小説の世界に入った私~子爵令嬢ポピーとして物語を楽しませていただきますわ!~

オケラ

文字の大きさ
14 / 21

#14 幸せなひと時

しおりを挟む
 好きな人が自分に向かって跪いているという状況に、私はなんとか理解を追いつかせていた。

(ライム様が……ライム様が……っ!!)

 目が合い、微笑むライム様。
 私も微笑み返す。
 緊張しているため、ぎこちない微笑みになった気がする。

 ライム様は一度少し俯き、ふぅ……と静かに息を吐くと顔を上げ、真剣な顔つきで口を開いた。

「ポピー、愛してる」

「…………!!!」

 衝撃が全身を駆け巡った。

(『好き』じゃなかった……あ……愛…………愛……っ……)
 
「………………私も、ライム様を愛しています……」

 ゆっくりと言葉を返す。
 心臓がとんでもないことになっている。
 わかる。
 ドックンドックンと激しく波打っているのがはっきりとわかる。

「ポピー」

 ライム様が私の名前を呼ぶ。
 私も『ライム様』、と言おうとしたその時。

「僕と結婚してください」

「………………」

 少しの後、ライム様はくすっと笑った。

「驚かせて申し訳ない。プロポーズは……少し早かったかい?」

「いえっ……!! わ 私……私も……ライム様と……ずーとずっと一緒にいたいですわ……!!」

(きゃあああああっ!!! お……落ち着くのよポピー……落ち着いてポピー……!!!)

 もう、何がなんだかわからない。

 ライム様は私の手の甲にキスすると、立ち上がり、ゆっくりと後ろに下がりながら私の手を引き寄せた。
 引き寄せられるがままゆっくりと立ち上がる。
 2、3歩ライム様の方へ歩みを進めると、私の体は大好きな人のぬくもりで包まれた。
 そっと、ライム様の背中に手を回す。
 今でも充分くっつきあっているのだが、ライム様をもっと、もっともっと近くに感じたい一心で体をゆだねた。
 ライム様はそれを感じ取ったのか、私を抱きしめる力を少し強めた。

バックンバックン……バックンバックン……

 海からの爽やかな風に吹かれながら、私たちは互いのぬくもりを感じ合っていた。



 週明けの朝、私はまだ一昨日の余韻に浸っていた。
 海辺での幸せなひと時を思い出しては頬がゆるゆるになる。
 朝食時、そんな私の様子を見てベラは面白そうに笑った。

「うふふふ。ポピーったらよっぽど楽しかったのね」

「うん…………そうなの…………」

(はぁ……ライム様…………)

「ポピー、いいこと教えてあげよっか」

「……いいこと?」

「ついさっき、アーリン様がポピーの顔を見て、なんとも言えない顔をしていたわよ」

「……えっ!?」

 アーリン様の名前に、一気に現実に引き戻される。
 この間のことが尾を引いているよう。
 私は辺りを見回した。

「もう出て行かれたわよ。あの顔はねぇ、『あの子、なんてだらしのない顔をしているのかしら……信じられないわ……』って言っているかのようだったわよ~」

「う”っ……そ、そんなにだらしない顔だった……?」

「えぇ、私からしたら面白くてずっと見ていられるんだけどね」

「バカにしているわ……! ベラが私をバカにしているわっ」

「してないわよ~。だけど、食べ終える頃にはシャキッとした方がいいわね。テスト期間も近づいてるんだから」

(はっ……!!)

(そうだったわ……あと数週間で1年生最後のテストが始まるんだった! ポピーはそこそこ成績のいいキャラクターだから頑張らなくちゃだわ!)

「そういえば、ベラはどうだったの? レストランの料理美味しかった?」

「もう絶品だったのよ~! どうやって味付けをしているのかすごく気になったわ。とても勉強になったの」

「そう! よかった……」

 私はにんまりとした顔でベラを見つめた。

「……どうしたの?」

「他に、話したいことがあるんじゃないのかしら?」

「え~? ……特にないわね」

「えっ?」

(特にないって……)

「ベラ……ニューズ様とはお会いしなかったの?」

 つい、名前を出してしまった。

「ニューズ様って……カレーヌ地方一帯を統治されてらっしゃるニューズ男爵のこと? どうして?」

「あっ……有名なレストランって言っていたから、ニューズ様に偶然お会いするなんてこともあるのかしら……と思って……」

「あぁ~。ううん、お見かけしなかったわね」

「そう……」

(……あら? あらら? ベラはそのレストランで他のお客様に絡まれているところをニューズ男爵に助けられるはず、なのだけど……!?)

「ポピー、急いだ方がいいわ。今日はゆっくりし過ぎたみたいよ」

「あ うん!」

(本来ならベラがニューズ男爵と出会うのは2年生になってからだものね……。気にするほどのことじゃないわよね……?)

 私たちは食堂を出て校舎へと急いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

老け顔ですが?何かあります?

宵森みなと
恋愛
可愛くなりたくて、似合わないフリフリの服も着てみた。 でも、鏡に映った自分を見て、そっと諦めた。 ――私はきっと、“普通”じゃいられない。 5歳で10歳に見られ、結婚話は破談続き。 周囲からの心ない言葉に傷つきながらも、少女サラサは“自分の見た目に合う年齢で学園に入学する”という前代未聞の決意をする。 努力と覚悟の末、飛び級で入学したサラサが出会ったのは、年上の優しいクラスメートたちと、ちょっと不器用で真っ直ぐな“初めての気持ち”。 年齢差も、噂も、偏見も――ぜんぶ乗り越えて、この恋はきっと、本物になる。 これは、“老け顔”と笑われた少女が、ほんとうの恋と自分自身を見つけるまでの物語。

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。

藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」 街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。 だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!? 街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。 彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った! 未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!? 「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」 運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...