耽溺の森 〜だから僕らは森から出ない〜

一 千之助

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 森の一族

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「……アツシが死んだんだ」

「それってアンタんとこの家畜よね? ふうん。どうせ手荒く抱き潰したんでしょ。まあ、よくあることじゃない?」

 ドゥエルはいつもの雑貨屋に薬の納品に訪れた。そこで覇気のない彼を訝り、半陰陽の女型が問い質す。理由を答えたドゥエルを不思議そうに見つめる女性。

「アツシはシークレットの初精を受けてた。そのせいかもしれない。原因不明の衰弱から治らなかったんだよ」

 それを聞いた途端、女性はあんぐりと口をあける。

「アンタ、馬鹿なのっ? シークレットの初精って相手と魂を結ぶんだよ? シークレットを守るための守護者として不死身な肉体を得る代わりに、魂を分かつの。連動しちゃうの。何よりもシークレットが大切な、魂の伴侶にしちゃう儀式だよ?」

 彼女の説明に、愕然とするドゥエル。

 彼は知らないが、この半陰陽はドゥエルと別系統な医学を修めていた。ドゥエルの知識は飼い主の魔術師が教え、本人が独学で覚えてきたモノ。キチンとした学舎で学んだこの女型は彼の知らぬ知識を持っている。
 各薬品の素材として垂涎な秘薬を量産するシークレット。それを管理する者らにとって、初精がどのような効果を持ち、結果を出すなど、しっかり解明されていたが、ちゃんとした教育を受けられなかったドゥエルは、多くの書物から自分に必要なモノを得ることしかしておらず、知らなかったのだ。

 ここで初めて知った事実に彼は愕然とする。

 そういえば、そんな片鱗はあった。何があってもナズナを見捨てず、自分よりもナズナを優先していたアツシ。
 ドゥエルに悋気を起こさせるほどナズナを特別視していたアツシの行動が、守護者として無意識の本能だったとすれば辻褄は合う。

 なんてこった…… 私が面白半分でやらかした行為が…… アツシの運命を決めた? 

 あの時ドゥエルは、エリクサーの材料としてしか秘薬のことを理解していなかった。それを吐き出すシークレットの文献も流し読みしていた。
 シークレットの初精を受けた者が守護者になるとかいう伝聞を知っていただけで、その詳しい内容を調べてはいなかった。
 そしてたまたま遭遇した二人がシークレットとその幼馴染みだと知り、悪戯心が湧いたのだ。
 伝聞には、初精を全て吸収するまで絶頂から抜け出せなくなると書いてあったし、その通りなら、この少年の淫らで艶めかしい姿が見られると期待した。
 出逢った当初は、一目惚れしつつも奴隷としてしか見ていなかったせいだ。実際、狂ったかのように泣き叫ぶアツシが堪らなく煽情的で、おっ勃ったドゥエルは気絶した少年を思う存分味わわせてもらった。
 満足気に二人を見下ろしていた過去の自分を殴り飛ばしてやりたい。

 ……あの時、馬鹿な悪戯心を出さなければ。まだ、アツシは生きていたかもしれないのに。

 がっくりと項垂れて椅子に座るドゥエル。

「守護者だった家畜が死んだってことは…… シークレットも死んだのね? 守護者は不死身なはずだから」

 疑問符を浮かべる女性に、ドゥエルが小さく頷く。

「ほんと、馬鹿やったわねぇ、もったいない。アレでしょ? アツシって前に連れていた単体の雄だったヤツ。ってことは、あの時の雌がシークレットか。あ~、雄は貴重なのに。ある意味、シークレットより貴重よ? 死なせるくらいならアタシが欲しかったわぁ。可愛がってあげたのになぁ」

 如何にも残念そうな女性。だが、彼女はふと椅子に腰掛けるドゥエルを振り返った。

「そういやアンタ、前に赤子の授乳だの何だのと尋ねにきたわね? ひょっとして番わせたの? やだ、アレって未処理の家畜だったの?」

 爛々と眼を輝かせる女性に舌打ちし、ドゥエルは席を立つ。

「待ちなさいよっ! 番わして産ませたなら、まだいるわよね? 産まれたのは雄? 雄なら高く買うわよっ!!」

 無言で立ち去ろうとする彼の肩を掴み、半陰陽の女性は狡猾そうな眼をすがめた。

「……未処理の家畜を所有するのも、番わすのも犯罪よ? 奴隷商に報せたら大騒ぎになるわね?」

 暗に子供らを寄越せと窺わせる半陰陽の言葉。それに鼻白んだ顔を向け、ドゥエルも獰猛な眼差しで吐き捨てた。

「……上等だ。もう二度と、この街には来ない。あばよ」

「え? 待って、待って、そんなつもりじゃっ! ちょっと! 薬はどうなるのよっ!! やだ、待ってってばぁーっ!!」

 すがる半陰陽を乱暴に振り切り、己がアツシを死なせてしまったという事実にのたうつドゥエルの心。
 どんなに後悔しても時は戻せない。失ったモノは還らない。

「……アツシ」

 今にも泣き出しそうな顔で唇を噛み締める彼の脳裏に、ついっと何かが過る。出逢ったばかりな頃のアツシの顔が。
 洗脳を解くまで、アツシの笑顔など見たことはなかったはずなのに、脳裏の少年は笑っていた。満面の無邪気な笑みで。

 ……あ。違う、アツシじゃない。これは……

 ドゥエルの瞳に獰猛な光が一閃する。




「あ、父さんだ、おかえり!」

 きゃーっとまとわりつく子供達。水浴びをしていたらしい子供らは全員真っ裸だった。
 みんな兄妹なのだ。生まれた時から知ってる顔ぶれに警戒心もない。そのうえ、ここは外界と隔離された森の中。他と交わることもなかった子供達には羞恥心の欠片も存在せず、水浴びに邪魔なものをつけることもなかった。
 
 ……本当は教えるべきなんだろうがな。私が。

 無垢な子供達の飛び交う楽園。

 ここでくらいは夢を見ても良いだろう? 差別もなく家族で暖かく暮らす夢を。雑念はいらないよな。年頃になれば自然と恥じらいも生まれるさ。

 自ら育ててきた子供達が可愛くて仕方ないドゥエル。敦の子供である。我が子も同然。成人前には身分を買ってやろうなど、色々考えていた彼の横を誰かが通り過ぎる。
 それにハっとし、ドゥエルは固唾を呑んだ。
 そこには昔懐かしい姿の少年。

「こぉらっ! 女の子なのに丸出しは良くないぞっ! お前もっ! フリチンしてんじゃねぇっ、パンツくらいはいとけっ!」

 敦の長男、アユムである。

 年長組は、最近、朝の生理現象が起きるようになり、少々色気づき始めた。唸るほどの書物が家にあるドゥエルだ。そういったモノからも知識を集めているのだろう。

 ……心配しなくても子は育つんだな。

 そこでふと、ドゥエルはアユムを凝視する。
 
 出会ったばかりな頃の敦と瓜二つな容貌。性格も穏やかでよく似ている。片割れなワタルは、かなりの暴れん坊なのに不思議なものだ。
 そしてドゥエルは、帰り道に抱いた邪な欲望を思い出した。下世話なことだと自嘲しつつも、滾る想いは止められない。

「……アユム。二人きりで話があるんだ」

「いよ? どうしたの、父さん」

 素直についてくる敦の長男。先程、脳裏に過った笑顔は、この息子だった。ドゥエルに遺された最愛の忘れ形見。

 その日、ドゥエルは初めてアユムに口づけた。





「ふあ…っ? ん…っ、…ぅ?」

「舌を出して? 父さんが可愛がってあげよう。いっぱい気持ち悦くしてあげるよ」

「気持ち…? ひゃっ?」

 ついばむように優しいキスを落としつつ、ドゥエルはアユムの唇を吸ったり噛んだりと、しだいに口づけを深めていく。
 歯列を割って舌を滑り込ませ、その歯と歯茎の裏側まで、ねっとりと舐めあげた。

「ふぐ…っ? ん…んんっ」

 彼は人体の弱いところを知り尽くした色事師だ。十代前半の少年を昂らせるなどお手の物。淫猥なドゥエルの舌先に踊らされアユムの顔が蕩けていく。

「父…さん…っ、熱い…よ?」

 はあはあと息を荒らげ、涙目で訴えるアユム。

「それが気持ち悦いだ。怖いかい? まだやれるかな? 父さんはアユムと、こういうことをしたいんだ」

 ちろちろ少年の舌先を舐め回し、ドゥエルは殊の外優しい顔で尋ねた。無理はさせない。敦の二の舞いはしない。

「父さんがしたいなら…… 僕、やってみるよ?」

 出逢った頃のアツシとは違う、信頼に満ちた瞳。

「……嫌なら言いなさい。父さんは、こうしてアユムと気持ち悦いことがしたいけど…… あんまりすると、止められなくなるから」

 ティモシーの人間の性欲は底なしだ。改心した後も、何度かアツシを抱き潰したことがある。

「いいよ、止まらなくてぇ。気持ち悦いことしよ?」

 ……言質、いただきました。

 無邪気な少年に悪いことを教えつつ、ドゥエルの新たな調教が始まった。
 




「いやーっ!!」

「暴れんない、暴れない。ほら、挿れるよ」

 四肢を拘束してうつ伏せにし、双子の一人、アユムを診察台に貼り付けたドゥエルは、幼く狭い孔を拡張する。
 
 初めてのキス講座から十日。徐々に行為を深め、ドゥエルは目眩く至福に溺れる。
 未開発な子供の身体を容赦なく暴き、今は、取り敢えず慣らすことに専念していた。
 ぬぷぬぷ挿れられる悍ましい玩具。かつて敦にも使われていたソレを、ドゥエルは愉しそうにアユムに捩じ込んだ。

「きゃーっ、痛い、痛いぃぃっ!!」

 みちみち、ぎしぎしと狭い肉壁を拡げる道具。スライムで作られた梁型は、大小五つの卵型な玉がついた長いモノだった。
 最初の玉は二センチ大。次は三センチと徐々に大きくなり、最終的には七センチの玉が待ち受ける極悪な凶器。
 それをヌポヌポと出し入れしつつ、慣れてきたら次の玉に進み、今のアユムは五センチ玉の抜き差しに泣き叫んでいる。

 拾った当時の敦と同じ歳なんだけど。まあ、敦はシークレットなナズナの加護があったからなぁ。無茶をやらかしても受け入れられたのかもしれない。
 後で判明した敦の肉体の回復力は凄まじいモノだった。どれだけ突っ込みまくって掻き回しても、狭く緩まなかったのは、そういった治癒力の関係もあったのだろう。

 今はいない最愛の者を脳裏に描き、ドゥエルはその忘れ形見に夢中である。身体の開発はアツシの時も難儀した。
 地球人の身体は脆弱なのだ。守護者だったアツシと違い、生粋の地球人なアユムには細心の注意が必要である。
 指から始まった慣らしは玩具に移り、十日もかけて、ようよう五センチ玉を呑み込めるようになった。
 
「硬いなぁ…… まあ、時間はたっぷりあるしな。今日はコレを挿れて終わりにしようか」

「ひゃああぁぁっ!」

 眼を見開いて泣き叫ぶアユムを抉じ開けるのは直径五センチの梁型。男性の一物を模したソレを、ずっぷりと呑み込ませ、ドゥエルは専用のベルトでアユムの股に固定する。

「ようは慣れだ。明日も頑張ろうね。………お前が使えないなら、弟達を使わなきゃならないし? まだ小さいからなぁ。壊れてしまうかもねぇ?」

 喉の奥を鳴らしてくぐもった笑いをもらすドゥエルに、アユムは心底ぞっとした。弟達がこんなことをされたら絶対に壊れる。いや、殺されてしまうかもしれない。
 その怯えを感じ取ったのだろう。ドゥエルは殊の外優しい笑みでアユムを撫でた。

「良い子だね。また頑張ろうな? 私が手伝ってあげるから」

 今まで父と慕ってきた男の豹変。

 激痛と恐怖に強張りつつも、幼い弟妹らを思うと頷くしかないアユムである。

 ドゥエルはアツシ喪失の嘆きが深すぎて、過去の過ちを繰り返そうとしている今の自分に、気づいていなかった。
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