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デート記録と婚姻届。

デート記録と婚姻届 九

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「布が欲しいんです。布と綿とあと裁縫セット」

次は、デイビーの御買物(?)なのか、並んでいる布を真剣に見ながら選んでいる。

デイビーが使うものを作るのではないようで、ピンクや花柄の布ばかり見ている。


「何か縫うんですか?」

私もピンク系を見つけてはデイビーを呼ぶ。

十種類ぐらい壁に並べて、顎に手を置きながら唸りながら悩んでいる。

「デイビー?」

「デディベアを作りたいんです」

その言葉は意外な言葉だった。

「デディベア?」

「はい。日本でも最近流行り出したと聞きましたよ。ファーストベアって言って、赤ちゃんの友達として贈られる事が多いんです」

リボン柄とハート柄の布を見比べながら、デイビーはちょっと声のトーンを落としながら言う。


「私が貰ったファーストベアは、有名なブランドが手掛けるファーストベア用の高級なやつでして、日本円で三十万はしました」

「さ!?」

私の知っているぬいぐるみの値段じゃない。


「ガラスケースに飾って触らせては貰えず、本当に悔しい思いをしました。だから、私は自分で作って、そしてボロボロになるまで遊んで貰いたいのです」

ガラスケースに入ったクマのぬいぐるみを見て悔しがる子供のデイビーを想像したら、ちょっと可愛かった。
値段を聞いて、我慢しちゃうその姿は、哀愁さえ感じちゃうんだろうな。


「ねぇ、そのデイビーが作るクマさん、一人だけって寂しくないですか?」

「そうですね。私のベアも三匹いましたよ」

「じゃあ、私も作りたいです」

御裁縫なんて高校以来したこと無いけれど、でも私も何かしてみたい。
できれば、デイビーと同じものを作りたい。

「今まで過ごした環境も、国も、年齢も違うから、その、上手く言えないんですけど、デイビーと同じ目線で同じことをもっとして、――お互いのこと知りたいです」

「美麗。嗚呼、美麗、今、ものすごくキスしたいです。せめて抱き締めさせて」


布の山の中、死角だと信じて素直に抱き締めてもらう。
デイビーの香水も、体温も、甘い言葉も、その力強い腕も、胸がぎゅっと締めつけられるぐらい好き。

「じゃあ、一緒に選んでも良いですか?」

デイビーの背中をポンポン叩くと、彼も私の頭をなでる。

それから、布を選んでみた。
せっかく作るなら、ボロボロになってもいいけどしっかりした布で作った方が長持ちすると思うし。

店員さんに聞いて、難易度が高いと言うのにデイビーはもこもこのボア素材の生地と、桜模様のピンクの生地も買っていた。彼は、もう子供は女の子だと確信しているらしい。

型紙や、細かく縫う事で丈夫になると店員に縫い方のコツなどを聞き、手帳にメモしていた。

「美麗は良いのですか?」

クマのキャラクターが描かれたショップ袋が似合わないのに、嬉しそうに持っているデイビーにそう聞かれた。
私は、布はちょっと思うところがあり買わず、綿やリボンしか買わなかったから。

「はい。作り始める時まで待ってて下さい」

ふふ、と笑うとデイビーは眩しげに笑う。

「貴方は、――本当に笑うと綺麗ですね」

そんな、そこらへんの日本男児が言えばキザったらしく聞こえる台詞を、自然と言ってしまう。
私は、毎日彼にドキドキさせられるのだろうか。
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