悪役受付嬢が一生懸命に銅貨をためたスラム少年を泥棒扱いして冒険者登録しなかったら美人エルフ率いるS級パーティの逆鱗に触れギルドを首にされる話

野良豆らっこ

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第5話

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 すると、騒ぎを聞きつけたのでしょう。

 カウンターの奥にある扉が開きました。

 そして、口ひげを生やしているギルドの制服を着た中年男性が姿を現しました。

 たぶん偉い人です。


「どうした、騒がしいようだが?」

「あー、ギルド長~、聞いてくださいよー。あのエルフのオバサンがクレームばっかつけてきてー、少し注意してくれませんかぁ?」

「ふむ……っ!?」


 エルフ女性の姿を見た途端、ギルド長の顔色が真っ青に変わりました。

 酷く慌てています。

 一方のエルフ女性はといえば、


「クレーム……じゃと……?」


 堪忍袋の緒が切れる――とはこのことでしょう。


「おい、ギルド長っ!」

「あ、はいぃぃ!」


 背筋がピンと伸びました。


「わしらは今日限りこの街のギルドを使うのを止める。隣の街に行くことにする。世話になったの!」


 一方的に宣言すると、


「そこの子供。お主も登録するなら別の街にするといい。せっかくじゃ、わしらが連れて行ってやろう」


 ニカッと笑みを浮かべました。


「え? え?」


 ギルド長がどうにか引き留めようとしますが、エルフ女性は頑として首を縦に振りません。

 そして、話が自分の知らないところでドンドン進んでいきます。


「おー、そうじゃ! 随分と体が汚れておるようじゃし、わしが一緒に風呂に入って体を洗ってやるかの!」


 こんなキレイな人とお風呂だなんて、それは流石に恥ずかしい……と思っていたら、男性冒険者が気の毒そうな表情で苦笑いを浮かべました。

 あれ?

 普通うらやましがるものじゃないの?

 さらに、エルフ女性はギルドに残っている冒険者たちの方を向くと、


「誰か、余っておる、お古でいいから装備があったら、この子に分けてやってくれんかの?」


 そんな簡単に……と思っていたら、すぐに返事が戻ってきました。


「ああ、いいぜ! ちょうど買い替えたところでさ、売っても二束三文にしかならねぇし、もったいねぇから持ち歩いてるんだけど、それはそれで邪魔だったんだよ。有意義に使ってもらえるならありがてぇ」

「あー、あたしもあたしも!」

「だったら、この軽い弓なんてどうだ?」

「いやいや、まずはナイフでしょー」

「待て待て、意外とショートソードくらいは持てるんじゃないか?」


 こうして、ギルド内にいた冒険者たちはワイワイ騒ぎながら席を立ち、いつの間にか全員いなくなってしまいました。

 残されたのは、ギルド長や受付嬢といった冒険者ギルドの職員だけです。

 珍しいことに閑古鳥が鳴いています。


「いや~、彼らが帰ってくれて清々しましたねー」


 受付嬢はスッキリした笑顔でこう言いました。


「今日はもうみんな帰っちゃいましたし、わたしももう帰っていいですかぁ?」


 今度はギルド長がブチ切れます。
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