悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います

宝月 蓮

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変化

 シャーリーは次の夜会では頑張ってベアトリスから教えられた通りに振る舞ってみた。
「おお、シャーリー、素晴らしい」
「立派な淑女になったわね」
 クレイグとマージェリーは目を見開いて驚いているが、嬉しそうである。
 それだけでなく、シャーリーは他の令嬢や令息達にマナーなどで苦笑されたりすることがなくなった。
(コンプトン嬢から教えてもらった通りにしてみたけど、正解だったみたいね。やっぱりコンプトン嬢は、悪役令嬢じゃなくて良い人だわ。今度お礼言っておかないと)
 シャーリーはふふっと微笑んだ。もうベアトリスを悪役令嬢だなどとは思っていない。
 その時、シャーリーの元へやって来る令息がいた。
(こういう時も、コンプトン嬢から教えてもらった通りに)
 シャーリーは落ち着いてカーテシーで礼をる。
「貴女がクリフォード嬢ですね?」
「はい。クリフォード男爵家長女、シャーリー・クリフォードと申します。お声がけありがとうございます」
 シャーリーはゆっくり体勢を戻す。
「テヴァルー子爵家三男、ヴィンセント・エドヴィン・テヴァルーです。クリフォード嬢、もしよろしければ僕とダンスをしていただけませんか?」
 ヴィンセントはシャーリーに手を差し出す。
(ダンス……そういえば成人デビュタントの儀でお義父とう様としかしたことがなかったわね。上手くダンスできるかしら?)
 ほんの少し不安になるシャーリー。
「クリフォード嬢? どうかしましたか?」
 ヴィンセントは不思議そうに首を傾げている。
「ああ、いえ。ただ、テヴァルー卿の足を踏んでしまわないか少し不安で……」
 シャーリーは自信なさげに苦笑する。
「大丈夫です。妹のダンスの練習に付き合わされて数え切れない程足を踏まれたので、避けるのは得意になりました」
 クスッと笑うヴィンセント。
「まあ」
 シャーリーも思わずクスッと笑ってしまう。
「でしたら、きちんと避けてくださいね」
 シャーリーはヴィンセントの手を取った。
 シャーリーはヴィンセントにリードされ、ダンスを始めた。
(あ、このステップ、習ったものだわ。えっと、右足を前に出してそれから……)
 家庭教師からダンスを習った時のことを思い出すシャーリー。
「クリフォード嬢、もしかして緊張しています?」
「ええ、少しだけ」
「大丈夫ですよ。僕が上手くリードしますから」
 優しく微笑むヴィンセント。
「ありがとうございます」
 シャーリーは少し安心したように微笑み、ヴィンセントを見つめる。
(テヴァルー卿って……失礼を承知だけど、ぱっと見は地味だけれどよく見たら美形だわ)
 赤毛に茶色の目のヴィンセント。一見地味に見えるが、シャーリーが思う通り意外と美形であった。
 こうして、シャーリーは無事にヴィンセントとのダンスを終えることが出来た。
「テヴァルー卿、ありがとうございました」
 ふふっと微笑むシャーリー。
「ヴィンセントで構いません。堅苦しい敬称も付けなくていいです」
 シャーリー優しく微笑むヴィンセント。
「承知いたしました、ヴィンセント様。私のこともシャーリーと呼んでください」
「ありがとうございます、シャーリー嬢。シャーリー嬢のダンスや所作は立派です。貴女の事情は知っていますが、僕は貴女が立派な令嬢に見えます」
 優しく微笑むヴィンセント。
「ヴィンセント様……」
 シャーリーはグレーの目を丸くし、少し意外そうな表情になった。
(コンプトン嬢のおかげで、テヴァルー卿にそう言ってもらえた……。またコンプトン嬢に会えたらお礼を言わないと)
 シャーリーはベアトリスのことを思い出し、微笑んだ。
「ありがとうございます。ですが、これはコンプトン嬢のお陰でございます。コンプトン嬢のことはご存知ですか?」
「もちろん存じ上げています。コンプトン侯爵家のご長女で、令嬢の鑑と言われていますね」
「ええ、そうなんです。コンプトン嬢は、まだ貴族社会に慣れない私にマナーや所作など、色々と教えてくださったのです。私が最低限出来るようになるまで付き合ってくださったのです。本当に、コンプトン嬢には感謝しています。あのお方は本当に素晴らしいです」
 シャーリーはグレーの目をキラキラと輝かせていた。
「そうでしたか。シャーリー嬢の努力の賜物だとも思いますが、貴女は謙虚なのですね」
 ヴィンセントは好ましげに微笑んだ。
「おっと、噂をすれば、コンプトン嬢がこちらにやって来ますよ」
「あら」
 ヴィンセントに言われ、シャーリーはベアトリスが優雅に歩いて来ていることに気付く。シャーリーはベアトリスから教わった通り、カーテシーで礼を執った。ヴィンセントもボウ・アンド・スクレープで礼を執る。
「ご機嫌よう、テヴァルー卿、クリフォード嬢」
 凛として優雅な声が頭上から降ってくる。
「「お声がけいただき光栄でございます」」
 シャーリーとヴィンセントは同時に体勢を戻した。
「クリフォード嬢、先程から貴女の声が聞こえておりましたわ。わたくしのことをそんなに褒めても何も出ませんわよ」
 ほんのり顔を赤ているベアトリス。照れているようだ。
「別に何も出していただかなくてもいいです。ただ、コンプトン嬢に感謝しているのです。コンプトン嬢、私に色々教えてくださり本当にありがとうございます」
 シャーリーはグレーの目を真っ直ぐベアトリスに向ける。
「……わたくしは当たり前のことをしただけでございますわ」
 照れながら目を逸らすベアトリス。
「それに、クリフォード嬢も努力をなさったでしょう。テヴァルー卿も貴女の努力を認めておりましてよ」
「ただ教わっただけでは所作の美しさは身に付かないですからね」
 ヴィンセントは茶色の目を優しげに細める。
「本当にありがとうございます、コンプトン嬢、ヴィンセント様」
 シャーリーはグレーの目を嬉しそうに輝かせた。
 こうしてシャーリーは、社交界でベアトリスとヴィンセントと仲良くなるのであった。
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