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第1章 追放
2夜
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「昼間の戦いは何だい? みっともないなあ!」
城内の一室で賢者オテが怒鳴りつけた。
眼鏡をかけた理知的な面立ちの眉間に、波のような皺が寄っている。
「それは……」
「古竜を前に棒立ちだなんて、ギー君、頭がおかしいのかい?」
「情けない人ですね。アルク様であれば、あのチャンスに竜の首を斬り落としていたはずです」
聖王女ククナリが、冷たい軽蔑の眼差しを向けてくる。
初めて会ったときの穏やかで優しげな――憧れの――顔つきはどこにもなく、ただ、汚物を見るような目で睨みつけていた。
「…………」
重い鎧を着こんだ大柄な女性――鎧騎士ペトラディだけが、目を閉じたまま沈黙している。
「だって……戦わなくていいからって。アルクが死んだときも、戦わなくていいから、アルクの剣と盾と鎧を身に着けて、ただ立っていればいいからって言われたから……」
「口答えしない! まったく君は、いつまでそうやって大昔の話をしてるんだッ!?」
「まったくですね」
界剣の勇者アルクリウスが亡くなったのは、一月前だ。
子鬼や犬頭鬼といった小物の魔物相手であれば、戦えるようになったけれど、いきなり古竜のような大物を相手にしろ、と言われても足がすくんでしまう。
「僕たちは、いつまでも君のお守りをしてるわけにはいかないんだよ! わかってるのかい? この無能ッ! グズがッ!」
オテは苛立ちを隠せない。
四人しかいない室内で、机を強く叩いて威圧した。
「次第に魔王の手下の実力も上がってきているというのに……」
それも、ギーの責任なのだろうか?
「ギーさん、素直に認めてください。男らしくないですよ!」
「ううっ……」
「まったく、アルジェントの伝説に歌われる四界剣が一つ――聖界剣を与えたというのにこの体たらく。アルクほど使いこなせとは言わないけど、あの程度の古竜ごときに遅れを取るのは、君の努力が足りないからなのでは?」
「それは……」
「図星でしょう? いつまでも甘えないでください!」
ククナリが同調すると、オテは満足そうに視線を横にずらした。
城内の一室で賢者オテが怒鳴りつけた。
眼鏡をかけた理知的な面立ちの眉間に、波のような皺が寄っている。
「それは……」
「古竜を前に棒立ちだなんて、ギー君、頭がおかしいのかい?」
「情けない人ですね。アルク様であれば、あのチャンスに竜の首を斬り落としていたはずです」
聖王女ククナリが、冷たい軽蔑の眼差しを向けてくる。
初めて会ったときの穏やかで優しげな――憧れの――顔つきはどこにもなく、ただ、汚物を見るような目で睨みつけていた。
「…………」
重い鎧を着こんだ大柄な女性――鎧騎士ペトラディだけが、目を閉じたまま沈黙している。
「だって……戦わなくていいからって。アルクが死んだときも、戦わなくていいから、アルクの剣と盾と鎧を身に着けて、ただ立っていればいいからって言われたから……」
「口答えしない! まったく君は、いつまでそうやって大昔の話をしてるんだッ!?」
「まったくですね」
界剣の勇者アルクリウスが亡くなったのは、一月前だ。
子鬼や犬頭鬼といった小物の魔物相手であれば、戦えるようになったけれど、いきなり古竜のような大物を相手にしろ、と言われても足がすくんでしまう。
「僕たちは、いつまでも君のお守りをしてるわけにはいかないんだよ! わかってるのかい? この無能ッ! グズがッ!」
オテは苛立ちを隠せない。
四人しかいない室内で、机を強く叩いて威圧した。
「次第に魔王の手下の実力も上がってきているというのに……」
それも、ギーの責任なのだろうか?
「ギーさん、素直に認めてください。男らしくないですよ!」
「ううっ……」
「まったく、アルジェントの伝説に歌われる四界剣が一つ――聖界剣を与えたというのにこの体たらく。アルクほど使いこなせとは言わないけど、あの程度の古竜ごときに遅れを取るのは、君の努力が足りないからなのでは?」
「それは……」
「図星でしょう? いつまでも甘えないでください!」
ククナリが同調すると、オテは満足そうに視線を横にずらした。
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