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16.頼れる仲間
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集団暴行を受け、顔まで焼かれそうになっていたマリナ。
そんな彼女を間一髪で救ったのはアル。
「王太子殿下、これはどういう状況ですか?」
怒りを露わにするアル。
「この女が我が王家の家宝を盗んだ犯人だ。これは正義による断罪だ」
エドワードは高らかに言い放つ。
アルはマリナに目を向ける。
マリナはゆっくりと首を振る。
「アル……私、何もしてない」
生糸よりも細い声を絞り出したマリナ。
「マリナはやっていないと言っている。彼女の声は全く聞いていないようだな。よってたかって一人の女性を暴行することがこの国の正義なら、この国は終わっている」
アルの声は不思議とよく通る。打ち消されることなく皆の耳に入る声だ。
「貴様! 生意気な!」
エドワードは怒りに任せてアルを殴る。
アルの眼鏡の奥のオレンジの目は、スッと冷えた。
「これ以上マリナ様やアル様への暴行は許しません!」
そこへ、また別の声が響く。
エヴァンジェリンだ。彼女の隣にはヴィクターもいる。
どうやら二人は急いで駆けつけて来てくれたようだ。
「今騒ぎになっているジュエル王国王家の家宝盗難事件ならば、エヴァンジェリンが開発した録画魔道具を再生したら犯人が分かることですよ」
ヴィクターが冷静に提案する。
「録画魔道具だと……?」
エドワードが怪訝そうに眉をひそめた。
「ええ。国王陛下や学園の先生方にお願いして、ジュエル王国でも魔道具が上手く作動するか実験させてもらっておりますの。この学園にも、録画魔道具をいくつか設置しておりますわ」
凛とした表情のエヴァンジェリン。彼女は水晶のようなものを取り出す。
どうやら録画魔道具で得られた映像を再生する魔道具らしい。
エヴァンジェリンは手際よく水晶を操作した。すると、教室の壁に大きく映像が映し出された。
エドワードやイーリス達五人がマリナの机に王家の家宝を入れる映像が流れる。
『イーリス、安心してくれ。君の不安の種であるマリナ・ルベライトはこれで永久に追放できる』
映像の中のエドワードはニヤリと笑う。
『イーリス様のためなら何だって協力します』
同じく、映像の中のショーンはそうイーリスを安心させようとしていた。
『皆様……ありがとうございます』
映像の中のイーリスはカナリアイエローの目に涙を浮かべて嬉しそうに微笑んでいた。
「どうやら犯人は君達五人みたいだな」
アルの声には怒りがこもっていた。
「魔道具だなんてデタラメだ! どうせ魔力を使ってでっち上げただけだろう! ジュエル王国では魔力こそが全て! 魔道具なんてインチキだ!」
エドワードは苛立ちを露わにする。
「そう思いたければどうぞそう思っていてください。マリナ様、アル様、行きましょう」
エヴァンジェリンはヴィクター共にマリナとアルを救出し、教室を出るのであった。
「……こんなことになるなら、悪役令嬢エヴァンジェリンから始末した方がよかったわね」
イーリスが悔しげにボソリと呟いたが、それは誰にも聞こえなかった。
ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ
「マリナ様がこんな目に遭うだなんて……! マリナ様を酷い目に遭わせた奴らをボコボコにしないと気が済まないわ……! それに、あんな奴らが『光の乙女、愛の魔法』の攻略対象だなんて、私のお気に入りのゲームが汚された気分よ!」
エヴァンジェリンは悲しみと怒りに染まっていた。
「エヴァンジェリン様、落ち着いてください。私は大丈夫ですから。アルが助けてくれましたし。エヴァンジェリン様達も、助けてくれてありがとうございます」
マリナは自分以上に怒っているエヴァンジェリンをやんわりと宥めた。
「マリナ様……やっぱり貴女は心根が優しいヒロインよ!」
マリナの手を握るエヴァンジェリン。
「……私はヒロインみたいに心が綺麗ではないとは思いますが」
マリナは苦笑した。
そして次にアルの方を向く。
「アル、助けてくれてありがとう。貴方が最初に来てくれて嬉しかった」
少しだけ頬を染めながら、アルにまっすぐな言葉を伝える。
「そうか……。実は、マリナが危険な状態にあることは、そのネックレスが教えてくれたんだ」
アルはほんのり頬を赤くしながら、自身がマリナにプレゼントしたオレンジ色の花のネックレスを指した。
「このネックレスが?」
マリナは不思議そうに首を傾げている。
「ああ。このネックレス、俺の魔力を少し込めたんだ。マリナに何かあった時には、魔力が反応して俺に伝えてくれる。だから、マリナのピンチが分かった瞬間、先生の用事を放り出して急いで教室に向かった。まあ、もっと早く助け出せればよかったんだけどな」
アルは最後、申し訳なさそうだった。
「そんな、アルが来てくれただけでも十分よ。本当にありがとう。私のせいで火傷させてしまってごめんなさい。今治癒するわ」
マリナは火傷したアルの手を治癒しようとした。
「待って、マリナ。今の君は魔封じの腕輪をはめられているのではないか?」
「あ……そうだったわ。この腕輪、この国ではライアンしか取り外しが出来ないみたい……」
アルの言葉にハッとし、落ち込むマリナ。
「いや、この程度なら俺でもできる」
アルは息を吸うように魔封じの腕輪をマリナの腕から外した。
「どうして……!?」
マリナは驚愕のあまり薄紫の目を大きく見開いた。まるで目がこぼれ落ちそうなくらいである。
「まあ……ちょっとな」
アルは意味ありげにフッと笑った。
「まあ……アル様……!」
エヴァンジェリンは何故か真紅の目を輝かせて興奮状態だった。
「ありがとう、アル。じゃあ早速火傷を治すわね」
マリナはアルの火傷した腕を光の魔力で治そうとした。
しかし、それをエヴァンジェリンに止められてしまう。
「それは少し後の方がいいかもしれないわ。学園で王太子達にこんな目に遭わされたのだから、国王陛下に直訴に向かいましょう。その時に、その傷は証拠になるわ」
先程の興奮状態のエヴァンジェリンから打って変わり、頼もしい様子である。
エヴァンジェリンは言葉を続ける。
「国王陛下は王太子と違って公正な人よ。それに、国王陛下とガーネット公爵家当主のお父様は親しい間柄。お父様の娘である私の言うことを聞き入れてくれるわ」
凛とした表情のエヴァンジェリン。
(流石は公爵令嬢ね)
楽しそうで無邪気なエヴァンジェリンも知るマリナにとっては少し意外だった。
「それと、マリナ嬢。僕からも提案があるんだ。君はこの学園でこんな目に遭わされた。多分もう君にとってこの学園は悪い環境だと思う。エヴァンジェリンと僕もこの件を知ってアステール帝国の学園に戻ろうと決めたんだ。だから、マリナ嬢も一緒にアステール帝国の学園で学ばないか? 向こうの学園は魔力だけでなく魔道具についても学べる。こっちの学園よりも学べることは多いんだ。是非どうかな?」
マリナはヴィクターからそう提案され、少し悩む。
(確かに、こんな目に遭ってまでこの学園に通いたいとは思えないわ。だけど……)
マリナはアルに目を向ける。
「もしかして、アル殿が心配?」
ヴィクターはすぐにマリナがアルを見ていることに気づく。
「俺が?」
アルは不思議そうに首を傾げている。
「はい。私は元から立場が悪いですが、この国の王太子殿下と対立してしまったアルも、多分これから大変だと思うのです。私だけアステール帝国に行ったらアルは……」
マリナはアルを守る力を持つわけではない。しかし、自分がアステール帝国へ行けばアルがジュエル王国の学園に一人になり、彼が一人で悪意などに立ち向かわなければならないことを危惧していた。
「マリナ、俺のことは別に心配しなくていい。実は俺も、アステール帝国に行く予定ではあったんだ。少し時期が早まったところで問題はない。既に知りたいことは知ることができたから」
アルは穏やかに微笑んだ。
エヴァンジェリンとヴィクターは意味ありげな笑みを浮かべている。
「そうだったのね。それなら、アルやみんながいるなら、私もアステール帝国の学園に行くわ。お父様やお母様にも、事情を話したらきっと賛成してくれるわ」
マリナはそう決意した。
「そうと決まれば、まずは王宮よ。国王陛下に直訴に行きましょう。お父様も今王宮にいて、既に連絡済みよ。録画魔道具の映像も全部お父様にも送ってあるわ」
エヴァンジェリンはやる気に満ちあふれた表情だ。まるで殴り込みにでも向かうかのようである。
こうして、マリナ達は学園を抜け出して王宮に向かった。
そんな彼女を間一髪で救ったのはアル。
「王太子殿下、これはどういう状況ですか?」
怒りを露わにするアル。
「この女が我が王家の家宝を盗んだ犯人だ。これは正義による断罪だ」
エドワードは高らかに言い放つ。
アルはマリナに目を向ける。
マリナはゆっくりと首を振る。
「アル……私、何もしてない」
生糸よりも細い声を絞り出したマリナ。
「マリナはやっていないと言っている。彼女の声は全く聞いていないようだな。よってたかって一人の女性を暴行することがこの国の正義なら、この国は終わっている」
アルの声は不思議とよく通る。打ち消されることなく皆の耳に入る声だ。
「貴様! 生意気な!」
エドワードは怒りに任せてアルを殴る。
アルの眼鏡の奥のオレンジの目は、スッと冷えた。
「これ以上マリナ様やアル様への暴行は許しません!」
そこへ、また別の声が響く。
エヴァンジェリンだ。彼女の隣にはヴィクターもいる。
どうやら二人は急いで駆けつけて来てくれたようだ。
「今騒ぎになっているジュエル王国王家の家宝盗難事件ならば、エヴァンジェリンが開発した録画魔道具を再生したら犯人が分かることですよ」
ヴィクターが冷静に提案する。
「録画魔道具だと……?」
エドワードが怪訝そうに眉をひそめた。
「ええ。国王陛下や学園の先生方にお願いして、ジュエル王国でも魔道具が上手く作動するか実験させてもらっておりますの。この学園にも、録画魔道具をいくつか設置しておりますわ」
凛とした表情のエヴァンジェリン。彼女は水晶のようなものを取り出す。
どうやら録画魔道具で得られた映像を再生する魔道具らしい。
エヴァンジェリンは手際よく水晶を操作した。すると、教室の壁に大きく映像が映し出された。
エドワードやイーリス達五人がマリナの机に王家の家宝を入れる映像が流れる。
『イーリス、安心してくれ。君の不安の種であるマリナ・ルベライトはこれで永久に追放できる』
映像の中のエドワードはニヤリと笑う。
『イーリス様のためなら何だって協力します』
同じく、映像の中のショーンはそうイーリスを安心させようとしていた。
『皆様……ありがとうございます』
映像の中のイーリスはカナリアイエローの目に涙を浮かべて嬉しそうに微笑んでいた。
「どうやら犯人は君達五人みたいだな」
アルの声には怒りがこもっていた。
「魔道具だなんてデタラメだ! どうせ魔力を使ってでっち上げただけだろう! ジュエル王国では魔力こそが全て! 魔道具なんてインチキだ!」
エドワードは苛立ちを露わにする。
「そう思いたければどうぞそう思っていてください。マリナ様、アル様、行きましょう」
エヴァンジェリンはヴィクター共にマリナとアルを救出し、教室を出るのであった。
「……こんなことになるなら、悪役令嬢エヴァンジェリンから始末した方がよかったわね」
イーリスが悔しげにボソリと呟いたが、それは誰にも聞こえなかった。
ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ
「マリナ様がこんな目に遭うだなんて……! マリナ様を酷い目に遭わせた奴らをボコボコにしないと気が済まないわ……! それに、あんな奴らが『光の乙女、愛の魔法』の攻略対象だなんて、私のお気に入りのゲームが汚された気分よ!」
エヴァンジェリンは悲しみと怒りに染まっていた。
「エヴァンジェリン様、落ち着いてください。私は大丈夫ですから。アルが助けてくれましたし。エヴァンジェリン様達も、助けてくれてありがとうございます」
マリナは自分以上に怒っているエヴァンジェリンをやんわりと宥めた。
「マリナ様……やっぱり貴女は心根が優しいヒロインよ!」
マリナの手を握るエヴァンジェリン。
「……私はヒロインみたいに心が綺麗ではないとは思いますが」
マリナは苦笑した。
そして次にアルの方を向く。
「アル、助けてくれてありがとう。貴方が最初に来てくれて嬉しかった」
少しだけ頬を染めながら、アルにまっすぐな言葉を伝える。
「そうか……。実は、マリナが危険な状態にあることは、そのネックレスが教えてくれたんだ」
アルはほんのり頬を赤くしながら、自身がマリナにプレゼントしたオレンジ色の花のネックレスを指した。
「このネックレスが?」
マリナは不思議そうに首を傾げている。
「ああ。このネックレス、俺の魔力を少し込めたんだ。マリナに何かあった時には、魔力が反応して俺に伝えてくれる。だから、マリナのピンチが分かった瞬間、先生の用事を放り出して急いで教室に向かった。まあ、もっと早く助け出せればよかったんだけどな」
アルは最後、申し訳なさそうだった。
「そんな、アルが来てくれただけでも十分よ。本当にありがとう。私のせいで火傷させてしまってごめんなさい。今治癒するわ」
マリナは火傷したアルの手を治癒しようとした。
「待って、マリナ。今の君は魔封じの腕輪をはめられているのではないか?」
「あ……そうだったわ。この腕輪、この国ではライアンしか取り外しが出来ないみたい……」
アルの言葉にハッとし、落ち込むマリナ。
「いや、この程度なら俺でもできる」
アルは息を吸うように魔封じの腕輪をマリナの腕から外した。
「どうして……!?」
マリナは驚愕のあまり薄紫の目を大きく見開いた。まるで目がこぼれ落ちそうなくらいである。
「まあ……ちょっとな」
アルは意味ありげにフッと笑った。
「まあ……アル様……!」
エヴァンジェリンは何故か真紅の目を輝かせて興奮状態だった。
「ありがとう、アル。じゃあ早速火傷を治すわね」
マリナはアルの火傷した腕を光の魔力で治そうとした。
しかし、それをエヴァンジェリンに止められてしまう。
「それは少し後の方がいいかもしれないわ。学園で王太子達にこんな目に遭わされたのだから、国王陛下に直訴に向かいましょう。その時に、その傷は証拠になるわ」
先程の興奮状態のエヴァンジェリンから打って変わり、頼もしい様子である。
エヴァンジェリンは言葉を続ける。
「国王陛下は王太子と違って公正な人よ。それに、国王陛下とガーネット公爵家当主のお父様は親しい間柄。お父様の娘である私の言うことを聞き入れてくれるわ」
凛とした表情のエヴァンジェリン。
(流石は公爵令嬢ね)
楽しそうで無邪気なエヴァンジェリンも知るマリナにとっては少し意外だった。
「それと、マリナ嬢。僕からも提案があるんだ。君はこの学園でこんな目に遭わされた。多分もう君にとってこの学園は悪い環境だと思う。エヴァンジェリンと僕もこの件を知ってアステール帝国の学園に戻ろうと決めたんだ。だから、マリナ嬢も一緒にアステール帝国の学園で学ばないか? 向こうの学園は魔力だけでなく魔道具についても学べる。こっちの学園よりも学べることは多いんだ。是非どうかな?」
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(確かに、こんな目に遭ってまでこの学園に通いたいとは思えないわ。だけど……)
マリナはアルに目を向ける。
「もしかして、アル殿が心配?」
ヴィクターはすぐにマリナがアルを見ていることに気づく。
「俺が?」
アルは不思議そうに首を傾げている。
「はい。私は元から立場が悪いですが、この国の王太子殿下と対立してしまったアルも、多分これから大変だと思うのです。私だけアステール帝国に行ったらアルは……」
マリナはアルを守る力を持つわけではない。しかし、自分がアステール帝国へ行けばアルがジュエル王国の学園に一人になり、彼が一人で悪意などに立ち向かわなければならないことを危惧していた。
「マリナ、俺のことは別に心配しなくていい。実は俺も、アステール帝国に行く予定ではあったんだ。少し時期が早まったところで問題はない。既に知りたいことは知ることができたから」
アルは穏やかに微笑んだ。
エヴァンジェリンとヴィクターは意味ありげな笑みを浮かべている。
「そうだったのね。それなら、アルやみんながいるなら、私もアステール帝国の学園に行くわ。お父様やお母様にも、事情を話したらきっと賛成してくれるわ」
マリナはそう決意した。
「そうと決まれば、まずは王宮よ。国王陛下に直訴に行きましょう。お父様も今王宮にいて、既に連絡済みよ。録画魔道具の映像も全部お父様にも送ってあるわ」
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