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100年の旅路、その果てに
271.帰る場所
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またここか……。
この場所に来ると記憶が蘇る。
辺りは暗く、川のような水の流れる音が聞こえてくる。それに、なんだか以前よりも草木が増えてる気がする。
ここに来ると、前に来た記憶が蘇る。
そうか……どうにか間に合ったんだな。
以前ここで謎の存在から言われた言葉。
勇者の残り時間が少ないということ。
その言葉の通り、すぐに別れが来てしまった。
今回は何を言うつもりなのやら。
俺は暗闇の中、謎の声が聞こえるまで待つことにした。
……聞こえてこないな。おーい、出てこい。
この空間は口から声を出しても、なんか変な感じがする。口が動いてはいるが、音が出ていないように感じる。
反応がないな。少し歩いてみるか。
俺はとりあえずその場を離れることにした。
いつも同じ場所で立っているだけだから、この空間を散策したことがない。何やら自然が増えてる感じがするし、ほんと、何この空間。俺の精神世界的なやつでいいんだよな? だとしたらなんでこんなに真っ暗なのだろうか、俺の心のように光あふれる空間であるべきだろう。ふざけやがって……絶対謎の存在のせいだろ。俺みたいな光属性の人間の心がこんなに暗いわけがない。
俺は水の流れる音がする方角へ歩き出した。
【ちょっと待った。そっちの方向じゃないよ】
出たな謎の存在め……今日は反応が遅いな?
不意に、頭の中に不思議な声色の声が響き渡る。
【少し回収に手間取ってね。それよりも君が向かうのはそこじゃないよ。そのまま左を向いて真っすぐ進んでくれる?】
変な指示しやがって……こっちの方角でいいんだな?
【そうそう。そのまま真っすぐ歩いてみて。それじゃあまた後で】
え、おい! ……言うだけ言って消えやがった。
俺は謎の存在の声の指示に従い、方向を変えて再度歩き出した。
◇
しばらく歩くと、背の低い木が密集しており、かき分けながら進むと、少し開けた草原のような場所に出た。
その草原の中心に1人の人物が立っている。
セーラ服を着た1人の少女。
その後姿を見た時、俺の心臓が高鳴った。
足が止まり、草原の入口でただその少女を見ていると、俺の気配に気づいたのか、ゆっくりとこちらを向いた。
その少女は――。
「お? ソラじゃん。さっきぶり~」
消滅したはずの雫だった。
再会がはえーよ。
あんな別れ方をしたというのに、1時間と経たずに再会してしまった。
早くない? 魂ごと消えたんじゃないの? もしかして俺何かミスった? だとしたらやばい使徒が誕生してしまうんだが。
俺の心の中は嬉しさと焦りが半々くらいだった。
そんな俺に雫は言った。
「あのさ~、私何で生きてんの?」
俺が聞きたい。本人も状況を理解していないようだ。
「それにここどこ? 調べようとしたけど、魔法がうまく発動しないんだよね。というか使えない感じかな? ソラも突っ立ってないでこっち来なさいよ。離れてたんじゃ話しづらいって~」
確かにその通りだ。俺は言われたとおり、雫に近づいた。
なんというか……何か背が低いな。俺が見てきた雫はもう少しだけ背があった気がする。それにメガネも掛けてる。今までそんな物着けてることはなかったんだがな。
雫もそのことに気づいたのか、自分の姿を確認しだした。
「あれ、なんか私若返ってる? この感じだと15歳の時かな? うわーこの制服懐かしっ! しかもメガネまで掛けてる。……もしかして転移直後の姿かな? どう思う?」
どう思うと言われてもな、俺には何もわからん。
「はー、つっかえ。にしてもここ暗すぎない? 代わりに〈照明魔法〉使ってくれない?」
はいはい。俺は〈照明魔法〉を唱えてみた――が、発動しない。
あれ、駄目か。そういえばこの空間で魔法は使ったことなかったな。
俺は暗闇の中でもある程度見ることが出来るので、必要性を感じなかったというのもある。
その時――頭の中に声が響いた。
【ふー、やっと終わったよ】
『久しぶりに疲れたわね』
戻ってきたか。この状況の説明が欲しいな。
「うわ、なにこれ。頭の中に……なにこれぇ、変な声……」
『失礼ね、私たちと貴女たちでは体の創りが違うから仕方ないでしょ』
【まあまあ、今はその話は置いておこうか】
どうやら雫にもこの声は聞こえているようだ。
そうか、初めて聞く人はこの声は気持ち悪く聞こえるのか。俺はもう慣れたから平気だが。
まあいいか、謎の声の言う通りその事は置いておこう。
それで? この状況の説明をしてくれる? 俺の問いに謎の声は答えた。
【そうだね……簡単に言うと。その娘の魂をこの場所に移動したって感じかな】
どうしよう、何もわからん。もっと詳しく説明プリーズ。
【君がその……えーっと雫だっけ? その娘の魂を消したよね? そのタイミングであの世界との繋がりが切れたから、消滅する前に一旦ここに移動させたんだよね】
『そうね。君の力で確かに消滅することは出来るけど、消滅するタイミングで繋がりが切れるから、あの世界の影響を受けないここに移動したってわけ』
ふーん、繋がりねぇ。それはつまりどういう結果に繋がるんだ? どっちみち死んだってことにはなるんだし。使徒になるだろ?
正直使徒になる過程がどんなものなのかわからないから、何とも言えないが。雫の魂? がここにあるなら、もしかして使徒は生まれない感じかな?
そんな俺の考えを見抜いたのか、謎の存在は答えた。
【そうだね。使徒――と呼ばれている存在になるには、あの世界と繋がりのある魂じゃないといけないからね。君の力で、あの世界との繋がりが切れた瞬間に、彼女の魂を持ってきたから使徒は生まれないよ】
『その作業が思ったよりも、面倒で疲れるものだったわね。少しは私達を褒めても良いんじゃないかしら?』
あっ、はい、お疲れ様です。
どうやら俺の知らない所で、謎の存在が何かをしてくれていたようだ。
ということは……最悪の使徒は生まれないってことでいいんだよな?
それに雫の魂? が俺の精神世界的なここにいるということは……もしかしてここに来る度にまた会えるのか?
【残念だけど、それは無理だね】
『私達と彼女じゃ存在そのものが違うもの。1つの体に魂が2つも存在することは許されないわ』
【そうだね。だから、彼女を送ってあげることは出来るよ】
送る? 一体どこに送る気だ? この世界の輪廻の輪とかいうのに送る気か?
「え、私転生する感じ? それだとまた死んだときに使徒になる可能性出て来ない?」
【可能性はあるね。だから君は別の場所に送るよ】
『そうね。話はつけてあるから安心してね』
謎の存在がそう言うと。
俺と雫の目の前の空間がひび割れ、時空の裂け目のようなモノが現れた。え、なにこれ。
謎の声が言った。
【『さあ、元の世界に帰りなさい』】
……元の、世界?
謎の声はそう言った。元の世界と。
それはつまり。俺と翼、そして雫のいた世界。日本に戻ることが出来るということか?
突然のことに俺の頭は混乱した。え、マジ? こんな簡単に戻れるの? だったら俺と翼も元の世界に戻れるんじゃ。
そう思ったが、謎の声は否定した。
【残念だけど。君と彼はまだ無理だね】
『そうね。この世界と繋がりがあるうちは無理ね』
この世界と繋がりのあるうち? 俺の予想ではこの世界に来た時に、体を作り替えられていると仮定していた。そうじゃないと言語やそのた諸々が自然と使えるというのは不自然だと思っていた。決定的な出来事は、ママが俺のことを赤ちゃんだと判定した出来事だ。この世界に来るときに肉体が再構築されたと考えれば、転移直後は生後0ヶ月ということになる。それは別にいい。ママを得られたんだ、素敵やん?
それは置いておいて。謎の存在の言っていることをまとめるとだ。
俺の力で雫は魂ごと消滅した。
その結果この世界との繋がりも消滅したということになる。魂ごと消滅したのになんで? という疑問はあるが、きっとあれこれ考えても無駄な気がする。そういうものだと考えることにしよう。
そして、俺と翼はまだ無理だという。
それはつまり、元の世界に戻る為には俺の手で翼を消滅させる必要が出てきたということだ。
……俺が自分の手で、翼を。
考えたくもないことだ。出来ることならしたくない。
だが結果的に雫は、そうすることで元の世界に戻ることが出来る。本当に戻れるのか? 正直この謎の存在がそう言っているだけで、確証があるわけではない。
俺の思いとは裏腹に、雫は黙ったままだ。
……雫はどうする?
「……え、あっ。うん。どう、しようか」
雫は珍しく戸惑っている。
そりゃそうか。いきなり元の世界に帰れると言われたんだ。俺でも戸惑う。
悩む俺たちに謎の声が告げる。
【悩むのはいいけど。あまり長くここに留まらせることは出来ないからね? さっきも言ったけど、1つの体に2つの魂は留まれないんだ。時間を掛け過ぎると、彼に負担がいくことになる】
そんなものか……なら、サッサと元の世界に戻ってもらった方がいいか。俺は雫に言った。
行けよ。元の世界に戻れるんだ。俺のことは気にするなって。
「……でも、ソラをこの世界に呼んだのは私なんだし。私だけ帰るなんて」
……言ったろ? またなって。必ず俺と翼も元の世界に戻る。だから先にいって待っていてくれ。
「そう……だけど。でも……ねえ! 私もここに残ることは出来ないの?!」
悩む雫は謎の声に向かってそう言った。
だが謎の声の返答は無慈悲に、事実だけを告げた。
【無理だよ。これ以上ココに居るのなら、僕達は君を異物として排除しなければいけなくなる】
『私達が優先するのは貴女じゃないの。決めなさい、どちらかひとつを。このまま消えるか。元の世界に帰るのかを』
謎の声が頭に響いたあと、俺は雫に言った。
雫。俺は大丈夫だ。先に元の世界に帰っていてくれ。なーに、適当に生きて。寿命が近付いたら俺もそっちに行くさ。
俺は雫に向けてニッと笑いそう告げ。
そうだ、大丈夫だ。俺はこの世界を、面白おかしく生きてみせる。シャロにアナにマリア。そして翼と共に。きっと死ぬ間際は「良い人生だった」と言って死ぬだろう。
俺がそう言っても雫は、迷っているようだった。普段は図太い神経している癖に、なんでこのタイミングでそうなるかね。
いっそのこと無理矢理押し込むか? 俺がそう思い始めた時。雫は言った。
「……わかった。いいの? 本当に行っちゃうよ?」
もちろんだ。悩む必要はないぞ? 行けよ、姉弟。
俺はグレンラガンのカミナよろしく、そう言い放った。
雫は一度目を瞑り。
1つ頷くと俺に顔を近付け。
唇が触れた。
……………………え、え!?
「フフッ。これで私を忘れることはなくなったでしょ? あと……私も、初めてだからね!」
そう言った雫は照れくさそうに笑い。
時空の裂け目の前に立ち。
そして、告げた。
「ソラ! ……またね!」
……ああ! またな!
雫は笑みを浮かべたまま、時空の裂け目に入って行った。
――――――――――――――――――――
そこはどこにでもある普通の一軒家。
1つ違う所を挙げるとするなら。
リビングと思われる場所にあるテーブルには、何枚もの紙が広がっていた。
その紙に書かれている「この人を探しています」の文字。
その紙に突っ伏して眠っている1人の女が、突然その身を起こし。近くにいた男に言った。
「……ねえ、アナタ……私夢を見たの。あの子が、帰ってくる夢を」
突然そんな事を言う女に、男は1つ頷き応えた。
「ああ、俺も見た。あの子が……笑って、帰ってくる。そんな夢を」
2人は確かに見た。
数年前に居なくなってしまった最愛の娘が、帰ってくる夢を。
「ただいま」
そう言って、帰ってくる夢を――。
男と女は理解した。
もう戻る事のない存在を。
だが確実に、自分たちの元へと戻って来てくれたのだと。
その日、ある少女の行方不明の届け出が取り下げられたという。
―――――――――――――――――――――
これにて、第1部終了となります。
次回更新から第2部の開始ですが、作者的には初めてのメインキャラの退場となりテンションがガタ落ちの為、次回更新はかなり期間が開きますが、この投稿から2日後くらいに第2部がスタートします。書き終わったら早まります。テンション上がれー!
シズクは元々死んでいて死後の念的なキャラで登場する予定だったのですが、何故か生きているキャラに変更されたためこのような結末になりました。
結果的には良い感じに救いのある感じになってよかったんじゃね? と思っています。それはそれとして死ぬのは予定通りなので変更はありません。悲しいですね。作者がカスな思考しているので仕方のないことです。
あと、シズクが元の世界に戻っても一応死んだ判定になるので、両親はなんか夢の中でシズクから別れを言われた感じになっています。その内容は両親と雫だけのものなので、書くことはないと思います。
多分次はハイスペック美少女にでも転生していることでしょう。しらんけど。今後メインの物語に絡んでくる事はないので、シズクはここで退場となります。
誰かスピンオフのコミカライズ書いてください!!
この場所に来ると記憶が蘇る。
辺りは暗く、川のような水の流れる音が聞こえてくる。それに、なんだか以前よりも草木が増えてる気がする。
ここに来ると、前に来た記憶が蘇る。
そうか……どうにか間に合ったんだな。
以前ここで謎の存在から言われた言葉。
勇者の残り時間が少ないということ。
その言葉の通り、すぐに別れが来てしまった。
今回は何を言うつもりなのやら。
俺は暗闇の中、謎の声が聞こえるまで待つことにした。
……聞こえてこないな。おーい、出てこい。
この空間は口から声を出しても、なんか変な感じがする。口が動いてはいるが、音が出ていないように感じる。
反応がないな。少し歩いてみるか。
俺はとりあえずその場を離れることにした。
いつも同じ場所で立っているだけだから、この空間を散策したことがない。何やら自然が増えてる感じがするし、ほんと、何この空間。俺の精神世界的なやつでいいんだよな? だとしたらなんでこんなに真っ暗なのだろうか、俺の心のように光あふれる空間であるべきだろう。ふざけやがって……絶対謎の存在のせいだろ。俺みたいな光属性の人間の心がこんなに暗いわけがない。
俺は水の流れる音がする方角へ歩き出した。
【ちょっと待った。そっちの方向じゃないよ】
出たな謎の存在め……今日は反応が遅いな?
不意に、頭の中に不思議な声色の声が響き渡る。
【少し回収に手間取ってね。それよりも君が向かうのはそこじゃないよ。そのまま左を向いて真っすぐ進んでくれる?】
変な指示しやがって……こっちの方角でいいんだな?
【そうそう。そのまま真っすぐ歩いてみて。それじゃあまた後で】
え、おい! ……言うだけ言って消えやがった。
俺は謎の存在の声の指示に従い、方向を変えて再度歩き出した。
◇
しばらく歩くと、背の低い木が密集しており、かき分けながら進むと、少し開けた草原のような場所に出た。
その草原の中心に1人の人物が立っている。
セーラ服を着た1人の少女。
その後姿を見た時、俺の心臓が高鳴った。
足が止まり、草原の入口でただその少女を見ていると、俺の気配に気づいたのか、ゆっくりとこちらを向いた。
その少女は――。
「お? ソラじゃん。さっきぶり~」
消滅したはずの雫だった。
再会がはえーよ。
あんな別れ方をしたというのに、1時間と経たずに再会してしまった。
早くない? 魂ごと消えたんじゃないの? もしかして俺何かミスった? だとしたらやばい使徒が誕生してしまうんだが。
俺の心の中は嬉しさと焦りが半々くらいだった。
そんな俺に雫は言った。
「あのさ~、私何で生きてんの?」
俺が聞きたい。本人も状況を理解していないようだ。
「それにここどこ? 調べようとしたけど、魔法がうまく発動しないんだよね。というか使えない感じかな? ソラも突っ立ってないでこっち来なさいよ。離れてたんじゃ話しづらいって~」
確かにその通りだ。俺は言われたとおり、雫に近づいた。
なんというか……何か背が低いな。俺が見てきた雫はもう少しだけ背があった気がする。それにメガネも掛けてる。今までそんな物着けてることはなかったんだがな。
雫もそのことに気づいたのか、自分の姿を確認しだした。
「あれ、なんか私若返ってる? この感じだと15歳の時かな? うわーこの制服懐かしっ! しかもメガネまで掛けてる。……もしかして転移直後の姿かな? どう思う?」
どう思うと言われてもな、俺には何もわからん。
「はー、つっかえ。にしてもここ暗すぎない? 代わりに〈照明魔法〉使ってくれない?」
はいはい。俺は〈照明魔法〉を唱えてみた――が、発動しない。
あれ、駄目か。そういえばこの空間で魔法は使ったことなかったな。
俺は暗闇の中でもある程度見ることが出来るので、必要性を感じなかったというのもある。
その時――頭の中に声が響いた。
【ふー、やっと終わったよ】
『久しぶりに疲れたわね』
戻ってきたか。この状況の説明が欲しいな。
「うわ、なにこれ。頭の中に……なにこれぇ、変な声……」
『失礼ね、私たちと貴女たちでは体の創りが違うから仕方ないでしょ』
【まあまあ、今はその話は置いておこうか】
どうやら雫にもこの声は聞こえているようだ。
そうか、初めて聞く人はこの声は気持ち悪く聞こえるのか。俺はもう慣れたから平気だが。
まあいいか、謎の声の言う通りその事は置いておこう。
それで? この状況の説明をしてくれる? 俺の問いに謎の声は答えた。
【そうだね……簡単に言うと。その娘の魂をこの場所に移動したって感じかな】
どうしよう、何もわからん。もっと詳しく説明プリーズ。
【君がその……えーっと雫だっけ? その娘の魂を消したよね? そのタイミングであの世界との繋がりが切れたから、消滅する前に一旦ここに移動させたんだよね】
『そうね。君の力で確かに消滅することは出来るけど、消滅するタイミングで繋がりが切れるから、あの世界の影響を受けないここに移動したってわけ』
ふーん、繋がりねぇ。それはつまりどういう結果に繋がるんだ? どっちみち死んだってことにはなるんだし。使徒になるだろ?
正直使徒になる過程がどんなものなのかわからないから、何とも言えないが。雫の魂? がここにあるなら、もしかして使徒は生まれない感じかな?
そんな俺の考えを見抜いたのか、謎の存在は答えた。
【そうだね。使徒――と呼ばれている存在になるには、あの世界と繋がりのある魂じゃないといけないからね。君の力で、あの世界との繋がりが切れた瞬間に、彼女の魂を持ってきたから使徒は生まれないよ】
『その作業が思ったよりも、面倒で疲れるものだったわね。少しは私達を褒めても良いんじゃないかしら?』
あっ、はい、お疲れ様です。
どうやら俺の知らない所で、謎の存在が何かをしてくれていたようだ。
ということは……最悪の使徒は生まれないってことでいいんだよな?
それに雫の魂? が俺の精神世界的なここにいるということは……もしかしてここに来る度にまた会えるのか?
【残念だけど、それは無理だね】
『私達と彼女じゃ存在そのものが違うもの。1つの体に魂が2つも存在することは許されないわ』
【そうだね。だから、彼女を送ってあげることは出来るよ】
送る? 一体どこに送る気だ? この世界の輪廻の輪とかいうのに送る気か?
「え、私転生する感じ? それだとまた死んだときに使徒になる可能性出て来ない?」
【可能性はあるね。だから君は別の場所に送るよ】
『そうね。話はつけてあるから安心してね』
謎の存在がそう言うと。
俺と雫の目の前の空間がひび割れ、時空の裂け目のようなモノが現れた。え、なにこれ。
謎の声が言った。
【『さあ、元の世界に帰りなさい』】
……元の、世界?
謎の声はそう言った。元の世界と。
それはつまり。俺と翼、そして雫のいた世界。日本に戻ることが出来るということか?
突然のことに俺の頭は混乱した。え、マジ? こんな簡単に戻れるの? だったら俺と翼も元の世界に戻れるんじゃ。
そう思ったが、謎の声は否定した。
【残念だけど。君と彼はまだ無理だね】
『そうね。この世界と繋がりがあるうちは無理ね』
この世界と繋がりのあるうち? 俺の予想ではこの世界に来た時に、体を作り替えられていると仮定していた。そうじゃないと言語やそのた諸々が自然と使えるというのは不自然だと思っていた。決定的な出来事は、ママが俺のことを赤ちゃんだと判定した出来事だ。この世界に来るときに肉体が再構築されたと考えれば、転移直後は生後0ヶ月ということになる。それは別にいい。ママを得られたんだ、素敵やん?
それは置いておいて。謎の存在の言っていることをまとめるとだ。
俺の力で雫は魂ごと消滅した。
その結果この世界との繋がりも消滅したということになる。魂ごと消滅したのになんで? という疑問はあるが、きっとあれこれ考えても無駄な気がする。そういうものだと考えることにしよう。
そして、俺と翼はまだ無理だという。
それはつまり、元の世界に戻る為には俺の手で翼を消滅させる必要が出てきたということだ。
……俺が自分の手で、翼を。
考えたくもないことだ。出来ることならしたくない。
だが結果的に雫は、そうすることで元の世界に戻ることが出来る。本当に戻れるのか? 正直この謎の存在がそう言っているだけで、確証があるわけではない。
俺の思いとは裏腹に、雫は黙ったままだ。
……雫はどうする?
「……え、あっ。うん。どう、しようか」
雫は珍しく戸惑っている。
そりゃそうか。いきなり元の世界に帰れると言われたんだ。俺でも戸惑う。
悩む俺たちに謎の声が告げる。
【悩むのはいいけど。あまり長くここに留まらせることは出来ないからね? さっきも言ったけど、1つの体に2つの魂は留まれないんだ。時間を掛け過ぎると、彼に負担がいくことになる】
そんなものか……なら、サッサと元の世界に戻ってもらった方がいいか。俺は雫に言った。
行けよ。元の世界に戻れるんだ。俺のことは気にするなって。
「……でも、ソラをこの世界に呼んだのは私なんだし。私だけ帰るなんて」
……言ったろ? またなって。必ず俺と翼も元の世界に戻る。だから先にいって待っていてくれ。
「そう……だけど。でも……ねえ! 私もここに残ることは出来ないの?!」
悩む雫は謎の声に向かってそう言った。
だが謎の声の返答は無慈悲に、事実だけを告げた。
【無理だよ。これ以上ココに居るのなら、僕達は君を異物として排除しなければいけなくなる】
『私達が優先するのは貴女じゃないの。決めなさい、どちらかひとつを。このまま消えるか。元の世界に帰るのかを』
謎の声が頭に響いたあと、俺は雫に言った。
雫。俺は大丈夫だ。先に元の世界に帰っていてくれ。なーに、適当に生きて。寿命が近付いたら俺もそっちに行くさ。
俺は雫に向けてニッと笑いそう告げ。
そうだ、大丈夫だ。俺はこの世界を、面白おかしく生きてみせる。シャロにアナにマリア。そして翼と共に。きっと死ぬ間際は「良い人生だった」と言って死ぬだろう。
俺がそう言っても雫は、迷っているようだった。普段は図太い神経している癖に、なんでこのタイミングでそうなるかね。
いっそのこと無理矢理押し込むか? 俺がそう思い始めた時。雫は言った。
「……わかった。いいの? 本当に行っちゃうよ?」
もちろんだ。悩む必要はないぞ? 行けよ、姉弟。
俺はグレンラガンのカミナよろしく、そう言い放った。
雫は一度目を瞑り。
1つ頷くと俺に顔を近付け。
唇が触れた。
……………………え、え!?
「フフッ。これで私を忘れることはなくなったでしょ? あと……私も、初めてだからね!」
そう言った雫は照れくさそうに笑い。
時空の裂け目の前に立ち。
そして、告げた。
「ソラ! ……またね!」
……ああ! またな!
雫は笑みを浮かべたまま、時空の裂け目に入って行った。
――――――――――――――――――――
そこはどこにでもある普通の一軒家。
1つ違う所を挙げるとするなら。
リビングと思われる場所にあるテーブルには、何枚もの紙が広がっていた。
その紙に書かれている「この人を探しています」の文字。
その紙に突っ伏して眠っている1人の女が、突然その身を起こし。近くにいた男に言った。
「……ねえ、アナタ……私夢を見たの。あの子が、帰ってくる夢を」
突然そんな事を言う女に、男は1つ頷き応えた。
「ああ、俺も見た。あの子が……笑って、帰ってくる。そんな夢を」
2人は確かに見た。
数年前に居なくなってしまった最愛の娘が、帰ってくる夢を。
「ただいま」
そう言って、帰ってくる夢を――。
男と女は理解した。
もう戻る事のない存在を。
だが確実に、自分たちの元へと戻って来てくれたのだと。
その日、ある少女の行方不明の届け出が取り下げられたという。
―――――――――――――――――――――
これにて、第1部終了となります。
次回更新から第2部の開始ですが、作者的には初めてのメインキャラの退場となりテンションがガタ落ちの為、次回更新はかなり期間が開きますが、この投稿から2日後くらいに第2部がスタートします。書き終わったら早まります。テンション上がれー!
シズクは元々死んでいて死後の念的なキャラで登場する予定だったのですが、何故か生きているキャラに変更されたためこのような結末になりました。
結果的には良い感じに救いのある感じになってよかったんじゃね? と思っています。それはそれとして死ぬのは予定通りなので変更はありません。悲しいですね。作者がカスな思考しているので仕方のないことです。
あと、シズクが元の世界に戻っても一応死んだ判定になるので、両親はなんか夢の中でシズクから別れを言われた感じになっています。その内容は両親と雫だけのものなので、書くことはないと思います。
多分次はハイスペック美少女にでも転生していることでしょう。しらんけど。今後メインの物語に絡んでくる事はないので、シズクはここで退場となります。
誰かスピンオフのコミカライズ書いてください!!
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【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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