没落令嬢、借金の肩代わりを条件に人狼の元へ嫁ぐ 〜死を覚悟していましたが、待っていたのは情熱的な旦那様から愛される日々でした〜

宝月 蓮

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大団円といきましょう!

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 一方、飛鳥井家においては……。
「小夜子が望月家に行ったこと生活に余裕は出来たが……」
 秀雄は取り戻した家宝を見ては暗い表情で俯く。
「小夜子の命と引き換えに……」
 千代子は涙を流す。
 飛鳥井家は小夜子が旭の元へ行ったことで、没落前の栄光を取り戻してはいた。しかし、家の雰囲気は暗かった。
「父上、母上……姉上の覚悟を無駄にしてはいけません」
 悔しそうに拳を握りしめる正一。
「姉上……」
「小夜子お姉様……」
 涙を流す勇二とミツ子。
 その時、玄関の扉が強く叩かれる。
「どうか我らにお恵みを!」
 飛鳥井家の復活、そして秀雄が施しをしているのを知る者達がやって来たのだ。
「旦那様……」
 不安げな表情の千代子。
「分かっている。以前のように際限なく施しはしない。小夜子のお陰で飛鳥井家は復活したんだ。無駄にはしない」
 秀雄は決心した表情で玄関へ向かう。



「飛鳥井殿! 以前はもっと多くの金額をいただけたというのに! どうして今回はこれだけなんだ!」
 秀雄が施しをおこなった者の中には、そうゴネる者がいた。
 飛鳥井家の前には人間、妖狐、天狗などが群がっている。
「それは……その……」
 上手く言葉が出ない秀雄。
「飛鳥井家は復活したのでしょう!」
「我々にもっと恵んでくださっても良いではありませんか!」
 下卑た笑みを浮かべる物乞い達。お人好しの秀雄から搾取しようとしている怠惰なだけの者である。本当に困っている者ではなく、こういう者程ゴネるのだ。
 秀雄は困り切っていた。
 その時だ。
「何をしている!?」
 低く凛とした声が響く。
 呂色の美しい髪、右目が金、左目が銀の特徴的なオッドアイの人狼ーー旭である。
 そしてその隣には小夜子もいる。
 この日が飛鳥井家訪問の日程だったのだ。
「小夜子……!」
 秀雄は驚愕して目を大きく見開くが、小夜子の姿を見ることが出来て嬉しそうだ。
 小夜子は「ご無沙汰しております、お父様」と秀雄に柔らかな笑みを向ける。
「人狼!?」
「お前、何者だ!?」
 怠惰なだけの物乞いは旭を見てギョッとする。
「人狼一族、望月家次期当主の望月旭だ。そして飛鳥井家のご令嬢、小夜子さんの婚約者でもある」
「貴方様が……」
 秀雄は旭をまじまじと見ている。旭は秀雄に向かい、フッと微笑んだ。そして怠惰な物乞い達に厳しい目を向ける。
「望月家だと……!」
「帝の側近を多数輩出しているあの望月家……!」
 怠惰な物乞い達は望月家の力に恐れおののく。
「飛鳥井家は姻族だから、助けるのは当然だ。それで、お前達は本当に困窮しているのだな?」
 すると、怠惰な物乞い達はたじろぐ。
「本当に困窮しているのなら、望月家に来るといい。ただし、嘘である場合は容赦しない。それでも飛鳥井家にしつこく物乞いに来るのなら、我々望月家を敵に回すと思え」
 帝と距離が近い望月家を敵に回す、それは実質帝への反逆とも取られかねない。
 怠惰なだけの物乞い達にそんな勇気はなく、飛鳥井家から急いで立ち去るのであった。

「お父様、大丈夫でございましたか?」
 小夜子は久々に会う秀雄を心配そうに見つめる。
「ああ、小夜子。大丈夫だ。それにしてもお前……生きていたんだな……」
 嬉し涙を流す秀雄。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。望月旭と申します」
「これはこれは……小夜子の父で望月家当主の秀雄と言います。それでその……小夜子は……」
 秀雄は言いにくそうに口をモゴモゴとさせている。
「人狼に嫁いだ女性は殺されるという噂のことですか」
 ハハっと笑う旭。すると秀雄は勢いよく首を縦に何度も振る。
「旦那様、何事でございますか? ……小夜子!」
「「「姉上//お姉様!」」」
 千代子、正一、勇二、ミツ子もやって来た。小夜子の姿を見て驚き、涙を流して喜んでいる。
「お久し振りです、お母様。正一、勇二、ミツ子も」
 小夜子は久々に会う母や弟妹達に、嬉しそうに微笑む。
「小夜子、どうしてここに? 人狼に嫁いだ女性は……」
 秀雄と同様、千代子も言い淀む。
 そこへ、旭が出て来る。
「初めまして。望月旭と申します。本日はその件につきましても説明します」
 旭は千代子達にも朗らかで優しい笑みを向ける。
 そして人狼の運命の番や、運命の番を愛し過ぎるあまり部屋に閉じ込めてしまう場合もあることを話した。
「つまり、人狼に嫁いだ女性は殺されるというのは全くの出鱈目だったということですね」
「噂を確かめもせず誤解して申し訳ありません」
 秀雄と千代子は申し訳なさそうに頭を下げる。正一、勇二、ミツ子も両親に倣い旭に謝罪した。
「頭を上げてください。俺は気にしてませんから」
「お父様、お母様、正一、勇二、ミツ子大丈夫ですわ。もしわたくしと音信不通になった場合は、旭様から愛され過ぎていると思ってください」
 ふふっと微笑む小夜子。
「確かに小夜子さんを独り占めしたい気持ちはあるが、君が嫌がるのなら我慢する」
 旭は金と銀の目を真っ直ぐ小夜子に向け、腰を抱く。小夜子は嬉しそうに旭に寄り添っている。
 その様子を見た飛鳥井家の両親や弟妹達は心底安心しているようだった。
 小夜子の無事が確認出来た上、旭のお陰で怠惰なだけの悪質な物乞いも来なくなり、飛鳥井家の平穏は戻ったのである。



 そして数ヶ月後。
 小夜子と旭は祝言を迎える。
 白無垢姿の小夜子と黒紋付羽織袴くろもんつきはおりはかま姿の旭。
 二人は飛鳥井家と望月家の家族に見守られながら、正式な夫婦となった。
 そして末長く幸せに暮らしたのである。
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