転生してマッチングアプリでサクラしてたら、魔王に見つかって求婚されました。

篠原愛紀

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「お前は見た目のせいだろ。就活中だけでも清楚系にもどせばいいんじゃないか」
「えー。だってどうせなら素を認めてもらいたいし」

 そんな美怜が探している就職先は、結婚式場のウエディングプランナー、ホテルの受付嬢、商業施設のサービスカウンター嬢で、前世のすべてをいやす聖女の時だったら絶対に内定をもらっていた職業ばかり。

「りんりんは、何社にお祈りされたの」
「……もう考えたくない」

 俺は美怜よりも酷い。二桁いっている。
「りんりんは前世でちやほやされた勇者だったから、自分の自己評価が高いせいで大企業しか受けないのが敗因よね」
 大企業……。
 確かに仕事内容に興味はないが、有名な企業名ってだけで面接や試験を受けている。
 わりとなんなり全てにおいて平均的にできる気がするので、どこでも頑張れると思ってるのだが、前世の記憶のせいで驕ってるのか。

「りんりんさ、もう現代では金髪碧眼で甘い笑顔の勇者じゃないのよ。可愛い顔だけど特に何も磨かないせいで、あか抜けないもっさりしたニートじゃん。そんなんじゃ、もし現代に魔王が現れたらどうするの」
「どうするって。俺は一般人だし。魔法も魔獣もいないこの世界で魔王だけそのまま現れるわけないだろ」
「そおだけど、そうじゃないよ。魔王が権力ある大人になってたら、ニートのりんりんは、勝てないし。きっと速攻監禁されちゃうよ」
「監禁? なんで」

 前世は前世。過去のことで復讐しようなんて、あの何にも興味をもたない無表情の魔王がはたしてするのか。
 生まれた時から莫大な魔力を持ち、人々には疎まれ、力を利用する悪いやつらしか現れず、何にも興味を持たないが、自分より強い奴が現れないかと暇つぶしで魔王をしていた奴だぞ。
 俺と相打ちで倒れたのなら、もう未練はないはずだ。

「違うよお。魔王はね、確かに人には興味なかったけど、勇者にだけはいつも優しかったんだから」
「まっさか」

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