耽溺の森 〜だから僕らは森から出ない〜

一 千之助

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 それからの森 4

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「………なんで、こんなことに」

 悲痛な顔で食事のスプーンを動かす敦の前には、変わり果てた姿の少女。二の腕や太腿の中程で四肢を切断され、もはや自ら移動することすらかなわない。
 しかもこの無慈悲な行為のショックで彼女の心は壊れた。時折、正気に戻りはするが、ほとんどの時間を胡乱な眼差しで過ごしている。

 地球でいう達磨人間。ここティモシーでは珍しくもない生き物だった。

 事の起こりは一週間ほど前。





「ナズナぁぁぁーっ!!」

 無惨な姿の幼馴染を前にして、敦は絶叫する。

 ある日、檻から出されて日光浴や散歩をしていたはずのナズナ。それが突然いなくなり、慌てふためいて探していた敦とドゥエルは、まさかと思いつつも前に訪れた街にやってきた。そこで少年は変わり果てた幼馴染を見つける。

 度重なる凌辱と精を搾り取られる毎日に、幼馴染のナズナは馴染めず、少しずつ壊れていった。
 なにしろナズナの隠された一物は、誰かにイかされないと発現しないのだ。ドゥエルの命令で絶頂したところで出て来ない。
 そのため敦がナズナをイかせ、その精を己の中に受け入れる。性的経験の浅い敦ではイカせるのに時間がかかるうえ、慣れない性交。彼女の一物でイくのも困難だった。

「もっと腰を振れ。ほら、こうして」

「あひっ!、あっ、あっ!!」

 あまりに拙い敦に呆れ、ドゥエルが少年の腰を掴み、激しく上下に動かした。じゅぷじゅぷと音をたてるほど深く、浅く、器用にナズナのモノを敦に咥えこませる。

「こう、回したり…… 抜ける寸前あたりから、こう……」

 中をごちゅごちゅ掻き回すように腰を振らされ、さらには先端ギリギリまで引き抜いてから、どちゅっと勢いよく落とされ、敦はナズナの一物に悶え狂った。

「はうっ?! ひっ、ひぎ…っ! 出りゅ…っ! イぐぅぅっ!」

 身を捩る敦の舌っ足らずな喘ぎを聞き、にんまりとほくそ笑むドゥエル。動きを覚えさせたら、あとは奴隷印で命令して同じことを繰り返させれば良いようなモノだが、彼はそれをしない。
 拙い動きの敦に強制するのが愉しいのだ。狼狽え、戸惑うその姿がいじらしい。

 そして奴隷印は無情な命令に使われる。

「出すな。一滴もな」

 末端の神経まで支配する彼の言葉。ソレに従い、敦のモノはおっ勃ちつつも先走りすら出てこない。

「かは…っ? あ? 出ない…っ? ひいぃぃいっ!!」

 目を裏返して出せずともイきまくる敦。びくんっ、びくんっと跳ねる肢体を抱きしめながら、ドゥエルは恍惚とした顔で敦の耳を食んだ。
 少年は、自分の食事に薬が混ぜられているのを知らない。いつでもドゥエルが抱き潰せるよう、性感帯を剥き出しにして身体を弄べる薬が。

 その薬を脳裏に描き、ドゥエルは己の奴隷時代を思い出した。

 ドゥエルに自由民への道を開いてくれた薬術。これには繊細な技法が必要なため、奴隷印の命令で薬を作らせても思うような効果が出ない。
 夢の如く悦楽を与えてくれる薬に溺れたドゥエルの主は、彼に媚薬を調合させるため、あの手この手で責め苛んだ。暴力は言うに及ばず、彼自身の作った薬で絶頂から抜け出せなくしたりと色々やったのだが、ドゥエルの心を折ることは出来なかった。
 なぜなら彼は生に執着していないから。むしろ、こんな無様な人生が続くくらいなら死んだ方がマシだとドゥエルは思っていた。だから死ぬような拷問も彼に意味はなさない。むしろ殺してくれと言わんばかりに相手を挑発する。

 一風変わった奴隷の彼に、飼い主は酷く手を焼いた。

 元々、ドゥエルは奴隷ではなかったのだ。奴隷の身分ではあったが、その彼の才能に眼をつけた錬金術師によって引き取られ、普通に育ち、普通に学んできた。
 もちろん奴隷でもあるから、日々の御奉仕もする。ドゥエルの住む森の家は、その御主人様が住んでいた場所。今の敦のように、性的には過激であれどティモシーにしては酷く穏やかな暮らしをしていた。
 しかし錬金術師の死後、その身内だという人間らによって、ドゥエルは奴隷商に売り飛ばされたのである。彼が十七歳の頃の話だ。

 だから、生まれついての生粋な奴隷と違い、ドゥエルは死を願う気概を持ち合わせていた。

 全身ズタボロにされてはポーションで癒やされ、無限地獄に苦しむ彼。そんな彼に好機が訪れたのは、それから半年ほど後のこと。
 ドゥエルの媚薬を気に入ったという貴族が彼を買い取り、地獄から掬い上げた。媚薬を独占販売させてくれるなら、ドゥエルに自由民の身分を与え、その生活を保証すると。
 この取り引きに応じ、ドゥエルは己の人生を取り戻したのである。
 彼の強情さに手を焼いていた半陰陽から相談されたらしい貴族は、それなら鞭より飴だろうと、ドゥエルを買い取った。相手は気前良く大盤振る舞いしてくれ、ドゥエルが恙無く薬を作れるよう前払いまでしてくれた。それだけの価値が彼の媚薬にはある。

 そんな経緯を辿っていたため、彼は酷く穏やかな生活を敦に与えた。ドゥエルを育て、学ばせてくれた元の御主人様である錬金術師のように。

 これが、残忍なティモシーにあって、彼が他と異質だった理由なのだ。

 そんなドゥエルの愛情を一身に受ける敦は、王侯貴族すらも喉から手が出るほど欲しいドゥエルの媚薬をたっぷりと使われ、可愛がられていた。
 慣れない情交に手っ取り早く溺れさせるため、抗えない愉悦の枷をガッチリはめこむため、ドゥエルは、あの手この手で少年を喘がせ抱き潰す。
 この半年で執拗に身体を暴かれ開発された敦は、もはや佳がり狂う雌犬へと変貌しかかっていた。本人も自分の身体の変化についていけないのだろう。抱き潰されるたび、屍のように茫然自失とする少年が堪らなく愛おしいドゥエル。 

 だから、こういうチャンスも彼は見逃さない。

「悦いね。気持ち悦いだろう? 出せないのが、さらにさ…… 堪らない快感だよね?」

 奴隷経験のあるドゥエルは知っている。出せない苦しさが積もり積もって凄まじい悦楽に変わる事を。ドライイキを繰り返すうちに溜まりに溜まった精を噴き出す瞬間、眼も眩むような蕩ける愉悦で悶絶することも。

「はひっ? はっ? ふあっ!!」

「……っっ、きゃーっ!!」

 もはや言葉も紡げず、ただ揺すぶられるままな敦。そんな少年の絶頂に煽られ、うねるように呑み込む内部がナズナのモノを爆発させた。

 ガクガクと四肢を跳ね上げて極まる二人。

 事が終わると、ドゥエルは敦の中に注がれたナズナの精をカテーテルで回収する。敦の内部に装着させてある器具から太いシリンジを使い、新鮮な精を何度も抜き取った。

「まだだよ? まだ出せるだろう?」

 ようよう終わりを告げた悶絶の醒めやらぬなか、二人の地球人は、何度も深い睦みに溺れさせられるのだ。ナズナが失神するまで。
 その後も敦には、ドゥエルの可愛がりという地獄が待ち受けている。失神したナズナを檻に投げ込み、怯え竦む情人を抱き上げ、寝室へと消えるドゥエル。
 ドゥエルにとってナズナは精を採集するための家畜でしかない。それでも他の人間らに捕まるよりは、遥かにマシなはずだった。

 街で見た奴隷達は、比較的待遇の良いペットだという。あれ以上があるっ?! と、全身を粟立たせて恐怖した敦とナズナ。
 だが確かに、公衆便所と呼ばれる奴隷らの末路は悲惨どころの騒ぎではない。アレとペットの間に、まだ色々な用途の奴隷がいるのだろうことは、想像もつかないものの理解は出来る。

 なのに……

 ナズナは逃げ出そうとしたのだ。ドゥエルの元から。

 この世界を思い知らされた彼女は、自分がシークレットという稀少種であることを理由に、きっと大切にしてくれる人間がいるだろうと夢見たに違いない。
 結果、街の人間に捕らわれたナズナは、シークレットであることを伝えたせいで…… 四肢を失った。
 事態に気づいたドゥエルと敦が駆けつけた時、彼女は診察台に縛り付けられた姿で精を採取されていたのだ。半分遊びの半陰陽らに囲まれて。

 シークレットを捕まえたのと話を街で聞きつけ、敦はドゥエルに連れられて薬剤専門機関だという建物に案内される。
 真っ白で装飾もない無機質な建物。地球で見た研究所的な厳しい建物を見上げる敦を余所に、ドゥエルは怒鳴りつけるような声で受付の人間を恫喝していた。

 しかしそんな彼の奮闘も虚しく、ナズナは変わり果てた姿で敦達の前に現れる。
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