異世界でスローライフを始めたら、庭に魔王が住み着いた〜庭付き一戸建て魔王付き〜

ノエ丸

文字の大きさ
7 / 16

年上としてのプライド

しおりを挟む
「お父さーん。ダイチさん連れて来たよー」

 ここはココアの実家でもあり、村にある一軒だけの鍛冶屋。

「おう、おかえり。ダイチもよく来てくれたな、今持ってくるから茶でも飲みながら待っててくれ」

 ガタイのいい中年の男性。

 ココアの父親で、名は「ガストン」

 作業場へ移動するのを見送ったココアは、俺の手を引きながら家の中に入った。

「今お茶を入れるので、座って待っててください」

「わかった」

 俺は椅子に腰を下ろし、一息つくとボーッと時間を潰した。

 台所から紅茶のいい匂いがしてきた。

 ちなみに茶葉も俺は育てている。

 それに希望者には種を配布し、家庭菜園的な事をしてもらっている。

 ココアも自分で育てたものを使用している。

 俺は能力のせいか、匂いを嗅ぐだけで野菜や茶葉の出来の良さが分かる。

 前回は微妙だったが、今回のは良い出来のようだ。

「お待たせしました~。どうぞ」

「ありがとう」

 何も入れず、一口啜った。

 うん、やっぱり良い出来だ。

 向かいの椅子に座ったココアは、砂糖を三杯加えた。

 相変わらず甘いのが好きだな……。

 この砂糖も、俺の畑で育てたサトウキビから生成している。

 砂糖は、俺がこの村での信用を勝ち取ったきっかけでもある。

 大したことはしておらず、ただ砂糖を作って配布しただけだ。

 それにより、女性陣からの俺の評価が「余所者」から「砂糖を作れる男」に変わった。

 たったそれだけだが、この村では役割を得るというのは、住人としての第一歩でもある。

 その後、果物やサツマイモなどの野菜をお裾分けしていき、この村での「野菜を作る人」の地位を確固たるものにした。

 それからちょこちょこと、人が来るようになり、次第に野菜と別の物とで物々交換をするようになった。

 中でもココアが一番多く来ている気がする。

 目当ては甘い物だろうが、それでも話し相手になってくれているので、正直嬉しい。

 いつか彼女も恋人を作ったら、来る頻度は減るんだろうな……少し寂しいが、仕方のないことだけど。

 残りの紅茶を啜っていると、扉が開き、親父さんが顔を出した。

「結構重いから、荷車の上に積んでおいたぞ。一人で引いて帰れるか?」

「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」

「荷車はそのままお前の家に置いておいてくれ。ココアが次に行った時に回収するから」

 コップの中の紅茶をグイッと飲み干し、席を立つ。

「もう帰るんですか?」

「プニ雄が一人で畑仕事してるからな。それに、小屋も早く見せてやりたいし」

「そうですか……では家までお見送りを――」

「何度も往復させるのは悪いからな。一人で帰るよ、それじゃまたね」

 俺はサッサと鍛冶屋から出ると、外に置いてあった荷車を見た。

 荷車の上には、大きめの犬小屋が置かれていた。

 俺が犬小屋のデザインでお願いしたからな、プニ雄も気に入ってくれるだろうか。

 荷車の取っ手を持つと、力を込める――あれ……お、重いな。

 ココアにああ言った手前、力を借りるのは年上としてのプライドが許さない。

「やっぱり私も行きましょうか?」

「……大丈夫だ。問題ない」

 心配そうに見つめるココアに、一番いいセリフを吐き、気合を入れて力を入れた。

 俺だって元冒険者なんだ……これくらいわけないさ!


 その後、10分の道のりを30分かけて帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...