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冷たい本心
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クレアと婚約して以降、ワイアットは憂鬱だった。
(クレアは……昔からわがまま放題だった。我慢するのはいつも僕とメアリーばかり)
少し付き合いのある家の夜会に招待されていたワイアットは、壁にもたれかかりため息をついた。
婚約者になってしまったクレアをチラリと見ると、彼女は他の令嬢達と楽しそうに談笑している。
(そういえば、メアリーもこの夜会に参加しているんだっけ? 婚約者のヘレフォード卿と……)
ワイアットは無意識のうちにメアリーの姿を探す。
(メアリー……。ラトランド公爵領が災害に見舞われなければ……僕はメアリーと婚約出来ていたのだろうか……?)
ワイアットのアクアマリンの目は影を帯びる。
ワイアットは幼い頃からメアリーに想いを寄せていた。しかし、その想いはクレアによって永遠に叶わないものにされてしまったのである。
「あ、ワイアット! そんな所で何してるのよ? またダンスが始まるわよ」
いつの間にか、クレアが隣にやって来ていた。
令嬢達との談笑を切り上げたらしい。
「ああ、クレア……」
ワイアットの表情はやや引きつってしまう。
「ちょっとワイアット、どうして私が来たのに楽しそうじゃないの? 私はワイアットの婚約者なのに」
ムッと膨れて不機嫌になり、またわがままを言い出すクレア。
「ごめんってクレア。少し疲れただけなんだ。ああ、でも、クレアが来たから元気が出たよ」
ワイアットがそう言うと、クレアは満面の笑みになる。
思ってもいないことを言い、ワイアットはクレアの機嫌を取ったのだ。
(ラトランド公爵家の為に、クレアと結婚しなければならない。この先の人生もクレアの為に我慢しなければならないとなると……ゾッとする……)
ワイアットは自分の人生から逃げたくなっていた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
クレアとダンスをし終えたワイアットは、再び壁際で休憩していた。
給仕係からもらったグレープフルーツソーダを一気に飲み干す。
すっきりとした酸味とシュワシュワとした炭酸が、ワイアットの憂鬱な気分を幾分か飛ばしてくれたような気がした。
(まあ、ドーセット伯爵家はかなりの資産家。資金援助は必要か……)
ワイアットは諦め気味にため息をついた。
その瞬間、会場中央で騒ぎが起こる。
「ちょっと、何してくれているのよ!?」
キンキンとした鋭い声が響き渡った。
(あの声……今回の夜会の主催者、ションバーグ公爵家のご令嬢か。そういえば、この夜会は彼女の誕生日を祝う為に開催されていたんだっけ)
ワイアットはそんなことを思い出していた。
(まあ、ネンガルド王国内でも苛烈で有名なションバーグ公爵家だ。彼らが主催する夜会で騒ぎを起こせばどんな報復措置がされるか)
ワイアットはションバーグ公爵家の苛烈さを思い出し、苦笑した。
「ちょっと、何とか言いなさいよ!」
ションバーグ公爵令嬢の、ナイフのように鋭い声がまだ響き渡っている。
「えっと、その……」
少しか細い令嬢の声が聞こえた。
ションバーグ公爵令嬢に詰め寄られているようだ。
ワイアットはその令嬢の声に聞き覚えがあった。
(まさか……!)
ハッとし、改めて会場中央に目を向けるワイアット。
そこには自身の婚約者、クレアがいた。
どうやらクレアがションバーグ公爵令嬢に何かをしてしまったようだ。
「貴女のせいで私のドレスが台なしよ! どうしてくれるの!?」
「それは……私もドレスのリボンが解けて転びそうになったからで……」
ションバーグ公爵令嬢に激しく詰め寄られているクレアは肩を震わせて涙目だ。
「酷い言い訳ね! このドレスは私の誕生日の為に特注で仕立てた特別なものなのよ!」
ションバーグ公爵令嬢の怒りが収まる様子はない。
(クレアの奴、ションバーグ公爵令嬢に何てことを……)
ワイアットは頭を抱えた。
しかしその時、自身の中に黒い考えが浮かんでしまった。
(いや、ここでクレアを助けず放置したら……。ションバーグ公爵家は過去にも気に入らない者達を手段選ばず破滅に追いやった。きっとクレアと結婚するとなれば、ラトランド公爵家もションバーグ公爵家から睨まれる。……もし今クレアを見捨てたら、ションバーグ公爵家から何かされるのはクレアだけ。……ションバーグ公爵家に睨まれたくないと訴えたら、クレア有責で婚約破棄に出来るかもしれない。おまけにクレア有責だから、ドーセット伯爵家からは賠償金をもらえる……!)
ワイアットはチャンスかもしれないと黒い笑みを浮かべ、クレアを放置して会場を立ち去るのであった。
(クレアは……昔からわがまま放題だった。我慢するのはいつも僕とメアリーばかり)
少し付き合いのある家の夜会に招待されていたワイアットは、壁にもたれかかりため息をついた。
婚約者になってしまったクレアをチラリと見ると、彼女は他の令嬢達と楽しそうに談笑している。
(そういえば、メアリーもこの夜会に参加しているんだっけ? 婚約者のヘレフォード卿と……)
ワイアットは無意識のうちにメアリーの姿を探す。
(メアリー……。ラトランド公爵領が災害に見舞われなければ……僕はメアリーと婚約出来ていたのだろうか……?)
ワイアットのアクアマリンの目は影を帯びる。
ワイアットは幼い頃からメアリーに想いを寄せていた。しかし、その想いはクレアによって永遠に叶わないものにされてしまったのである。
「あ、ワイアット! そんな所で何してるのよ? またダンスが始まるわよ」
いつの間にか、クレアが隣にやって来ていた。
令嬢達との談笑を切り上げたらしい。
「ああ、クレア……」
ワイアットの表情はやや引きつってしまう。
「ちょっとワイアット、どうして私が来たのに楽しそうじゃないの? 私はワイアットの婚約者なのに」
ムッと膨れて不機嫌になり、またわがままを言い出すクレア。
「ごめんってクレア。少し疲れただけなんだ。ああ、でも、クレアが来たから元気が出たよ」
ワイアットがそう言うと、クレアは満面の笑みになる。
思ってもいないことを言い、ワイアットはクレアの機嫌を取ったのだ。
(ラトランド公爵家の為に、クレアと結婚しなければならない。この先の人生もクレアの為に我慢しなければならないとなると……ゾッとする……)
ワイアットは自分の人生から逃げたくなっていた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
クレアとダンスをし終えたワイアットは、再び壁際で休憩していた。
給仕係からもらったグレープフルーツソーダを一気に飲み干す。
すっきりとした酸味とシュワシュワとした炭酸が、ワイアットの憂鬱な気分を幾分か飛ばしてくれたような気がした。
(まあ、ドーセット伯爵家はかなりの資産家。資金援助は必要か……)
ワイアットは諦め気味にため息をついた。
その瞬間、会場中央で騒ぎが起こる。
「ちょっと、何してくれているのよ!?」
キンキンとした鋭い声が響き渡った。
(あの声……今回の夜会の主催者、ションバーグ公爵家のご令嬢か。そういえば、この夜会は彼女の誕生日を祝う為に開催されていたんだっけ)
ワイアットはそんなことを思い出していた。
(まあ、ネンガルド王国内でも苛烈で有名なションバーグ公爵家だ。彼らが主催する夜会で騒ぎを起こせばどんな報復措置がされるか)
ワイアットはションバーグ公爵家の苛烈さを思い出し、苦笑した。
「ちょっと、何とか言いなさいよ!」
ションバーグ公爵令嬢の、ナイフのように鋭い声がまだ響き渡っている。
「えっと、その……」
少しか細い令嬢の声が聞こえた。
ションバーグ公爵令嬢に詰め寄られているようだ。
ワイアットはその令嬢の声に聞き覚えがあった。
(まさか……!)
ハッとし、改めて会場中央に目を向けるワイアット。
そこには自身の婚約者、クレアがいた。
どうやらクレアがションバーグ公爵令嬢に何かをしてしまったようだ。
「貴女のせいで私のドレスが台なしよ! どうしてくれるの!?」
「それは……私もドレスのリボンが解けて転びそうになったからで……」
ションバーグ公爵令嬢に激しく詰め寄られているクレアは肩を震わせて涙目だ。
「酷い言い訳ね! このドレスは私の誕生日の為に特注で仕立てた特別なものなのよ!」
ションバーグ公爵令嬢の怒りが収まる様子はない。
(クレアの奴、ションバーグ公爵令嬢に何てことを……)
ワイアットは頭を抱えた。
しかしその時、自身の中に黒い考えが浮かんでしまった。
(いや、ここでクレアを助けず放置したら……。ションバーグ公爵家は過去にも気に入らない者達を手段選ばず破滅に追いやった。きっとクレアと結婚するとなれば、ラトランド公爵家もションバーグ公爵家から睨まれる。……もし今クレアを見捨てたら、ションバーグ公爵家から何かされるのはクレアだけ。……ションバーグ公爵家に睨まれたくないと訴えたら、クレア有責で婚約破棄に出来るかもしれない。おまけにクレア有責だから、ドーセット伯爵家からは賠償金をもらえる……!)
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