大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ

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19 初めて記憶を捨てた日

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 屋敷に戻りお風呂と着替えを済ませ、再度学園へと向かう馬車の中で、メリベルは何度も深い溜め息を吐いていた。
 幸か不幸か温室で一応眠った為、頭は意外にもすっきりしている。そして植物の作用のおかげだろうか、むしろいつもより疲れは取れている気がした。それでも気が重い事には変わりない。


 屋敷に帰ってすぐ、寝ずに待っていた父親に先生が話していた内容を話し、受け取った紙を見せた。父親はしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐いた。

「一つだけ教えて欲しい。メリベルにとってお母様の記憶は悲しいものかい?」

 悲しんでいる訳でも責められている訳でもない声色。
 母親の記憶について聞かれれば、メリベルにとって母親の記憶はとても温かいものだった。いつも優しくて良い匂いがし、いるだけで場が明るく、まるでこの家の太陽、ソル神そのものだった。

「お母様の事は大好きよ。寂しいけれど悲しくはないわ。でもお母様が幸せでいるか寂しい想いをしていないかずっと不安で心配で、いる訳がないと分っているのに探してしまうの。私……変なのかしら」
 
 がしっと抱き締められメリベルも父親に抱き着く。じんわりと涙が溜まってきてしまう。

「愛しているから幸せを願うし、心配なんだよ。だから……」

 父親が言葉を切ると、抱き締めてくれていた腕の力が少しだけ弱まった。

「もしお前がその紙を使い過去を見て、もしも消してしまう過去に私達が含まれていたとしても、私は構わないよ。お母様もきっとそう言うだろう。例えお前が私達との思い出を失っても、私達が覚えている、ずっとお前を愛しているよ」
「ありがとう。でも私も出来る事なら覚えていたいわ」


「お嬢様、学園に到着致しました。終わられた頃にお迎えに上がります」

 紙はポケットに入ったまま。こうして生徒に溢れた学園内を見ると、学園は生徒がいてこそ息をしているのだと思える。昨晩はあんなに怖く見えた校舎も今は全く違って見えた。

「アップルパイちゃん!」

 食堂と魔術科との間にある中廊下から外れるようにしてマイロが立っていた。

「おはようマイロ。随分久しぶりな気がするわね」

 中廊下から一歩外に出てマイロの近くに行くと、いつもの元気さがないまま珍しく大人しかった。

「アップルパイちゃん、俺、恋とか愛とかあんまりまだよく分かんないんだけどさ」

 何を言いたいのか分からずに次の言葉を待っていると、次々に来る生徒達から逃れるように更に練習場の方へと歩いて行ってしまう。

「マイロ? どこに行くの? マイロったら!」
「アップルパイちゃんってさ、園芸員の人を付き合ってるの? いや、別に年の差とか仕事は本人達が気にならなければ良いとは思うけどさ」

 ぴたりと止まった足と共に突拍子もない言葉にメリベルは固まってしまった。

「アップルパイちゃん? 大丈夫? アップルパイちゃーん」

 目の前で手を振ってくるマイロの手をぎゅっと掴んだ。

「どこからそんな発想が来るのかしら。ねえマイロ」

 どこから出ているのか分からない低い自分の声に驚きながら、フツフツと怒りが込み上げてくる。確かに誰よりも先生と一緒にいる生徒は自分くらいなものだ。でもそれは園芸員に任命されたからであって、好きで側にいた訳ではない。もちろん勉強になった事もあり、今は先生と知り合えて良かったと思っている。それでもジャスパーの婚約者という立場を公にするこの時期にそんな噂はあってはならなかった。

「もしかして生徒達の間でそんな噂があるの?」
「違うって! 誰もそんな事は言ってないんだけど、俺、見ちゃったんだよね。アップルパイちゃんが温室から出てくるところ」

(一生の不覚、とはこういう事を言うのだろう)

 メリベルは掴んでいた手を離すと気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をした。

「確かに温室からは出てきたわ。でもそれは相談事があって少しお邪魔していただけで、先生とは何もないのよ。変な誤解しないで頂戴」
「分かってるよ。婚約者がいるって言ってたしな。でもいびきがどうとかも聞こえたからさ」
「私はいびきはかかないわ! ってそうじゃなくて、マイロの誤解よ」

 するとマイロはフニャッとした顔に変わり、その場にしゃがみ込んでしまった。

「良かったぁ! 朝からずっと考えていたんだよな。おかげで温室には忍び込み損ねたし……アップルパイちゃん!」
「な、なによ」
「温室の中に入ったんだよね!? 中ってどうなってるんだ? やっぱりアップルパイちゃんは特別なんだな! あの温室に入ったなんて知れ渡ったら一躍有名人だって!」
「やめて! お願いだから私が中に入った事があるというのは内緒にして頂戴! お願いだから!」
「じゃあ中の様子を教えてくれよ。そうじゃないと俺が今日怖気づいた事になるだろ」
「……いいわ。分かった」
「いいの? やった!」

 喜んでいるマイロを横目に、メリベルは不敵な笑みを浮かべた。

「先生にまた性懲りもなく温室に忍び込もうとした生徒がいるって言い付けるから。先生が怒ると怖いんだから覚悟しておく事ね」
「ひ、ひでぇ! アップルパイちゃん俺達友達だろ?」
「友達でも許可されていない場所に忍び込むような友人を見過ごせないわ」

 納得していない様子のマイロは不貞腐れながらも渋々諦めたようだった。


 人気のない図書室。本の間に挟んでいるのは先生から貰ったあの紙だった。じっと見つめたままかれこれかなりの時間が経っているような気がする。紙を見ていると逆三角形の中心に吸い込まれるような感覚になっていく。これがきっと過去を見るという事に違いない。メリベルは何度も挑戦仕掛けては止めると繰り返していた。
 ふと、視線を窓の外に移すと、中廊下からこの図書室に歩いてくる生徒会員達の姿が見えた。前を歩くのはジャスパーとクレイシー。その後ろをアイザックが歩いている。すぐに帰り支度をすると立ち上がった。しかしこのままではむしろ鉢合わせしてしまうかもしれない。メリベルはそっと本棚の後ろに回り込むと、しゃがみ込んだ。選んだのは小説が並ぶ棚。ここならばジャスパー達は来ないだろうとふんでの事だった。

(しばらく帰れないわね)

 ジャスパー達はしばらく雑談をしながらここで過ごすようだった。といってもほとんどアイザックの声しか聞こえてこない。時折、クレイシーの可愛らしい笑い声が聞こえてくるだけ。そっと本棚の隙間からジャスパー達の方を覗き見ると、声こそ出していないが、二人の話に微笑んでいるジャスパーの姿が飛び込んできた。とっさに本棚の影に戻り蹲る。自分にはもうずっと向けられていない表情。見てはいけない物を見た気がして、メリベルは本に挟んでいた紙を見つめた。

(例えば今のを忘れられるかしら)

 胸の痛みを感じたまま、メリベルは吸い込まれるように紙の中心に意識を預けた。




 夕暮れの門前。前を歩いていたシアが急に立ち止まり、忘れ物をしたと言ったあの合同大会の帰り。
 離れた場所から見えたのは、抱き合うようにして立っているジャスパーとクレイシーだった。

「やっぱり二度目でも抱き合っているように見えるのね」

 もしかしたら見間違いではないかと何度も考えた。もししっかりとその時を思い出せるなら、何か気づけなかった事があるはずだと。でも、夕暮れに染まった二人は、息が詰まる程にお似合いに見えた。
 ふと手に何か硬い物がありとっさに見ると、いつの間にか見た事もない小さな鍵が握られていた。二人の姿に重なるようにして鍵穴が視えてくる。メリベルは一度だけきつく目を瞑ると、再び開いた時には二人の姿は見ないようにして鍵穴に鍵を挿した。
 遠くで鍵が閉まった音がした気がする。それは鍵の大きさに比べるととても重たい音だった。

 気がつくと、紙には涙の跡と、小さな鍵が落ちていた。指先で小突いてみると、鍵は小さく動く。それでも普通の鍵ではないと分かる。先生に言われたようにそっと紙で包むと、蹲った。


「……い、おい! メイベル!」

 声がしてとっさに顔を上げると、そこには困惑した様子の図書委員と先生の姿があった。本棚の隙間からジャスパー達のいた場所を見るとすでに空っぽ。待ちくたびれ、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

「僕が連れて行くから後は戸締まりをして帰れ」

 先生に腕を捕まれ、勢いよく立たされる。そして落ちていた本と鞄を押し付けられた。
 薄暗くなり始めた学園の中を歩く度に砂の音がする。誰もいない学園に再び寂しさが忍び寄っているようだった。

「全く、あんなところで居眠りだなんて信じられないね」
「帰す言葉もありません。でもどうして先生がいらしたんです?」
「あの生徒がお前を揺すり起こすのが恐れ多かったんだろ。こんなんでも一応侯爵家のご令嬢だからな。誰かを呼びに行こうとしていたあいつと偶然会っちまったんだよ」
「……あの紙を使いました」

 そう言うと先生はぴたりと足を止めた。

「気分は?」
「今の所は問題ありません。それに眠ってしまったのも事情があって出られなかっただけですから」
「ジャスパー殿下か? そう言えば図書館の方から出て来たからな。大方会うのが嫌であそこに隠れたまま眠っちまったんだろ」
「まだ婚約者だというのは内緒ですから」
「挨拶くらい別にいいだろ? 同じ学園の生徒なんだから」
 
 それには返す言葉がなかった。

 園芸室に到着し、メリベルは紙に包まれた鍵を先生に渡した。先生は何事もなくそれを受け取るとすでに準備していた新しい紙を渡してきた。

「その鍵ってどこから現れたんですか?」
「もう分かっているだろ」
「魔廻の一部という事ですか?」
「こうやってどんどん魔廻が外に出ていくんだ。まあ地道にやる事だな」

 体内にあった物がこうして外に出てくるというのはなんとなく気持ちが悪い気がして、メリベルはもう帰ろうとした。

「寝落ちするなんて疲れているんだろ? 送ってやるよ」
「魔術でも使うんですか?」

 魔術で人を移動出来るものはない。からかうように言うと、先生は階段を指した。

「この上は城にある僕の部屋に続いているんだ。城からの方が屋敷に近いだろ」
「そうですけど、家の者が門で待っているので……」

 しかし先生はどんどんあ上がって行ってしまう。メリベルは少し迷ったが、仕方なく先生の後を追った。

「アークトゥラス家には使いを送っておいたから大丈夫だ」
「使いですか? いつの間にそんな事していたんです?」

 一緒にいる間、先生が誰かに使いを出せるような動きはしていなかったはず。しかしそんな事を考えている暇もなく、階段をどんどん上がって行くのに付いて行くしかなかった。
 最上階に出た瞬間、またかと思うような光景が待ち構えていた。もう何があっても驚かないと思っていても、先生には驚かされてしまう。まさか園芸室の最上階に城の客間のような光景が広がっているとは誰が思うだろう。

「これも先生の魔術なんですか?」
「空間を曲げて僕の部屋と繋げているんだ。大魔道師になったらこれくらい出来て当然だな」
「そうでしたか。それでは送って頂きありがとうございました」

 メリベルは機械的な挨拶をすると扉から出ようとした。

「待て待て待て! そのままだと目立つだろ。僕だって生徒に手を出したと思われるのは外聞が悪いんだ」
「手を出したなんて変な言い方しないで下さい! それでなくてもッ」

 続きを言いかけて言葉を止める。マイロに言われた事を急に意識してしまったみたいで顔を背けた。

「それでなくてもなんだよ。途中で止めるな、気持ち悪い」
「とにかく何でもありません。それじゃあどうやって帰ればいいんですか?」

 その瞬間、バサッと藍色のローブを頭から掛けられた。

「魔術師のローブだ。今どきこんなの儀式くらいでしか使わないが、下っ端の奴らは好んで使っているからこれでも被っておけ」
「魔術団員に成りすますって事ですか? それはまずいのでは?」
「僕が許す。大魔道師が許せば問題ない。広い意味でお前は俺の弟子だしな」

 もはや弟子ではないと言い返す気力もない。
 もしかしたら魔術師としての先生は、園芸員の時とは比べものにならない程に不遜な態度を取っているのではと心配になる程だった。頭からローブを被り、ちらりと先生の横顔を盗み見た。先生もいつのまにか姿をいつぞや見た美しい姿へと変えている。

「先生って、職場で上手くやれていますか?」
「……お前はつくずく失礼な奴だな」
「私は一応心配しているんです」
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