13 / 20
過去の後悔、眩しい存在
しおりを挟む
『お兄様! こちらですよー!』
まだ幼い妹が前方から振り返り、あどけない笑顔で自分を呼んでいる。ふわふわとした褐色の癖毛にアメジストのような紫の目の少女だ。
『兄上! 早く来てください!』
まだ幼い弟が懸命に自分を呼んでいる。少女と同じくふわふわとした褐色の癖毛、アクアマリンのような青い目の少年だ。
その時、二人の後ろから闇が生まれる。闇は大きくなり、二人に襲いかかった。
(やめろ! 待ってくれ!)
手を伸ばすが間に合わない。
二人は闇に呑まれてしまった。
オズヴァルトはハッと目を覚ます。
「……あいつらの夢を見るとはな。……クラウディア……ハルトヴィヒ……」
オズヴァルトは苦笑し、そのまま起き上がる。
すると、扉がノックされる音が聞こえた。
「オズヴァルト様、起きていらっしゃいますでしょうか?」
オズヴァルトの侍従である。
「ああ、起きているぞ。入ってくれて構わない」
オズヴァルトは侍従を部屋に入れ、朝の支度を始めた。
「オズヴァルト様、本日はノルトマルク家の騎士団と共にランツベルク領へ向かわれるのですね」
「ああ、ランツベルク辺境伯家の騎士団と数日間に渡る合同練習だ。それに、ユリウスやランツベルク辺境伯閣下とも情報交換を行う」
凛とした表情でそう答えるオズヴァルトであった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
ガーメニー王国北東部にあるノルトマルク辺境伯領から王国南東部にあるランツベルク辺境伯領へ向かうには、馬車だと数日かかる。よって鉄道を利用して移動する。
ランツベルク領の鉄道駅には、迎えの馬車が数台来ていた。
オズヴァルト達はその馬車に乗り込み、ランツベルク城へ向かう。
「やあ、オズヴァルト。君達の部屋を用意してある。準備出来次第合同練習を始めようか」
「ああ、ユリウス。いつもすまないな」
「同じ辺境伯家同士だ。協力体制は築いておきたい」
オズヴァルトはユリウスと軽く挨拶を交わした後、引き連れた騎士達と準備をして合同練習を開始した。
「オズヴァルト、剣術の腕を上げたね」
「そりゃどうも。でも、まだ俺はお前に勝てたことないぞ、ユリウス」
オズヴァルトはフッと口角を上げた。
休憩中、オズヴァルトはユリウスと軽口を叩き合っている。
「そうだ、オズヴァルト、明後日は騎士団の練習が休みだ。せっかくだからランツベルク領とファルケンハウゼン領の境界にある湖へ行かないか? ティアナ嬢と彼女の姉君も来るんだ。一応ティアナ嬢の姉君とファルケンハウゼン男爵家の人身売買について色々話す予定でもあるけれど」
意味ありげにニヤリと笑うユリウス。
「マルグリット嬢か……」
どこか遠くを見つめているオズヴァルト。
「まあ良いだろう」
オズヴァルトはフッと微かに口角を上げた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
そして二日が経過し、マルグリット達と会う日になった。
湖には既にマルグリットとティアナが到着している。
二人とも白猫のシュネーと戯れている様子であった。
「やあ、ティアナ嬢。待たせてごめんね」
ユリウスはティアナに紳士的で甘い笑みを向けた。アンバーの目はこの上なく優しい。
「ユリウス様」
ティアナは少し嬉しそうに、ムーンストーンの目を輝かせている。
「貴方なんか一生来なくても良かったわ」
ティアナの隣にいたマルグリットはいつもより機嫌が悪そうである。いつも以上にユリウスへの敵愾心を露わにしていた。
「私も別に君に会いに来たわけじゃないさ」
憎まれ口を叩くユリウスを
「別に私に会いに来なくても結構。それより、私の可愛いティアナを貴方みたいな男と二人きりにするわけにはいかないわ」
ティアナの前に庇い立つマルグリット。
「お姉様もユリウス様も落ち着いてください。ノルトマルク卿もいらしていることですし」
シュネーを抱いているティアナがやんわりと二人を宥める。
シュネーも以前より大きくなっており、もうすぐ大人である。しかしまだ甘えん坊なのか、シュネーは「にゃー」と鳴き、抱かれたままティアナに体をすり寄せている。
「……何だか猫のシュネーが羨ましいな」
ユリウスはボソッと呟いた。
「ユリウス、お前なあ……猫相手に嫉妬するなよ」
それに対してオズヴァルトは苦笑した。
「ご機嫌よう、オズヴァルト様。今日もこの男の相手は大変でしょう」
オズヴァルトに挨拶をするマルグリット。ユリウスへの攻撃も忘れていない。
「本当に君は私に対して失礼だね」
ユリウスは苦笑する。
「マルグリット嬢、俺は特に大丈夫だ。ユリウスとは旧知の中だからな」
オズヴァルトはハハっと笑った。
その後、マルグリットとユリウスの攻防戦があったものの、マルグリットとオズヴァルト、ティアナとユリウスに分かれていた。
「ティアナは大丈夫かしら……?」
心配そうにため息をつくマルグリット。
「ユリウスも君の妹君に対しては特に変なことはしないと思うぞ」
オズヴァルトはフッと笑う。
「……ティアナがあの男といて幸せなのなら……それで良いと思うけれど……」
マルグリットは俯いて唇を噛み締める。
「寂しい……か?」
「え……?」
マルグリットはオズヴァルトからの言葉にターコイズの目を見開く。
「ユリウスに妹君を取られたみたいで寂しいのかと思って」
オズヴァルトのアメジストの目は、マルグリットを見守るかのようである。
「別に取られてないわよ! でも……そうね。そうなのかもしれないわ。ティアナが私から離れてしまうのは……寂しいわね」
マルグリットは胸の中に何かがストンと落ちたような感覚になった。
「ティアナには私よりも幸せになってもらいたい、ティアナと一緒にいたい、ティアナを守りたい、その気持ちばかりよ。だってティアナは私の可愛い妹だもの」
マルグリットはスッキリとした表情である。
「そう……か」
オズヴァルトはフッと笑った。しかし、アメジストの目はどこか悲しげである。
マルグリットはそれを見逃さなかった。
「オズヴァルト様? 何故そんな風に笑うのかしら?」
「そんな風に……とは?」
「あら、自覚がないのね。オズヴァルト様、少し悲しそうよ」
マルグリットのターコイズの目は、真っ直ぐオズヴァルトを見ている。
「悲しい……か」
オズヴァルトは俯いて、かつての自分を思い出す。
(確かに悲しい。あの時別の選択をしていたらという後悔ばかりだ……)
オズヴァルトはふと顔を上げ、マルグリットに目を向けた。
(マルグリット嬢……君はもしかしたらかつての俺が出来なかったことをしようとしているのかもしれない)
目の前にいるマルグリットは、オズヴァルトにとって眩しく見えた。
「マルグリット嬢……君に……聞いて欲しいことがある」
オズヴァルトはゆっくりと自身のことを話し始めた。
まだ幼い妹が前方から振り返り、あどけない笑顔で自分を呼んでいる。ふわふわとした褐色の癖毛にアメジストのような紫の目の少女だ。
『兄上! 早く来てください!』
まだ幼い弟が懸命に自分を呼んでいる。少女と同じくふわふわとした褐色の癖毛、アクアマリンのような青い目の少年だ。
その時、二人の後ろから闇が生まれる。闇は大きくなり、二人に襲いかかった。
(やめろ! 待ってくれ!)
手を伸ばすが間に合わない。
二人は闇に呑まれてしまった。
オズヴァルトはハッと目を覚ます。
「……あいつらの夢を見るとはな。……クラウディア……ハルトヴィヒ……」
オズヴァルトは苦笑し、そのまま起き上がる。
すると、扉がノックされる音が聞こえた。
「オズヴァルト様、起きていらっしゃいますでしょうか?」
オズヴァルトの侍従である。
「ああ、起きているぞ。入ってくれて構わない」
オズヴァルトは侍従を部屋に入れ、朝の支度を始めた。
「オズヴァルト様、本日はノルトマルク家の騎士団と共にランツベルク領へ向かわれるのですね」
「ああ、ランツベルク辺境伯家の騎士団と数日間に渡る合同練習だ。それに、ユリウスやランツベルク辺境伯閣下とも情報交換を行う」
凛とした表情でそう答えるオズヴァルトであった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
ガーメニー王国北東部にあるノルトマルク辺境伯領から王国南東部にあるランツベルク辺境伯領へ向かうには、馬車だと数日かかる。よって鉄道を利用して移動する。
ランツベルク領の鉄道駅には、迎えの馬車が数台来ていた。
オズヴァルト達はその馬車に乗り込み、ランツベルク城へ向かう。
「やあ、オズヴァルト。君達の部屋を用意してある。準備出来次第合同練習を始めようか」
「ああ、ユリウス。いつもすまないな」
「同じ辺境伯家同士だ。協力体制は築いておきたい」
オズヴァルトはユリウスと軽く挨拶を交わした後、引き連れた騎士達と準備をして合同練習を開始した。
「オズヴァルト、剣術の腕を上げたね」
「そりゃどうも。でも、まだ俺はお前に勝てたことないぞ、ユリウス」
オズヴァルトはフッと口角を上げた。
休憩中、オズヴァルトはユリウスと軽口を叩き合っている。
「そうだ、オズヴァルト、明後日は騎士団の練習が休みだ。せっかくだからランツベルク領とファルケンハウゼン領の境界にある湖へ行かないか? ティアナ嬢と彼女の姉君も来るんだ。一応ティアナ嬢の姉君とファルケンハウゼン男爵家の人身売買について色々話す予定でもあるけれど」
意味ありげにニヤリと笑うユリウス。
「マルグリット嬢か……」
どこか遠くを見つめているオズヴァルト。
「まあ良いだろう」
オズヴァルトはフッと微かに口角を上げた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
そして二日が経過し、マルグリット達と会う日になった。
湖には既にマルグリットとティアナが到着している。
二人とも白猫のシュネーと戯れている様子であった。
「やあ、ティアナ嬢。待たせてごめんね」
ユリウスはティアナに紳士的で甘い笑みを向けた。アンバーの目はこの上なく優しい。
「ユリウス様」
ティアナは少し嬉しそうに、ムーンストーンの目を輝かせている。
「貴方なんか一生来なくても良かったわ」
ティアナの隣にいたマルグリットはいつもより機嫌が悪そうである。いつも以上にユリウスへの敵愾心を露わにしていた。
「私も別に君に会いに来たわけじゃないさ」
憎まれ口を叩くユリウスを
「別に私に会いに来なくても結構。それより、私の可愛いティアナを貴方みたいな男と二人きりにするわけにはいかないわ」
ティアナの前に庇い立つマルグリット。
「お姉様もユリウス様も落ち着いてください。ノルトマルク卿もいらしていることですし」
シュネーを抱いているティアナがやんわりと二人を宥める。
シュネーも以前より大きくなっており、もうすぐ大人である。しかしまだ甘えん坊なのか、シュネーは「にゃー」と鳴き、抱かれたままティアナに体をすり寄せている。
「……何だか猫のシュネーが羨ましいな」
ユリウスはボソッと呟いた。
「ユリウス、お前なあ……猫相手に嫉妬するなよ」
それに対してオズヴァルトは苦笑した。
「ご機嫌よう、オズヴァルト様。今日もこの男の相手は大変でしょう」
オズヴァルトに挨拶をするマルグリット。ユリウスへの攻撃も忘れていない。
「本当に君は私に対して失礼だね」
ユリウスは苦笑する。
「マルグリット嬢、俺は特に大丈夫だ。ユリウスとは旧知の中だからな」
オズヴァルトはハハっと笑った。
その後、マルグリットとユリウスの攻防戦があったものの、マルグリットとオズヴァルト、ティアナとユリウスに分かれていた。
「ティアナは大丈夫かしら……?」
心配そうにため息をつくマルグリット。
「ユリウスも君の妹君に対しては特に変なことはしないと思うぞ」
オズヴァルトはフッと笑う。
「……ティアナがあの男といて幸せなのなら……それで良いと思うけれど……」
マルグリットは俯いて唇を噛み締める。
「寂しい……か?」
「え……?」
マルグリットはオズヴァルトからの言葉にターコイズの目を見開く。
「ユリウスに妹君を取られたみたいで寂しいのかと思って」
オズヴァルトのアメジストの目は、マルグリットを見守るかのようである。
「別に取られてないわよ! でも……そうね。そうなのかもしれないわ。ティアナが私から離れてしまうのは……寂しいわね」
マルグリットは胸の中に何かがストンと落ちたような感覚になった。
「ティアナには私よりも幸せになってもらいたい、ティアナと一緒にいたい、ティアナを守りたい、その気持ちばかりよ。だってティアナは私の可愛い妹だもの」
マルグリットはスッキリとした表情である。
「そう……か」
オズヴァルトはフッと笑った。しかし、アメジストの目はどこか悲しげである。
マルグリットはそれを見逃さなかった。
「オズヴァルト様? 何故そんな風に笑うのかしら?」
「そんな風に……とは?」
「あら、自覚がないのね。オズヴァルト様、少し悲しそうよ」
マルグリットのターコイズの目は、真っ直ぐオズヴァルトを見ている。
「悲しい……か」
オズヴァルトは俯いて、かつての自分を思い出す。
(確かに悲しい。あの時別の選択をしていたらという後悔ばかりだ……)
オズヴァルトはふと顔を上げ、マルグリットに目を向けた。
(マルグリット嬢……君はもしかしたらかつての俺が出来なかったことをしようとしているのかもしれない)
目の前にいるマルグリットは、オズヴァルトにとって眩しく見えた。
「マルグリット嬢……君に……聞いて欲しいことがある」
オズヴァルトはゆっくりと自身のことを話し始めた。
6
あなたにおすすめの小説
メイド令嬢は毎日磨いていた石像(救国の英雄)に求婚されていますが、粗大ゴミの回収は明日です
有沢楓花
恋愛
エセル・エヴァット男爵令嬢は、二つの意味で名が知られている。
ひとつめは、金遣いの荒い実家から追い出された可哀想な令嬢として。ふたつめは、何でも綺麗にしてしまう凄腕メイドとして。
高給を求めるエセルの次の職場は、郊外にある老伯爵の汚屋敷。
モノに溢れる家の終活を手伝って欲しいとの依頼だが――彼の偉大な魔法使いのご先祖様が残した、屋敷のガラクタは一筋縄ではいかないものばかり。
高価な絵画は勝手に話し出し、鎧はくすぐったがって身よじるし……ご先祖様の石像は、エセルに求婚までしてくるのだ。
「毎日磨いてくれてありがとう。結婚してほしい」
「石像と結婚できません。それに伯爵は、あなたを魔法資源局の粗大ゴミに申し込み済みです」
そんな時、エセルを後妻に貰いにきた、という男たちが現れて連れ去ろうとし……。
――かつての救国の英雄は、埃まみれでひとりぼっちなのでした。
この作品は他サイトにも掲載しています。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された令嬢リオナは、家の体面を守るため、幼なじみであり王国騎士でもあるカイルと「白い結婚」をすることになった。
お互い干渉しない、心も体も自由な結婚生活――そのはずだった。
……少なくとも、リオナはそう信じていた。
ところが結婚後、カイルの様子がおかしい。
距離を取るどころか、妙に優しくて、時に甘くて、そしてなぜか他の男性が近づくと怒る。
「お前は俺の妻だ。離れようなんて、思うなよ」
どうしてそんな顔をするのか、どうしてそんなに真剣に見つめてくるのか。
“白い結婚”のはずなのに、リオナの胸は日に日にざわついていく。
すれ違い、誤解、嫉妬。
そして社交界で起きた陰謀事件をきっかけに、カイルはとうとう本心を隠せなくなる。
「……ずっと好きだった。諦めるつもりなんてない」
そんなはずじゃなかったのに。
曖昧にしていたのは、むしろリオナのほうだった。
白い結婚から始まる、幼なじみ騎士の不器用で激しい独占欲。
鈍感な令嬢リオナが少しずつ自分の気持ちに気づいていく、溺愛逆転ラブストーリー。
「ゆっくりでいい。お前の歩幅に合わせる」
「……はい。私も、カイルと歩きたいです」
二人は“白い結婚”の先に、本当の夫婦を選んでいく――。
-
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます
さくら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。
生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。
「君の草は、人を救う力を持っている」
そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。
不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。
華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、
薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。
町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。
「偽聖女」と追放された令嬢は、冷酷な獣人王に溺愛されました~私を捨てた祖国が魔物で滅亡寸前?今更言われても、もう遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢フィーア・エメラインは、地味で効果が現れるのに時間がかかる「大地の浄化」の力を持っていたため、派手な治癒魔法を使う異母妹リシアンの嫉妬により、「偽聖女」として断罪され、魔物汚染が深刻な獣人族の国へ追放される。
絶望的な状況の中、フィーアは「冷酷な牙」と恐れられる最強の獣人王ガゼルと出会い、「国の安寧のために力を提供する」という愛のない契約結婚を結ぶ。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる