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ゴミ箱がないと困るのだけど……
前編
グロートロップ王国のポンバル伯爵家の一人娘だった、今年十五歳で成人したばかりのコンスタンサ。
しかし母が亡くなってすぐ、父が後妻と同い年の義妹ジョアナを連れて来た。
そこからコンスタンサは父、後妻、ジョアナの三人から虐げられるようになった。
三人と食事を共にすることは許されず、彼女に与えられるのは残飯。
更にコンスタンサは義妹ジョアナからあらゆるものを奪われていた。
「あら、お義姉《ねえ》様。可愛らしいドレスね。地味なお義姉様には到底似合わないわ。そのドレス、私の方が似合うから譲りなさい」
ジョアナは下卑た笑みで、リボンやフリルがたっぷりのふわふわしたドレスを譲るようコンスタンサに迫った。
そしてまた別の日のこと。
「お義姉様のそのネックレスは何かしら? お義姉様の地味さをより際立たせているわ。それ、私の方が似合うから譲りなさい」
今度はコンスタンサが着けていた大きなルビーの派手なネックレスに目をつけたジョアナ。コンスタンサは黙ってそれを譲るのであった。
ウェーブがかった艶やかなブロンドの髪に、エメラルドのような緑の目。華やかで可愛らしい顔立ちのジョアナ。
一方コンスタンサは赤茶色の髪にヘーゼルの目。顔立ちは地味な方である。
こうして、コンスタンサは何かしらにつけて見た目を理由にジョアナからドレスやアクセサリーをほとんど奪われてしまう。
そして更には部屋まで奪われて、コンスタンサは古びた離れの屋敷で生活せざるを得なくなった。
奪われたのはそれだけではない。友人もジョアナに奪われ、コンスタンサは社交界で孤立してしまう。
そして今度は婚約者までも奪われそうになっていた。
「ドミンゴ様が可哀想だわ。あんな地味なお義姉様と結婚しなければならないなんて。ねえ、もし私かお義姉様、どちらか選べるのだとしたら、ドミンゴ様はどちらを選ぶのかしら?」
ジョアナはエメラルドの目を潤ませてコンスタンサの婚約者ドミンゴを見つめる。
ブロンドの髪にサファイアのような青い目の。端正な顔立ちなドミンゴ。今年十六歳になる彼は、パルマ伯爵家の次男だ。
「それはもちろん可愛いジョアナに決まっている。俺達はもっと早く出会うべきだったんだ。そうしたらあんな地味なコンスタンサの婚約者にならずに済んだ」
ドミンゴもジョアナ同様、コンスタンサの見た目を蔑んでいた。
そして彼はジョアナと親しくするようになり、コンスタンサを蔑ろにするのであった。
そんなある日。
グロートロップ王国の王家主催のパーティーの招待状が届いた。
このパーティーは全員参加が義務付けられている。
(ドレスもアクセサリーもほとんどジョアナのものになってしまったわ。私は残ったこのドレスで参加するしかないわね)
コンスタンサは唯一ジョアナから奪われなかったネイビーのシンプルなドレスを手にする。
そのドレスは古びているが、今から手入れをすればパーティーには着て行けそうである。
コンスタンサは急いでドレスの手入れを始めた。
王家主催のパーティー当日。
「ドミンゴ様、あれをご覧になって。お義姉様、壁の花だわ」
「ただでさえ地味なのに、あんな地味なドレスを着て……俺なら恥ずかしくてエスコート出来ないな。ジョアナをエスコートして正解だ」
「あら、ドミンゴ様、嬉しいわ」
誰にもエスコートされずに一人で会場入りし、ポツンと壁の花になっているコンスタンサ。そんな彼女を見て、ジョアナとドミンゴは蔑んだように笑っている。
(一人だとパーティーはこんなにも暇なのね)
親しかった者達を全員ジョアナに奪われたコンスタンサはぼんやりとそんなことを考えていた。
その時、一人の令嬢が取り巻きと見られる者達を数人引き連れて、コンスタンサの元へやって来る。
星の光に染まったようなアッシュブロンドの髪にアメジストのような紫の目。はっきりとして気が強そうな顔立ちの美人である。
(あのお方は……!)
コンスタンサはその令嬢に見覚えがあったので、カーテシーで礼を執る。
「姿勢を楽になさってちょうだい」
頭上から、凛としたソプラノの声が降って来た。
「お声がけいただき光栄でございます。ポンバル伯爵家長女、コンスタンサ・マティルド・デ・ポンバルでございます」
家庭教師から礼儀礼節をみっちり習っていたコンスタンサ。その所作は見事なものだっだ。
令嬢は満足そうに微笑む。
「私はブラガンサ公爵家長女、テルマ・ディアドラ・デ・ブラガンサよ」
「存じ上げております、テルマ様」
テルマと名乗った令嬢は、ブラガンサ筆頭公爵家の令嬢である。年はコンスタンサよりも二つ上の十七歳。彼女は国王ジェロニモの姪なのだ。彼女の髪と目の色は、グロートロップ王国を治めるアヴィス王家の特徴である。彼女はアヴィス王家に万が一のことがない限り王位継承権を持たないが、社交界ではかなり注目を集めている令嬢だ。
そして彼女は別の意味でも有名だっだ。
テルマはかなり性格がキツいのである。
彼女は身分の低い令嬢に対して厳しい言葉を浴びせて泣かせたり、王宮勤めの文官になった令息を国王に直談判して解雇させたりすることもあったのだ。
そんなテルマが、自分にに何の用があるのかと、コンスタンサは内心警戒していたのである。
しかし母が亡くなってすぐ、父が後妻と同い年の義妹ジョアナを連れて来た。
そこからコンスタンサは父、後妻、ジョアナの三人から虐げられるようになった。
三人と食事を共にすることは許されず、彼女に与えられるのは残飯。
更にコンスタンサは義妹ジョアナからあらゆるものを奪われていた。
「あら、お義姉《ねえ》様。可愛らしいドレスね。地味なお義姉様には到底似合わないわ。そのドレス、私の方が似合うから譲りなさい」
ジョアナは下卑た笑みで、リボンやフリルがたっぷりのふわふわしたドレスを譲るようコンスタンサに迫った。
そしてまた別の日のこと。
「お義姉様のそのネックレスは何かしら? お義姉様の地味さをより際立たせているわ。それ、私の方が似合うから譲りなさい」
今度はコンスタンサが着けていた大きなルビーの派手なネックレスに目をつけたジョアナ。コンスタンサは黙ってそれを譲るのであった。
ウェーブがかった艶やかなブロンドの髪に、エメラルドのような緑の目。華やかで可愛らしい顔立ちのジョアナ。
一方コンスタンサは赤茶色の髪にヘーゼルの目。顔立ちは地味な方である。
こうして、コンスタンサは何かしらにつけて見た目を理由にジョアナからドレスやアクセサリーをほとんど奪われてしまう。
そして更には部屋まで奪われて、コンスタンサは古びた離れの屋敷で生活せざるを得なくなった。
奪われたのはそれだけではない。友人もジョアナに奪われ、コンスタンサは社交界で孤立してしまう。
そして今度は婚約者までも奪われそうになっていた。
「ドミンゴ様が可哀想だわ。あんな地味なお義姉様と結婚しなければならないなんて。ねえ、もし私かお義姉様、どちらか選べるのだとしたら、ドミンゴ様はどちらを選ぶのかしら?」
ジョアナはエメラルドの目を潤ませてコンスタンサの婚約者ドミンゴを見つめる。
ブロンドの髪にサファイアのような青い目の。端正な顔立ちなドミンゴ。今年十六歳になる彼は、パルマ伯爵家の次男だ。
「それはもちろん可愛いジョアナに決まっている。俺達はもっと早く出会うべきだったんだ。そうしたらあんな地味なコンスタンサの婚約者にならずに済んだ」
ドミンゴもジョアナ同様、コンスタンサの見た目を蔑んでいた。
そして彼はジョアナと親しくするようになり、コンスタンサを蔑ろにするのであった。
そんなある日。
グロートロップ王国の王家主催のパーティーの招待状が届いた。
このパーティーは全員参加が義務付けられている。
(ドレスもアクセサリーもほとんどジョアナのものになってしまったわ。私は残ったこのドレスで参加するしかないわね)
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そのドレスは古びているが、今から手入れをすればパーティーには着て行けそうである。
コンスタンサは急いでドレスの手入れを始めた。
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頭上から、凛としたソプラノの声が降って来た。
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テルマと名乗った令嬢は、ブラガンサ筆頭公爵家の令嬢である。年はコンスタンサよりも二つ上の十七歳。彼女は国王ジェロニモの姪なのだ。彼女の髪と目の色は、グロートロップ王国を治めるアヴィス王家の特徴である。彼女はアヴィス王家に万が一のことがない限り王位継承権を持たないが、社交界ではかなり注目を集めている令嬢だ。
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