旦那様は獣 〜比喩でなく〜

一 千之助

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 本能との遭遇

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「悦いか? なあっ?」

「悦ぃ……ぃぃっ! 気持ち悦いです、兄さぁん!」

 ……されていることが丸分かりな声の数々。

「もっと足を広げろ。自分でイってみせろよ」

「ふぁ……、も……っ、イく……っ!」

「お願いはどうしたかな? イくところを見てくださいって言わないと」

 ……そうかと思えば、別の方からも……

「待てっ! 待てだ、止まれ。……はは、悦い顔だなあ。イきたいか? ん~、どうしてくれようか?」

「ふふ、イきたいねぇ? ……なんって可愛い顔すんのっ! だめだ、もう食べ尽くしたいっ!」

「……ひぎっ! ひ……ぃっ」

「噛むな、噛むなっ! あ~ぁ…… やめてやれよ、泣いてるじゃないか。でも、ほんと可愛いな。泣き顔がすこぶるそそる…… 舐めてやるよ、イっても良いぞ? 兄貴、押さえて」

 ……劣情に満ちた愉しげな声。ここは複数のようだ。ラウル達みたいな兄弟だろうか。

 全ての馬車で行われているらしい淫らな宴。

 これがオウチの世界…… 弱者に権利は認めず、肉食獣の庇護を受けねばどうなるか分からない世界…… そのために弱い者は己を与えるしかない。

 よくよく外を見てみれば、木の陰や草むらでもいたしている者らがいる。前後に挟まれて突き上げられながら、口にも突っ込まれているアレは…… 鹿の獣人か?
 角を掴んで腰を動かす男性の一物が、弱々しい少年の口に根本まで押し込まれていた。

 ……え? 入るもんなの? どうやって?

 獣人の御立派様はどデカい。それが殆ど見えなくなるまで少年の唇に捩じ込まれている。

 唖然と見つめる千里の肩を抱き、ヒューが愉快そうに呟いた。

「お盛んだねぇ。まあ、今の獣人は年中発情期だからな。……あ、そっか、忘れてたよ」

 ヒューの顔からニヤニヤがすっと消え、彼は黒い箱をガサゴソ漁る。そして手にされた物は、玉が連なるような棒。先端は小さく、手元にいくにつれ大きな楕円が並んだ棒は柔らかいらしく、彼の手の中でくにくにとしなっていた。

「口だっていきなりは無理だからな。慣らさないと」

「ああ、そうか。おいで、千里。可愛がってあげよう」

 こいつらの可愛がるは食らうと同義だ。

 あからさまに怯えた千里を捕まえ、ラウルが膝に乗せる。そして小さな顎を掴んで上向かせると、片手で彼女の眼を覆うように頭を固定した。

「は……ぅ? なに……?」

「身体の力を抜いて? いくよ?」

 つ……っと舌の上を滑っていく何か。それが喉の奥に押し込まれ、千里は慌てる。

「んぐ…っ! ん……ぅ……っ?! あぐ……っ!」

 どんどん押し込まれる何か。最初は小さなモノだったソレがしだいに大きくなり彼女から声を奪った。

「よーし、よし、上手だぞぉ? ん……? あ、キツいか」

 窒息するような恐怖で、必死に藻掻く千里の両手足。バタバタ暴れるソレを見て、ヒューはゆっくりと彼女に呑み込ませたモノを引きずり出した。

「ひぃぅ……っ、ひ……っ、がは……っ! はぁ……」

 涎をたらして、がふがふ息を荒らげ、千里は何をされているのか思い至った。あの玩具を喉に挿れているのだと。

「ま…っ、て、やめ……っ、うぐっ!」

 ラウルが頭と顎を固定しているため口を千里は閉じられない。そこへ容赦なく玩具を押し込むヒュー。

「我慢だぞ~? 大丈夫、ショーンでもやれたから。チイは身体が小さいけど、ショーンより柔らかいし、すぐに慣れるって」

「……必死に抗おうとする千里は可愛いな。暴れる小さな手足が、すごく可愛い。堪らんぞ」

 ラウルは掌の内側に湿ったモノを感じて、うっそり笑う。この可愛い妻が泣いていると思うと、凄まじい劣情が彼の股間を直撃した。
 ひとつ呑み込むたびに何度も出し入れされ、ふたつ、みっつと進む玩具が千里の喉を嘔吐かせる。しかし、その嘔吐きも玩具に阻まれ、彼女は泣くことしか出来ない。

 苦っ…し…っ! 痛い、ヤダぁぁーっ!!

 ビクビク四肢を痙攣させて藻掻く千里。
 その喉をぐちゃぐちゃ掻き回しながら、ヒューは次の玉を押し込んだ。
 途端に千里の四肢が硬直し、声にならない絶叫をあげる。

「……きっちぃな。ん~…… お? おおお?」

 ギリギリ入りそうもない楕円の三センチ玉が、嘔吐く彼女の喉の動きに合わせて呑み込まれていった。涙と鼻水まみれで呼吸困難を起こしている千里を余所に、二人は、その艶めかしい光景に釘付けである。

「……獣人と違うな。違いすぎるな」

「お……ぉう。ねっとりトロトロな肉だよなぁ? チイの尻もこんなんだったし…… 人間って、すげぇエロい生き物だなあ」

 千里の意識がしっかりしていたら反論しただろう。だが、今の彼女は激痛と苦悶でそれどころでない。

 ……死ぬっ! 死んじゃうってぇぇ!!

 その日、無茶な調教で酷く喉を痛めてしまった千里。

 翌日、瀕死から回復したショーンが、寝込んでいる彼女を見て、ラウルとヒューに激雷を落としたのは言うまでもない。





「だから、ヤり過ぎんなって言っただろうがよーっ!! 学習しろやっ!!」

 ちんまり正座する兄貴ーズ。

「すまん……」

「……悪かった」

 千里はショーンが調教で洗脳されていると思っていた。まるで性奴隷のようだと。ある意味、正しいだろう。
 しかし前述したとおり、獣人は情の深い部族である。己の庇護下にあるものは全て家族。慈しみ愛する対象なのだ。恋愛には疎くとも、親愛の情は売るほど持ち合わせている。
 その暑苦しいまでな愛情を一心に受けてきたショーンは、閨では兄達にされるがままで弱いが、普段は我儘な末っ子気質。ちゃんとした自我や矜持も持っていた。
 そして末っ子には甘々な兄貴ーズ。ショーンの怒りが何より怖いラウルとヒューは、叱られたことで己を悔い改め、千里への調教に手心を加える。



「ゆっくりしてろな。また損なったら大変だし」

「俺等も性急過ぎた。少しずつゆっくり進めよう」

「……………」

 なんと答えたものやら。悪気の欠片も感じさせない兄貴ーズの労りに、千里は苦笑いを浮かべるほかない。
 正直、全力で拒否したい気持ちが強いが、オウチという世界の実情を知ってしまった今、千里は彼らと離れるのが自殺行為に思えた。
 一見した感じではあるが、キャラバンの中でも、この三人は異質なのだ。
 他の獣人を観察したところ、肉食獣は従える草食獣などを奴隷のように扱っている。殴る蹴るは日常茶飯事、それすらも愛情表現だなどと宣う傲慢不遜さ。
 けど、支配されている側の草食獣らも、満更ではなさそうで、無体を働かれた後に与えられる口づけにうっとりしていた。
 殴る蹴るの理由の大半が嫉妬だからだ。
 誰かと楽しそうに話していたとか、微笑みかけたとか、中には視線を振ったなどという言いがかりも甚だしい理由で暴力を振るわれる。

 疑問を説明してもらっても唖然とする千里に、ラウル達は笑った。獣人同士のコミュニケーションに過ぎないと。

 基本的に獣人は、妻と認めた者に甘々で、家から一歩も出さないほどスポイルする。それが普通。別の肉食獣の眼に触れさせるのを酷く嫌う。
 中には鎖に繋いで、部屋から出さない者すらいるのだとか。

 地球と常識が違うだけで、彼らには彼らなりの愛し方があるのだろう。

 ……ついていけないけど。

 毎夜のように盛り、甘い声の満ち溢れるキャラバン。


「まあ、千里達みたくか弱そうな生き物には分からないかもなぁ」

「嫉妬されるのは嬉しいモンさ。それだけ愛してくれてるってわけだしね。それに獣人は滅多なことで怪我はしないし?」

「もちろん、千里にあんなことはやらないよ? すぐ壊れそうだし…… 正直、俺らは力に訴えるのが好きじゃないしね」

 ふう……っと眉間に皺を寄せ、ヒューが独りごちた。

「気持ちを伝えるのに暴力は必要ないよな?」

「あれはあれで、見てる分にはご馳走様って感じだけど、やっぱ同じ見るなら佳がってる顔の方が良いねぇ」

「……だな」

 思い知らせたあとの可愛がり。そんな一幕を一瞥し、唾棄するような眼差しを隠さない三人は、キャラバンの中でも変わり者と呼ばれていた。
 獣人に珍しく、彼等は平和主義なのだ。揉め事は出来得る限り避け、切った張ったが蔓延するオウチで飄々と暮らしている。
 
 だから、千里は彼等から離れるのは得策でないと感じた。ねっとりがんじがらめにされようとも、そこに暴力がないだけで天国だろう。
 どちらも行き過ぎた愛情の暴走かもしれないが、こんな化け物じみた獣人に殴られようものなら千里は死ぬ。
 それが日常茶飯事な世界なのだ。もし別の獣人に捕まった場合、千里は悪意なく殴られ、お互いに最悪を迎えるだろう。
 あの森で拾ってくれたのがラウル達で良かったと、心底思う千里である。

 こうして異世界の洗礼に身悶えつつ、彼女の受難は続いていく。
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