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〈4章〉36 苦しみの連鎖
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王の間は物々しい雰囲気に包まれていた。着いたリアムとブリジットを冷たい視線が出迎える。集まった官僚達は荒げていた声をぴたりと止めると、その視線をブリジットに向けた。
「お呼びでしょうか、陛下」
国王陛下の近くにいたハイスは僅かに目を見開いたが、何も言わずに頷くだけだった。
「神官長よ、リアムにも同じ話をしてやれ」
ハイスはリアムの前に来ると信じられない事を口にした。
「各地で邪気が発生しました。今は聖騎士が分散して対処にあたっていますが、各地で同時に発生した為、全てを祓うのは不可能かと思われます」
「なんだと?」
「先日の報告ではさほど大きなものではないと言っていなかったか? 見誤ったのか!」
「殿下、本来邪気は大きさも出現も図れるものではございません」
堪らずに口を挟んだが、集まっていた官僚達から返ってきたのは信じられない程の野次だった。
「黙れ庶民が! 貴様が現れてから邪気が復活したんだ! 八年前にちゃんと祓わなかったお前のせいだ! 何が聖女だ、この偽物め!」
「黙れ! 今発言した奴を捕らえろ!」
「リアム殿下落ち着いて下さい。ブリジット様もあのような言葉はお聞き流し下さい。宜しいですね?」
ブリジットは青ざめた顔で小さく頷くのが精一杯だった。
「邪気の発生は人の業によるものです」
「ハイスッ!」
ハイスは国王をじっと見つめた。すると国王は諦めたように手を動かしてハイスを促した。
「邪気について分かっている事はそれ程多くはありませんが、邪気は人のいる場所に発生します。これは断言出来ます。誰もいない森に邪気は生まれない。それに聖女様と我々聖騎士団は八年前に確かに邪気を祓いました」
「だが祓ってからこれだけ早く邪気が再び現れるなど、おかしいとは思いませんかな? 神官長の祈りが足りないのでは? その元聖女様が戻られてから現を抜かしていたのではありませんか?」
「ローレン伯爵ッ」
反論しようとするハイスの声に被せるようにして再び官僚達の声が大きくなっていく。もはや身の危険を感じる程に大きなものだった。
「静まれ! これ以上場を乱す事は許さん。ブリジットよ、お前は本当にもう聖女ではないのか?」
国王の一声で再び王の間に静寂が戻る。ブリジットは震える足で一歩前に出ると膝を突いた。
「申し訳ございません。私にはもう邪気を祓う程の力は残っておりません」
「だが、未だ新たな聖女は現れん」
その瞬間、リアムはブリジットの前に出た。
「陛下、そのお言葉はブリジットを良く思わない者達がいる前では反発を助長させる発言だと思います」
「だがこうも立て続けに邪気が現れた事は今までかつてない。そのせいか新たな聖女の準備も出来ていないのかもしれん」
「ご心配には及びません陛下。私達聖騎士団が邪気を祓いますので、どうかご安心ください」
「神官長よ、お前は先程全ては守れないと申したな。どこを守るのか選択は出来ているのか?」
ぐっと大きな手が握り締められている。本当は全ての者達を助けたいと思っているに違いない。それでも向かう先は選ばなくてはいけない。神官長は命の選択をしなくてはならないのだ。
「邪気を討伐する順番は領地の爵位の高い順に選んでいけ。爵位が高ければそれだけ領地も広い。分かったな?」
「……承知しております」
ブリジットは居ても立っても居られなくてハイスの側に駆け寄った。
「私も行きます! どうか連れて行って下さい!」
「なりません。今のあなたを危険な場所には連れていけません」
「ですが! このまま何もせずにじっと待つのは……」
そうしてとっさにリアムを見た。リアムは何も言わずにじっとこちらを見つめている。ブリジットはそれ以上何も言う事が出来なくて俯くしかなかった。
「リアム殿下、どうかブリジット様の御身は神殿にお預け下さい」
「分かった。必ず送り届けるからお前は安心して邪気を祓ってこい」
「ハイス様! どうかお気をつけて」
マントを翻し足早に王の間を出ていく背中が涙で滲む。ただ見送る事がこれだけ辛いのだと、今更思い知った。
「ブリジット、神殿に行こう」
背中に添えられたリアムの手からも緊張した様子が伝わっていくる。押されるように王の間を出ようとした所で、扉の前にローレン伯爵や官僚達が立ちはだかった。リアムが庇うようにして前に出てくれる。しかしローレン伯爵達は誰一人としてどけようとはしない。
「陛下に申し上げます! この度の邪気の発生の責任を元聖女であるブリジットに取って頂きたく存じます!」
声高らかに王座まで聞こえるように言うと、周りからは同調する声が一気に上がった。胃の辺りがひゅっと縮まる感覚がして震えが起きてくる。予想出来なかった訳ではない。短期間に邪気が発生すれば八年前の浄化の質を問われるのは自然な流れのようにも思える。少し経てば、今は邪気に怯えている国民の意識も何故邪気が発生したのかという方向に向くはず。その時に怒りの矛先を向けられるのは……。
「案ずるな。必ず守ってみせる」
リアムが少しだけ後ろを向いて囁いてくる。しかし判断は国王がするもの。ブリジットは固唾を飲んで国王を振り見た。
「陛下、発言をお許しください」
無言のまま頷いた国王は険しい顔のままリアムを見つめた。
「邪気の発生はブリジットのせいではない。先程も神官長が言っていたじゃないか。人がいれば邪気は発生するものだと。短期間で邪気が発生したならこの国に住まう全ての民のせいであり、そうさせてしまった私達にあると考える」
「リアム殿下! それならあなたは国民の前で邪気が発生したのはお前達のせいだと言えるのですか!」
「そうではない! 聖女一人に責任を押し付けるものではないと言っているんだ!」
「ならばリアム殿下が責任をお取りになると? それなら国民も納得しましょう」
「……それを望むならそうしよう。だがまずはブリジットを神殿に送り届けるのが最優先だ。責任はその後で取る」
「リアム殿下! 駄目です、絶対に駄目です」
「大丈夫だ。お前を守れるなら地位などいらない」
「その言葉、娘のリリアンヌが聞いたなら嘆き悲しみますな。そうまでしてその庶民の女を愛するようなお方に今後国王は務まりますまい」
「止めて下さい! リアム殿下は誰よりも国民の事を想って毎日公務に励んでおられます!」
驚いたローレン伯爵の顔がみるみる赤くなっていく。怒りが頂点に達しているのか、前に出て来ようとした所で国王が立ち上がった。
「もう止めよ! 邪気は聖騎士団が抑えてくれるが、八年という短い期間で邪気が発生した件についてはローレン伯爵の言う通り国民に説明が必要だろう。詳しくは神殿長に八年前の浄化についての詳細を改めて聴取するものとする。それまでブリジットは幽閉の身とする!」
「ブリジットは聖女として力不足ではありませんでした!」
「それはお前が判断する事ではないぞ! かといって聖女を勝手に処しては精霊の怒りを買うかもしれん。よって判断は神官長が戻ってからとする。よいな皆の者!」
ローレン伯爵達は苦い顔をしながらも頭を下げた。
「それにリアムが王太子ではなくなった所で、国民からしてみれば王家が責任を取ったようには見えないだろう。よって私が国王の座を退く事で責任を取る事とする」
「という事はリアム殿下が国王になられるという事ですか?」
ローレン伯爵は青ざめた顔で口元を押さえた。
「もとより近い内にそうするつもりだった。リアムなら国民をより良く導いて行く事が出来るだろう」
「ならばその女は国王の側室という事になるのですか?」
「口を慎めローレン伯爵。ブリジットは元聖女だぞ」
「ッ、しかし……」
「幽閉する以上ブリジットからは側室という身分を剥奪する。リアムよ、お前の妻はリリアンヌだ。いい加減に目を覚ませ」
「目はとっくに覚めています。むしろあの時の方がどうかしていたのです。悪夢を見続け、気が狂ってしまった為に唯一愛する人を裏切ってしまった……すまないブリジット」
いつしかリアムの視線は、国王からブリジットの方へと向いていた。ブリジットは答える事が出来ないでいた。とっくに過去の事だと思っていたし、聞かれたとしても許したと答えられると思っていた。それでもいざ言葉にしようとすると躊躇ってしまう。許してしまったら、あの時傷つき絶望した自分があまりにも可哀想で哀れではないか。急にそんな思いが心の中に浮上してきてしまい、声を出す事が出来なくなってしまった。
「……許してくれなど都合のいい事は言わない。人生を掛けて償っていくつもりだ。陛下、幽閉場所は神殿で構いませんね?」
「まずはそれがよかろう。その後の事は追って知らせる。今は邪気による混乱を収める方が先だ!」
守られるようにローレン伯爵達の間を抜けようとした瞬間、人々の隙間から見えた顔に足が止まった。リアムも一拍遅れて気がつく。そこからは全てがあっという間の出来事だった。
振り向きざまに被さってくるリアムの肩越しに、リリアンヌの無表情な顔が目に映る。そしてリアムの身体が大きく跳ねて、支えきれなかったブリジットはそのまま後ろに倒れた。何が起きたのか分からないまま、少し離れた所ではリリアンヌが騎士達に取り押さえてられている。暴れるでも叫ぶでもなく、大人しくその場で倒れていた。
「……ブリジット、無事か?」
掠れたリアムの声に我に変えると、覆いかぶさっていたリアムはごろりと横に倒れた。白いシャツとマントがみるみる内に血に染まっていく。腰には小さな短剣が突き刺さっていた。
「医師を! すぐに医師を呼べ!」
国王が王座から駆けつけてくる。
「リアム! リアムしっかりしろ!」
しかしリアムは苦痛で顔を歪ませながら、ブリジットの方へと手を伸ばした。
「ブリジット、すまない」
「リ、リアム様、しっかりして下さい。ここにいますから」
手を重ねるも力はなく握り返してくる事はないその手を、思い切り両手で掴んだ。
「……まるであの頃に戻ったようだな」
虚ろな目には涙が浮かんでいる。ブリジットは抱え込むようにしてリアムの頭を抱いた。
「駄目です、死なないでリアム様! 私まだちゃんと許せていないんです。だからちゃんと心から許せるようになるまで死んだら駄目です!」
乾いた笑いが腕の中から聞こえてくる。リアムは嬉しそうに微笑んでいた。
「お前の腕の中にいるなんて、まるで夢のようだ」
バタバタと王城の医師達が飛び込んでくる。ブリジットは無理やりリアムから引き離された。
「リアム様! いや――!」
その時、扉の方でも大きな悲鳴が響いた。とっさに見ると、先程までリリアンヌを囲んでいた騎士がごっそりと消えて、リリアンヌは膝を突いたまま一人ぽつんと座っていた。官僚達が何かに怯えて一気に逃げようと騒ぎ始める。しかし扉はいつの間にか入ってきていたマチアスによって閉められていた。
「マチアス、どうした?」
国王は途切れ途切れに言いながら、青ざめた顔で見上げた。
「兄様は大丈夫ですか? まさかリリアンヌがそこまでやるなんて僕も少々驚きなのですが、自業自得という事でしょうか」
「マチアス危ないからリリアンヌから離れるんだ!」
国王は腰が抜けているのか膝で進みながらマチアスの服を引こうとした所で、床から黒い手が伸びてきて掴まれてしまった。黒い手は国王の身体にじわじわと伸びて、侵食するように広がっていく。逃げようとしてもこそげ取ろうと爪を立てても取れる事はなく、あっという間に顔まで伸びていった。黒い影にゆっくりと飲まれていくその姿を見ながら、マチアスはとうとう堪えられないというように笑い声を上げた。
「まさかこんなに上手くいくなんて、長い年月を掛けただけの事はあるかな」
「……お前、何を」
「そんな目で見ないで下さいよ。悪いのはあなたでしょう? 邪気をこの国に広めたのはあなた自身じゃないですか、国王陛下」
黒い影から逃れるように倒れた国王は床でビクビクと動き、やがて真っ黒になると飲み込まれるようにして黒いシミの中へと消えていってしまった。
「……マチアス、お前何をしたんだ」
「リアム様! 話さないで下さい!」
腰に刺さった短剣を動かさないように半身を起こしたリアムは、ブリジットに首を振ると起き上がった。邪気に飲まれてしまった国王はもはや跡形もない。
「良かった、まだ息があったんですね。兄様にはとっておきの舞台を用意してあるのですよ!」
「お前が邪気を操っていたのか? だがそんな事が出来るはずがない。一体どうして……」
「嫌だな、僕ではありませんよ。邪気を操っていたのはほら、あそこにいるダニエルです」
とっさに全員の視線が向いた先には王座の近くにダニエルが、見下ろすように立っていた。無表情のまま立ち尽くす姿は人形のようで、視線はこちらに向いているようで虚空を見つめている。
「ダニエルが? なぜダニエルが邪気を操れるんだ!」
「簡単にタネ明かししてしまうのもつまらないなぁ。でも兄様も重症のようですし? 意識を失われてもつまらないしなぁ」
「マチアスお前……」
マチアスがゆっくりリアムに近づいていくと、医師達は恐れて一気に離れていく。ブリジットはリアムを守るようにしてその前に立った。
「お前は邪魔だ!」
躊躇いなく振り払われた腕に身体が嘘のように吹っ飛ぶ。そして絨毯の上を擦って止まった。
「ブリジット! 貴様ッ! ウッ」
「あの女にもこの劇に参加してもらいますよ。でも今は……」
マチアスは腰に刺さっている短剣を一気に抜き取ると、リアムは悲鳴を上げた。みるみる内に床に血溜まりが出来ていく。リアムは体制を崩してその場に蹲った。
「呪いを込めて育てた種がようやく芽吹いたのです。芽吹いたのは兄様とブリジットのおかげですよ。ブリジットが戻ってきたおかげで発育が早くなり助かりました。兄様がブリジットをまだ愛していたおかげです。でも未練たらしい男は嫌われますからね」
「……まだ、愛している?」
その言葉に反応したようなリリアンヌが呟いた言葉に、ダニエルはかっと目を見開いた。床に黒いシミが浮かび上がり、一気にブリジットの方に向かっていく。リアムの叫ぶ声が耳に届いたが、黒いシミはブリジットの手前で止まり、ダニエルは苦しそうにその場に膝を突いた。
「ダニエル様? どうされました? 母様の憎き恋敵ですよ。あなたから両親を奪った相手です!」
「う、あぁ、うわ――!」
頭を抱えたダニエルは、その場で叫び声を上げた。
「まだ少し早かったでしょうか」
「マチアスお前、ダニエルに何をしたんだ!」
「ダニエルは生まれた時から邪気を宿していました。それはもう真っ黒に染まっていたんですよ。あれは人の姿をし、意識を持った邪気そのものなのです」
「ダニエルが邪気そのもの? そんな馬鹿な、一体どうやって」
「簡単ですよ。呪いを込めながらリリアンヌに子種を注いだのです。来る日も来る日もね。私から放たれた呪いはリリアンヌの体内で肉体を得てダニエルという存在になりました。でも育てたのは城に蔓延る悪意達ですけれど」
そう言ってローレン伯爵達をねっとりと見た。
「それじゃあダニエルの父親はお前なのか?」
「リアム様、それ以上お話されてはいけません!」
駆け寄ろうにも目の間に蠢く邪気があり近づく事が出来ない。ダニエルは頭を押さえながら顔を上げた。
「さあダニエル様、まずはブリジットを飲み込んでみましょう。この者がいるとあの神官長が煩くて」
しかし邪気はブリジットの周りをウロウロとしているだけで襲う事が出来ないようだった。
「ダニエル様? ダニエルしっかりしろ!」
とっさにびくりと身体を動かしたダニエルと同時に邪気が床を縦横無尽に動き出す。息を潜めて逃げようとしていた官僚達に突っ込んでいった。二人が一気に邪気に飲まれていく。ローレン伯爵は隣りにいた者を突き飛ばして自分の身を避けた。
「ダニエル様、私は祖父ですぞ! 父親は誰であれ、母親がリリアンヌならば我が孫に変わりありません!」
「ローレン伯爵は頭が足りないのかな? ダニエル様は邪気なんだってば。人の形をしているだけ。それこそずっとそばにいて安全だと認識している僕か、リリアンヌにしか制御出来ないんだよ。もっともそのリリアンヌは抜け殻だけれどね」
頼みの綱の娘が壊れている事に、ローレン伯爵はその場にへたり込んでしまった。
「あなたは国王になりたいんですか?」
ブリジットがぽつりと呟いた言葉に、マチアスは心底嫌悪した目で王座を見た。
「庶民のあなたには分からないだろうね。王族や貴族達は生まれが良く、権力と金があれば色の欲はむしろ経済力の証で、許されるものだと思い込んでいる。でもそこに組み込まれた女達はどうだ。たった一人の夫に愛想を尽かされたら生きる術を失い、嫉妬を受ければ命の危機に晒される。私の母はずっと塔で暮らしていた。あなたが一時過ごしていたあの塔だよ。あの塔に十年閉じ込められていたんだ。たった数日でも辛いはずの幽閉生活が十年だよ」
「塔に閉じ込められて、ご病気になられたんですか?」
「病気? そんなのとっくになっていた。まだ子供だった僕の事をあの男と間違えていたよ。抱いてほしいとせがまれた事もある! だからこの手で楽にしてあげたんだ」
とっさに口を抑えた瞬間、マチアスは目を見開いてダニエルを見た。
「ダニエル様! 今こそこの腐った世界を消し去ってしまう時です!」
マチアスの言葉に背を押されるようにして立ち上がったダニエルは、地を這う唸り声のようなものを上げた。震える両手の拳を握り締めて放出するように上空へ手を掲げた。
ダニエルの全身から黒い影が柱のように飛び出していく。その影は天井を突き抜けて空へと飛び出していった。
「お呼びでしょうか、陛下」
国王陛下の近くにいたハイスは僅かに目を見開いたが、何も言わずに頷くだけだった。
「神官長よ、リアムにも同じ話をしてやれ」
ハイスはリアムの前に来ると信じられない事を口にした。
「各地で邪気が発生しました。今は聖騎士が分散して対処にあたっていますが、各地で同時に発生した為、全てを祓うのは不可能かと思われます」
「なんだと?」
「先日の報告ではさほど大きなものではないと言っていなかったか? 見誤ったのか!」
「殿下、本来邪気は大きさも出現も図れるものではございません」
堪らずに口を挟んだが、集まっていた官僚達から返ってきたのは信じられない程の野次だった。
「黙れ庶民が! 貴様が現れてから邪気が復活したんだ! 八年前にちゃんと祓わなかったお前のせいだ! 何が聖女だ、この偽物め!」
「黙れ! 今発言した奴を捕らえろ!」
「リアム殿下落ち着いて下さい。ブリジット様もあのような言葉はお聞き流し下さい。宜しいですね?」
ブリジットは青ざめた顔で小さく頷くのが精一杯だった。
「邪気の発生は人の業によるものです」
「ハイスッ!」
ハイスは国王をじっと見つめた。すると国王は諦めたように手を動かしてハイスを促した。
「邪気について分かっている事はそれ程多くはありませんが、邪気は人のいる場所に発生します。これは断言出来ます。誰もいない森に邪気は生まれない。それに聖女様と我々聖騎士団は八年前に確かに邪気を祓いました」
「だが祓ってからこれだけ早く邪気が再び現れるなど、おかしいとは思いませんかな? 神官長の祈りが足りないのでは? その元聖女様が戻られてから現を抜かしていたのではありませんか?」
「ローレン伯爵ッ」
反論しようとするハイスの声に被せるようにして再び官僚達の声が大きくなっていく。もはや身の危険を感じる程に大きなものだった。
「静まれ! これ以上場を乱す事は許さん。ブリジットよ、お前は本当にもう聖女ではないのか?」
国王の一声で再び王の間に静寂が戻る。ブリジットは震える足で一歩前に出ると膝を突いた。
「申し訳ございません。私にはもう邪気を祓う程の力は残っておりません」
「だが、未だ新たな聖女は現れん」
その瞬間、リアムはブリジットの前に出た。
「陛下、そのお言葉はブリジットを良く思わない者達がいる前では反発を助長させる発言だと思います」
「だがこうも立て続けに邪気が現れた事は今までかつてない。そのせいか新たな聖女の準備も出来ていないのかもしれん」
「ご心配には及びません陛下。私達聖騎士団が邪気を祓いますので、どうかご安心ください」
「神官長よ、お前は先程全ては守れないと申したな。どこを守るのか選択は出来ているのか?」
ぐっと大きな手が握り締められている。本当は全ての者達を助けたいと思っているに違いない。それでも向かう先は選ばなくてはいけない。神官長は命の選択をしなくてはならないのだ。
「邪気を討伐する順番は領地の爵位の高い順に選んでいけ。爵位が高ければそれだけ領地も広い。分かったな?」
「……承知しております」
ブリジットは居ても立っても居られなくてハイスの側に駆け寄った。
「私も行きます! どうか連れて行って下さい!」
「なりません。今のあなたを危険な場所には連れていけません」
「ですが! このまま何もせずにじっと待つのは……」
そうしてとっさにリアムを見た。リアムは何も言わずにじっとこちらを見つめている。ブリジットはそれ以上何も言う事が出来なくて俯くしかなかった。
「リアム殿下、どうかブリジット様の御身は神殿にお預け下さい」
「分かった。必ず送り届けるからお前は安心して邪気を祓ってこい」
「ハイス様! どうかお気をつけて」
マントを翻し足早に王の間を出ていく背中が涙で滲む。ただ見送る事がこれだけ辛いのだと、今更思い知った。
「ブリジット、神殿に行こう」
背中に添えられたリアムの手からも緊張した様子が伝わっていくる。押されるように王の間を出ようとした所で、扉の前にローレン伯爵や官僚達が立ちはだかった。リアムが庇うようにして前に出てくれる。しかしローレン伯爵達は誰一人としてどけようとはしない。
「陛下に申し上げます! この度の邪気の発生の責任を元聖女であるブリジットに取って頂きたく存じます!」
声高らかに王座まで聞こえるように言うと、周りからは同調する声が一気に上がった。胃の辺りがひゅっと縮まる感覚がして震えが起きてくる。予想出来なかった訳ではない。短期間に邪気が発生すれば八年前の浄化の質を問われるのは自然な流れのようにも思える。少し経てば、今は邪気に怯えている国民の意識も何故邪気が発生したのかという方向に向くはず。その時に怒りの矛先を向けられるのは……。
「案ずるな。必ず守ってみせる」
リアムが少しだけ後ろを向いて囁いてくる。しかし判断は国王がするもの。ブリジットは固唾を飲んで国王を振り見た。
「陛下、発言をお許しください」
無言のまま頷いた国王は険しい顔のままリアムを見つめた。
「邪気の発生はブリジットのせいではない。先程も神官長が言っていたじゃないか。人がいれば邪気は発生するものだと。短期間で邪気が発生したならこの国に住まう全ての民のせいであり、そうさせてしまった私達にあると考える」
「リアム殿下! それならあなたは国民の前で邪気が発生したのはお前達のせいだと言えるのですか!」
「そうではない! 聖女一人に責任を押し付けるものではないと言っているんだ!」
「ならばリアム殿下が責任をお取りになると? それなら国民も納得しましょう」
「……それを望むならそうしよう。だがまずはブリジットを神殿に送り届けるのが最優先だ。責任はその後で取る」
「リアム殿下! 駄目です、絶対に駄目です」
「大丈夫だ。お前を守れるなら地位などいらない」
「その言葉、娘のリリアンヌが聞いたなら嘆き悲しみますな。そうまでしてその庶民の女を愛するようなお方に今後国王は務まりますまい」
「止めて下さい! リアム殿下は誰よりも国民の事を想って毎日公務に励んでおられます!」
驚いたローレン伯爵の顔がみるみる赤くなっていく。怒りが頂点に達しているのか、前に出て来ようとした所で国王が立ち上がった。
「もう止めよ! 邪気は聖騎士団が抑えてくれるが、八年という短い期間で邪気が発生した件についてはローレン伯爵の言う通り国民に説明が必要だろう。詳しくは神殿長に八年前の浄化についての詳細を改めて聴取するものとする。それまでブリジットは幽閉の身とする!」
「ブリジットは聖女として力不足ではありませんでした!」
「それはお前が判断する事ではないぞ! かといって聖女を勝手に処しては精霊の怒りを買うかもしれん。よって判断は神官長が戻ってからとする。よいな皆の者!」
ローレン伯爵達は苦い顔をしながらも頭を下げた。
「それにリアムが王太子ではなくなった所で、国民からしてみれば王家が責任を取ったようには見えないだろう。よって私が国王の座を退く事で責任を取る事とする」
「という事はリアム殿下が国王になられるという事ですか?」
ローレン伯爵は青ざめた顔で口元を押さえた。
「もとより近い内にそうするつもりだった。リアムなら国民をより良く導いて行く事が出来るだろう」
「ならばその女は国王の側室という事になるのですか?」
「口を慎めローレン伯爵。ブリジットは元聖女だぞ」
「ッ、しかし……」
「幽閉する以上ブリジットからは側室という身分を剥奪する。リアムよ、お前の妻はリリアンヌだ。いい加減に目を覚ませ」
「目はとっくに覚めています。むしろあの時の方がどうかしていたのです。悪夢を見続け、気が狂ってしまった為に唯一愛する人を裏切ってしまった……すまないブリジット」
いつしかリアムの視線は、国王からブリジットの方へと向いていた。ブリジットは答える事が出来ないでいた。とっくに過去の事だと思っていたし、聞かれたとしても許したと答えられると思っていた。それでもいざ言葉にしようとすると躊躇ってしまう。許してしまったら、あの時傷つき絶望した自分があまりにも可哀想で哀れではないか。急にそんな思いが心の中に浮上してきてしまい、声を出す事が出来なくなってしまった。
「……許してくれなど都合のいい事は言わない。人生を掛けて償っていくつもりだ。陛下、幽閉場所は神殿で構いませんね?」
「まずはそれがよかろう。その後の事は追って知らせる。今は邪気による混乱を収める方が先だ!」
守られるようにローレン伯爵達の間を抜けようとした瞬間、人々の隙間から見えた顔に足が止まった。リアムも一拍遅れて気がつく。そこからは全てがあっという間の出来事だった。
振り向きざまに被さってくるリアムの肩越しに、リリアンヌの無表情な顔が目に映る。そしてリアムの身体が大きく跳ねて、支えきれなかったブリジットはそのまま後ろに倒れた。何が起きたのか分からないまま、少し離れた所ではリリアンヌが騎士達に取り押さえてられている。暴れるでも叫ぶでもなく、大人しくその場で倒れていた。
「……ブリジット、無事か?」
掠れたリアムの声に我に変えると、覆いかぶさっていたリアムはごろりと横に倒れた。白いシャツとマントがみるみる内に血に染まっていく。腰には小さな短剣が突き刺さっていた。
「医師を! すぐに医師を呼べ!」
国王が王座から駆けつけてくる。
「リアム! リアムしっかりしろ!」
しかしリアムは苦痛で顔を歪ませながら、ブリジットの方へと手を伸ばした。
「ブリジット、すまない」
「リ、リアム様、しっかりして下さい。ここにいますから」
手を重ねるも力はなく握り返してくる事はないその手を、思い切り両手で掴んだ。
「……まるであの頃に戻ったようだな」
虚ろな目には涙が浮かんでいる。ブリジットは抱え込むようにしてリアムの頭を抱いた。
「駄目です、死なないでリアム様! 私まだちゃんと許せていないんです。だからちゃんと心から許せるようになるまで死んだら駄目です!」
乾いた笑いが腕の中から聞こえてくる。リアムは嬉しそうに微笑んでいた。
「お前の腕の中にいるなんて、まるで夢のようだ」
バタバタと王城の医師達が飛び込んでくる。ブリジットは無理やりリアムから引き離された。
「リアム様! いや――!」
その時、扉の方でも大きな悲鳴が響いた。とっさに見ると、先程までリリアンヌを囲んでいた騎士がごっそりと消えて、リリアンヌは膝を突いたまま一人ぽつんと座っていた。官僚達が何かに怯えて一気に逃げようと騒ぎ始める。しかし扉はいつの間にか入ってきていたマチアスによって閉められていた。
「マチアス、どうした?」
国王は途切れ途切れに言いながら、青ざめた顔で見上げた。
「兄様は大丈夫ですか? まさかリリアンヌがそこまでやるなんて僕も少々驚きなのですが、自業自得という事でしょうか」
「マチアス危ないからリリアンヌから離れるんだ!」
国王は腰が抜けているのか膝で進みながらマチアスの服を引こうとした所で、床から黒い手が伸びてきて掴まれてしまった。黒い手は国王の身体にじわじわと伸びて、侵食するように広がっていく。逃げようとしてもこそげ取ろうと爪を立てても取れる事はなく、あっという間に顔まで伸びていった。黒い影にゆっくりと飲まれていくその姿を見ながら、マチアスはとうとう堪えられないというように笑い声を上げた。
「まさかこんなに上手くいくなんて、長い年月を掛けただけの事はあるかな」
「……お前、何を」
「そんな目で見ないで下さいよ。悪いのはあなたでしょう? 邪気をこの国に広めたのはあなた自身じゃないですか、国王陛下」
黒い影から逃れるように倒れた国王は床でビクビクと動き、やがて真っ黒になると飲み込まれるようにして黒いシミの中へと消えていってしまった。
「……マチアス、お前何をしたんだ」
「リアム様! 話さないで下さい!」
腰に刺さった短剣を動かさないように半身を起こしたリアムは、ブリジットに首を振ると起き上がった。邪気に飲まれてしまった国王はもはや跡形もない。
「良かった、まだ息があったんですね。兄様にはとっておきの舞台を用意してあるのですよ!」
「お前が邪気を操っていたのか? だがそんな事が出来るはずがない。一体どうして……」
「嫌だな、僕ではありませんよ。邪気を操っていたのはほら、あそこにいるダニエルです」
とっさに全員の視線が向いた先には王座の近くにダニエルが、見下ろすように立っていた。無表情のまま立ち尽くす姿は人形のようで、視線はこちらに向いているようで虚空を見つめている。
「ダニエルが? なぜダニエルが邪気を操れるんだ!」
「簡単にタネ明かししてしまうのもつまらないなぁ。でも兄様も重症のようですし? 意識を失われてもつまらないしなぁ」
「マチアスお前……」
マチアスがゆっくりリアムに近づいていくと、医師達は恐れて一気に離れていく。ブリジットはリアムを守るようにしてその前に立った。
「お前は邪魔だ!」
躊躇いなく振り払われた腕に身体が嘘のように吹っ飛ぶ。そして絨毯の上を擦って止まった。
「ブリジット! 貴様ッ! ウッ」
「あの女にもこの劇に参加してもらいますよ。でも今は……」
マチアスは腰に刺さっている短剣を一気に抜き取ると、リアムは悲鳴を上げた。みるみる内に床に血溜まりが出来ていく。リアムは体制を崩してその場に蹲った。
「呪いを込めて育てた種がようやく芽吹いたのです。芽吹いたのは兄様とブリジットのおかげですよ。ブリジットが戻ってきたおかげで発育が早くなり助かりました。兄様がブリジットをまだ愛していたおかげです。でも未練たらしい男は嫌われますからね」
「……まだ、愛している?」
その言葉に反応したようなリリアンヌが呟いた言葉に、ダニエルはかっと目を見開いた。床に黒いシミが浮かび上がり、一気にブリジットの方に向かっていく。リアムの叫ぶ声が耳に届いたが、黒いシミはブリジットの手前で止まり、ダニエルは苦しそうにその場に膝を突いた。
「ダニエル様? どうされました? 母様の憎き恋敵ですよ。あなたから両親を奪った相手です!」
「う、あぁ、うわ――!」
頭を抱えたダニエルは、その場で叫び声を上げた。
「まだ少し早かったでしょうか」
「マチアスお前、ダニエルに何をしたんだ!」
「ダニエルは生まれた時から邪気を宿していました。それはもう真っ黒に染まっていたんですよ。あれは人の姿をし、意識を持った邪気そのものなのです」
「ダニエルが邪気そのもの? そんな馬鹿な、一体どうやって」
「簡単ですよ。呪いを込めながらリリアンヌに子種を注いだのです。来る日も来る日もね。私から放たれた呪いはリリアンヌの体内で肉体を得てダニエルという存在になりました。でも育てたのは城に蔓延る悪意達ですけれど」
そう言ってローレン伯爵達をねっとりと見た。
「それじゃあダニエルの父親はお前なのか?」
「リアム様、それ以上お話されてはいけません!」
駆け寄ろうにも目の間に蠢く邪気があり近づく事が出来ない。ダニエルは頭を押さえながら顔を上げた。
「さあダニエル様、まずはブリジットを飲み込んでみましょう。この者がいるとあの神官長が煩くて」
しかし邪気はブリジットの周りをウロウロとしているだけで襲う事が出来ないようだった。
「ダニエル様? ダニエルしっかりしろ!」
とっさにびくりと身体を動かしたダニエルと同時に邪気が床を縦横無尽に動き出す。息を潜めて逃げようとしていた官僚達に突っ込んでいった。二人が一気に邪気に飲まれていく。ローレン伯爵は隣りにいた者を突き飛ばして自分の身を避けた。
「ダニエル様、私は祖父ですぞ! 父親は誰であれ、母親がリリアンヌならば我が孫に変わりありません!」
「ローレン伯爵は頭が足りないのかな? ダニエル様は邪気なんだってば。人の形をしているだけ。それこそずっとそばにいて安全だと認識している僕か、リリアンヌにしか制御出来ないんだよ。もっともそのリリアンヌは抜け殻だけれどね」
頼みの綱の娘が壊れている事に、ローレン伯爵はその場にへたり込んでしまった。
「あなたは国王になりたいんですか?」
ブリジットがぽつりと呟いた言葉に、マチアスは心底嫌悪した目で王座を見た。
「庶民のあなたには分からないだろうね。王族や貴族達は生まれが良く、権力と金があれば色の欲はむしろ経済力の証で、許されるものだと思い込んでいる。でもそこに組み込まれた女達はどうだ。たった一人の夫に愛想を尽かされたら生きる術を失い、嫉妬を受ければ命の危機に晒される。私の母はずっと塔で暮らしていた。あなたが一時過ごしていたあの塔だよ。あの塔に十年閉じ込められていたんだ。たった数日でも辛いはずの幽閉生活が十年だよ」
「塔に閉じ込められて、ご病気になられたんですか?」
「病気? そんなのとっくになっていた。まだ子供だった僕の事をあの男と間違えていたよ。抱いてほしいとせがまれた事もある! だからこの手で楽にしてあげたんだ」
とっさに口を抑えた瞬間、マチアスは目を見開いてダニエルを見た。
「ダニエル様! 今こそこの腐った世界を消し去ってしまう時です!」
マチアスの言葉に背を押されるようにして立ち上がったダニエルは、地を這う唸り声のようなものを上げた。震える両手の拳を握り締めて放出するように上空へ手を掲げた。
ダニエルの全身から黒い影が柱のように飛び出していく。その影は天井を突き抜けて空へと飛び出していった。
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