あなたの瞳に映る花火 〜異世界恋愛短編集〜

宝月 蓮

文字の大きさ
8 / 58
ゴミ箱がないと困るのだけど……

前編

 グロートロップ王国のポンバル伯爵家の一人娘だった、今年十五歳で成人デビュタントしたばかりのコンスタンサ。
 しかし母が亡くなってすぐ、父が後妻と同い年の義妹ジョアナを連れて来た。

 そこからコンスタンサは父、後妻、ジョアナの三人から虐げられるようになった。
 三人と食事を共にすることは許されず、彼女に与えられるのは残飯。
 更にコンスタンサは義妹ジョアナからあらゆるものを奪われていた。

「あら、お義姉《ねえ》様。可愛らしいドレスね。地味なお義姉様には到底似合わないわ。そのドレス、私の方が似合うから譲りなさい」
 ジョアナは下卑た笑みで、リボンやフリルがたっぷりのふわふわしたドレスを譲るようコンスタンサに迫った。

 そしてまた別の日のこと。
「お義姉様のそのネックレスは何かしら? お義姉様の地味さをより際立たせているわ。それ、私の方が似合うから譲りなさい」
 今度はコンスタンサが着けていた大きなルビーの派手なネックレスに目をつけたジョアナ。コンスタンサは黙ってそれを譲るのであった。

 ウェーブがかった艶やかなブロンドの髪に、エメラルドのような緑の目。華やかで可愛らしい顔立ちのジョアナ。
 一方コンスタンサは赤茶色の髪にヘーゼルの目。顔立ちは地味な方である。

 こうして、コンスタンサは何かしらにつけて見た目を理由にジョアナからドレスやアクセサリーをほとんど奪われてしまう。
 そして更には部屋まで奪われて、コンスタンサは古びた離れの屋敷で生活せざるを得なくなった。
 奪われたのはそれだけではない。友人もジョアナに奪われ、コンスタンサは社交界で孤立してしまう。
 そして今度は婚約者までも奪われそうになっていた。

「ドミンゴ様が可哀想だわ。あんな地味なお義姉様と結婚しなければならないなんて。ねえ、もし私かお義姉様、どちらか選べるのだとしたら、ドミンゴ様はどちらを選ぶのかしら?」
 ジョアナはエメラルドの目を潤ませてコンスタンサの婚約者ドミンゴを見つめる。

 ブロンドの髪にサファイアのような青い目の。端正な顔立ちなドミンゴ。今年十六歳になる彼は、パルマ伯爵家の次男だ。

「それはもちろん可愛いジョアナに決まっている。俺達はもっと早く出会うべきだったんだ。そうしたらあんな地味なコンスタンサの婚約者にならずに済んだ」
 ドミンゴもジョアナ同様、コンスタンサの見た目を蔑んでいた。
 そして彼はジョアナと親しくするようになり、コンスタンサを蔑ろにするのであった。

 そんなある日。
 グロートロップ王国の王家主催のパーティーの招待状が届いた。
 このパーティーは全員参加が義務付けられている。
(ドレスもアクセサリーもほとんどジョアナのものになってしまったわ。わたくしは残ったこのドレスで参加するしかないわね)
 コンスタンサは唯一ジョアナから奪われなかったネイビーのシンプルなドレスを手にする。
 そのドレスは古びているが、今から手入れをすればパーティーには着て行けそうである。
 コンスタンサは急いでドレスの手入れを始めた。

 王家主催のパーティー当日。
「ドミンゴ様、あれをご覧になって。お義姉様、壁の花だわ」
「ただでさえ地味なのに、あんな地味なドレスを着て……俺なら恥ずかしくてエスコート出来ないな。ジョアナをエスコートして正解だ」
「あら、ドミンゴ様、嬉しいわ」
 誰にもエスコートされずに一人で会場入りし、ポツンと壁の花になっているコンスタンサ。そんな彼女を見て、ジョアナとドミンゴは蔑んだように笑っている。
(一人だとパーティーはこんなにも暇なのね)
 親しかった者達を全員ジョアナに奪われたコンスタンサはぼんやりとそんなことを考えていた。
 その時、一人の令嬢が取り巻きと見られる者達を数人引き連れて、コンスタンサの元へやって来る。
 星の光に染まったようなアッシュブロンドの髪にアメジストのような紫の目。はっきりとして気が強そうな顔立ちの美人である。
(あのお方は……!)
 コンスタンサはその令嬢に見覚えがあったので、カーテシーで礼をる。
「姿勢を楽になさってちょうだい」
 頭上から、凛としたソプラノの声が降って来た。
「お声がけいただき光栄でございます。ポンバル伯爵家長女、コンスタンサ・マティルド・デ・ポンバルでございます」
 家庭教師から礼儀礼節をみっちり習っていたコンスタンサ。その所作は見事なものだっだ。
 令嬢は満足そうに微笑む。
わたくしはブラガンサ公爵家長女、テルマ・ディアドラ・デ・ブラガンサよ」
「存じ上げております、テルマ様」

 テルマと名乗った令嬢は、ブラガンサ筆頭公爵家の令嬢である。年はコンスタンサよりも二つ上の十七歳。彼女は国王ジェロニモの姪なのだ。彼女の髪と目の色は、グロートロップ王国を治めるアヴィス王家の特徴である。彼女はアヴィス王家に万が一のことがない限り王位継承権を持たないが、社交界ではかなり注目を集めている令嬢だ。

 そして彼女は別の意味でも有名だっだ。
 テルマはかなり性格がキツいのである。
 彼女は身分の低い令嬢に対して厳しい言葉を浴びせて泣かせたり、王宮勤めの文官になった令息を国王に直談判して解雇させたりすることもあったのだ。

 そんなテルマが、自分にに何の用があるのかと、コンスタンサは内心警戒していたのである。
感想 1

あなたにおすすめの小説

(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ? 

青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。 チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。 しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは…… これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦) それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。

(完結)私はもう他人です!

青空一夏
恋愛
マリアの両親は平民で、ピナベーカリーというパン屋を経営している。一歳違いの妹ソフィアはピンクブロンドにピンクの大きな瞳の愛らしい女の子で、両親に溺愛されていた。マリアも妹を可愛がっており、幼いころの姉妹仲はとても良かった。 マリアが学園に通う年齢になった頃、小麦粉の値上げでピナベーカリーの経営がうまくいかず、マリアは学園に行くことができない。同じ街のブロック服飾工房に住み込みで働くことになった。朝早く実家のパン屋を手伝い、服飾工房に戻って夜まで針仕事。 お給料の半分は家に入れるのだが、マリアはそれを疑問にも思わなかった。 その1年後、ソフィアが学園に通う年齢になると、ピナベーカリーが持ち直し、かなりパンが売れるようになった。そのためソフィアは裕福な子女が通う名門ルクレール女学園の寮に行くことになった。しかし、ルクレール女学園の学費は高く、マリアは給料を全部入れてくれるように頼まれた。その時もマリアは妹の幸せを自分のものとして捉え、両親の言うとおりにそれを受け入れる。 マリアは家族思いで誠実。働き者なところをブロック服飾工房のオーナーであるレオナードに見初められる。そして、レオナードと結婚を誓い合い、両親と妹と引き合わせたところ・・・・・・ これは、姉妹格差で我慢させられてきた姉が、前世の記憶を取り戻し、もう利用されないと、自分の人生を歩もうとする物語です。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

【完結】旦那様、契約妻の私は放っておいてくださいませ

青空一夏
恋愛
※愛犬家おすすめ! こちらは以前書いたもののリメイク版です。「続きを書いて」と、希望する声があったので、いっそのこと最初から書き直すことにしました。アルファポリスの規約により旧作は非公開にします。  私はエルナン男爵家の長女のアイビーです。両親は人が良いだけで友人の保証人になって大借金を背負うお人好しです。今回もお父様は親友の保証人になってしまい大借金をつくりました。どうしたら良いもにかと悩んでいると、格上貴族が訪ねてきて私に契約を持ちかけるのでした。いわゆる契約妻というお仕事のお話でした。お金の為ですもの。私、頑張りますね!    これはお金が大好きで、綺麗な男性が苦手なヒロインが契約妻の仕事を引き受ける物語です。  ありがちなストーリーのコメディーです。    ※作者独自の異世界恋愛物語。  ※コメディです。  ※途中でタグの変更・追加の可能性あり。  ※最終話に子犬が登場します。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?