボラ嬢が亡くなって完全に憔悴している。ロートレック子爵家の仕事が出来る状態ではなさそうだね」
「ええ……」
エリアーヌにとって、今の両親の状態も気がかりだ。
妙なことをしてロートレック子爵家に損害を及ぼさないかが不安である。
「エリアーヌ、僕がロートレック子爵家のことを手伝うよ。婿入りする立場だし、ロートレック子爵家のことは、ある程度勉強しているからね」
フッと笑うステファンの表情、とても頼もしく見えた。
「ありがとうございます、ステファン様」
エリアーヌはステファンが自分の婚約者で本当に良かったと心のそこから思うのであった。
5
あなたにおすすめの小説
(完結)元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・(5話完結)
青空一夏
恋愛
私(エメリーン・リトラー侯爵令嬢)は義理のお姉様、マルガレータ様が大好きだった。彼女は4歳年上でお兄様とは同じ歳。二人はとても仲のいい夫婦だった。
けれどお兄様が病気であっけなく他界し、結婚期間わずか半年で子供もいなかったマルガレータ様は、実家ノット公爵家に戻られる。
マルガレータ様は実家に帰られる際、
「エメリーン、あなたを本当の妹のように思っているわ。この思いはずっと変わらない。あなたの幸せをずっと願っていましょう」と、おっしゃった。
信頼していたし、とても可愛がってくれた。私はマルガレータが本当に大好きだったの!!
でも、それは見事に裏切られて・・・・・・
ヒロインは、マルガレータ。シリアス。ざまぁはないかも。バッドエンド。バッドエンドはもやっとくる結末です。異世界ヨーロッパ風。現代的表現。ゆるふわ設定ご都合主義。時代考証ほとんどありません。
エメリーンの回も書いてダブルヒロインのはずでしたが、別作品として書いていきます。申し訳ありません。
元お姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれどーエメリーン編に続きます。
(完結)私はもう他人です!
青空一夏
恋愛
マリアの両親は平民で、ピナベーカリーというパン屋を経営している。一歳違いの妹ソフィアはピンクブロンドにピンクの大きな瞳の愛らしい女の子で、両親に溺愛されていた。マリアも妹を可愛がっており、幼いころの姉妹仲はとても良かった。
マリアが学園に通う年齢になった頃、小麦粉の値上げでピナベーカリーの経営がうまくいかず、マリアは学園に行くことができない。同じ街のブロック服飾工房に住み込みで働くことになった。朝早く実家のパン屋を手伝い、服飾工房に戻って夜まで針仕事。 お給料の半分は家に入れるのだが、マリアはそれを疑問にも思わなかった。
その1年後、ソフィアが学園に通う年齢になると、ピナベーカリーが持ち直し、かなりパンが売れるようになった。そのためソフィアは裕福な子女が通う名門ルクレール女学園の寮に行くことになった。しかし、ルクレール女学園の学費は高く、マリアは給料を全部入れてくれるように頼まれた。その時もマリアは妹の幸せを自分のものとして捉え、両親の言うとおりにそれを受け入れる。
マリアは家族思いで誠実。働き者なところをブロック服飾工房のオーナーであるレオナードに見初められる。そして、レオナードと結婚を誓い合い、両親と妹と引き合わせたところ・・・・・・
これは、姉妹格差で我慢させられてきた姉が、前世の記憶を取り戻し、もう利用されないと、自分の人生を歩もうとする物語です。
(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!
青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。
図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです?
全5話。ゆるふわ。
(完)大好きなお姉様、なぜ?ー夫も子供も奪われた私
青空一夏
恋愛
妹が大嫌いな姉が仕組んだ身勝手な計画にまんまと引っかかった妹の不幸な結婚生活からの恋物語。ハッピーエンド保証。
中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。魔法のある世界。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
(完)お姉様、婚約者を取り替えて?ーあんなガリガリの幽霊みたいな男は嫌です(全10話)
青空一夏
恋愛
妹は人のものが常に羨ましく盗りたいタイプ。今回は婚約者で理由は、
「私の婚約者は幽霊みたいに青ざめた顔のガリガリのゾンビみたい! あんな人は嫌よ! いくら領地経営の手腕があって大金持ちでも絶対にいや!」
だそうだ。
一方、私の婚約者は大金持ちではないが、なかなかの美男子だった。
「あのガリガリゾンビよりお姉様の婚約者のほうが私にぴったりよ! 美男美女は大昔から皆に祝福されるのよ?」と言う妹。
両親は妹に甘く私に、
「お姉ちゃんなのだから、交換してあげなさい」と言った。
私の婚約者は「可愛い妹のほうが嬉しい」と言った。妹は私より綺麗で可愛い。
私は言われるまま妹の婚約者に嫁いだ。彼には秘密があって……
魔法ありの世界で魔女様が最初だけ出演します。
⸜🌻⸝姉の夫を羨ましがり、悪巧みをしかけようとする妹の自業自得を描いた物語。とことん、性格の悪い妹に胸くそ注意です。ざまぁ要素ありですが、残酷ではありません。
タグはあとから追加するかもしれません。
(完結)私が貴方から卒業する時
青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。
だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・
※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる