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「時」探し
白 黒
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「どうしたの?」
座り、落胆していた私に優しい声をかける。
白と黒の翼を左右にもつ優しい人。
声をかけられた。少し遠い方から聞こえる声。
「時」がその声に近づいていく。
「どうしたの?」
その声があまりにも優しかったから私は、ゆっくりと顔をあげた。
そこには大きく黒く艶やかな十字架が立っていて、最初大木かと思った。
その十字架の中心に赤黒い宝石が埋め込まれていて酷く不気味だった。
とても重く冷たそうな十字架――……。
その十字架に座り、こちらを笑顔で見つめてくる人がいる。
彼はまた私に聞いた。
「どうしたの? 悲しいの? つらいの? ……悔しいの?」
甘く歌う様に、少しおどけた口調だが、その声はとても優しく慈愛に満ちた音だった。
呆然と佇む私を見て、アハハと楽しそうに笑った。
「これにびっくりしちゃった?」
彼は銀色のサラサラの髪を涼しげに揺らしながら、背中を指差した。
彼の背中には黒と白の翼が生えていた。
右が白い翼で左の翼が真っ黒だった。
十字架を包み込むように大きく広げていた。
「全部受け止めるから、全部置いておきなよ。憎いとか悲しいとか辛いとか黒い感情は全てさ。この十字架が吸い込んでくれるからさ」
黒い十字架をポンポンと叩いて笑った。
右目を左目の下から交差するように包帯で巻き、片目で優しく見つめてくる、
銀色のサラサラな髪に左右違う色の翼を持つ、私とは違う存在のその人は、にこにこと笑い続ける。
「でも、私にはそんな感情を持つ存在も忘れているから」
そんな感情を持てる程、私は私自身を知らない。
「え? 今見ていた【西の国の王子様】知り合いじゃないんだ?」
不思議そうに問う。
西の国の王子様――…?
「なんでアイツだけ生きてるんだろうね。この十字架はあの王子様のせいで黒い感情を吸収しすぎて、
こ~んなに成長しちゃったのにさ」
【王子様】に皮肉を込めて目の前の人は言った。
「あの……西の国の王子様って?」
「だから、今君が体験した【オーバードライブ】を起こした罪人だよ。戦争を止めさせたいと叫んで本当に戦争が終わっちゃって、本当に滑稽で笑っちゃった」
私の知ってると思った人が、王子様(?)で大爆発で戦争を終結させた人?
…………。
というか……オーバードライブって一体何?
さっきの薔薇の女性も言っていた。
「この十字架見てよ。オーバードライブの起こった直後にこんなに大きくなってさ。吸いすぎたみたいだから、あとはまた飛び散って元に戻っての繰り返しだ」
話しかけられてる、というより少し自己満足な語りの様に彼はしゃべる。
「黒い感情ってどんなの?」
「黒く醜い心だよ」
「醜い……?」
「心の闇だよ。大きい闇は心を潰しちゃうからね。この十字架は俺の心の一部だけど」
自分を卑下するように笑った。
「人間の汚い心に利用されて、振り回されるだけの、」
そう、諦めて笑った。
「止めてしまえばいいじゃないですか。貴方が他人の闇を背負う必要はないじゃないですか」
そんな風に傷ついた笑顔で、全て包み込み受け止めようとするなんて、疲れてしまうだけだから。
ん―……。
目の前の人は、首をかしけながら空を仰ぐ。
「君にこの戦争を止められる『力』はあるかい?」
私に力……?
「この戦争を終わらせる『力』だ」
あるはず、ない。
今でさえ、自分の『時』を探し翻弄されているのに。
「さっきの爆発で一人の男の人が悲しそうにしていたけれど、私には何もできなかった。それが答えだと思います」
ふぅんッと私の顔を覗き、穴があくかと思う程じっくり見られる。
「迷子なんだね。さっきは偶然【西の国の王子様】の『時』に紛れちゃってたんだ」
偶然……?
「早く自分の「時間」を探さなきゃね。『時』の番人みたいになるよ。あいつも自分の『時間』ないんだ。馬鹿で愚かだから捨てちゃった」
馬鹿で愚か………。
何故か彼が言っても労る様に聞こえる。
心配しているように。
「あの、オーバードライブって何ですか? あと西の国の王子様にはどうしたら会えますか?」
「うーん? それは君が思い出さきゃいけない事じゃないかな? 簡単にオレが言える事ではないよ」
思い出す……?
やはり私も関わっているのかな?
「王子様に会いたいなら『時』の番人の傍にいなよ。また会えるよ」
意味深に笑う。
とても楽しそうに。
「そして最後に、君は『力』はあるよ。西の国の王子様を慰めるのも勇気付けるのも
拒絶するのもね、全部何をするかは君次第なんだよ。そして殺すのも」
ぐにゃりと視界が歪み、また闇が現れる。
座り、落胆していた私に優しい声をかける。
白と黒の翼を左右にもつ優しい人。
声をかけられた。少し遠い方から聞こえる声。
「時」がその声に近づいていく。
「どうしたの?」
その声があまりにも優しかったから私は、ゆっくりと顔をあげた。
そこには大きく黒く艶やかな十字架が立っていて、最初大木かと思った。
その十字架の中心に赤黒い宝石が埋め込まれていて酷く不気味だった。
とても重く冷たそうな十字架――……。
その十字架に座り、こちらを笑顔で見つめてくる人がいる。
彼はまた私に聞いた。
「どうしたの? 悲しいの? つらいの? ……悔しいの?」
甘く歌う様に、少しおどけた口調だが、その声はとても優しく慈愛に満ちた音だった。
呆然と佇む私を見て、アハハと楽しそうに笑った。
「これにびっくりしちゃった?」
彼は銀色のサラサラの髪を涼しげに揺らしながら、背中を指差した。
彼の背中には黒と白の翼が生えていた。
右が白い翼で左の翼が真っ黒だった。
十字架を包み込むように大きく広げていた。
「全部受け止めるから、全部置いておきなよ。憎いとか悲しいとか辛いとか黒い感情は全てさ。この十字架が吸い込んでくれるからさ」
黒い十字架をポンポンと叩いて笑った。
右目を左目の下から交差するように包帯で巻き、片目で優しく見つめてくる、
銀色のサラサラな髪に左右違う色の翼を持つ、私とは違う存在のその人は、にこにこと笑い続ける。
「でも、私にはそんな感情を持つ存在も忘れているから」
そんな感情を持てる程、私は私自身を知らない。
「え? 今見ていた【西の国の王子様】知り合いじゃないんだ?」
不思議そうに問う。
西の国の王子様――…?
「なんでアイツだけ生きてるんだろうね。この十字架はあの王子様のせいで黒い感情を吸収しすぎて、
こ~んなに成長しちゃったのにさ」
【王子様】に皮肉を込めて目の前の人は言った。
「あの……西の国の王子様って?」
「だから、今君が体験した【オーバードライブ】を起こした罪人だよ。戦争を止めさせたいと叫んで本当に戦争が終わっちゃって、本当に滑稽で笑っちゃった」
私の知ってると思った人が、王子様(?)で大爆発で戦争を終結させた人?
…………。
というか……オーバードライブって一体何?
さっきの薔薇の女性も言っていた。
「この十字架見てよ。オーバードライブの起こった直後にこんなに大きくなってさ。吸いすぎたみたいだから、あとはまた飛び散って元に戻っての繰り返しだ」
話しかけられてる、というより少し自己満足な語りの様に彼はしゃべる。
「黒い感情ってどんなの?」
「黒く醜い心だよ」
「醜い……?」
「心の闇だよ。大きい闇は心を潰しちゃうからね。この十字架は俺の心の一部だけど」
自分を卑下するように笑った。
「人間の汚い心に利用されて、振り回されるだけの、」
そう、諦めて笑った。
「止めてしまえばいいじゃないですか。貴方が他人の闇を背負う必要はないじゃないですか」
そんな風に傷ついた笑顔で、全て包み込み受け止めようとするなんて、疲れてしまうだけだから。
ん―……。
目の前の人は、首をかしけながら空を仰ぐ。
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私に力……?
「この戦争を終わらせる『力』だ」
あるはず、ない。
今でさえ、自分の『時』を探し翻弄されているのに。
「さっきの爆発で一人の男の人が悲しそうにしていたけれど、私には何もできなかった。それが答えだと思います」
ふぅんッと私の顔を覗き、穴があくかと思う程じっくり見られる。
「迷子なんだね。さっきは偶然【西の国の王子様】の『時』に紛れちゃってたんだ」
偶然……?
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心配しているように。
「あの、オーバードライブって何ですか? あと西の国の王子様にはどうしたら会えますか?」
「うーん? それは君が思い出さきゃいけない事じゃないかな? 簡単にオレが言える事ではないよ」
思い出す……?
やはり私も関わっているのかな?
「王子様に会いたいなら『時』の番人の傍にいなよ。また会えるよ」
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とても楽しそうに。
「そして最後に、君は『力』はあるよ。西の国の王子様を慰めるのも勇気付けるのも
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