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100年の旅路、その果てに
270.いつか、また会う日まで。
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「さあ! 私という物語を締めくくろうか!」
そう声を大にして叫ぶ勇者の姿は、本来彼女の魂を閉じ込めていた本のページ1枚1枚から作り出されていた。
何枚もの紙が重なり、人の形を作り出す。その姿は勇者である水野雫本人の姿だった。
とても紙で出来ているとは思えないその姿は、まるで生きている人のように見えた。
言われなければこれが紙で出来た姿だとはわからないだろう。それ程のクオリティだ。
「おやおや? 私の美貌に声も出ない感じ? いや~参っちゃうな~、最後に魅了しちゃったか~」
「あ、いや、紙が人の形になったんで、ちょっとビックリしただけです。はい」
「あっそう。それじゃチャチャーっとやっちゃって~」
そう言うと勇者は数歩後ろに下がり、自分の胸を指差した。
「ココに私の核となる魂を収納している本があるから、よーく狙うようにね」
「わかった」
まずいな、声が震えてしまった。
心臓の鼓動が激しく打ち鳴る。
俺は今から、この手で勇者を殺すことになる。
その事実が、今更になって俺の決意を鈍らせてしまう。
右手を持ち上げて勇者に向けるが、その腕はかすかに震えていた。
真っ直ぐに勇者を見つめ、狙いを定めるも、うまくいく気がしない。
そんな俺の腕を支えるように、アナの手が触れた。
「大丈夫。私も支えるから」
そうだな……今更何を躊躇っていんだか。もう覚悟は決めていたじゃないか。
勇者の最後だ。派手にいこう。
「〈限界突破〉」
呪文を唱えると、体から黒いオーラが溢れ出す。
このオーラは俺が溜めた魔力そのもの。
ならその全てをこの一撃に込めよう。
勇者が言っていたな、魔力を圧縮しろと。
魔力を注ぐのとは意味が違うのだろうか……。とりあえずやってみよう。
手のひらに2つの魔法陣が浮かび上がる。
漆黒の魔法陣と深緑の魔法陣。
2つの魔法陣が連なり浮かび上がり、空中に留まる。
体から吹き出るオーラを2つの魔法陣へと注ぎ込む。
注ぎ込むうちに、感覚で魔力の流れが止まったのがわかった。ただ注ぎ込むのはここまでが限界か……。ここからだ。
より大量の魔力を押し込むように流し込む。
両手で泥団子を作る時のように、力を込めて小さく、より小さくなるように押し固めていく。
その時――。
限界だとわかる点が、感覚でわかった。
今の俺が出せる最高の威力。
その限界点を迎えた。
2つの魔法陣が――回転し出す。
カチリ、カチリと――。
歯車が合う――その場所を探すようにお互いが回転し。
ガチッと噛み合った。
漆黒の魔法陣と深緑の魔法陣は連なり、1つの魔法陣へと姿を変えた。
いつでも撃てる状態だ。
ああそうだ、最後の言葉はなんて言おうか……。
さよなら。か? いや、これは別れの言葉だ。
それなら――。
「雫」
「なに?」
「――またな」
これは別れじゃない。きっと、またいつか。
再び出逢える日を――信じていたかった。
雫は、微笑んだ。
「うん……またね」
「〈深淵の砲弾〉」
放たれる漆黒の砲弾は、深緑の模様を纏い、雫へと一直線に飛び。
空間ごと黒く染めあげる球体がパッと広がり、直ぐに中心へと収縮した。
地面にぽつりと残された球体の痕跡以外――そこには、もう何も無かった。
何も――。
ただ1片の欠片も残さず。
雫という存在は、世界から跡形もなく、消え去ってしまった。
その事実が胸を貫いた瞬間、頬を一筋の涙が伝った。
またいつか会おう。
俺は心の中で雫にそう告げ。
次の瞬間――。
俺の視界は暗転した。
そう声を大にして叫ぶ勇者の姿は、本来彼女の魂を閉じ込めていた本のページ1枚1枚から作り出されていた。
何枚もの紙が重なり、人の形を作り出す。その姿は勇者である水野雫本人の姿だった。
とても紙で出来ているとは思えないその姿は、まるで生きている人のように見えた。
言われなければこれが紙で出来た姿だとはわからないだろう。それ程のクオリティだ。
「おやおや? 私の美貌に声も出ない感じ? いや~参っちゃうな~、最後に魅了しちゃったか~」
「あ、いや、紙が人の形になったんで、ちょっとビックリしただけです。はい」
「あっそう。それじゃチャチャーっとやっちゃって~」
そう言うと勇者は数歩後ろに下がり、自分の胸を指差した。
「ココに私の核となる魂を収納している本があるから、よーく狙うようにね」
「わかった」
まずいな、声が震えてしまった。
心臓の鼓動が激しく打ち鳴る。
俺は今から、この手で勇者を殺すことになる。
その事実が、今更になって俺の決意を鈍らせてしまう。
右手を持ち上げて勇者に向けるが、その腕はかすかに震えていた。
真っ直ぐに勇者を見つめ、狙いを定めるも、うまくいく気がしない。
そんな俺の腕を支えるように、アナの手が触れた。
「大丈夫。私も支えるから」
そうだな……今更何を躊躇っていんだか。もう覚悟は決めていたじゃないか。
勇者の最後だ。派手にいこう。
「〈限界突破〉」
呪文を唱えると、体から黒いオーラが溢れ出す。
このオーラは俺が溜めた魔力そのもの。
ならその全てをこの一撃に込めよう。
勇者が言っていたな、魔力を圧縮しろと。
魔力を注ぐのとは意味が違うのだろうか……。とりあえずやってみよう。
手のひらに2つの魔法陣が浮かび上がる。
漆黒の魔法陣と深緑の魔法陣。
2つの魔法陣が連なり浮かび上がり、空中に留まる。
体から吹き出るオーラを2つの魔法陣へと注ぎ込む。
注ぎ込むうちに、感覚で魔力の流れが止まったのがわかった。ただ注ぎ込むのはここまでが限界か……。ここからだ。
より大量の魔力を押し込むように流し込む。
両手で泥団子を作る時のように、力を込めて小さく、より小さくなるように押し固めていく。
その時――。
限界だとわかる点が、感覚でわかった。
今の俺が出せる最高の威力。
その限界点を迎えた。
2つの魔法陣が――回転し出す。
カチリ、カチリと――。
歯車が合う――その場所を探すようにお互いが回転し。
ガチッと噛み合った。
漆黒の魔法陣と深緑の魔法陣は連なり、1つの魔法陣へと姿を変えた。
いつでも撃てる状態だ。
ああそうだ、最後の言葉はなんて言おうか……。
さよなら。か? いや、これは別れの言葉だ。
それなら――。
「雫」
「なに?」
「――またな」
これは別れじゃない。きっと、またいつか。
再び出逢える日を――信じていたかった。
雫は、微笑んだ。
「うん……またね」
「〈深淵の砲弾〉」
放たれる漆黒の砲弾は、深緑の模様を纏い、雫へと一直線に飛び。
空間ごと黒く染めあげる球体がパッと広がり、直ぐに中心へと収縮した。
地面にぽつりと残された球体の痕跡以外――そこには、もう何も無かった。
何も――。
ただ1片の欠片も残さず。
雫という存在は、世界から跡形もなく、消え去ってしまった。
その事実が胸を貫いた瞬間、頬を一筋の涙が伝った。
またいつか会おう。
俺は心の中で雫にそう告げ。
次の瞬間――。
俺の視界は暗転した。
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