【完結】異世界の記憶を思い出した幼馴染で自称(大)聖女の姉が「魔王退治に行く!」と言い出しました。

野良豆らっこ

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第17話

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「ですが、王子のゴーストは今もアンサルディ城をさまよっているのです! だから私は……王子の霊を浄化できるほどの力を持つ聖女が現れるのを、ずっと心待ちにしていたのです」

「それが姉さんってことですか?」

「はい」


 嘘をついている……とは思えないし、そもそも嘘をつく理由がない。


「僕はいいと思うよ。話を聞く限りでは、浄化するだけなら命の危険はなさそうだし。姉さんの力は浄化するだけなら一級品。そもそも冒険者協会の精鋭が討伐に失敗するアンデッドに戦いを挑もうなんて、これっぽっちも思わないし。あとは姉さん次第だと思うよ」

「ん~、その王子のゴーストの出現率ってどれくらいなのかしら?」

「出現率って……。行けばすぐ会えるんじゃない?」

「行けば会えるってホラーアトラクションじゃあるまいし」


 また知らない言葉を。


「そんなすぐ出てくるなら、もっと噂が広まってもいいはずでしょ」

「そう言われてみると……」


 そうかもしれない。
 姉さんがため息をついた。


「まあ、最悪、隠れてるなら城ごと浄化すればいっか」

「いや姉さん、いくら姉さんでもお城まるごととか……」


 サイズ的にどうなのだろう、と受付嬢に聞いてみる。


「そうですね。山の途中に建っているのですが、敷地だけなら、小さな村くらいはあるんじゃないでしょうか」

「……それはちょっと」


 姉さんは露骨に嫌そうな顔をした。
 すると、コレットさんが微笑んだ。


「どうぞご安心ください。これをお持ちになっていただければ、王子はすぐに現れると思います」


 手渡されたのはピンクがかった赤い宝石。
 それもニワトリのタマゴほどはあろうかという大粒。


「こ、これ……本物ですか?」

「報酬でもある〝アンサルディの赤のルベライト〟です。これは、かつて王子から令嬢に送られたという思い出の品なのです」

「そんな貴重な物を?」


 姉さんも驚いている。


「報酬先払いでいいわけ? 持ち逃げするかもしれないわよ」

「こう見えて人を見る目はあるつもりです。信じてもらえないでしょうが。なので、あなた方なら大丈夫だと思ったのです」

「はぁ……。そうまで言われたら、やるしかないわね!」

「姉さん……」

「ありがとうございます」


 そんなコレットさんを、姉さんは複雑そうな表情で見つめる。


「で、その王子ってなんていうのよ?」

「はい?」

「王子の名前よ。あんたなら知ってるんでしょ?」

「ああ、はい! 彼の名はベルディナット――ベルディナット王子です」
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