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番外編
王配マレイン・アドリアヌス・ファン・ナッサウの悩み
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ヴィルヘルミナが革命を起こし、ドレンダレン王国を取り戻し、女王として即位した数年後。
ドレンダレン王国はすっかり落ち着きを取り戻し、平和になっていた。
そんなある日、王都マドレスタムの王宮にて。
「母上、体は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。ありがとう、ロキュス」
ヴィルヘルミナは自分を案じてくれる七歳の息子に対し、優しくタンザナイトの目を細める。
現在ヴィルヘルミナは妊娠中なのだ。
「ははうえー、ほん、よむのー」
「そうね、ホラティウス。少しだけ待ってちょうだい」
まだ二歳になったばかりの息子をそっと撫でるヴィルヘルミナ。
「母上、イェルンとコルネリスは僕が相手をしますから」
「ありがとう、ロキュス。お願いするわね」
ヴィルヘルミナは成長した息子に安心したような笑みになり、二歳の息子と一緒に王宮中庭のベンチに座る。
ヴィルヘルミナは息子達に囲まれて穏やかな時間を過ごしていた。
もちろん万が一のことがあっても対応出来るように、周囲には侍女や護衛騎士が少し多めに配置されていた。
その様子を王宮内の部屋の窓から見ている者がいた。
ヴィルヘルミナの夫でドレンダレン王国の王配となったマレインである。そのクリソベリルの目はどこまでも優しく愛おしげに、ヴィルヘルミナ達を見つめていた。
「マレイン、ミーナのことが気になるか?」
王宮に来ていたマレインの兄ラルスはニヤリと口角を上げ、ソファから立ち上がり窓辺にやって来る。
一応ラルスはヴィルヘルミナとマレインにとって臣下ではあるが、同じ家で育った兄なので私的の場では砕けた態度を許されている。
この日ラルスはエフモント公爵家に関することで弟のマレインに相談に来ていたのだ。
「ええ。妻と息子達の様子が気になるのは夫として当たり前ですよ、兄上」
マレインは相変わらずヴィルヘルミナ達に目を向けながら穏やかな笑みを浮かべている。しかし、次の瞬間どこか浮かない表情になった。
「ん? マレイン、どうした? ……やっぱりミーナのことが心配か? まあ五人目を妊娠中でそろそろ臨月だもんな」
ラルスは窓の外のヴィルヘルミナに目を向ける。
妊娠中のヴィルヘルミナの腹部はかなり大きくなっている。もちろんマレインとの子供だ。
隣にいる二歳の息子ホラティウスはヴィルヘルミナの大きくなった腹部が気になるようでペタペタと触っている。
「ええ……まあ……それも心配ですが……」
マレインは今度は息子達に目を向ける。
「他にも何か心配なことがあるのか?」
ラルスは不思議そうに首を傾げている。
「心配というか……これは完全に僕のわがままだというのは承知ですが……」
マレインはそこで口ごもる。
「……どういうことだ?」
ラルスは怪訝そうな表情である。
「兄上、一番上の息子……ロキュスを見てください」
「ロキュス王太子殿下か……」
ラルスはマレインに言われた通り、中庭で剣を振るって訓練しているロキュスに目を向ける。
ロキュス・ヘルブラント・ファン・ナッサウ。ヴィルヘルミナとマレインの間に生まれた第一子で王太子。今年七歳になる。
太陽の光に染まったようなブロンドの柔らかい癖毛にタンザナイトのような紫の目。
ヴィルヘルミナ同様、ナッサウ王家の特徴を引き継いでいる。
「それで、王太子殿下がどうしたんだ?」
きょとんと首を傾げているラルス。
「髪色と目の色こそ、ミーナと同じですが……顔立ちを見てくださいよ」
「……マレインにそっくりだな。髪と目の色以外ミーナの要素どこいった?」
ラルスの言う通り、ロキュスの顔立ちはマレインによく似ていた。
「というか、よくあの髪色になってくれたな。普通はミーナのブロンドよりも俺達みたいな黒褐色の髪の方が形質として表に出るはずだぞ」
「僕らの、というかエフモント公爵家側の祖母がブロンドよりも形質が表に現れにくい赤毛でしたから、そこが上手く噛み合ったお陰でしょう」
マレインはそう考えていた。そして再び言葉を続ける。
「……では次は僕達の二人目の息子……イェルンはどうでしょう?」
マレインにそう言われ、ラルスは第二王子イェルンに目を向ける。彼はロキュスから剣の使い方を教えてもらっていた。
イェルン・マレイン・ファン・ナッサウ。ヴィルヘルミナとマレインの間に生まれた第二子で第二王子。今年五歳を迎える。
柔らかな黒褐色の癖毛にクリソベリルのような緑の目の少年である。
「マレインの幼少期そっくりだ。というか、お前の生き写しだな。イェルン殿下こそ、ミーナ要素皆無だ」
ラルスはラピスラズリの目を丸くし、マレインとイェルンを交互に見ている。
「ええ、ミーナからも言われました。僕の生き写しだと」
マレインは愛おしげにクリソベリルの目を細めるも、どこか複雑そうな表情だ。
「三人目の息子はどうでしょう」
「コルネリス殿下か」
ラルスは窓の外の中庭で、イェルンと同じようにロキュスから剣の使い方を教えてもらっているコルネリスに目を向けた。
コルネリス・カレル・ファン・ナッサウ。今年四歳になる第三王子だ。
黒褐色の柔らかい癖毛に、タンザナイトのような紫の目である。
「目の色はミーナと同じだが……目の形や目元はマレインに似てるな。目元がマレインに似ているせいか、全体的にマレイン似な気がする」
腕を組み、考える素振りのラルスである。
「では最後に一番下の息子ホラティウスはどうでしょう」
マレインにそう言われ、ラルスはヴィルヘルミナに本を読んでもらっているホラティウスに目を向けた。
ホラティウス・サンデル・ファン・ナッサウ。今年二歳になる第四王子である。
太陽の光に染まったようなブロンドの柔らかい癖毛に、クリソベリルのような緑の目だ。
「……コルネリス殿下と同じで目元がマレインに似ているから全体的にマレイン似に見えるな」
「ええ。生まれた子供は全員僕に似ている息子なので……そろそろミーナに似た娘が欲しいと思うのですよ。贅沢な悩みなのは承知ですが」
苦笑しながらため息をつくマレイン。
「ああ……まあ気持ちは分かる」
ラルスも苦笑しながらポンと軽くマレインの肩を叩いた。
「だがマレイン、四人もお前に似た子供が生まれたってことは、多分お前の遺伝子が強過ぎるんだ。五人目もマレインに似た子が生まれる可能性高いぞ」
ニヤリと悪戯っぽく口角を上げるラルス。
「まあ、ミーナと生まれて来る子供が無事ならばもうそれ以上のことは望みません」
軽くため息をつき、クリソベリルの目をヴィルヘルミナと息子達に真っ直ぐ向ける。その目はこの上なく愛おしげであった。
「お前、やっぱり格好良い男だな」
フッと口角を上げるラルス。
その時、中庭にいるヴィルヘルミナ達の雰囲気がガラリと変わる。
腹部を押さえて顔を歪めるヴィルヘルミナ。
「母上!」
そんなヴィルヘルミナに駆け寄るロキュス達。
侍女や騎士達も慌ただしい様子だ。
「ミーナ!」
マレインもヴィルヘルミナの異変に気付き、血相を変えて中庭へ向かう。
「マレイン、多分あれは陣痛だ!」
マレインの後を追うラルス。
その後、マレインや王宮の侍女や騎士達が宮廷医を呼ぶなど、ヴィルヘルミナの出産体制を整えた。
マレインはヴィルヘルミナに終始付き添い、出産を見届けた。
そして元気な産声が響き渡る。
「女王陛下、王配殿下、おめでとうございます。元気な女の子でございます」
宮廷医が労うようにそう言った。
「ミーナ、お疲れ様。ありがとう」
マレインはクリソベリルの目を愛おしげに細め、ヴィルヘルミナの額にキスをする。その目には涙が溜まっていた。
「マレインは毎回泣いていますわね」
ヴィルヘルミナはふふっと愛おしげにタンザナイトの目を細めて微笑み、マレインの涙を拭う。
「ミーナも生まれて来た子も無事で……安心したんだよ。本当にありがとう」
マレインは愛おしげにヴィルヘルミナの頭を撫でる。その大きな手はどこまでも優しかった。
二人はゆっくりと生まれたばかりの子供に目を向ける。
太陽の光に染まったようなブロンドの髪に、タンザナイトのような紫の目。ヴィルヘルミナによく似た女児である。しかし、髪質は直毛であるヴィルヘルミナとは違い、マレインや息子達と同じ柔らかい癖毛であった。
「ミーナに似た女の子が生まれたね」
ようやくヴィルヘルミナ似の娘が生まれたことで、感慨深そうな表情になるマレイン。ひしひしと湧き上がる喜びを噛み締めていた。
少し前まで軽く悩んでいたのが嘘のようだ。
「そうですわね。初めての女の子ですわ」
ヴィルヘルミナはふふっと微笑み、生まれたばかりの娘に目を向ける。
「ミーナ、この子の名前は決めているのかな?」
「ええ、フェリシアにしようと思っているのですが、マレインはどう思いますの?」
ヴィルヘルミナは生まれた娘とマレインを交互に見ながら微笑んでいる。
「フェリシアか。素敵な名前だね。大賛成だよ」
マレインはクリソベリルの目を細め、嬉しそうに笑う。
「貴方にそう言ってもらえて良かったですわ」
ホッとしたような表情のヴィルヘルミナ。
「そろそろ、ロキュス達も呼んであげましょう。それから、ラルスお義兄様も」
部屋の扉に目を向け微笑むヴィルヘルミナ。
部屋の外には四人の息子とラルスが待機しているのだ。
「そうだね。みんな生まれた子に対面するのを楽しみにしているだろうし」
マレインも部屋の扉を見てクスッと笑う。
その後は穏やかで賑やかな時間になった。
王女フェリシア・エレオノーラ・ファン・ナッサウの誕生で、ドレンダレン王国は大いに賑わい、数日間は国中お祭り騒ぎなのであった。
ドレンダレン王国はすっかり落ち着きを取り戻し、平和になっていた。
そんなある日、王都マドレスタムの王宮にて。
「母上、体は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。ありがとう、ロキュス」
ヴィルヘルミナは自分を案じてくれる七歳の息子に対し、優しくタンザナイトの目を細める。
現在ヴィルヘルミナは妊娠中なのだ。
「ははうえー、ほん、よむのー」
「そうね、ホラティウス。少しだけ待ってちょうだい」
まだ二歳になったばかりの息子をそっと撫でるヴィルヘルミナ。
「母上、イェルンとコルネリスは僕が相手をしますから」
「ありがとう、ロキュス。お願いするわね」
ヴィルヘルミナは成長した息子に安心したような笑みになり、二歳の息子と一緒に王宮中庭のベンチに座る。
ヴィルヘルミナは息子達に囲まれて穏やかな時間を過ごしていた。
もちろん万が一のことがあっても対応出来るように、周囲には侍女や護衛騎士が少し多めに配置されていた。
その様子を王宮内の部屋の窓から見ている者がいた。
ヴィルヘルミナの夫でドレンダレン王国の王配となったマレインである。そのクリソベリルの目はどこまでも優しく愛おしげに、ヴィルヘルミナ達を見つめていた。
「マレイン、ミーナのことが気になるか?」
王宮に来ていたマレインの兄ラルスはニヤリと口角を上げ、ソファから立ち上がり窓辺にやって来る。
一応ラルスはヴィルヘルミナとマレインにとって臣下ではあるが、同じ家で育った兄なので私的の場では砕けた態度を許されている。
この日ラルスはエフモント公爵家に関することで弟のマレインに相談に来ていたのだ。
「ええ。妻と息子達の様子が気になるのは夫として当たり前ですよ、兄上」
マレインは相変わらずヴィルヘルミナ達に目を向けながら穏やかな笑みを浮かべている。しかし、次の瞬間どこか浮かない表情になった。
「ん? マレイン、どうした? ……やっぱりミーナのことが心配か? まあ五人目を妊娠中でそろそろ臨月だもんな」
ラルスは窓の外のヴィルヘルミナに目を向ける。
妊娠中のヴィルヘルミナの腹部はかなり大きくなっている。もちろんマレインとの子供だ。
隣にいる二歳の息子ホラティウスはヴィルヘルミナの大きくなった腹部が気になるようでペタペタと触っている。
「ええ……まあ……それも心配ですが……」
マレインは今度は息子達に目を向ける。
「他にも何か心配なことがあるのか?」
ラルスは不思議そうに首を傾げている。
「心配というか……これは完全に僕のわがままだというのは承知ですが……」
マレインはそこで口ごもる。
「……どういうことだ?」
ラルスは怪訝そうな表情である。
「兄上、一番上の息子……ロキュスを見てください」
「ロキュス王太子殿下か……」
ラルスはマレインに言われた通り、中庭で剣を振るって訓練しているロキュスに目を向ける。
ロキュス・ヘルブラント・ファン・ナッサウ。ヴィルヘルミナとマレインの間に生まれた第一子で王太子。今年七歳になる。
太陽の光に染まったようなブロンドの柔らかい癖毛にタンザナイトのような紫の目。
ヴィルヘルミナ同様、ナッサウ王家の特徴を引き継いでいる。
「それで、王太子殿下がどうしたんだ?」
きょとんと首を傾げているラルス。
「髪色と目の色こそ、ミーナと同じですが……顔立ちを見てくださいよ」
「……マレインにそっくりだな。髪と目の色以外ミーナの要素どこいった?」
ラルスの言う通り、ロキュスの顔立ちはマレインによく似ていた。
「というか、よくあの髪色になってくれたな。普通はミーナのブロンドよりも俺達みたいな黒褐色の髪の方が形質として表に出るはずだぞ」
「僕らの、というかエフモント公爵家側の祖母がブロンドよりも形質が表に現れにくい赤毛でしたから、そこが上手く噛み合ったお陰でしょう」
マレインはそう考えていた。そして再び言葉を続ける。
「……では次は僕達の二人目の息子……イェルンはどうでしょう?」
マレインにそう言われ、ラルスは第二王子イェルンに目を向ける。彼はロキュスから剣の使い方を教えてもらっていた。
イェルン・マレイン・ファン・ナッサウ。ヴィルヘルミナとマレインの間に生まれた第二子で第二王子。今年五歳を迎える。
柔らかな黒褐色の癖毛にクリソベリルのような緑の目の少年である。
「マレインの幼少期そっくりだ。というか、お前の生き写しだな。イェルン殿下こそ、ミーナ要素皆無だ」
ラルスはラピスラズリの目を丸くし、マレインとイェルンを交互に見ている。
「ええ、ミーナからも言われました。僕の生き写しだと」
マレインは愛おしげにクリソベリルの目を細めるも、どこか複雑そうな表情だ。
「三人目の息子はどうでしょう」
「コルネリス殿下か」
ラルスは窓の外の中庭で、イェルンと同じようにロキュスから剣の使い方を教えてもらっているコルネリスに目を向けた。
コルネリス・カレル・ファン・ナッサウ。今年四歳になる第三王子だ。
黒褐色の柔らかい癖毛に、タンザナイトのような紫の目である。
「目の色はミーナと同じだが……目の形や目元はマレインに似てるな。目元がマレインに似ているせいか、全体的にマレイン似な気がする」
腕を組み、考える素振りのラルスである。
「では最後に一番下の息子ホラティウスはどうでしょう」
マレインにそう言われ、ラルスはヴィルヘルミナに本を読んでもらっているホラティウスに目を向けた。
ホラティウス・サンデル・ファン・ナッサウ。今年二歳になる第四王子である。
太陽の光に染まったようなブロンドの柔らかい癖毛に、クリソベリルのような緑の目だ。
「……コルネリス殿下と同じで目元がマレインに似ているから全体的にマレイン似に見えるな」
「ええ。生まれた子供は全員僕に似ている息子なので……そろそろミーナに似た娘が欲しいと思うのですよ。贅沢な悩みなのは承知ですが」
苦笑しながらため息をつくマレイン。
「ああ……まあ気持ちは分かる」
ラルスも苦笑しながらポンと軽くマレインの肩を叩いた。
「だがマレイン、四人もお前に似た子供が生まれたってことは、多分お前の遺伝子が強過ぎるんだ。五人目もマレインに似た子が生まれる可能性高いぞ」
ニヤリと悪戯っぽく口角を上げるラルス。
「まあ、ミーナと生まれて来る子供が無事ならばもうそれ以上のことは望みません」
軽くため息をつき、クリソベリルの目をヴィルヘルミナと息子達に真っ直ぐ向ける。その目はこの上なく愛おしげであった。
「お前、やっぱり格好良い男だな」
フッと口角を上げるラルス。
その時、中庭にいるヴィルヘルミナ達の雰囲気がガラリと変わる。
腹部を押さえて顔を歪めるヴィルヘルミナ。
「母上!」
そんなヴィルヘルミナに駆け寄るロキュス達。
侍女や騎士達も慌ただしい様子だ。
「ミーナ!」
マレインもヴィルヘルミナの異変に気付き、血相を変えて中庭へ向かう。
「マレイン、多分あれは陣痛だ!」
マレインの後を追うラルス。
その後、マレインや王宮の侍女や騎士達が宮廷医を呼ぶなど、ヴィルヘルミナの出産体制を整えた。
マレインはヴィルヘルミナに終始付き添い、出産を見届けた。
そして元気な産声が響き渡る。
「女王陛下、王配殿下、おめでとうございます。元気な女の子でございます」
宮廷医が労うようにそう言った。
「ミーナ、お疲れ様。ありがとう」
マレインはクリソベリルの目を愛おしげに細め、ヴィルヘルミナの額にキスをする。その目には涙が溜まっていた。
「マレインは毎回泣いていますわね」
ヴィルヘルミナはふふっと愛おしげにタンザナイトの目を細めて微笑み、マレインの涙を拭う。
「ミーナも生まれて来た子も無事で……安心したんだよ。本当にありがとう」
マレインは愛おしげにヴィルヘルミナの頭を撫でる。その大きな手はどこまでも優しかった。
二人はゆっくりと生まれたばかりの子供に目を向ける。
太陽の光に染まったようなブロンドの髪に、タンザナイトのような紫の目。ヴィルヘルミナによく似た女児である。しかし、髪質は直毛であるヴィルヘルミナとは違い、マレインや息子達と同じ柔らかい癖毛であった。
「ミーナに似た女の子が生まれたね」
ようやくヴィルヘルミナ似の娘が生まれたことで、感慨深そうな表情になるマレイン。ひしひしと湧き上がる喜びを噛み締めていた。
少し前まで軽く悩んでいたのが嘘のようだ。
「そうですわね。初めての女の子ですわ」
ヴィルヘルミナはふふっと微笑み、生まれたばかりの娘に目を向ける。
「ミーナ、この子の名前は決めているのかな?」
「ええ、フェリシアにしようと思っているのですが、マレインはどう思いますの?」
ヴィルヘルミナは生まれた娘とマレインを交互に見ながら微笑んでいる。
「フェリシアか。素敵な名前だね。大賛成だよ」
マレインはクリソベリルの目を細め、嬉しそうに笑う。
「貴方にそう言ってもらえて良かったですわ」
ホッとしたような表情のヴィルヘルミナ。
「そろそろ、ロキュス達も呼んであげましょう。それから、ラルスお義兄様も」
部屋の扉に目を向け微笑むヴィルヘルミナ。
部屋の外には四人の息子とラルスが待機しているのだ。
「そうだね。みんな生まれた子に対面するのを楽しみにしているだろうし」
マレインも部屋の扉を見てクスッと笑う。
その後は穏やかで賑やかな時間になった。
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