3 / 8
変化
シャーリーは次の夜会では頑張ってベアトリスから教えられた通りに振る舞ってみた。
「おお、シャーリー、素晴らしい」
「立派な淑女になったわね」
クレイグとマージェリーは目を見開いて驚いているが、嬉しそうである。
それだけでなく、シャーリーは他の令嬢や令息達にマナーなどで苦笑されたりすることがなくなった。
(コンプトン嬢から教えてもらった通りにしてみたけど、正解だったみたいね。やっぱりコンプトン嬢は、悪役令嬢じゃなくて良い人だわ。今度お礼言っておかないと)
シャーリーはふふっと微笑んだ。もうベアトリスを悪役令嬢だなどとは思っていない。
その時、シャーリーの元へやって来る令息がいた。
(こういう時も、コンプトン嬢から教えてもらった通りに)
シャーリーは落ち着いてカーテシーで礼を執る。
「貴女がクリフォード嬢ですね?」
「はい。クリフォード男爵家長女、シャーリー・クリフォードと申します。お声がけありがとうございます」
シャーリーはゆっくり体勢を戻す。
「テヴァルー子爵家三男、ヴィンセント・エドヴィン・テヴァルーです。クリフォード嬢、もしよろしければ僕とダンスをしていただけませんか?」
ヴィンセントはシャーリーに手を差し出す。
(ダンス……そういえば成人の儀でお義父様としかしたことがなかったわね。上手くダンスできるかしら?)
ほんの少し不安になるシャーリー。
「クリフォード嬢? どうかしましたか?」
ヴィンセントは不思議そうに首を傾げている。
「ああ、いえ。ただ、テヴァルー卿の足を踏んでしまわないか少し不安で……」
シャーリーは自信なさげに苦笑する。
「大丈夫です。妹のダンスの練習に付き合わされて数え切れない程足を踏まれたので、避けるのは得意になりました」
クスッと笑うヴィンセント。
「まあ」
シャーリーも思わずクスッと笑ってしまう。
「でしたら、きちんと避けてくださいね」
シャーリーはヴィンセントの手を取った。
シャーリーはヴィンセントにリードされ、ダンスを始めた。
(あ、このステップ、習ったものだわ。えっと、右足を前に出してそれから……)
家庭教師からダンスを習った時のことを思い出すシャーリー。
「クリフォード嬢、もしかして緊張しています?」
「ええ、少しだけ」
「大丈夫ですよ。僕が上手くリードしますから」
優しく微笑むヴィンセント。
「ありがとうございます」
シャーリーは少し安心したように微笑み、ヴィンセントを見つめる。
(テヴァルー卿って……失礼を承知だけど、ぱっと見は地味だけれどよく見たら美形だわ)
赤毛に茶色の目のヴィンセント。一見地味に見えるが、シャーリーが思う通り意外と美形であった。
こうして、シャーリーは無事にヴィンセントとのダンスを終えることが出来た。
「テヴァルー卿、ありがとうございました」
ふふっと微笑むシャーリー。
「ヴィンセントで構いません。堅苦しい敬称も付けなくていいです」
シャーリー優しく微笑むヴィンセント。
「承知いたしました、ヴィンセント様。私のこともシャーリーと呼んでください」
「ありがとうございます、シャーリー嬢。シャーリー嬢のダンスや所作は立派です。貴女の事情は知っていますが、僕は貴女が立派な令嬢に見えます」
優しく微笑むヴィンセント。
「ヴィンセント様……」
シャーリーはグレーの目を丸くし、少し意外そうな表情になった。
(コンプトン嬢のおかげで、テヴァルー卿にそう言ってもらえた……。またコンプトン嬢に会えたらお礼を言わないと)
シャーリーはベアトリスのことを思い出し、微笑んだ。
「ありがとうございます。ですが、これはコンプトン嬢のお陰でございます。コンプトン嬢のことはご存知ですか?」
「もちろん存じ上げています。コンプトン侯爵家のご長女で、令嬢の鑑と言われていますね」
「ええ、そうなんです。コンプトン嬢は、まだ貴族社会に慣れない私にマナーや所作など、色々と教えてくださったのです。私が最低限出来るようになるまで付き合ってくださったのです。本当に、コンプトン嬢には感謝しています。あのお方は本当に素晴らしいです」
シャーリーはグレーの目をキラキラと輝かせていた。
「そうでしたか。シャーリー嬢の努力の賜物だとも思いますが、貴女は謙虚なのですね」
ヴィンセントは好ましげに微笑んだ。
「おっと、噂をすれば、コンプトン嬢がこちらにやって来ますよ」
「あら」
ヴィンセントに言われ、シャーリーはベアトリスが優雅に歩いて来ていることに気付く。シャーリーはベアトリスから教わった通り、カーテシーで礼を執った。ヴィンセントもボウ・アンド・スクレープで礼を執る。
「ご機嫌よう、テヴァルー卿、クリフォード嬢」
凛として優雅な声が頭上から降ってくる。
「「お声がけいただき光栄でございます」」
シャーリーとヴィンセントは同時に体勢を戻した。
「クリフォード嬢、先程から貴女の声が聞こえておりましたわ。私のことをそんなに褒めても何も出ませんわよ」
ほんのり顔を赤ているベアトリス。照れているようだ。
「別に何も出していただかなくてもいいです。ただ、コンプトン嬢に感謝しているのです。コンプトン嬢、私に色々教えてくださり本当にありがとうございます」
シャーリーはグレーの目を真っ直ぐベアトリスに向ける。
「……私は当たり前のことをしただけでございますわ」
照れながら目を逸らすベアトリス。
「それに、クリフォード嬢も努力をなさったでしょう。テヴァルー卿も貴女の努力を認めておりましてよ」
「ただ教わっただけでは所作の美しさは身に付かないですからね」
ヴィンセントは茶色の目を優しげに細める。
「本当にありがとうございます、コンプトン嬢、ヴィンセント様」
シャーリーはグレーの目を嬉しそうに輝かせた。
こうしてシャーリーは、社交界でベアトリスとヴィンセントと仲良くなるのであった。
「おお、シャーリー、素晴らしい」
「立派な淑女になったわね」
クレイグとマージェリーは目を見開いて驚いているが、嬉しそうである。
それだけでなく、シャーリーは他の令嬢や令息達にマナーなどで苦笑されたりすることがなくなった。
(コンプトン嬢から教えてもらった通りにしてみたけど、正解だったみたいね。やっぱりコンプトン嬢は、悪役令嬢じゃなくて良い人だわ。今度お礼言っておかないと)
シャーリーはふふっと微笑んだ。もうベアトリスを悪役令嬢だなどとは思っていない。
その時、シャーリーの元へやって来る令息がいた。
(こういう時も、コンプトン嬢から教えてもらった通りに)
シャーリーは落ち着いてカーテシーで礼を執る。
「貴女がクリフォード嬢ですね?」
「はい。クリフォード男爵家長女、シャーリー・クリフォードと申します。お声がけありがとうございます」
シャーリーはゆっくり体勢を戻す。
「テヴァルー子爵家三男、ヴィンセント・エドヴィン・テヴァルーです。クリフォード嬢、もしよろしければ僕とダンスをしていただけませんか?」
ヴィンセントはシャーリーに手を差し出す。
(ダンス……そういえば成人の儀でお義父様としかしたことがなかったわね。上手くダンスできるかしら?)
ほんの少し不安になるシャーリー。
「クリフォード嬢? どうかしましたか?」
ヴィンセントは不思議そうに首を傾げている。
「ああ、いえ。ただ、テヴァルー卿の足を踏んでしまわないか少し不安で……」
シャーリーは自信なさげに苦笑する。
「大丈夫です。妹のダンスの練習に付き合わされて数え切れない程足を踏まれたので、避けるのは得意になりました」
クスッと笑うヴィンセント。
「まあ」
シャーリーも思わずクスッと笑ってしまう。
「でしたら、きちんと避けてくださいね」
シャーリーはヴィンセントの手を取った。
シャーリーはヴィンセントにリードされ、ダンスを始めた。
(あ、このステップ、習ったものだわ。えっと、右足を前に出してそれから……)
家庭教師からダンスを習った時のことを思い出すシャーリー。
「クリフォード嬢、もしかして緊張しています?」
「ええ、少しだけ」
「大丈夫ですよ。僕が上手くリードしますから」
優しく微笑むヴィンセント。
「ありがとうございます」
シャーリーは少し安心したように微笑み、ヴィンセントを見つめる。
(テヴァルー卿って……失礼を承知だけど、ぱっと見は地味だけれどよく見たら美形だわ)
赤毛に茶色の目のヴィンセント。一見地味に見えるが、シャーリーが思う通り意外と美形であった。
こうして、シャーリーは無事にヴィンセントとのダンスを終えることが出来た。
「テヴァルー卿、ありがとうございました」
ふふっと微笑むシャーリー。
「ヴィンセントで構いません。堅苦しい敬称も付けなくていいです」
シャーリー優しく微笑むヴィンセント。
「承知いたしました、ヴィンセント様。私のこともシャーリーと呼んでください」
「ありがとうございます、シャーリー嬢。シャーリー嬢のダンスや所作は立派です。貴女の事情は知っていますが、僕は貴女が立派な令嬢に見えます」
優しく微笑むヴィンセント。
「ヴィンセント様……」
シャーリーはグレーの目を丸くし、少し意外そうな表情になった。
(コンプトン嬢のおかげで、テヴァルー卿にそう言ってもらえた……。またコンプトン嬢に会えたらお礼を言わないと)
シャーリーはベアトリスのことを思い出し、微笑んだ。
「ありがとうございます。ですが、これはコンプトン嬢のお陰でございます。コンプトン嬢のことはご存知ですか?」
「もちろん存じ上げています。コンプトン侯爵家のご長女で、令嬢の鑑と言われていますね」
「ええ、そうなんです。コンプトン嬢は、まだ貴族社会に慣れない私にマナーや所作など、色々と教えてくださったのです。私が最低限出来るようになるまで付き合ってくださったのです。本当に、コンプトン嬢には感謝しています。あのお方は本当に素晴らしいです」
シャーリーはグレーの目をキラキラと輝かせていた。
「そうでしたか。シャーリー嬢の努力の賜物だとも思いますが、貴女は謙虚なのですね」
ヴィンセントは好ましげに微笑んだ。
「おっと、噂をすれば、コンプトン嬢がこちらにやって来ますよ」
「あら」
ヴィンセントに言われ、シャーリーはベアトリスが優雅に歩いて来ていることに気付く。シャーリーはベアトリスから教わった通り、カーテシーで礼を執った。ヴィンセントもボウ・アンド・スクレープで礼を執る。
「ご機嫌よう、テヴァルー卿、クリフォード嬢」
凛として優雅な声が頭上から降ってくる。
「「お声がけいただき光栄でございます」」
シャーリーとヴィンセントは同時に体勢を戻した。
「クリフォード嬢、先程から貴女の声が聞こえておりましたわ。私のことをそんなに褒めても何も出ませんわよ」
ほんのり顔を赤ているベアトリス。照れているようだ。
「別に何も出していただかなくてもいいです。ただ、コンプトン嬢に感謝しているのです。コンプトン嬢、私に色々教えてくださり本当にありがとうございます」
シャーリーはグレーの目を真っ直ぐベアトリスに向ける。
「……私は当たり前のことをしただけでございますわ」
照れながら目を逸らすベアトリス。
「それに、クリフォード嬢も努力をなさったでしょう。テヴァルー卿も貴女の努力を認めておりましてよ」
「ただ教わっただけでは所作の美しさは身に付かないですからね」
ヴィンセントは茶色の目を優しげに細める。
「本当にありがとうございます、コンプトン嬢、ヴィンセント様」
シャーリーはグレーの目を嬉しそうに輝かせた。
こうしてシャーリーは、社交界でベアトリスとヴィンセントと仲良くなるのであった。
あなたにおすすめの小説
え〜婚約者さん厳しい〜(笑)私ならそんなこと言わないのになぁ
ばぅ
恋愛
「え〜婚約者さん、厳しい〜。私ならそんなこと言わないのになぁ」
小言の多い私を笑い、マウントを取ってくる幼馴染令嬢。私が言葉に詰まっていると、豪快で声のデカい婚約者が笑い飛ばした。
「そうだな、だからお前は未だに婚約相手が決まらないんだろうな!」
悪気ゼロ(?)の大声正論パンチで、幼馴染をバッサリ撃退!
私の「厳しさ」を誰よりも愛する太陽の騎士様との、スカッと痛快ラブコメディ。
「虫に話しかけてるお前が気持ち悪い」と追放された令嬢——領地の蜂蜜が消え、薬も蝋燭も作れなくなった
歩人
ファンタジー
「虫に話しかけてる姿が気持ち悪い」——辺境伯令嬢ヒルデは、領地の養蜂を一手に管理する「蜂の女王」だった。婚約者はその姿を蔑み、公衆の面前で婚約を破棄した。ヒルデが領地を去って一週間後、蜂群が一斉に巣箱を捨てて飛び去った。蜂蜜は万能薬の基剤であり、蜜蝋は蝋燭と封蝋の原料。薬も作れず、夜は闇に包まれ、公文書の封印もできなくなった。冬が来る前に蜂蜜漬けの保存食が作れず、領民が飢え始めた。婚約者が別の養蜂家を雇ったが、蜂は全く懐かなかった——蜂は「女王を覚えている」。ヒルデ以外の人間には、針を向けた。
クズ婚約者に「鍵屋風情」と罵られた令嬢の半年後——王宮の宝物庫は、誰にも開けられなくなりました
歩人
ファンタジー
ロックハート伯爵家のリディアは、王家の「鍵守《かぎもり》」だ。王宮の千を超える錠前は、彼女と父が二代で管理している。
リディアには稀有な才能があった。鍵穴に耳を当てるだけで、内側のピンの位置が音として聞こえる。世に二人といない「鍵聴《かぎぎき》」の才。
しかし婚約者のオーランド侯爵子息は、彼女を「鍵屋風情の娘」と嘲り、職人の家を恥じて婚約を破棄した。
「鍵など、鍛冶屋に頼めばすぐ作れる」
左様でございますか。リディアは黙って頭を下げ、王宮を辞した。
半年後、リディアの父が老いて引退する。王宮の宝物庫はもう誰にも開けられない。即位式の宝冠も、王家陵墓の扉も、暗号文書庫も——全てが沈黙する。
錠前は、開ける順番を間違えた者を、永遠に拒みます。
悪役令嬢のお父様
ばぅ
恋愛
卒業パーティーで婚約破棄。
しかし、その断罪劇に現れたのは、悪役令嬢ではなく父親である筆頭公爵。
家と家、そして王位継承まで絡む婚約を、子供だけで勝手に壊せるわけがない。
「家の話であれば、私を通していただこうか」
その一言で、恋に酔った王太子の“物語”は終わりを告げて――!?
これは、婚約破棄を現実でやってしまった愚かな王太子に、大人たちが正論を叩き込むお話。
悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)
ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。
王太子に「戦友としか思えない」と言われたので、婚約を解消しました
明衣令央
恋愛
婚約者である王太子ヘンリーから「君のことは戦友としか思えない」と告げられた、公爵令嬢アリスティア。
十年以上の王妃教育を積んできた彼女は、静かに婚約解消を受け入れる。
一年後、幸せな結婚を迎えた彼女にとって、ヘンリーのその後は――もうどうでもいいことだった。
「代わりはいくらでもいる」とクビにされた事務官令嬢ですが、全書類に私の「指紋認証魔術」をかけていたのを忘れましたか?
クラム
恋愛
「君の代わりなど、掃いて捨てるほどいる」――。婚約者である第二王子にそう告げられ、事務官シルフィアは王宮を追放された。だが、傲慢な王子は知らなかった。王宮の全文書、宝物庫、果ては防衛結界に至るまで、彼女の「魔紋認証」で封印されていることを。彼女が隣国の冷徹な大公に熱烈に溺愛される中、王宮は物理的に「開かない」絶望の牢獄と化していく。
転生令嬢は婚約破棄されましたが、実は隣国王の最愛でした 〜裏切られた令嬢の華麗なるざまぁと幸福な再会〜
Airi
恋愛
学園の華と讃えられた令嬢クラリスは、王太子から突然の婚約破棄を告げられる。嘲笑と哀れみの視線を浴びる中、手を差し伸べたのは隣国の若き王だった。かつて命を救い合った二人の再会、暴かれる陰謀、そして“ざまぁ”の逆転劇が今、始まる。──愛を信じることを諦めなかった少女に降り注ぐ、溺愛の嵐。