58 / 75
四、ウソツキ、嘘つき、うそつき
Side:南城一矢⑨
しおりを挟む
短い髪を耳にかけるしぐさ。小さな耳があらわになるとまっ赤になっている。
赤くなるぐらい携帯を強く耳に押し付けたのかと、疑問が浮かんだが、今の問題はそれではなった。
「嘘をつかずに、教えてほしい」
嘘つきなら、この話の中に三人いる。
けれど、これだけは信じてほしい。俺たちは誰一人、華怜を傷つけたくて嘘をついたわけじゃない。
親友の気持ちを守るために。
男性恐怖症に捕らわれないために。
そして――俺は。
「どうして私を騙したのか、教えて」
振り返った彼女の目に大粒の涙が溜まっていた。
騙さなければ、取り付く島もなく話さえも聞いてくれなかっただろう。
騙さなければ、今こうして、一緒の空間に居ること時代できなかっただろう。
騙さなければ――。
騙さなければ、彼女は俺のことなんて思い出せず、自分のためにお洒落して一人気ままに生きていて、こんな風に泣かずに済んだ。
「どうして?」
カーテンを掴む手が震えていた。
なので俺はケーキを冷蔵庫に入れるのも忘れ、カウンターに置くと彼女に近づく。
そして自分でも止められないまま抱きしめていた。
「どうしてって――聞いているのに」
胸の中で暴れる彼女の短い髪が頬に当たった。
「嫌だったからだ」
俺は嘘をついていた。
本当はずっと嘘をついていた。
「君の髪が、誰かに汚されるのがめちゃめちゃに嫌だった。許せなかった。誰にも触れさせたくなかった」
最初からだ。
衝動的じゃないよ。許せなかった。君の一部として存在してほしくなかった。
最初からだ。
俺は君の髪が汚された瞬間に、君への強い執着と思いに気づいた。
「ごめん。ごめん。――衝動だった。君が髪を伸ばせないと知って会いに行ったら、思いがあふれて止まらなかった。俺はずっと、ずっと初恋を引きずっていた」
どうして結婚してくださいって言ってしまったのか、今、自分でもわかった。
俺は今も昔も、君が好きて好きで好きで。
忘れられたのが苦しかった。もう必要ないと言われたのが苦しかった。
自分はあの日から、気持ちが変わらず今もこうして溢れていたから。
自分勝手に、彼女の人生を奪おうとした。
「何をしてでも、君を手に入れたかった」
傷つけるとわかっていたが、もう嘘だけはつけなかった。
赤くなるぐらい携帯を強く耳に押し付けたのかと、疑問が浮かんだが、今の問題はそれではなった。
「嘘をつかずに、教えてほしい」
嘘つきなら、この話の中に三人いる。
けれど、これだけは信じてほしい。俺たちは誰一人、華怜を傷つけたくて嘘をついたわけじゃない。
親友の気持ちを守るために。
男性恐怖症に捕らわれないために。
そして――俺は。
「どうして私を騙したのか、教えて」
振り返った彼女の目に大粒の涙が溜まっていた。
騙さなければ、取り付く島もなく話さえも聞いてくれなかっただろう。
騙さなければ、今こうして、一緒の空間に居ること時代できなかっただろう。
騙さなければ――。
騙さなければ、彼女は俺のことなんて思い出せず、自分のためにお洒落して一人気ままに生きていて、こんな風に泣かずに済んだ。
「どうして?」
カーテンを掴む手が震えていた。
なので俺はケーキを冷蔵庫に入れるのも忘れ、カウンターに置くと彼女に近づく。
そして自分でも止められないまま抱きしめていた。
「どうしてって――聞いているのに」
胸の中で暴れる彼女の短い髪が頬に当たった。
「嫌だったからだ」
俺は嘘をついていた。
本当はずっと嘘をついていた。
「君の髪が、誰かに汚されるのがめちゃめちゃに嫌だった。許せなかった。誰にも触れさせたくなかった」
最初からだ。
衝動的じゃないよ。許せなかった。君の一部として存在してほしくなかった。
最初からだ。
俺は君の髪が汚された瞬間に、君への強い執着と思いに気づいた。
「ごめん。ごめん。――衝動だった。君が髪を伸ばせないと知って会いに行ったら、思いがあふれて止まらなかった。俺はずっと、ずっと初恋を引きずっていた」
どうして結婚してくださいって言ってしまったのか、今、自分でもわかった。
俺は今も昔も、君が好きて好きで好きで。
忘れられたのが苦しかった。もう必要ないと言われたのが苦しかった。
自分はあの日から、気持ちが変わらず今もこうして溢れていたから。
自分勝手に、彼女の人生を奪おうとした。
「何をしてでも、君を手に入れたかった」
傷つけるとわかっていたが、もう嘘だけはつけなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
175
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる