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 産卵との遭遇 2

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「出して? ほら、腹に力を入れて…… 自分で押し出すんだ」

「焦らなくて良いよ? 手伝うし……」

「んううううーっ! ひぎぃ、お腹が壊れるぅぅっ!!」

 どんどん入口を圧迫していくショーンの拳が、ジリジリと蕩けた柔肉を蹂躙した。みちみち音をたてて拡がる狭い孔。本来、吐き出すべき器官は、それを全うしようとするが、窄めた手より大きなソレは、容易に吐き出せない。
 今にも切れそうなほど広げられた孔の縁が、裂けると思った瞬間、即座にショーンが拳を解いてぬるっと手を引き出した。
 するるっと圧迫感が消え、ひいひい息をつく千里。

「裂けそうだったよ。無理はやめようよ」

「……だな。すまん、性急だったやもしれん」

「じっくり慣らせば良いさ。ショーンで慣れたら、俺のも入るだろうし」

 そこから拳で吐き出せるようになるまで、千里は半日かけてショーンの手で調教された。泣いても叫んでも彼等はやめない。自分達の卵のためなのだ。やめられるわけがない。
 容赦なく、がぽがぽ捩じ込まれるショーンの手。拡張された孔が戻らないよう太い玩具を押し込み、今日の拡張は終わった。

 ……ひいいぃぃっ、お尻を排泄に使わないから出来る技だわ。……うえぇぇん、痛いよぅぅぅ。

 凄まじい異物感と痛みに泣き崩れる千里を労り、三人は代る代るキスをする。

「これはチイのためでもあるんだよ? 産む時に裂けたりしたら大変だろう? こんな痛みでは済まないよ?」

「……産んだ経験者だから分かる。アレは辛い。でも、産まれた卵をみたら…… 嬉しくて、嬉しくて、痛かったのも苦しかったのも吹っ飛んじゃったけどね」

「……それでも、見てる方はキツい。……言わなかったが、ショーンも少し切れたんだ。癒やしたけど、アレは見てる方が辛い」

 それぞれ思うところを口にする三人。

 孔の拡張は玩具でも出来るが排出する練習も必要だと、ショーンからバトンタッチしたヒューが、後日、千里の体内で拳を作り、じわじわと引っ張り出す。

「……めちゃめちゃ気持ち悦いんだけど。チイの中、堪らねえぇぇ、拷問か、これはっ! 挿れてぇぞっ!!」

 練習なことも忘れて興奮気味なヒュー。しかも直に手で卵に触れたらしく、彼は鼻息を荒らげた。早く出てこい、息子ぉぉっ、と、スライムのスキンに包まれた卵を撫でながら激励する。

 ……人の中に手を突っ込みながら、何してんのよぉぉぉーっ!!

 あうあう泣きつつも、恥ずかしさで真っ赤な千里。

「良いな、アレ。お前も、また早く孕めよ? 俺が毎日撫でて励ましてやるから」

 千里の調教をヒューに任せたショーンも、ラウルの手で調教されていた。元々フィストは仕込まれ済みだったが、泣き叫ぶ千里の姿に欲情した兄達ーズは、まだ若かった頃には感じなかった新たな性癖の扉を開けてしまったらしい。
 最初から拳を握り、ごちゅ…っとショーンのお尻に埋め込むラウル。手首どころが腕の中ほどまで捩じ込んで、最奥にうずくまるスライムを撫でる。

「んあ……っ! んん……、あっ、ああっ!」

 体内を行き来する太い凶器。二本差しと変わらない質量が、ショーンの背筋を震わせた。

「なるほど、届くな。……もっと早く気づいていたら、最初の卵も撫で育ててやれたのにな」

 じっくりと体内をまさぐる太い腕。一物では味わえない、意思を持つ動きに翻弄されて、ショーンの身体がガクガク痙攣する。
 震えるほど気持ちが悦い。知らず身体が火照り、蕩けた息で呑み込みきれぬ唾液が糸を引いた。どうやらスライムを掴んで遊んでいるようで、結腸から剥がされまいと必死に抵抗して暴れるスライム。
 届いてはいけない最奥をごちゅごちゅ掻き回されて、ショーンの息が止まる。体内が激しく疼いてバチバチ火花をたてていた。
 
「ひいぃ……う、あ…ひ…ぃいっ! ひぅ…、ううっ!」

 今にも崩れ落ちそうなほどイきまくり、限界まで眼を見開いたまま、ひゅーひゅー息をするショーン。もはや言葉も紡げない。泣けるうちは余裕というラウルの言葉の意味を身を以て知った気がする。
 ぷしゃ、ぱしゃと静かにはじける彼の御立派様。本当の愉悦とは、身体を凍りつかせるほど凄まじいものだったのだ。
 熟れて抱かれることに特化したショーンの身体は、悦い処を探って蠢くラウルの手に逆らえなかった。

「悦さげだな? ずいぶんと素直だ。中も、ここも…… いつもこうなら、虐めなくて済むのになあ?」

 ラウルも毒のようにじわじわ広がる興奮を隠せない。小生意気で可愛い妻の絶対服従な姿に。
 いつものよう掌で転がしてもて遊ぶのも楽しいが、こうして全幅の服従を強いるのも面白い。
 特に今は冷静だ。普段の睦みではイかせることやイくことに気を持っていかれていて、じっくり弟を眺めている余裕はない。
 
「ひぃ……っ! ひうぅぅ……ぅ、ひあぁぁ……っ!」

 見開いた目からポタポタ涙を零し、とうとう崩折れるショーン。べしょっと溶けるように沈みこんだ弟の腰を持ち上げて膝に乗せると、ラウルはショーンが過剰反応を示していた場所のみを執拗にいじくった。
 ビクン、ビクンと四肢を痙攣させ、物言わぬ妻。しかし、ラウルの膝を濡らす温かいモノが、その悦びを彼に伝えていた。

 ……なんと愛らしい。暴れもせず、泣き喚きもせず、ただただ身を委ねて歓喜する姿は眩しすぎる。

 服従のポーズの獲物を腹から食い破ったかのような充実感。まるでショーンを余さず食したかのような気分に浸り、ラウルは弟が反応を見せる限り、獰猛に中を責め続けた。
 そして指一本すら動かせなくなったショーンの中に己の猛りを捩じ込み、深い溜息をつく。
 どろどろに熱く蕩けた内部が一物に絡みつき、すこぶる気持ち悦い。散々弄くり回されて疲れたのか、最奥のスライムも大人しいものだった。
 そして、ふっとラウルの眼が見開いた。

 ……このまま精を注げば着床するのでは?

 いつもなら突き上げが過ぎて、大半は死んでしまう受胎スライム。だが、今は生きている。ショーンを責め抜いた興奮で満足し、ラウルの劣情も穏やかだ。
 知的生命体は感情の生き物である。心の平穏が身体にも作用する。情欲とて同じこと。どれだけ組み敷いても満たせない支配欲という飢えが、今のラウルには薄かった。
 ゆっくり、ゆっくり腰を揺らし、彼は最愛の弟を抱きしめながら眠りについた。性急さは全くなく、ねっとりうねる蜜に溺れるような恍惚とした満足感。
 抱きしめたショーンの体毛に鼻面を埋め、彼は生まれて初めて何もせずに吐精した。愛する雌の匂いだけで十分だった。行為の激しさは飢えの裏返し。
 腕の中にいる宝物が、隅々まで己のモノである至福。それだけで獣人は極まれる。

 ラウルは突然、そうと理解した。

「……そうか。獣人に妻調教のマニュアルがあるのは、そういうことか」

 何よりも寂しがりで飢えたケダモノの群れ。

 きっとマニュアルでも作らねば、それこそ番を喰い殺してしまう。劣情に任せて、満たせぬ飢えに貪り尽くし、オウチの世界から雑食や草食系も消え果てるだろう。……過去に失われた女達同様。
 そして肉食獣ばかりが残り、最終的には共食いして、ゆるゆる朽ちて行く。

 なんと哀しい生き物なのだろう。

 愛情深すぎるゆえに起こる不条理。

 暴力に訴えてでも相手を支配したい。それが叶わないなら、食べてしまいたい。狂おしいばかりの激情。
 血で血を洗うような残酷な世界。その在り様をラウルはいきなり理解した。
 けれど、どうにもならない。ラウルとて、こうして実感し、初めて悟ったのだ。言葉で説明出来ない、海に抱かれるような満足感。この境地に至るのは困難だ。

 せめて、我が家だけでも…… 救いがあれば良いが。





「……いまさら?」

 自分の感じた言葉で表せない至福を、翌日、家族に熱弁するラウル。
 たが、ショーンとヒューはともかく、千里は軽く眼を見張って呟いた。

「アタシの世界なら常識だけど? それ。アタシんとこもマキャベリやスパルタみたいな恐怖政治とか暗黒時代はあったけど、ソレを経て博愛主義や平和思想がひろまったよ? まあそれも人によって良し悪しだけどさ」

「そうなのか…… 特別なことじゃなったのか」

「特別…… うーん、言葉で表すのは難しいね。でも、人ってのは感情の生き物だからさ。愛が深すぎて刃傷沙汰ってのもアルアルだわね。ここはソレの極地みたいな世界で。そこに優しさや平穏が交わって、初めて本当の愛になるんじゃない?」

「本当の愛?」

「アタシだって分からないよ。すごく抽象的だもん。でもさ、少なくとも血みどろは愛から程遠いと思う。それは愛情じゃなくて、ただの執着だよね? アタシの世界ならサイコパス扱いされるよ」

「狂人……? たしかに」

 今のラウルなら理解出来る。愛に狂ったケダモノは狂人だろう。しかし昨日までの自分は、それと同じ思考を持っていた。

 思考の海に沈み、ラウルは意識を俯瞰させる。茫洋と解放される彼の培ってきた常識。その中で必要なモノを拾い、要らぬモノを積み上げてみた。

「……オウチは可怪しい世界だったんだな。いずれ淘汰されるべき種族だったのかもしれない、獣人は……」

 呆然と呟く彼に、誰が叫んだ。


《それをさせないために、彼女を招いたのですよっ!! お願いだから気づいてくださいっ!!》


 その誰かの声はどこにも届かない。 

 ただ千里だけが、何か聞こえたような気がして空を見上げた。

 こうして悲喜こもごも有りつつも、彼女はオウチで生きて行く。
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