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この世の楽園

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 ネカフェに到着し、受付の人に声をかけた。

 利用には会員登録が必要らしく、説明に従って用紙に個人情報を書き込んでいく。

 住所は実家で大丈夫かな。

 一通り書き終え用紙を渡すと、本人確認証の提示を求められた。

 やばい。何も持ってないかも。

 必死になって財布の中を探すと、沢山のポイントカードの中に健康保険証が交じっていた。
 数年前、体調を崩して病院に行った時使ったのがそのまま入っていたのだろう。

 なかったら詰んでたな。あって本当によかった。

 ホッと胸を撫で下ろし、案内された部屋の前まで移動する。

 渡されたルームキーを扉の機械にかざし、靴を脱いで中に入った。

 オートロックになっているのか。すごいな。

 選んだ部屋は、ゆっくり眠れそうなマットルーム。

 縦幅は大人一人が余裕を持って足を伸ばすことが出来るくらいの長さで、横幅も余裕で寝返りが打てるくらい広い。細身の俺にとっては十分過ぎる大きさだ。

 秘密基地みたいでワクワクする。こういうのを求めていたんだ。

 ドリンクは飲み放題で、目の前に置いてあるパソコンからはフードメニューを注文することも出来るらしい。

 漫画も読み放題ネットも使いたい放題。
 まさに楽園と形容するに相応しい最高の場所。

 まずはカツカレーを頼んで飲み物を持ってこよう。

 読みたかったマンガもたくさんあるし、進めたいゲームもある。
 今この時を全力で満喫することにした。

 ◇

 ネカフェに来て、一週間が経った。
 
 今も現在進行形で楽園生活を謳歌しているのだが、心配なことが一つだけある。

 この金、いつまで持つんだ?

 財布の中にある一万円札を数えながら考える。

 利用料金が二十四時間で五千円。そこに食費が千円くらいかかっているので、毎日の出費は六千円を優に超えている。

 このペースだと、あと一週間くらいでホームレス生活だ……。

 なんとかして金を増やさなくてはならない。
 でも働きたくはないし、どうしよう。

 不安にとり憑かれながらも、ネットで楽に稼ぐ方法を調べていると、一つの動画が目に留まる。

 それは大好きなアニメが題材となったパチンコの実践動画。心くすぐる素晴らしい演出と、ものすごい量の出玉に心を奪われてしまった。

 これだ! これしかない!
 
 パチンコをしている間はネカフェの利用料金を節約できる。
 それでいて金を増やすチャンスまであるのなら、やってみるほかない。

 不思議と勝てる自信が湧いてくる。
 今までギャンブルに手をつけてこなかった分、運気がたまっているような気がするのだ。

 勝ちに行こう。俺ならやれる。

 拳を強く握り、気合を入れる。
 身支度を整え、近くのパチンコ店へと向かった。
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