14 / 20
オズヴァルトの過去
しおりを挟む
「俺には……妹と弟がいた」
オズヴァルトは低く落ち着いた声で、ゆっくりと話し始めた。
「いた……ということは、もしかして……」
マルグリットはターコイズの目を伏せる。
「ああ、マルグリット嬢の想像の通りだ。妹も弟も、六年前に死んだ」
オズヴァルトは乾いた声だった。
「……俺のせいで死んだんだ」
自嘲するオズヴァルト。アメジストの目は悲しげであった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
時は六年前に遡る。
オズヴァルトには、三つ年下の妹クラウディアと五つ年下の弟ハルトヴィヒがいた。
この時オズヴァルトとクラウディアとハルトヴィヒは、両親の領地視察について来ていた。
ノルトマルク辺境伯領は広大な為、両親はオズヴァルト達に幼いうちから領地を実際に見て学んで欲しいようだ。
当時の視察先は未曾有の豪雨により被害を受けていた。
そしてオズヴァルトが弟妹達と領地内にある別邸で過ごしていた時のこと。
「父上、お疲れのようですね。復興は進んでいるのですか?」
オズヴァルトは少し疲れた様子で帰って来た父リーヌスに聞く。
「ああ、人手が足りていない。この辺りの領民に以前のような生活をさせてやりたいが……」
リーヌスは表情を曇らせる。
「まだ瓦礫が残っていて、仮住まいの人もいるわ」
オズヴァルトの母ユーディッドは憂いを帯びた表情である。
オズヴァルトは少し考えていた。
その翌日。
この日はオズヴァルト、クラウディア、ハルトヴィヒは自由に過ごして良い日であった。
「お兄様、どこに行きますの?」
外出の準備をしていたオズヴァルトに、妹のクラウディアが首を傾げている。ふわふわとした褐色の髪にアメジストのような紫の目の少女だ。
「ああ、復興の手伝いに行こうと思ってな。昨日、父上と母上が大変そうだっただろう。それに、少しでも早く領民に以前の暮らしを取り戻してもらいたい」
オズヴァルトのアメジストの目は力強い信念が込もっていた。
「流石です兄上!」
弟のハルトヴィヒはアクアマリンの目を輝かせる。オズヴァルトやクラウディアと同じ、ふわふわとした褐色の髪である。
「ならば私も行きますわ! ノブレス・オブリージュでございます!」
アメジストの目を輝かせて意気込むクラウディア。
「あ! 僕も行きます! 領民を守れと父上も仰っていますし!」
アクアマリンの目を真っ直ぐオズヴァルトに向けるハルトヴィヒ。
「クラウディア、ハルトヴィヒ、お前達の気持ちは素晴らしいが……クラウディアはまだ七歳、ハルトヴィヒはまだ五歳で体が小さいだろう。お前達はこの屋敷で待っていてくれ」
オズヴァルトはフッと優しげにアメジストの目を細める。
それに対して二人は「えー」と少し不満気であった。
十歳になったオズヴァルトは平均的な少年よりも遥かに背が高く、体格もがっしりしている。よって瓦礫を片付けるなどの力作業は大人に混じっても問題なく出来るのである。
それに比べてクラウディアやハルトヴィヒは幼くまだ体が小さかった。力作業をやらせるには少し頼りない。
「この屋敷でも、領民の為に出来ることはたくさんある。お前達が色々勉強することで領地経営がもっと良くなって領民達が富む。これも立派なノブレス・オブリージュだ」
ニッと歯を見せて頼もしい笑みのオズヴァルト。するとクラウディアもハルトヴィヒも目を輝かせ、屋敷に残り勉強する気になったようだ。
オズヴァルトは二人のその様子に安心し、復興作業を行っている両親の元へ向かった。
そして悲劇が起こった。
「旦那様! 奥様!」
視察に連れて来た使用人の一人が血相を変えて様子で復興作業をしている現場にやって来た。
「何があった?」
父リーヌスは冷静に使用人に聞く。
「それが……まだ地盤が緩んでおりまして、旦那様方が拠点にしている屋敷が土砂で埋もれてしまいました!」
それを聞いたオズヴァルトは青ざめる。嫌な予感がしていた。
「……クラウディアとハルトヴィヒは無事なのか?」
なるべく冷静を装い、オズヴァルトは使用人にそう聞いた。
すると使用人は言いにくそうに目を伏せる。
「クラウディア様とハルトヴィヒ様は……土砂で崩れた屋敷の下敷きに……。他の使用人も数名屋敷に取り残されております」
それを聞いたオズヴァルトは頭が真っ白になった。
「何てことなの!?」
母ユーディッドはその場に崩れ落ちる。
オズヴァルトはその場を駆け出した。
「おい! オズヴァルト! どこへ行く!? 落ち着きなさい!」
リーヌスの静止も聞かず、オズヴァルトは無我夢中だった。
「申し訳ございません! 少し屋敷から出て……まさかこんなことになってしまうとは!」
心底申し訳なさそうな使用人である。
「お前のせいではない。とにかくクラウディアとハルトヴィヒ含め、屋敷の下敷きになっている者達を全員救出するぞ。とりあえずお前はオズヴァルトを追ってくれ」
リーヌスはノルトマルク辺境伯家当主なだけあり、冷静に指示した。
「承知いたしました!」
使用人は慌ててオズヴァルトを追うのであった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
(クラウディア! ハルトヴィヒ!)
オズヴァルトは脇目も振らず無我夢中で屋敷の方へ走っていた。
(どうか無事でいてくれ! 生きていてくれ!)
必死に願いながら全力以上の力を出して走っていた。
そして辿り着いた屋敷を見て愕然とする。
オズヴァルト達が拠点にしていた屋敷は土砂に押し潰され無惨な形になっていた。
「クラウディア! ハルトヴィヒ! 返事してくれ!」
急いで土砂や瓦礫をどかすオズヴァルト。自分の手が切れようが気にせず無我夢中であった。
一人では絶対に持てそうもない瓦礫まで何とかしようとするオズヴァルト。
「オズヴァルト様! 無茶です! おやめください! オズヴァルト様もお怪我をされているではありませんか!」
「離してくれ! クラウディアとハルトヴィヒが!」
必死にオズヴァルトを止めようとする使用人。しかしオズヴァルトは使用人を振り切り土砂や瓦礫をどかそうとしていた。手や腕からは随分と出血しているのにも関わらず。
しばらくして救助部隊が到着したことにより、オズヴァルトは少しだけ落ち着いた。そして傷を負った手や腕の手当てをされるのであった。
そして押しつぶされた屋敷の中から、クラウディアとハルトヴィヒの遺体が見つかった。
「クラウディア……ハルトヴィヒ……!」
膝から崩れ落ち、泣き崩れるユーディッド。リーヌスは彼女の肩に手を置き慰める。自身も愕然とし、悲しげな表情である。
「父上……母上……」
オズヴァルトの声は震えていた。
「申し訳……ございません。……俺が……クラウディアとハルトヴィヒに……屋敷に残れと言ったから……。それに……他の使用人も……」
アメジストの目からは涙が零れ落ちる。
「オズヴァルト……お前のせいではない。……お前のせいではない」
リーヌスはオズヴァルトの肩に震える手を置く。何度も「お前のせいではない」と言ってくれている。
ユーディッドは涙を流しながらオズヴァルトを抱きしめ、何度も頷いている。
(俺があの時二人と一緒に屋敷の外に出ていれば……。もっと別の選択をしていれば……)
俯き、涙を流しながら表情を歪めるオズヴァルト。胸の中には後悔の二文字が残るのであった。
オズヴァルトは低く落ち着いた声で、ゆっくりと話し始めた。
「いた……ということは、もしかして……」
マルグリットはターコイズの目を伏せる。
「ああ、マルグリット嬢の想像の通りだ。妹も弟も、六年前に死んだ」
オズヴァルトは乾いた声だった。
「……俺のせいで死んだんだ」
自嘲するオズヴァルト。アメジストの目は悲しげであった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
時は六年前に遡る。
オズヴァルトには、三つ年下の妹クラウディアと五つ年下の弟ハルトヴィヒがいた。
この時オズヴァルトとクラウディアとハルトヴィヒは、両親の領地視察について来ていた。
ノルトマルク辺境伯領は広大な為、両親はオズヴァルト達に幼いうちから領地を実際に見て学んで欲しいようだ。
当時の視察先は未曾有の豪雨により被害を受けていた。
そしてオズヴァルトが弟妹達と領地内にある別邸で過ごしていた時のこと。
「父上、お疲れのようですね。復興は進んでいるのですか?」
オズヴァルトは少し疲れた様子で帰って来た父リーヌスに聞く。
「ああ、人手が足りていない。この辺りの領民に以前のような生活をさせてやりたいが……」
リーヌスは表情を曇らせる。
「まだ瓦礫が残っていて、仮住まいの人もいるわ」
オズヴァルトの母ユーディッドは憂いを帯びた表情である。
オズヴァルトは少し考えていた。
その翌日。
この日はオズヴァルト、クラウディア、ハルトヴィヒは自由に過ごして良い日であった。
「お兄様、どこに行きますの?」
外出の準備をしていたオズヴァルトに、妹のクラウディアが首を傾げている。ふわふわとした褐色の髪にアメジストのような紫の目の少女だ。
「ああ、復興の手伝いに行こうと思ってな。昨日、父上と母上が大変そうだっただろう。それに、少しでも早く領民に以前の暮らしを取り戻してもらいたい」
オズヴァルトのアメジストの目は力強い信念が込もっていた。
「流石です兄上!」
弟のハルトヴィヒはアクアマリンの目を輝かせる。オズヴァルトやクラウディアと同じ、ふわふわとした褐色の髪である。
「ならば私も行きますわ! ノブレス・オブリージュでございます!」
アメジストの目を輝かせて意気込むクラウディア。
「あ! 僕も行きます! 領民を守れと父上も仰っていますし!」
アクアマリンの目を真っ直ぐオズヴァルトに向けるハルトヴィヒ。
「クラウディア、ハルトヴィヒ、お前達の気持ちは素晴らしいが……クラウディアはまだ七歳、ハルトヴィヒはまだ五歳で体が小さいだろう。お前達はこの屋敷で待っていてくれ」
オズヴァルトはフッと優しげにアメジストの目を細める。
それに対して二人は「えー」と少し不満気であった。
十歳になったオズヴァルトは平均的な少年よりも遥かに背が高く、体格もがっしりしている。よって瓦礫を片付けるなどの力作業は大人に混じっても問題なく出来るのである。
それに比べてクラウディアやハルトヴィヒは幼くまだ体が小さかった。力作業をやらせるには少し頼りない。
「この屋敷でも、領民の為に出来ることはたくさんある。お前達が色々勉強することで領地経営がもっと良くなって領民達が富む。これも立派なノブレス・オブリージュだ」
ニッと歯を見せて頼もしい笑みのオズヴァルト。するとクラウディアもハルトヴィヒも目を輝かせ、屋敷に残り勉強する気になったようだ。
オズヴァルトは二人のその様子に安心し、復興作業を行っている両親の元へ向かった。
そして悲劇が起こった。
「旦那様! 奥様!」
視察に連れて来た使用人の一人が血相を変えて様子で復興作業をしている現場にやって来た。
「何があった?」
父リーヌスは冷静に使用人に聞く。
「それが……まだ地盤が緩んでおりまして、旦那様方が拠点にしている屋敷が土砂で埋もれてしまいました!」
それを聞いたオズヴァルトは青ざめる。嫌な予感がしていた。
「……クラウディアとハルトヴィヒは無事なのか?」
なるべく冷静を装い、オズヴァルトは使用人にそう聞いた。
すると使用人は言いにくそうに目を伏せる。
「クラウディア様とハルトヴィヒ様は……土砂で崩れた屋敷の下敷きに……。他の使用人も数名屋敷に取り残されております」
それを聞いたオズヴァルトは頭が真っ白になった。
「何てことなの!?」
母ユーディッドはその場に崩れ落ちる。
オズヴァルトはその場を駆け出した。
「おい! オズヴァルト! どこへ行く!? 落ち着きなさい!」
リーヌスの静止も聞かず、オズヴァルトは無我夢中だった。
「申し訳ございません! 少し屋敷から出て……まさかこんなことになってしまうとは!」
心底申し訳なさそうな使用人である。
「お前のせいではない。とにかくクラウディアとハルトヴィヒ含め、屋敷の下敷きになっている者達を全員救出するぞ。とりあえずお前はオズヴァルトを追ってくれ」
リーヌスはノルトマルク辺境伯家当主なだけあり、冷静に指示した。
「承知いたしました!」
使用人は慌ててオズヴァルトを追うのであった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
(クラウディア! ハルトヴィヒ!)
オズヴァルトは脇目も振らず無我夢中で屋敷の方へ走っていた。
(どうか無事でいてくれ! 生きていてくれ!)
必死に願いながら全力以上の力を出して走っていた。
そして辿り着いた屋敷を見て愕然とする。
オズヴァルト達が拠点にしていた屋敷は土砂に押し潰され無惨な形になっていた。
「クラウディア! ハルトヴィヒ! 返事してくれ!」
急いで土砂や瓦礫をどかすオズヴァルト。自分の手が切れようが気にせず無我夢中であった。
一人では絶対に持てそうもない瓦礫まで何とかしようとするオズヴァルト。
「オズヴァルト様! 無茶です! おやめください! オズヴァルト様もお怪我をされているではありませんか!」
「離してくれ! クラウディアとハルトヴィヒが!」
必死にオズヴァルトを止めようとする使用人。しかしオズヴァルトは使用人を振り切り土砂や瓦礫をどかそうとしていた。手や腕からは随分と出血しているのにも関わらず。
しばらくして救助部隊が到着したことにより、オズヴァルトは少しだけ落ち着いた。そして傷を負った手や腕の手当てをされるのであった。
そして押しつぶされた屋敷の中から、クラウディアとハルトヴィヒの遺体が見つかった。
「クラウディア……ハルトヴィヒ……!」
膝から崩れ落ち、泣き崩れるユーディッド。リーヌスは彼女の肩に手を置き慰める。自身も愕然とし、悲しげな表情である。
「父上……母上……」
オズヴァルトの声は震えていた。
「申し訳……ございません。……俺が……クラウディアとハルトヴィヒに……屋敷に残れと言ったから……。それに……他の使用人も……」
アメジストの目からは涙が零れ落ちる。
「オズヴァルト……お前のせいではない。……お前のせいではない」
リーヌスはオズヴァルトの肩に震える手を置く。何度も「お前のせいではない」と言ってくれている。
ユーディッドは涙を流しながらオズヴァルトを抱きしめ、何度も頷いている。
(俺があの時二人と一緒に屋敷の外に出ていれば……。もっと別の選択をしていれば……)
俯き、涙を流しながら表情を歪めるオズヴァルト。胸の中には後悔の二文字が残るのであった。
6
あなたにおすすめの小説
メイド令嬢は毎日磨いていた石像(救国の英雄)に求婚されていますが、粗大ゴミの回収は明日です
有沢楓花
恋愛
エセル・エヴァット男爵令嬢は、二つの意味で名が知られている。
ひとつめは、金遣いの荒い実家から追い出された可哀想な令嬢として。ふたつめは、何でも綺麗にしてしまう凄腕メイドとして。
高給を求めるエセルの次の職場は、郊外にある老伯爵の汚屋敷。
モノに溢れる家の終活を手伝って欲しいとの依頼だが――彼の偉大な魔法使いのご先祖様が残した、屋敷のガラクタは一筋縄ではいかないものばかり。
高価な絵画は勝手に話し出し、鎧はくすぐったがって身よじるし……ご先祖様の石像は、エセルに求婚までしてくるのだ。
「毎日磨いてくれてありがとう。結婚してほしい」
「石像と結婚できません。それに伯爵は、あなたを魔法資源局の粗大ゴミに申し込み済みです」
そんな時、エセルを後妻に貰いにきた、という男たちが現れて連れ去ろうとし……。
――かつての救国の英雄は、埃まみれでひとりぼっちなのでした。
この作品は他サイトにも掲載しています。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された令嬢リオナは、家の体面を守るため、幼なじみであり王国騎士でもあるカイルと「白い結婚」をすることになった。
お互い干渉しない、心も体も自由な結婚生活――そのはずだった。
……少なくとも、リオナはそう信じていた。
ところが結婚後、カイルの様子がおかしい。
距離を取るどころか、妙に優しくて、時に甘くて、そしてなぜか他の男性が近づくと怒る。
「お前は俺の妻だ。離れようなんて、思うなよ」
どうしてそんな顔をするのか、どうしてそんなに真剣に見つめてくるのか。
“白い結婚”のはずなのに、リオナの胸は日に日にざわついていく。
すれ違い、誤解、嫉妬。
そして社交界で起きた陰謀事件をきっかけに、カイルはとうとう本心を隠せなくなる。
「……ずっと好きだった。諦めるつもりなんてない」
そんなはずじゃなかったのに。
曖昧にしていたのは、むしろリオナのほうだった。
白い結婚から始まる、幼なじみ騎士の不器用で激しい独占欲。
鈍感な令嬢リオナが少しずつ自分の気持ちに気づいていく、溺愛逆転ラブストーリー。
「ゆっくりでいい。お前の歩幅に合わせる」
「……はい。私も、カイルと歩きたいです」
二人は“白い結婚”の先に、本当の夫婦を選んでいく――。
-
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます
さくら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。
生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。
「君の草は、人を救う力を持っている」
そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。
不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。
華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、
薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。
町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。
「偽聖女」と追放された令嬢は、冷酷な獣人王に溺愛されました~私を捨てた祖国が魔物で滅亡寸前?今更言われても、もう遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢フィーア・エメラインは、地味で効果が現れるのに時間がかかる「大地の浄化」の力を持っていたため、派手な治癒魔法を使う異母妹リシアンの嫉妬により、「偽聖女」として断罪され、魔物汚染が深刻な獣人族の国へ追放される。
絶望的な状況の中、フィーアは「冷酷な牙」と恐れられる最強の獣人王ガゼルと出会い、「国の安寧のために力を提供する」という愛のない契約結婚を結ぶ。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる