小説の世界に入った私~子爵令嬢ポピーとして物語を楽しませていただきますわ!~

オケラ

文字の大きさ
1 / 21

#1 夢……?

しおりを挟む
(……あら? ここはどこかしら……? 夢……?)

 見覚えのない景色が目の前に広がっている。

「えっ……!?」

 違和感に気づき、慌てて鏡を探す。
 机にあった手鏡を掴み顔を見ると、

(!!??)

「うそ…………誰っ……!?」

 鏡には見覚えのない顔が映っていた。
 目はぱっちりとした二重で童顔の若い女性だ。

(な なにが起きているの……!? 夢? 夢じゃないの!?)

コンコンコン

「ひゃっ!」

 突然ドアが叩かれ、驚きで高い声が出てしまった。

(だ……誰かしら……!?)

コンコンコン

 再度ドアが叩かれる。

「ポピー? まだ寝ているの? どうしたのー?」

(ポピー!? 私はミーナなのだけど……!?)

 状況を理解しようとするが、頭は混乱するばかりでまともに機能してくれない。

「具合悪いのー?」

 慌てて鏡を戻し、私はドアの前に立った。

(考えるのよミーナ! どうするべき!? ……そうよね! それしかないわよね!!)

ガチャ……

 ドアを開けると一人の女性と目が合った。

「大丈夫?」

「あ……あの…………あなたはどなた様でしょうか……?」

「えっ!? ポピー……私のことがわからないの!?」

 どう考えても記憶にない。
 初めて見る女性だ。

「私はベラよ! 本当にわからないの……?」

(……ベラ? えっ……ベラ……ポピー…………)

「どうしましょう! ここがどこかはわかるかしら!?」

 首を傾げると、ベラという女性は両手を口に当てた。

「大変……! すぐに医務室の先生を呼んでくるわ! ポピーはここで待っていてね! 大丈夫よ!」

 彼女は早口でそう言うと廊下を走って行った。
 私はドアを閉めた。

「ふぅー…………」

 とりあえずベッドに腰かける。

「ポピー……ベラ……」

(もしかして……)

 二人の名前を聞いた時から、頭の中にとある小説が思い浮かんでいた。
 侍女のシャルラーナ先輩が書いた恋愛小説だ。
 私も先輩もショーン・セルーネ伯爵家で侍女として雇われており、伯爵夫人は大の小説好きのため、文才のある先輩は小説を書くことも仕事の一つとなっている。

 その小説の主人公は伯爵令嬢エミリー。
 彼女は同じ高等部に通う幼馴染の伯爵令息アルザと互いに惹かれ合っていた。
 このままアルザと結ばれるのかと思った矢先、エミリーたちが2年生に進級すると状況は一変する。
 エミリーは同じクラスになった侯爵令息マークスから積極的にアプローチを受け、彼に気持ちが傾いていったのだ。
 アルザも負けじとエミリーにアプローチするもエミリーの心はマークス一色になっており……エミリーはマークスと婚約を結ぶのだった。

(ポピーはエミリーの親友で1年次も2年次も同じクラスだったわね……。ポピーは寮で生活をしていて、ベラとは部屋がお隣で……)

(私……小説の中に入ってしまったのかしら!?)

「いやいやまさかよねぇ……」

 つい声に出てしまう。

(でも……ポピーとベラ……ただの偶然とは思えないわ……)

 しばらくすると、ベラが医務室の先生と一緒に部屋に入って来た。
 先生にあらゆることを質問されたので、私は自分を小説に出てくるポピーだと仮定して質問に答えていったところ一時的な記憶障害だと診断された。
 辻褄が合ったみたい。

(やっぱり……私は小説の中のポピーなんだわ!!)

「体のどこにも異常はないので、おそらく心配ないかと思われます。それでも不安だと思いますので、今日から一週間は毎日診察を受けていただきますね」

「はい」

「何か異変を感じたらすぐに知らせてくださいね。それではお大事になさってください」

「先生、部屋までお越しくださり、誠にありがとうございました」

 先生を部屋の前まで見送ると、ベラに抱きしめられた。

「よかった~~~~~! ポピ~……ポピィ~……」

「心配かけてごめんね。ベラ、先生を呼んで来てくれて本当にありがとう」

「ううん! はぁ……安心したらお腹がぺこぺこだわ! 早く朝食を食べましょっ」

「うん……」

 私は急いで着替えに取りかかった。
 これが現実なのか、夢なのかはまだわからないけど、戸惑っている暇はない。
 ポピーになってしまった以上、この世界ではポピーとして生きなければならないのだ。

 きっと、私が元の世界に戻るのは物語が終わりを迎えた時……。

 私は素早く着替えを済ませ、ベラとともに食堂へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

老け顔ですが?何かあります?

宵森みなと
恋愛
可愛くなりたくて、似合わないフリフリの服も着てみた。 でも、鏡に映った自分を見て、そっと諦めた。 ――私はきっと、“普通”じゃいられない。 5歳で10歳に見られ、結婚話は破談続き。 周囲からの心ない言葉に傷つきながらも、少女サラサは“自分の見た目に合う年齢で学園に入学する”という前代未聞の決意をする。 努力と覚悟の末、飛び級で入学したサラサが出会ったのは、年上の優しいクラスメートたちと、ちょっと不器用で真っ直ぐな“初めての気持ち”。 年齢差も、噂も、偏見も――ぜんぶ乗り越えて、この恋はきっと、本物になる。 これは、“老け顔”と笑われた少女が、ほんとうの恋と自分自身を見つけるまでの物語。

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで

ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。 だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。 「私は観る側。恋はヒロインのもの」 そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。 筋肉とビンタと回復の日々。 それなのに―― 「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」 野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。 彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。 幼馴染ヴィルの揺れる視線。 家族の温かな歓迎。 辺境伯領と学園という“日常の戦場”。 「……好き」 「これは恋だ。もう、モブではいたくない」 守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、 現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。 これは―― モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。 ※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。 ※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。 ※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

盲目公爵の過保護な溺愛

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中
恋愛
伯爵家の長女として生まれたミレーヌ。平凡な容姿に生まれた彼女は、美しい妹エミリアと常に比べられ、実の両親から冷遇されて育った。 パーティーでは家族の輪に入れて貰えず、いてもいなくてもいい存在。 そんな現実から逃れようと逃げ出した先で、ミレーヌは美しい容姿をした目の不自由な男性と出会うが──

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処理中です...