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ユーリの過去・後編(残酷描写あり、閲覧注意)
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※暴力描写があります。苦手な方はブラウザバックを推奨します。
ユーリはレポフスキー公爵家から追い出され、遠縁であるストロガノフ伯爵家に引き取られた。
しかし、そこでも地獄が待っていた。
アリョーナの母エヴドキヤは、アリョーナに婿を取らせることを望んでいたのた。
しかしユーリがストロガノフ伯爵家に引き取られたことで、彼が次期当主になったのだ。
エヴドキヤはそれを認めることが出来ず、ユーリに暴力を振るう。
「あんたがこの家に来たせいでアリョーナは将来ストロガノフ伯爵家を出て行かなくてはならなくなったのよ! あんたさえいなければ!」
甲高い声で叫ぶエヴドキヤ。それと同時にユーリの体を鞭で打つ。
激しい痛みのあまり、ユーリは倒れ込むのだがエヴドキヤは容赦しなかった。
そして更なる不幸がユーリを襲う。
ユーリがエヴドキヤから暴力を振るわれている時、エヴドキヤは自身の暴力の目撃者をなくす為に使用人達を遠ざけていた。よってユーリはエヴドキヤの私室で彼女と部屋に二人きりである。
ユーリがエヴドキヤの私室に入り、エヴドキヤと二人でいるところを目撃したアリョーナの父イーゴリは、ユーリに対して激昂する。
「お前は私の妻と二人で何をしていた!? どうして黙っている!? 私に言えないことでもしていたのか!?」
イーゴリはエヴドキヤを深く愛しているのだが、エヴドキヤはイーゴリに対して冷たかった。イーゴリはそれでもエヴドキヤに優しく歩み寄り続けているが、効果はあまりない。しかしそんな中、ユーリがエヴドキヤの私室に入り、彼女と二人でいたという事実を知り、イーゴリは我を忘れるほどユーリを殴っていた。更には暖炉にくべられた熱い木を背中に押し当てられることもあった。
レポフスキー公爵家の叔父一家から逃れられたと思いきや、ストロガノフ伯爵家でも虐げられ、暴力を振るわれ続けるユーリだった。
(もう……疲れた……。父上、母上、僕もそちらに行きますね)
ある寒い日、ユーリは遂に死ぬことを決意してしまう。
服を脱ぎ、ストロガノフ伯爵城近くにある川に入ろうとした。
この寒さなら確実に凍死出来るだろうとユーリは考えていた。
しかしその時、背後から勢い良く何かに抱きしめられた。
背中が暖かくなる。
「駄目ですわ!」
まだ幼くあどけない声だ。アリョーナである。
「君……どうして……?」
ユーリはムーンストーンの目をハッと見開き、アリョーナの方を振り向いた。
「こんな寒い中、川に入ったら死んでしまいます!」
愛らしくたどたどしい声のアリョーナ。しかし、真っ直ぐで必死だった。
ユーリは少しだけ泣きそうになる。色々なものが溢れ出しそうだった。
「……別に僕が死んでも誰も悲しまないさ」
ユーリは零れ落ちそうな涙を堪えて自嘲した。
「私が悲しいですわ。せっかくお義兄様が出来たのに……。もっと仲良くなりたいと思っていますのに」
アリョーナの言葉に嘘偽りがないことを感じたユーリ。しかし、今までの絶望の方が大きかったのか、ユーリは思わず意地悪なことを言ってしまう。
「知ってる? 悪い奴だって言われているんだ。そんな僕と仲良くなりたい?」
ユーリが可愛がっていた猫エーシャを川に投げ捨てたのも、従弟のヴラドレンが死んでしまったのも全てユーリのせいになっていたのだ。
するとアリョーナからはこんな言葉が返って来た。
「……本当の悪人は、そんなこと言わないはずです。この前読んだ本に書いてありました。それに、たとえ悪人だったとしても、生きていたらやり直すことが出来ます」
今まで孤独だったせいか、ユーリの心に幼いアリョーナの言葉はスッと染み渡った。
「生きていたら……やり直すことが出来る……ね」
ユーリはほんのり口角を上げた。
目の前にいるまだ七歳のアリョーナが、天使のように見えた。
彼女の艶やかでふわふわとしたブロンドの髪、真っ直ぐなアクアマリンの目。
まさに、穢れを知らない天使だった。
その後、足元で弱っている小さな黒猫を見つけたユーリとアリョーナ。
ユーリは死んでしまった猫エーシャを思い出し、子猫を急いで保護した。
その甲斐あり、子猫は死なずに済んだ。
ユーリはホッとしていた。
「子猫、死ななくて良かった」
ユーリは子猫を撫でながらそう呟いた。
「ええ。それに、貴方もですわ。あんな寒い中、川に入ろうとしていたのですもの」
そう言うアリョーナの表情は、ユーリのことを本気で案じてくれているようだった。
アリョーナの真っ直ぐで美しいアクアマリンの目。まだ幼いが慈愛に満ちた表情。それはまるでユーリを包み込んでくれるかのようである。
「……心配かけてごめん、アリョーナ」
ユーリはここで決意する。
アリョーナの為に生きようと。
全てに絶望し、自ら死を選ぼうとしたユーリを救ってくれたアリョーナ。
ユーリは自分の全てをアリョーナに捧げよう、どんな手を使ってでもアリョーナを守ろうと誓ったのだ。
「ようやく名前を呼んでくれましたわね。ユーリお義兄様」
アリョーナは純真無垢な、天使のような笑みだった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
ユーリは虚ろだが愛おしげな目で眠るアリョーナを見つめている。
「ストロガノフ伯爵家に来て、アリョーナに出会ってからは天国のようだったよ。だけど……僕は知ってしまったんだ。君自身もまだ気付いていない、君に関する重要な秘密をね」
ユーリは眠っているアリョーナの頬にキスを落とす。
「アリョーナ、君を守る為には……君の両親を何とかしないといけなかったんだ……」
ユーリはポツリと呟いた。
ユーリはストロガノフ伯爵家にやって来てから、アリョーナや彼女の両親に関する重大な秘密を知ってしまったのだ。
ストロガノフ伯爵家には、アリョーナの知らない悍ましい闇があったのだ。
ユーリはレポフスキー公爵家から追い出され、遠縁であるストロガノフ伯爵家に引き取られた。
しかし、そこでも地獄が待っていた。
アリョーナの母エヴドキヤは、アリョーナに婿を取らせることを望んでいたのた。
しかしユーリがストロガノフ伯爵家に引き取られたことで、彼が次期当主になったのだ。
エヴドキヤはそれを認めることが出来ず、ユーリに暴力を振るう。
「あんたがこの家に来たせいでアリョーナは将来ストロガノフ伯爵家を出て行かなくてはならなくなったのよ! あんたさえいなければ!」
甲高い声で叫ぶエヴドキヤ。それと同時にユーリの体を鞭で打つ。
激しい痛みのあまり、ユーリは倒れ込むのだがエヴドキヤは容赦しなかった。
そして更なる不幸がユーリを襲う。
ユーリがエヴドキヤから暴力を振るわれている時、エヴドキヤは自身の暴力の目撃者をなくす為に使用人達を遠ざけていた。よってユーリはエヴドキヤの私室で彼女と部屋に二人きりである。
ユーリがエヴドキヤの私室に入り、エヴドキヤと二人でいるところを目撃したアリョーナの父イーゴリは、ユーリに対して激昂する。
「お前は私の妻と二人で何をしていた!? どうして黙っている!? 私に言えないことでもしていたのか!?」
イーゴリはエヴドキヤを深く愛しているのだが、エヴドキヤはイーゴリに対して冷たかった。イーゴリはそれでもエヴドキヤに優しく歩み寄り続けているが、効果はあまりない。しかしそんな中、ユーリがエヴドキヤの私室に入り、彼女と二人でいたという事実を知り、イーゴリは我を忘れるほどユーリを殴っていた。更には暖炉にくべられた熱い木を背中に押し当てられることもあった。
レポフスキー公爵家の叔父一家から逃れられたと思いきや、ストロガノフ伯爵家でも虐げられ、暴力を振るわれ続けるユーリだった。
(もう……疲れた……。父上、母上、僕もそちらに行きますね)
ある寒い日、ユーリは遂に死ぬことを決意してしまう。
服を脱ぎ、ストロガノフ伯爵城近くにある川に入ろうとした。
この寒さなら確実に凍死出来るだろうとユーリは考えていた。
しかしその時、背後から勢い良く何かに抱きしめられた。
背中が暖かくなる。
「駄目ですわ!」
まだ幼くあどけない声だ。アリョーナである。
「君……どうして……?」
ユーリはムーンストーンの目をハッと見開き、アリョーナの方を振り向いた。
「こんな寒い中、川に入ったら死んでしまいます!」
愛らしくたどたどしい声のアリョーナ。しかし、真っ直ぐで必死だった。
ユーリは少しだけ泣きそうになる。色々なものが溢れ出しそうだった。
「……別に僕が死んでも誰も悲しまないさ」
ユーリは零れ落ちそうな涙を堪えて自嘲した。
「私が悲しいですわ。せっかくお義兄様が出来たのに……。もっと仲良くなりたいと思っていますのに」
アリョーナの言葉に嘘偽りがないことを感じたユーリ。しかし、今までの絶望の方が大きかったのか、ユーリは思わず意地悪なことを言ってしまう。
「知ってる? 悪い奴だって言われているんだ。そんな僕と仲良くなりたい?」
ユーリが可愛がっていた猫エーシャを川に投げ捨てたのも、従弟のヴラドレンが死んでしまったのも全てユーリのせいになっていたのだ。
するとアリョーナからはこんな言葉が返って来た。
「……本当の悪人は、そんなこと言わないはずです。この前読んだ本に書いてありました。それに、たとえ悪人だったとしても、生きていたらやり直すことが出来ます」
今まで孤独だったせいか、ユーリの心に幼いアリョーナの言葉はスッと染み渡った。
「生きていたら……やり直すことが出来る……ね」
ユーリはほんのり口角を上げた。
目の前にいるまだ七歳のアリョーナが、天使のように見えた。
彼女の艶やかでふわふわとしたブロンドの髪、真っ直ぐなアクアマリンの目。
まさに、穢れを知らない天使だった。
その後、足元で弱っている小さな黒猫を見つけたユーリとアリョーナ。
ユーリは死んでしまった猫エーシャを思い出し、子猫を急いで保護した。
その甲斐あり、子猫は死なずに済んだ。
ユーリはホッとしていた。
「子猫、死ななくて良かった」
ユーリは子猫を撫でながらそう呟いた。
「ええ。それに、貴方もですわ。あんな寒い中、川に入ろうとしていたのですもの」
そう言うアリョーナの表情は、ユーリのことを本気で案じてくれているようだった。
アリョーナの真っ直ぐで美しいアクアマリンの目。まだ幼いが慈愛に満ちた表情。それはまるでユーリを包み込んでくれるかのようである。
「……心配かけてごめん、アリョーナ」
ユーリはここで決意する。
アリョーナの為に生きようと。
全てに絶望し、自ら死を選ぼうとしたユーリを救ってくれたアリョーナ。
ユーリは自分の全てをアリョーナに捧げよう、どんな手を使ってでもアリョーナを守ろうと誓ったのだ。
「ようやく名前を呼んでくれましたわね。ユーリお義兄様」
アリョーナは純真無垢な、天使のような笑みだった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
ユーリは虚ろだが愛おしげな目で眠るアリョーナを見つめている。
「ストロガノフ伯爵家に来て、アリョーナに出会ってからは天国のようだったよ。だけど……僕は知ってしまったんだ。君自身もまだ気付いていない、君に関する重要な秘密をね」
ユーリは眠っているアリョーナの頬にキスを落とす。
「アリョーナ、君を守る為には……君の両親を何とかしないといけなかったんだ……」
ユーリはポツリと呟いた。
ユーリはストロガノフ伯爵家にやって来てから、アリョーナや彼女の両親に関する重大な秘密を知ってしまったのだ。
ストロガノフ伯爵家には、アリョーナの知らない悍ましい闇があったのだ。
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