とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

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一、誤解×素材

一、誤解×素材①

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残秋を感じさせる冷たい風が、体に刺さるようになってきた季節。

必死でタイピングしている私のデスクから見える窓からは、枯れた落ち葉が地面を這いずって飛ばされている。

 秋が終わるのは構わない。が、会社の女性社員たちは、来るビックイベントまでに彼氏を見つけようと色めきだっているのが伝わってくる。

 今、必死で定時に帰ろうと書類を終わらせている私の横で、合コンの話を取り付けているのだから。
「えええ! 今日の相手ってこの前、アドレス交換したあの人たち? 確か外科医だったよね」

ひそひそ話していた声が、一段階高くなる。二つ隣の席からなのに、耳がキンキンしてくる。
打ち合わせが二件。資料請求が四件。見積もりが三件。
メールの返信が二件。ファックスの返信待ち一件。デザインの打ち合わせが三件。

「そうなの。この前、営業でうちに来た時に名刺を置いていったでしょ。その時に電話しちゃった」
「やった。今日、奮発して買ったワンピースで出勤しちゃったんだよね。楽しみ」
「終わり!」

 同僚二人が飛び上がるほど大きな声でついそういってしまうと、パソコンをシャットダウンさせながら二人を見る。

「もしかしたらファックスが来るかもしれないから、来たら私のデスクの上に置いておいて」
「う、うん。もう帰るの?」
「紗矢もよかったら、合コン……行かないよね」

 ロッカーに向かいながら、二人に私は微笑む。

「ごめんね。今日は社長と代表取締役会長と食事会なの」

「それってつまり」
「そう。家族で食事」

 同僚の二人は『大変だね』と苦笑いして私を労わってくれたが、ごめんね。
 食事会というのも少し語弊がある。

「せっかく紗矢は綺麗なのにこのままじゃ、本当に結婚できないよ」


 心配してくれたのは、同僚でもあり大学からの気の置けない友達でもある、藤森小春。
 私が人目を惹く容姿をしているから、合コンのエサに使おうとしていた清々しいほどの肉食系女子だ。

 その清々しさと遠慮しないで言い合える性格のおかげで、私もなんでも話せてしまう。
 見た目は小動物みたいに小さくて可愛いのに、高級な肉しか食べない肉食系の彼女は、合コン相手もいちいち一流企業とかスポーツ選手とか派手だ。

 そんな場所に私も行けば、本性がボロボロと出てしまって恥をかくだけ。
 しかも今月は趣味で本当にお金がないので、タワーホテルの高級バーでの合コンの会費さえ払える自信がない。

「ありがとう。いつか親と兄の目を潜り抜けて見せるわ」

 じゃあ、と定時5分を過ぎてしまい急いで着替えて駅へ向かう。憐れんでくれる二人の視線が刺さる中、見えなくなったら全力で走ろうと決めていた。
 カラカラと飛んできた枯葉を踏むと、冬の訪れる音が聞こえてきた。 
 
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