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 産卵との遭遇

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「……っ!痛……っ! あっ、……ふううぅっ」

「ショーン? 大丈夫、綺麗に開いているから。……もう少しだ」

「……デカいな。あとちょっと。もう産まれるぞっ!」

 防水シートを敷いた寝室で、膝をついたヒューに抱きしめられながらショーンは苦痛に顔を歪めていた。突き出した弟の腰を支え、必死に撫でさするラウル。
 その細い脚の間に垣間見える赤茶色な物体。それはショーンの狭い蕾をメリメリと押し開いて出てこようとする、粘液にまみれた卵だった。
 ぬるりとした質感の卵は直径十センチ以上。はらはら涙を零して呻くショーンに、とんでもない激痛を与えている。
 ぴっと小さな亀裂が孔の縁にはしり、ラウルが軽く眼を見開いた。……が、彼は冷静に声をかける。

「少しキツいなあ? でもすぐだ。もう出てくるぞ? あと一息。頑張れ、ショーン」

 何気に指を滑らせて、切れた部位を治癒した。切れたことにも気づかなかったらしいショーンは、コクコクと頷きながら、引力の助けを借りて卵を産み落とす。

「んうぅ……ぅっ、ん、ふあっ?!」

 イキんでいた呻きが驚きに変わった。はあはあと息を荒らげ、涙に烟る眼が呆然と宙を見つめている。身体から何かがズルズル抜け落ち、下半身を責め苛んでいた苦痛が一瞬にして霧散したのだ。

「うあ……、あ……、に、兄さん?」

 ヒューに縋り付きながら、背後の兄を振り返るショーン。それに答えもせず、ラウルは無言でしゃがみこんでいる。

「……………った」

「え……?」

 聞き取れないほど微かな声。それは明らかに震えていた。

「……よくやった、ショーンっ! 立派な卵だっ!!」

 くしゃくしゃに歪んだラウルの顔。その彼の腕の中には、布に包まれた卵が抱かれている。
 一斉に湧き立つ部屋の中。二人がかりでショーンを抱きしめ、ヒューはキスの雨を弟に降らせまくった。

「最高だ! 最高だよ、ショーンっ! 俺達の子供だっ! これでようやく教会に面目がたつなっ!」

 子作りのために引き取った番。それに卵を産ませられないなど、番を斡旋する教会にしてみたら骨折り損のくたびれ儲け。ラウル達への態度も辛くなる。
 世界の半分を仕切っているような教会に睨まれたら人生も上手くゆかない。そんな肩身の狭い思いを何年もしてきたラウルらは、心の底から卵の誕生を喜んだ。

 そしてしばらくして、卵の奉納のために三人は家を留守にする。

「一人で置いておきたくはないんだけど…… これは番の責務だから。産んだ者と胤を注いだ者が揃って行かなきゃならないんだよ」
 
「なるべく早く戻るからな? しっかり鍵をかけて何があっても開けるなよ? 万一、火事や地震が起きたら地下のシェルターに避難するんだ。分かったな?」

 細々とした注意を千里に言い残し、三人は何度も振り返りつつ出かけていった。

 ……地下にシェルターとか。どんだけ最悪を想定してるのよ。絶対に妻を家から出さないための仕様よね。

 乾いた笑みを貼り付け、千里は久方ぶりな自由を満喫する。一人で過ごすのはオウチに来てから初めてだ。ゆっくりしようと、彼女はお茶の支度を始めた。

 それが束の間の平穏とも知らず。
 


「痛っ! 痛いぃ、やめてーっ!」

「駄目だ、チイは二本差しも出来ないし、広げておかないと、ショーンより苦しむはめになる」

「力抜けよ~、もう少しだから………」

「ひいいぃぃぃーーーっ!!」

 わんわん泣き叫ぶ千里のお尻には、ヒューの手が捩じ込まれ、みちみち音をたてて呑み込まされていた。今にも弾けそうなほど張り詰めた孔の縁。それを探りつつ慎重に進むヒューの手。
 指を揃えて窄めた状態の彼の手は、スライムの粘液でぬらぬらだった。それでも硬い孔縁に阻まれ、ヒューの手は思うように入らない。

「くっそ…… 無理か? ショーンも硬かったけど、慣らせば呑み込んだのにな」

「獣人とは身体の大きさからして違うからな…… いよいよとなったら、筋弛緩剤を使うしかないかもしれん」

 なるべく薬を使いたくはないがと、千里を押さえつけたまま、ラウルも苦しげに眉を寄せた。
 ショーンの産卵を目撃した二人は、千里の細腰で卵を産むのは不可能だと感じる。彼女のお尻はラウル達の物を受け入れるが、それが精一杯。一物よりずっと大きな卵を産めるようには見えなかった。
 ゆえに産卵のための調教を始めたが、思いの外難航する。

「妻調教のマニュアルどおりなら、手を呑み込ませて、二本差しを教え込めば卵は産めるとあるが……」

 何かの本をペラペラめくるラウル。どうやら、番を調教するためのマニュアルがあるようだ。これに沿って、ショーンも躾けられてきたのだろう。
 
「根気良くやれば出来るのかもしれないが、如何せん時間がなあ…… 成長が遅いみたいだけど、間違いなく育ってるぞ、チイの腹の中の卵」

 獣人と人間の差異だろう。千里の中で育まれる卵は、ゆるゆると成長し、ショーンよりも小さい。それでも外から触った感じではテニスボールくらいはある。丁度、窄めたヒューの手ぐらいの大きさだ。
 ふぐふぐ泣く千里を見つめながら、どうしたものかと悩む夫二人。しかしそこへ、三人目の夫がやってきた。

「あの……さ。俺の手ならどうかな?」

 兄達の調教をよく知る彼は、フィストファックの辛さも知っている。だから、事後に必要な氷やお湯を用意していたのだが、難航しているらしいラウル達を見て、思いついたことを口にした。
 がっしりむちむちなヒューやラウルより、ほっそりしなやかなショーンの方が小さく細い手をしている。この手で慣らしてからヒューの手にと段階を踏んだほうが早く慣れるかもしれない。
 そういうショーンに頷き、ラウル達は、うつ伏せた千里を左右から押さえつける。

「我慢だぞ? チイ。裂けても俺が癒やしてやるから」

「卵を産むためだからな? 頑張れよ、チイ」

「ゆっくりやるからね? 気を楽にして力をぬいて?」

 やだあぁぁーっ! うぇ、うぇぇえっ!!

 心の中だけで叫び、千里は細く長い息を吐き出して力を抜こうと試みた。どっちにしたって卵を産まなくてはならないのだ。ならば覚悟を決めるしかない。
 人の身体というのは異物に抵抗する。下手な道具より、生身の手の方が受け入れやすいのだ。
 そっと指先から潜り込ませ、徐々に手を押し進めるショーン。しかしやはり、ヒューのつっかえていた親指の根本辺りで千里の孔は限界を迎えた。

「キツいね…… でも…… んっ!」

「あーーーっ!! 痛いっ、痛いっ! もう無理ぃぃーーーっ!!」

 覚悟していても痛いものは痛い。四肢を強張らせて泣き喚く千里を心配そうに一瞥するが、ショーンの手は怯まない。
 何度も出し入れしつつ、彼は、ぐっと力を込める。すると、少しずつだがショーンの手が深く呑み込まれ始めた。
 尻孔独特の蠕動。吐き出すことを主旨とした構造の肉は、ある程度進むと内部に巻き込むよう動くのだ。広げられた筋が緩んだ瞬間、無理やり押し込むと、案の定、千里のお尻はショーンの手をぬぷりと呑み込む。

「きやーーーーーっ!!」

 一瞬、焼け付く痛みが千里の背筋を駆け抜けていく。
が、ソレが過ぎた瞬間痛みが消え失せ、涙でぐしゃぐしゃな彼女の顔が安堵した。
 異物感はあるが、耐えられる範囲だ。何が起きたのか分からない千里の体内で、何かが大きく動く。

「……入った。入ったよ、ほら」

「え……? ひぐっっ?!」

 内部を掻き回すように動く何か。それはショーンの手だった。
 彼の手首はラウル達の一物程度。だから痛みが引いたのだ。慣れた太さである。
 呑み込まれたショーンの手に眼を見張り、ラウルが指示をした。

 束の間の安堵に気をゆるめた千里は、ここからさらなる地獄が他待ち受けていることを知らない。

「ゆっくり抜き差ししろ。肉の抵抗がなくなるまでだ。一度入ったなら容赦はいらん」

「了解」

 いや、容赦してーーーっ!!

 枕に顔を押し付けているため、脳内だけで絶叫中の千里。それを余所に、ショーンはゆっくり、ゆっくり、己の手を挿入する。焼け付くような痛みが繰り返され、千里は恐怖のあまり失禁してしまった。
 シーツに拡がる琥珀色の染み。それに薄く微笑み、ラウルは次の指示をショーンに与えた。

「肉の抵抗が弱まったら、今度は抜くときだけ拳にしろ。無理やり引き出さなくて良い。軽く引きつつ、チイ自身の力で排出させるんだ」

 言われたとおり、ショーンは窄めた手を埋め込むと、中で拳を握り、軽く引っ張った。身の内に感じる固まりに、千里の顔が酷く歪む。

 何をされているのか分からず、恐怖と激痛で泣き喚くしかない千里だった。
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