耽溺の森 〜だから僕らは森から出ない〜

一 千之助

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 森の一族 5

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「今日はコレな。薬入り。きっと気持ち悦いぞ?」

 ドゥエル直伝の拘束具でワタルに固定され、顔面蒼白なタケシ。アレに腸内洗浄された初経験を忘れられようはずがない。
 ぬるま湯をたんまりお尻から呑まされて、お腹が痛いと泣いても散々我慢させられたのだ。しかも、何度も何度も繰り返し挿れられ、無理やり出され、タケシはお尻が壊れるかと思った。
 情交後に必ずされる腸内洗浄。ワタルのしつこさにより、もはや拷問にも近いコレでタケシは毎回泣き叫ぶ。

「やだーっ!! やめてよぅぅ、兄ちゃあぁぁんっ!」

 あーっっと泣き喚く弟を嬉々として可愛がる兄の姿は、過去の敦と自分を彷彿とさせ、ドゥエルはこっそり御満悦。

 そんなこんなで末の妹達以外は性知識をたくわえ、森の隠れ家は一時、そこら中が甘い空気に満たされた。
 一部に倒錯めいた遊戯が流行ったのも御愛嬌。

 なんのかんのと平穏な時が流れ、末の妹らも兄達に可愛がられるようになった頃。

 ドゥエルは子供達を集めて昔話をした。



「……お前らもデカくなった。真実を知るべきだと思うよ」

 そう前置きし、ドゥエルは子供達に語る。

 敦とナズナの凄絶な半生を。

 別の世界から転移したという二人。運良くドゥエルと出逢い、彼の奴隷として登録して事なきを得たこと。
 しかし余所の世界の人間だったナズナは、優しくとも奴隷生活に耐えられず街へと逃げ出してしまい、他の人々によって正しく奴隷として扱われ四肢を失ったこと。
 それでも見捨てられない敦が彼女を世話し、子供らをもうけたこと。
 
「あとは、お前らの知るとおりだ。ここで平穏に暮し、お前らを育ててきた。……ナズナを失って失意のあまり長く床に付したけどね」

 大きくなった子供達は、啞然としてドゥエルの話を聞く。上の子らも寝たきりな母親に手脚がなかった理由を初めて知った。

「……街で見た公衆便所みたいに? 母ちゃんの手脚が落とされたのか」

「私らが駆けつけた時には落とされた後でね。私の奴隷だと証明して連れ帰ったけど…… すでに正気は半分失われていたな」

「それでも父ちゃんは母ちゃんを見捨てなかったんだね。父さん、母ちゃん達を助けてくれて、ありがとう」

 子供らは、敦を父ちゃん、ドゥエルを父さんと呼び分けていた。どちらもかけがえのない父親だった。

「だから、お前らも気をつけるんだよ? 間違っても一人で行動はしない。少なくとも二人……出来るなら三人以上で行動するように。絶対に人買いに拐われるなよ? ……ナズナみたいにされちまうから」

 自由民は身分の自由しかない。特に単体だと、身分ある半陰陽に捕まればその登録が抹消されかねないのだ。この世界は半陰陽有利に出来すぎている。
 自由を得たドゥエルとて、自身が優秀な錬金術師でなかったら、どうなっていたか分からない。

 真摯に頷く子供達を見渡し、ドゥエルは安堵に胸を撫で下ろした。

 そして日々が過ぎ、ドゥエルの代わりに敦の子供らが薬を作るようになる。彼に叩き込まれただけあって、その薬は品質が良く、街でも喜ばれた。
 錬金術に向かなかった子供らは畑に精を出し、中には一風変わって冒険者をやる者もいた。頻繁に街へと向かう冒険者の子供らが心配ではあったが、ドゥエルはじっと堪えて見守った。



「そうだ。お前らにも奴隷を買うか」

「奴隷?」

 きょとんっとするアユムと双子の片割れなワタル。

 二人はもう十八歳になる。こんな世界だ。彼らに真っ当な伴侶は得られない。人権は半陰陽にしかなく、半陰陽は単体の者を人と見ていないから。

「まあ、身分は奴隷だが、お前らの嫁さんだ。他の子供らにも使えるよう何人が買うのも良いな」

 嫁さん…… 

 双子は現実味がなくて顔を見合わせた。

「ようは性欲処理用の家畜ってことか」

「そうだな。壊さない程度に可愛がってやれば良い」

 敦の子供達とはいえ、この世界育ちだ。そういった知識は地球人寄りでなくドゥエル寄りに育てられている。奴隷は家畜でしかないと理解していた。
 そんなドゥエルに連れられ奴隷商を訪れた三人は、ちょうど奴隷を売りに来たという人買いに遭遇する。
 その男が連れていたのは三人の子供。薄汚れて痩せた子供は、胡乱な眼差しで首輪をつけられていた。
 それを見たドゥエルの眼が陰惨に輝く。

「売り物か? いくらだ?」

「えっ?」

 アユムとワタルは、ぎょっと眼を見開いた。連れられた子供らは、どう見ても七~八歳ほど。子供達同士ならともかく、とても今の自分達の性欲処理に使える年齢ではない。
 ドゥエルの指導によって、敦の子供達は幼い者に無体を働かぬよう教えられていた。最低でも十歳。それを越えてから性的手解きが行われる。なるべく歳の近い者らで。
 なので、まだ一桁代であろう眼の前の子供達に双子は食指が動かなかった。
 人買いの話によれば、この子供らは隠されて育てられていたらしい。

「隠されて?」

 不思議顔のアユムとワタル。二人は知っていた。単体は産まれてすぐに奴隷印を押される。そして成長すると売りに出され、奴隷としての調教を受けるのだ。
 それを隠して育てていた? 意味がわからない。

「ああ、そうだね。お前達は知らないか。半陰陽の中にも情の深い者は子供を見捨てないんだよ」

 ドゥエルはアユム達に説明する。単体が人間扱いされない奴隷なのは、親が見放して売り払うからだ。
 しかし、そんななかにも極稀に我が子として大切に育てる親はいる。魔術師に引き取られた、かつてのドゥエルのように。
 この子らは親が亡くなり、親族によって売り払われたのだとか。似たような話はどこにでも転がっているものだ。

「身分は売り払える。コイツらの身分を売って、本人達を奴隷として売って、親族とやらは結構な小金を手に入れただろうな」

 ドゥエルもアユム達を自身の子供として登録した時、結構な金子を払って自由民の身分を購入した。初めてソレを知り、愕然とする双子。
 
「私が買うよ。三人ともだ」

 奴隷商に売られる前に取引を持ちかけ、ドゥエルは人買いから直接買った三人を街で奴隷登録して帰宅する。



「………こんな子供、どうすんのさ」

 呆れたように呟くアユムを一瞥して、ドゥエルは人の悪い笑みを浮かべた。

「まだ奴隷として処置されていない子供らだ。……つまり、お前らの子供を産ませられるんだよ」

 通常の奴隷は、年頃になる、あるいは売られるさいに繁殖が出来ぬよう処置される。ドゥエル自身が体験したことだ。
 労働させるにも、遊びや性欲処理だけでも、ソレで十分だが、こうして手つかずな奴隷が手に入ったとなれば話は変わる。

「しばらく育てれば使えるようになるさ。雌が一匹に雄が二匹か。沢山子供を作ってもらおうな」

 特にアユム。お前の子供が欲しい。

 ドゥエルの説明で納得し、双子は初めて得た奴隷に興味津々だった。

 仄かな情欲を滾らせる二人の眼差しにほくそ笑み、ドゥエル達は我が家を目指して森へと帰っていく。

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