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ほんの少しだけ変わる勇気
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その日の放課後、レアは植物研究室で趣味である花の品種改良をしていた。
(カラフルな薔薇を作ることは難しいけれど、一輪で二色くらいなら……)
レアは薔薇の品種改良について考えているようだ。
薔薇はナルフェック王国の国花であり、王族や国内貴族、そして大多数の国民から愛されている花だ。
レアが一番好きな花でもある。
「少し失礼するよ」
その時、レアがいた部屋に何者かが入って来た。
その人物を見て、レアはブラウンの目を大きく見開く。
ブロンドの髪にサファイアのような青い目。パッと目を引く華のある顔立ち。
トゥアール公爵令息ベルナールである。
(嘘……!?)
憧れていたベルナールが目の前にいることに驚愕しているレア。
「植物研究室に保管されている、薔薇に関する論文を借りたいのだけれど、君、どこにあるか分かるかい?」
「えっと、こちらです」
紳士的で落ち着いた態度のベルナールに、レアは緊張しながら論文が保管されている場所に案内する。
「ありがとう。助かったよ。父上が薔薇の品種改良の事業を始めようと準備をしていてね。僕はその手の知識があまりないから、これから時々論文を借りに行くことがあると思う」
「左様で……ございますか」
緊張で少し声が震えてしまうレアだ。
トゥアール公爵領は薔薇の栽培が盛んである。国内の薔薇生産量がトップなのだ。
「ん……? この薔薇は……!?」
ベルナールが植物研究室を出ようとした時、とある薔薇が彼の目に留まった。
「あ、それは……!」
レアは思わず拳をギュッと握る。
「私が改良途中の薔薇でございます」
深呼吸をし、震える声を必死に振り絞った。
「君が……!」
ベルナールは驚いたようにサファイアの目を大きく見開いている。
そして再びレアの元に近付く。
「凄い……! 素晴らしい知識を持つ方がいただなんて……! 君、名前を教えて欲しい。あ、まずは僕から名乗るのがマナーだね。僕はトゥアール公爵家長男、ベルナール・エドメ・ド・トゥアールだ」
「えっと……シャティヨン伯爵家次女、レア・マチルド・ド・シャティヨンと申します」
レアには何が起こっているのか分からなかったが、言われるがまま自己紹介をしていた。
「レア嬢か。今後、君の都合が合うのなら、薔薇の品種改良について色々と話を聞かせて欲しいんだ。良いだろうか?」
ベルナールのサファイアの目はワクワクとした様子である。
美しい顔に見つめられてレアが気を失いそうだったが、何とか耐えていた。
「その……私などでよろしければ……」
「ありがとう、レア嬢。よろしく頼むよ」
ベルナールは明るい表情でそう言い、論文を持って植物研究室を後にするのであった。
(私……ベルナール様と……)
レアはしばらく放心状態だった。
しかし、先程のベルナールとの会話を思い出し仰天する。
「私、どうしたら良いの!?」
レアは慌てて植物研究室内にある別の部屋に向かう。
「レア様?」
「そんなに慌ててどうかなさったのです?」
レアが向かった先の部屋には、ミラベルとルフィーナがいた。
「ミラベル様……ルフィーナ様……! 実は……!」
レアは先程のベルナールとのやり取りをミラベルとルフィーナに話す。
すると、二人の表情がパアッと明るくなる。
「レア様、良いことがあったわね」
「凄いですわ。フェーヴの効果ですわね」
ミラベルとルフィーナは、まるで自分のことのように喜んでいる。
「それで、その……おしゃれな髪型とか、男性に良い香りだと好印象を持たれる香水についてなど、色々と教えてください」
見ているだけで十分だったが、レアは少しでもベルナールに釣り合うよう頑張りたいと思い始めていた。
「そうね……おしゃれなら、ヴァンティエール侯爵令嬢であられるサラ様や、ネンガルド王国から留学中のモールバラ公爵令嬢リリー様がお詳しいわ。お二人共植物研究室にも頻繁にいらっしゃるから、レア様にも紹介するわね。香水に関しては私に任せてちょうだい」
ミラベルはほんの少し得意げである。
「私も、髪型のことなら相談に乗りますわ」
ルフィーナはペリドットの目を輝かせていた。
その後ベルナールの隣には、垢抜けたレアの姿が見られた。
二人共、何やら楽しそうである。
ラ・レーヌ学園の食堂で出されるガレット・デ・ロワ。その中に入っているフェーヴを引き当てた者は恋に関する幸運が訪れると言われている。
レアはベルナールと接点が持てたが、その後どうなるのかは彼女の頑張り次第である。
(カラフルな薔薇を作ることは難しいけれど、一輪で二色くらいなら……)
レアは薔薇の品種改良について考えているようだ。
薔薇はナルフェック王国の国花であり、王族や国内貴族、そして大多数の国民から愛されている花だ。
レアが一番好きな花でもある。
「少し失礼するよ」
その時、レアがいた部屋に何者かが入って来た。
その人物を見て、レアはブラウンの目を大きく見開く。
ブロンドの髪にサファイアのような青い目。パッと目を引く華のある顔立ち。
トゥアール公爵令息ベルナールである。
(嘘……!?)
憧れていたベルナールが目の前にいることに驚愕しているレア。
「植物研究室に保管されている、薔薇に関する論文を借りたいのだけれど、君、どこにあるか分かるかい?」
「えっと、こちらです」
紳士的で落ち着いた態度のベルナールに、レアは緊張しながら論文が保管されている場所に案内する。
「ありがとう。助かったよ。父上が薔薇の品種改良の事業を始めようと準備をしていてね。僕はその手の知識があまりないから、これから時々論文を借りに行くことがあると思う」
「左様で……ございますか」
緊張で少し声が震えてしまうレアだ。
トゥアール公爵領は薔薇の栽培が盛んである。国内の薔薇生産量がトップなのだ。
「ん……? この薔薇は……!?」
ベルナールが植物研究室を出ようとした時、とある薔薇が彼の目に留まった。
「あ、それは……!」
レアは思わず拳をギュッと握る。
「私が改良途中の薔薇でございます」
深呼吸をし、震える声を必死に振り絞った。
「君が……!」
ベルナールは驚いたようにサファイアの目を大きく見開いている。
そして再びレアの元に近付く。
「凄い……! 素晴らしい知識を持つ方がいただなんて……! 君、名前を教えて欲しい。あ、まずは僕から名乗るのがマナーだね。僕はトゥアール公爵家長男、ベルナール・エドメ・ド・トゥアールだ」
「えっと……シャティヨン伯爵家次女、レア・マチルド・ド・シャティヨンと申します」
レアには何が起こっているのか分からなかったが、言われるがまま自己紹介をしていた。
「レア嬢か。今後、君の都合が合うのなら、薔薇の品種改良について色々と話を聞かせて欲しいんだ。良いだろうか?」
ベルナールのサファイアの目はワクワクとした様子である。
美しい顔に見つめられてレアが気を失いそうだったが、何とか耐えていた。
「その……私などでよろしければ……」
「ありがとう、レア嬢。よろしく頼むよ」
ベルナールは明るい表情でそう言い、論文を持って植物研究室を後にするのであった。
(私……ベルナール様と……)
レアはしばらく放心状態だった。
しかし、先程のベルナールとの会話を思い出し仰天する。
「私、どうしたら良いの!?」
レアは慌てて植物研究室内にある別の部屋に向かう。
「レア様?」
「そんなに慌ててどうかなさったのです?」
レアが向かった先の部屋には、ミラベルとルフィーナがいた。
「ミラベル様……ルフィーナ様……! 実は……!」
レアは先程のベルナールとのやり取りをミラベルとルフィーナに話す。
すると、二人の表情がパアッと明るくなる。
「レア様、良いことがあったわね」
「凄いですわ。フェーヴの効果ですわね」
ミラベルとルフィーナは、まるで自分のことのように喜んでいる。
「それで、その……おしゃれな髪型とか、男性に良い香りだと好印象を持たれる香水についてなど、色々と教えてください」
見ているだけで十分だったが、レアは少しでもベルナールに釣り合うよう頑張りたいと思い始めていた。
「そうね……おしゃれなら、ヴァンティエール侯爵令嬢であられるサラ様や、ネンガルド王国から留学中のモールバラ公爵令嬢リリー様がお詳しいわ。お二人共植物研究室にも頻繁にいらっしゃるから、レア様にも紹介するわね。香水に関しては私に任せてちょうだい」
ミラベルはほんの少し得意げである。
「私も、髪型のことなら相談に乗りますわ」
ルフィーナはペリドットの目を輝かせていた。
その後ベルナールの隣には、垢抜けたレアの姿が見られた。
二人共、何やら楽しそうである。
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