耽溺の森 〜だから僕らは森から出ない〜

一 千之助

文字の大きさ
30 / 38

 森の一族 5

しおりを挟む

「今日はコレな。薬入り。きっと気持ち悦いぞ?」

 ドゥエル直伝の拘束具でワタルに固定され、顔面蒼白なタケシ。アレに腸内洗浄された初経験を忘れられようはずがない。
 ぬるま湯をたんまりお尻から呑まされて、お腹が痛いと泣いても散々我慢させられたのだ。しかも、何度も何度も繰り返し挿れられ、無理やり出され、タケシはお尻が壊れるかと思った。
 情交後に必ずされる腸内洗浄。ワタルのしつこさにより、もはや拷問にも近いコレでタケシは毎回泣き叫ぶ。

「やだーっ!! やめてよぅぅ、兄ちゃあぁぁんっ!」

 あーっっと泣き喚く弟を嬉々として可愛がる兄の姿は、過去の敦と自分を彷彿とさせ、ドゥエルはこっそり御満悦。

 そんなこんなで末の妹達以外は性知識をたくわえ、森の隠れ家は一時、そこら中が甘い空気に満たされた。
 一部に倒錯めいた遊戯が流行ったのも御愛嬌。

 なんのかんのと平穏な時が流れ、末の妹らも兄達に可愛がられるようになった頃。

 ドゥエルは子供達を集めて昔話をした。



「……お前らもデカくなった。真実を知るべきだと思うよ」

 そう前置きし、ドゥエルは子供達に語る。

 敦とナズナの凄絶な半生を。

 別の世界から転移したという二人。運良くドゥエルと出逢い、彼の奴隷として登録して事なきを得たこと。
 しかし余所の世界の人間だったナズナは、優しくとも奴隷生活に耐えられず街へと逃げ出してしまい、他の人々によって正しく奴隷として扱われ四肢を失ったこと。
 それでも見捨てられない敦が彼女を世話し、子供らをもうけたこと。
 
「あとは、お前らの知るとおりだ。ここで平穏に暮し、お前らを育ててきた。……ナズナを失って失意のあまり長く床に付したけどね」

 大きくなった子供達は、啞然としてドゥエルの話を聞く。上の子らも寝たきりな母親に手脚がなかった理由を初めて知った。

「……街で見た公衆便所みたいに? 母ちゃんの手脚が落とされたのか」

「私らが駆けつけた時には落とされた後でね。私の奴隷だと証明して連れ帰ったけど…… すでに正気は半分失われていたな」

「それでも父ちゃんは母ちゃんを見捨てなかったんだね。父さん、母ちゃん達を助けてくれて、ありがとう」

 子供らは、敦を父ちゃん、ドゥエルを父さんと呼び分けていた。どちらもかけがえのない父親だった。

「だから、お前らも気をつけるんだよ? 間違っても一人で行動はしない。少なくとも二人……出来るなら三人以上で行動するように。絶対に人買いに拐われるなよ? ……ナズナみたいにされちまうから」

 自由民は身分の自由しかない。特に単体だと、身分ある半陰陽に捕まればその登録が抹消されかねないのだ。この世界は半陰陽有利に出来すぎている。
 自由を得たドゥエルとて、自身が優秀な錬金術師でなかったら、どうなっていたか分からない。

 真摯に頷く子供達を見渡し、ドゥエルは安堵に胸を撫で下ろした。

 そして日々が過ぎ、ドゥエルの代わりに敦の子供らが薬を作るようになる。彼に叩き込まれただけあって、その薬は品質が良く、街でも喜ばれた。
 錬金術に向かなかった子供らは畑に精を出し、中には一風変わって冒険者をやる者もいた。頻繁に街へと向かう冒険者の子供らが心配ではあったが、ドゥエルはじっと堪えて見守った。



「そうだ。お前らにも奴隷を買うか」

「奴隷?」

 きょとんっとするアユムと双子の片割れなワタル。

 二人はもう十八歳になる。こんな世界だ。彼らに真っ当な伴侶は得られない。人権は半陰陽にしかなく、半陰陽は単体の者を人と見ていないから。

「まあ、身分は奴隷だが、お前らの嫁さんだ。他の子供らにも使えるよう何人が買うのも良いな」

 嫁さん…… 

 双子は現実味がなくて顔を見合わせた。

「ようは性欲処理用の家畜ってことか」

「そうだな。壊さない程度に可愛がってやれば良い」

 敦の子供達とはいえ、この世界育ちだ。そういった知識は地球人寄りでなくドゥエル寄りに育てられている。奴隷は家畜でしかないと理解していた。
 そんなドゥエルに連れられ奴隷商を訪れた三人は、ちょうど奴隷を売りに来たという人買いに遭遇する。
 その男が連れていたのは三人の子供。薄汚れて痩せた子供は、胡乱な眼差しで首輪をつけられていた。
 それを見たドゥエルの眼が陰惨に輝く。

「売り物か? いくらだ?」

「えっ?」

 アユムとワタルは、ぎょっと眼を見開いた。連れられた子供らは、どう見ても七~八歳ほど。子供達同士ならともかく、とても今の自分達の性欲処理に使える年齢ではない。
 ドゥエルの指導によって、敦の子供達は幼い者に無体を働かぬよう教えられていた。最低でも十歳。それを越えてから性的手解きが行われる。なるべく歳の近い者らで。
 なので、まだ一桁代であろう眼の前の子供達に双子は食指が動かなかった。
 人買いの話によれば、この子供らは隠されて育てられていたらしい。

「隠されて?」

 不思議顔のアユムとワタル。二人は知っていた。単体は産まれてすぐに奴隷印を押される。そして成長すると売りに出され、奴隷としての調教を受けるのだ。
 それを隠して育てていた? 意味がわからない。

「ああ、そうだね。お前達は知らないか。半陰陽の中にも情の深い者は子供を見捨てないんだよ」

 ドゥエルはアユム達に説明する。単体が人間扱いされない奴隷なのは、親が見放して売り払うからだ。
 しかし、そんななかにも極稀に我が子として大切に育てる親はいる。魔術師に引き取られた、かつてのドゥエルのように。
 この子らは親が亡くなり、親族によって売り払われたのだとか。似たような話はどこにでも転がっているものだ。

「身分は売り払える。コイツらの身分を売って、本人達を奴隷として売って、親族とやらは結構な小金を手に入れただろうな」

 ドゥエルもアユム達を自身の子供として登録した時、結構な金子を払って自由民の身分を購入した。初めてソレを知り、愕然とする双子。
 
「私が買うよ。三人ともだ」

 奴隷商に売られる前に取引を持ちかけ、ドゥエルは人買いから直接買った三人を街で奴隷登録して帰宅する。



「………こんな子供、どうすんのさ」

 呆れたように呟くアユムを一瞥して、ドゥエルは人の悪い笑みを浮かべた。

「まだ奴隷として処置されていない子供らだ。……つまり、お前らの子供を産ませられるんだよ」

 通常の奴隷は、年頃になる、あるいは売られるさいに繁殖が出来ぬよう処置される。ドゥエル自身が体験したことだ。
 労働させるにも、遊びや性欲処理だけでも、ソレで十分だが、こうして手つかずな奴隷が手に入ったとなれば話は変わる。

「しばらく育てれば使えるようになるさ。雌が一匹に雄が二匹か。沢山子供を作ってもらおうな」

 特にアユム。お前の子供が欲しい。

 ドゥエルの説明で納得し、双子は初めて得た奴隷に興味津々だった。

 仄かな情欲を滾らせる二人の眼差しにほくそ笑み、ドゥエル達は我が家を目指して森へと帰っていく。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

卵を産んでしまったハーピィ男子の話

志田
BL
ハーピィのヒューイは相棒の天族のディオンに片想いをしていた。ある日、卵を産めるようになったのをきっかけに、こっそりディオンの子どもを作ろうと衝動的に計画するが…。異種族×異種族。おバカ受。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている

春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」 王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。 冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、 なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。 誰に対しても一切の温情を見せないその男が、 唯一リクにだけは、優しく微笑む―― その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。 孤児の少年が踏み入れたのは、 権謀術数渦巻く宰相の世界と、 その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。 これは、孤独なふたりが出会い、 やがて世界を変えていく、 静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...