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増築はまた今度
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村長の家から戻ってきた俺たちを待っていたのは、ココアだった。
これといった荷物を持っていないので、やはり許可は下りなかったのだろう。
小屋の前の椅子に、あからさまに落ち込んだ様子で座っている。
「アナタが何とかしなさいよ」
ルナに小突かれながらココアに近寄る。
「ココア。どうかしたのか?」
ココアは顔を上げ、俺の顔をじっと見た。
「お父さんにダメだって言われました」
そりゃそうだよな。
一人娘を俺みたいな男の家に住まわせるわけないもんな。
「小屋を大きくするまで待つようにって言われました。この小屋、壊してもいいですか?」
そう言ってココアは小屋の柱に手をかけると、ミシミシと音を立てながら握り潰そうとした。
「待て待て待て! 今壊したら寝る所がなくなっちゃうだろ!」
「……それもそうですね」
ココアは柱からスッと手を離すも、柱にはくっきりと手の跡が残っていた。
「ほんと……アナタがどうにかしなさいよ……」
「わかってるよ……。ココア、一緒に住むには狭すぎるんだ。小屋の増築は今度頼んでおくから、広くなったらまたその時に親父さんに確認してくれ。いいな?」
俺の言葉にココアは静かに頷いた。
「わかりました。それで、いつ頃増築するんですか?」
「そ、そうだな……取り敢えず収穫を終えてからだな。人手が増えたとはいえ、まだまだ収穫する量が多いんだ」
季節的にはそろそろ夏の終わり。夏野菜を収穫し終え、秋野菜を植え終えてからのほうが、小屋を増設するには丁度いいだろう。
ココアはじっと俺を見た。
な、なんでしょうかね……何も間違ったことは言ってないと思うんだが……。
「わかりました。今日はもう帰りますね」
ココアはそのままルナに近付くと、何かを耳打ちしてから村へと帰っていった。
「随分とあの娘に好かれているのね」
ルナは面倒くさそうな表情をしながらそう言った。
何を言われたのだろうか。
多分聞いても教えてはくれないのだろうな。
「時々、甘いお菓子とかあげてるからな。そのせいだろ」
「あら、お菓子があるの? 私も食べたいわ」
「今日の畑仕事が終わったら作ってやるよ。プニ雄、そろそろ起きろ。仕事の時間だ」
プニ雄の鼻ちょうちんを指で突っついて割ると、ルナの腕から飛び降りた。
プルプル震えながら水を引いている水路へ向かった。
「よし、それじゃ早速だが、仕事を教える。わからないことは、その都度聞いてくれて構わないからな」
「仕方ないわね。あまり重労働はさせないでよ?」
「はははは、善処するよ」
◇
畑仕事も終わり、約束通りお菓子を作って披露した。
お菓子と言っても、ホットケーキに果物のジャムをたっぷりかけた物だ。
出来たてをプニ雄とルナが一緒に頬張る。
「美味しいわね。アナタ、料理が上手なのね」
「一人暮らしが長いからな、ルナは自分で料理するのか?」
「ええ、もちろん。魔王軍にいた頃、魔王様の食事はすべて私が作っていたもの」
「へー、そりゃすごい。それなら夕食は任せてもいいか?」
「仕方ないわね~。魔王様も私の料理を食べたら、きっと記憶も戻るはずよ」
記憶ねえ……。
もしも、魔王だった頃の記憶がプニ雄に戻ったとしたら、どうなるんだろうか。
暴れ狂ったりしないよな?
暴れるプニ雄を想像するが、ホットケーキをナイフで切り分け頬張る姿は魔王とはかけ離れているものだった。
まっ、そんな上手く物事がいくとも思えない。
今までもそうだったように、なんとかなるさ。
そんな楽観視をしながら、二人を眺めていた。
これといった荷物を持っていないので、やはり許可は下りなかったのだろう。
小屋の前の椅子に、あからさまに落ち込んだ様子で座っている。
「アナタが何とかしなさいよ」
ルナに小突かれながらココアに近寄る。
「ココア。どうかしたのか?」
ココアは顔を上げ、俺の顔をじっと見た。
「お父さんにダメだって言われました」
そりゃそうだよな。
一人娘を俺みたいな男の家に住まわせるわけないもんな。
「小屋を大きくするまで待つようにって言われました。この小屋、壊してもいいですか?」
そう言ってココアは小屋の柱に手をかけると、ミシミシと音を立てながら握り潰そうとした。
「待て待て待て! 今壊したら寝る所がなくなっちゃうだろ!」
「……それもそうですね」
ココアは柱からスッと手を離すも、柱にはくっきりと手の跡が残っていた。
「ほんと……アナタがどうにかしなさいよ……」
「わかってるよ……。ココア、一緒に住むには狭すぎるんだ。小屋の増築は今度頼んでおくから、広くなったらまたその時に親父さんに確認してくれ。いいな?」
俺の言葉にココアは静かに頷いた。
「わかりました。それで、いつ頃増築するんですか?」
「そ、そうだな……取り敢えず収穫を終えてからだな。人手が増えたとはいえ、まだまだ収穫する量が多いんだ」
季節的にはそろそろ夏の終わり。夏野菜を収穫し終え、秋野菜を植え終えてからのほうが、小屋を増設するには丁度いいだろう。
ココアはじっと俺を見た。
な、なんでしょうかね……何も間違ったことは言ってないと思うんだが……。
「わかりました。今日はもう帰りますね」
ココアはそのままルナに近付くと、何かを耳打ちしてから村へと帰っていった。
「随分とあの娘に好かれているのね」
ルナは面倒くさそうな表情をしながらそう言った。
何を言われたのだろうか。
多分聞いても教えてはくれないのだろうな。
「時々、甘いお菓子とかあげてるからな。そのせいだろ」
「あら、お菓子があるの? 私も食べたいわ」
「今日の畑仕事が終わったら作ってやるよ。プニ雄、そろそろ起きろ。仕事の時間だ」
プニ雄の鼻ちょうちんを指で突っついて割ると、ルナの腕から飛び降りた。
プルプル震えながら水を引いている水路へ向かった。
「よし、それじゃ早速だが、仕事を教える。わからないことは、その都度聞いてくれて構わないからな」
「仕方ないわね。あまり重労働はさせないでよ?」
「はははは、善処するよ」
◇
畑仕事も終わり、約束通りお菓子を作って披露した。
お菓子と言っても、ホットケーキに果物のジャムをたっぷりかけた物だ。
出来たてをプニ雄とルナが一緒に頬張る。
「美味しいわね。アナタ、料理が上手なのね」
「一人暮らしが長いからな、ルナは自分で料理するのか?」
「ええ、もちろん。魔王軍にいた頃、魔王様の食事はすべて私が作っていたもの」
「へー、そりゃすごい。それなら夕食は任せてもいいか?」
「仕方ないわね~。魔王様も私の料理を食べたら、きっと記憶も戻るはずよ」
記憶ねえ……。
もしも、魔王だった頃の記憶がプニ雄に戻ったとしたら、どうなるんだろうか。
暴れ狂ったりしないよな?
暴れるプニ雄を想像するが、ホットケーキをナイフで切り分け頬張る姿は魔王とはかけ離れているものだった。
まっ、そんな上手く物事がいくとも思えない。
今までもそうだったように、なんとかなるさ。
そんな楽観視をしながら、二人を眺めていた。
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