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「あっ、いらっしゃいませ、星川さん。お待ちしておりました」
暖簾をくぐり、引き戸をあけたさきで、快活な女性の声にむかえられる。その女性――【握】という店の女将さんは、ぱっと表情を明るくして、楽しげに口をひらく。
「よかったです、もう来てくださらないかと思っていました。先週は、その……あっ! ……そ、その手に持っているのは、もしかして……!」
僕の持っている寿司屋の袋をみて、くりっとした目を見開く女将さん。期待に瞳が、きらきらと、輝きをはなっている。あまりにわかりやすい表情をみて、思わず、いたずらでもしたくなってくるが、
「あ、あの……星川さん?」
「…………」
僕は一言も発することなく、呆然としていた。
一週間のあいだ、この場所は確かに存在していなかったはずで、店に入ってからも、そのことによる戸惑いの感情が、僕の中で渦巻いたままなのだ。
「やっぱり、何か、後遺症がありました?」
「……ああ、いや、あれはただの冗談……とは言い難いですが、もともとタマゴも大根もあまりたべないですし、それほど困りませんでしたよ」
先週、僕がいった軽口のことだろう。そのことについての話題だとおもったのだが、
「いや、えーと……」
なにやらいいずらそうに、女将さんは口ごもる。なんだか、話題が違うといいたげだ。
「もしかして――記憶のこと、ですか?」
女将さんの反応をみて、僕はもう一つの、思い当たる話題について触れてみることにした。
記憶がどうとか、女将さんが先週いっていた気がする。記憶を消すとか、消さないだとか、そういった冗談のような話をしていたが、本当に、冗談だったんだろうか。女将さんの屁をかいだときのことを思えば、ありえないと、否定しきることができなかった。
あの時は、あまりの臭いに驚いたが、考えてみれば、たった一発嗅いだだけであり、もしあれが軽めの一発だとするなら――加減しだいでは、記憶だって消滅させられるのではないだろうか。
とはいえ、そんなことを――まともには、思考してはいない。それらは、豆粒のように小さなわだかまりでしかなく、冗談にしては――なぜか笑えない、というだけのことなのである。
ただ――財布の中にあった見知らぬ和紙――覚えのない予約――初めてこの店に来た日の、店を出た記憶がないこと。
忘れている――もとい消失しているのであれば、つじつまがあう……のではないだろうか。そうおもって、僕は話をうながしたのだが、
「記憶……ですか? すみません、ちょっと話が見えないんですけど……」
「え? あ……いや……なんでもないです」
何かの事情があって、意図的に、記憶を消したのではないだろうか。そんな僕の考察はまったくの見当違いだったらしく、僕は言葉をつまらせながらこたえる。
「はあ」
あいまいな返事をする女将さん。
どうやら、彼女を混乱させてしまったようで、僕は話を戻そうと口をひらく。
「ちなみに、先ほど言っていた、後遺症って、何のことですか?」 いいながら、僕はテーブルのうえに寿司屋の袋をおき、席にすわる。
「いやあ、別に……なんでもないですよ?」
なんでもない、というには目が泳いでる。
女将さんに視線はきょろきょろと、僕と――主に、稲荷寿司のあいだを行ったり来たりしていた。よっぽど稲荷寿司が気になるらしい。話を逸らしてるふうにも見えなくないが、これだとどちらなのかわからない。まあ、それはさておき、
「これ、今食べます?」
『ガサァ』と僕が袋を持ち上げる。
「え、いいんですか?」
「いや……まあ、そのために持ってきたので、良かったらどうぞ」
「そ、そうですか。では、すみませんが、お言葉に甘えさせていただきます」
目を輝かせ、あからさまに嬉しそうな顔をする女将さん。
……やれやれ、まるで子供のようだ。
そんな女将さんを見ていると、微笑ましくて、ごちゃごちゃと考えていたことがどうでもよくなってくる。
僕はプラスチックのパックに巻かれた輪ゴムと簡易的な包装をはがすと、パックの口をあけ、袋にはいっていた割り箸といっしょに、稲荷寿司を女将さんの前にさしだした。
「ありがとうございます。では、いただきます」
「どうぞどうぞ」
いいながら、僕は僕で、べつに買っておいたおにぎりを取りだす。
見た目だけは飲食店のこの場所で、買ってきたものを食べるっていうのは、なんだか変な気分だが、まあ、いいんじゃないだろうか。そうおもいながら、僕は手にもったツナマヨネーズが入りのおにぎりに口をつけ、それほどかからずに、僕はおにぎりを一つ、たいらげた。そして、一息ついた僕は、会話の続きをしようと口をひらき、
「それで、先ほどの話……」
……なんですけど、といおうとして、僕は言葉をのみこんだ。
バイト終わりだったこともあり、お腹がすいていたので、わりと急いで食べたはずなのだが、それよりも早く、同じくらいのサイズの六個入りの稲荷寿司が、五つ、なくなっていたのだ。
「お腹、空いてたんですか?」
「いえ、そんなこともないですけど?」
女将さんはそういうと、残り一つの稲荷に口をつけ、持ってきた分をすべて平らげてしまう。
そんな彼女に驚きつつ、僕は気を取り直して会話をつづけた。
「ところで、一週間のあいだ、どうしてたんですか? その、お店自体がなかったようでしたけど、あれって……」
「――っ!」
唐突にのどをつまらせる女将さん。
「あ、これ、どうぞ」
僕はとっさに、袋にいれておいてあったお茶の入ったペットボトルのキャップを『カチカチ』とまわしてあける。稲荷寿司と一緒に渡したつもりだったのだが、よっぽど慌てて食べていたのか、気づいていなかったようだ。その新品のお茶を渡すと、女将さんは返事をする余裕もなく、こくこくと、小さくお辞儀をし、ペットボトルを受けとり、急いでお茶をのどに流しこんだ。
「すみません。もしかして、僕、なにか変なこと言いました?」
僕が尋ねると、女将さんは困惑したような表情を浮かべる。
「変と、いいますか……星川さん。もしかして、先週のことを覚えてないんですか? なんだか、まるで……」
「いや、それが、よく分からないんですけど。多分、そうかもしれないです。先週は、お店の中にいたはずなのに、気づいたときには店の外にいまして……女将さんなら何か知っているのかと思ったのですが……」
この店は普通ではない。僕に起きた奇妙なできごとの原因として、この場所――もしくは、女将さん以外に考えられなかった。
「…………」
黙りこむ女将さん。
僕の声がきこえなかった、なんてことはないはずだ。
「あの……女将さ――」
「もしかすると、反動で、記憶が飛んでしまったのかもしれません」
「……反動、ですか?」
僕がきくと、女将さんは「はい」と首肯し、話をつづけた。
「元の場所に戻る際なんですが、精神に、ちょっとした負荷がかかるんです。恐らくその時の反動で、記憶が飛んでしまったのかもしれないです……」
「な、なるほど」
……よくわからない。
そのときの記憶ごとないのだから、説明をされても、いまいちピンとこないのだ。なんらかの精神的な苦痛があったどころで、覚えていないのだから、それは何もないのと一緒であり――
「ちなみに、その精神への負荷っていうのは、どれほどものなんですか? 覚えていないってだけで、実は五億年ぶんの苦痛に耐えていたっていうことは……ない、ですよね?」
例の、一度押せば百万円がもらえるボタンの話みたいなことになっていないだろうか。冗談半分――どころか、九割冗談で訊きながら、その話を思い出して、ぞっと寒気を覚える。そんな戯言に近い問いに、冗談にすらならなかったのか、女将さんはあきれたようすで肩をすくめる。
「なんですか、そのこわい話。うーん、長ければ、一分ほどかかってしまうかもしれませんが、短ければ、一瞬ですむと思いますよ」
「ほお……」
五億年と比べたことで、そのスケールの違いに安堵しかけたが、長かった場合、一分というのは、なかなか辛いのではないだろうか。まあ、苦痛がどれほどのものかにもよるが。
「心配しなくても、大丈夫ですよ。本当に、ちょこーっと、だけですから」
親指と人差し指でアルファベットのCをつくり、女将さんはその程度を伝えてくる。だが、そこまで強調されると、なんだか――
「もしかして、私の言っていることが信じられませんか?」
「い、いえ、そういうわけではないん、ですけど……」
「ですけど?」
女将さんはぬっと、至近距離で僕の目を覗き込んでくる。考えないようにしていたが、女将さんは美人だ。その整った目鼻立ちを意識してしまったとたん、なんだか気恥ずかしい気分になってくる。僕は視線をそらしたくなるのをこらえ、口をひらいた。
「あの……いえ、なんでもないです」
「そうですか。それなら、よかったです」
女将さんはそういうと、上体をひき、距離感をもとに戻す。そして、ふと何かに気づいたように首をひねった。
「あれ? なんだか、疲れていませんか? うーん……そろそろ――頃合ですかね?」
「へ? 頃合といいますと、それって……ああ」
僕は女将さんのいっている意味を理解する。
見た目だけは和風の料理屋であるこの店は、飲食を目的としてくる場所ではない。アロマテラピーの店なのだ。それも――悪臭をもちいた、特殊なアロマテラピーの店であり、頃合というのは、恐らく――先週体験した、“あの”時間が始まってしまう、ということを意味するのだろう。
忘れていた、というわけではない。考えないようにしていたのである。僕はこの場所に、なんとなく居心地のよさを感じ、約束をしていたこともあって、軽い暇つぶしのつもりで来てしまったのだが、
「いや、今日は――」
「まあ、どちらにしても、鮮度が落ちてしまうといけないので、そろそろ始めさせていただきます。急がないと、今食べた分が、混じってしまいますからね」
女将さんはそういって穏やかな笑みを浮かべる。そして、僕が何かを答えるまもなく――いつのかにか背のほうに回していた手を――目にもとまらぬ速さで――音もなく――風圧さえけして――僕の鼻先へもってくると、その手の中に、僕の鼻を閉じ込めてしまった。そのさい、手の付け根で僕の口をおさえ、口呼吸をさまげるという、器用なことまでやってのけている。
行動の奇抜性を除けば、ぞっとするほどに優美な動きであり――僕はおもわず、呼吸をとめてしまっていた。そして、遅れてやってくる感覚――
……鼻が、温かい。
手の中には、握っているものを“散らさない”ようにか、小さくたたまれた、手ぬぐいが握られている。そのこともあり、熱がなかなか冷めることがなく、ねっとりと、あるはずのないねばり気を感じるような空気が、僕の鼻を包みこんでいた。
湯気が立ちのぼっているのではないだろうか。そう思えるほどの熱だ。そして、熱と臭さが比例していることを、本能的に理解するが、それを脳が理解する時間すらなく、そのことをしっかりと把握できたのは、呼吸をしてしまった――あとだった。
「――――」
肺の動きでも、読んでいたのだろうか。そうおもえるほどに、タイミングがぴったりであり――息を吐ききったタイミングだったのだから、僕の呼吸器官は、当然のようにその空気を受け入れてしまっていた。そして、しっかりと体内に収めてしまってから、ようやく、僕の脳はニオイを理解し――
「――――」
「もの凄い、臭いでしょう? これだけ凄いと、嫌なこととか、不安とか、余計なこと考えてる暇もないですよね?」
そういって、女将さんはたのしげに笑うが、それに反応する余裕は、今の僕にはない。それがわかっているのだろう。女将さんは僕の様子を特に気にすることもなく、
「それに――今日はしっかりと、準備をしてきましたから」
ひとあじ違うでしょう、と続ける。
確かに、なにかが違う。濃度は前回とさほど変わっていないようだが、質がなんだか違うのだ。なんというか、鼻腔になじむ、ニオイなのである。毛穴一つ一つにまとわりついてくるような、効率的に、嗅覚がいじめられているような感覚があり、ひとことでいうなら――狂いそうなほどの、腐卵臭であった。しかし、なぜだろうか。苦しさで埋め尽くされていく思考のなかに、ほんのわずかだけ、安堵のような感情があり――臭いのに、なぜかほっとしてしまうという、奇妙な感覚を、僕はそのニオイを嗅いで、おぼえていた。
「……ぁ……はぁ。……相変わらず……とんでもないニオイですね」
ちかちかと明滅する意識のなか、僕は力なくこたえる。
「当然です。一週間、しっかりと調整してきましたからね。それに、このくらいでないと、脳を刺激するなんてできないです」
「はあ……」
女将さんのことばに、僕は曖昧にうなずく。
滅茶苦茶なことをいっている。そうおもいつつも、否定することができなかったのだ。
肩が軽くなった気がする。普段、肩こりを意識することなんてそれほどなかったが、ほぐれてみれば、その違いをはっきりと感じられた。というか、これは本当に――屁なんだろうか。
先週、彼女はそれを――「握りっ屁」といっていたが、僕と女将さんのあいだにあるカウンターは、女将さんの手前側が高く、下半身がすっぽりと隠れるつくりになっている。そのため、尻から出したのを実際にみたわけではなく、女将さんの発言とニオイから、連想したに過ぎないのだ。それに――
「あの……女将さん」
「はい、なんでしょうか?」
「今更なんですけど……これって、ほんとうに……その……女将さんの、オナラのニオイ……なんでしょうか?」
「…………」
黙りこむ女将さん。その顔がじんわりと赤くなっていく。
……へ?
「もしかして……恥ずかしい、とかじゃないですよね?」
「いやあ、面と向かって言われると、流石に……」
予想外の女将さんの反応に、僕は困惑する。
――「私の屁は、世界一臭いですからね」。そういってた彼女に、羞恥心なんてないものとばかり思っていたのだが、人からいわれるのは、別なのだろうか。
「つまり、僕に嗅がせたニオイって……」
「はい。お気づきかと思っていましたが、すみません。嗅がせたのは、私の……その……」
「い、いいです! みなまで言わなくてもいいですから!」
女将さんの顔が気の毒なほど赤く、その表情を見て、僕はおもわず声をあげた。
「けど、それにしては……なかったですよね? 音とか」
僕がそうたずねると、
「そ、それは……」
「それは?」
「あの……。す……す……」
「もしかして、すかしたんですか?」
それ以外にありえないだろうが、にしては、見事に音が消えていた。にわかに信じられず、僕がきくと、
「…………」
黙りこむ女将さん。
顔の赤みはさらに増していく。
「いや……あの、すみません。音がないのが、少し気になってしまいまして……」
会話の流れで、つい余計なことを口走ってしまったが、これ以上の質問はやめておいたほうがいい気がする。話題を変えよう。そんなふうにおもっていると、
ぷぅ す――
まのぬけた高音が、短く、場にひびいた。
「……え?」
目のまえから聞こえてきた音に僕が困惑していると、またしても――早業。その動きを僕は視界にいれていたはずなのに――鼻が包み込まれるまで、気づかなかった。
女将さんの右手に鼻を押さえつけられながら、僕が呆然としていると、
「少しだけ、音を出してみましたが。どうで――」
「――っ、ぁ!?」
まるで、脳を侵食していくようなニオイが、鼻腔から入り込んでくる。卵に近いような――大根に近いような――どちらでもないような――悪臭。それを、さらに何十倍にも濃くしたようなニオイが、僕の――嗅覚を刺激し――視覚を揺らし――聴覚を鈍らせていく。
「やっぱ――おとが――しまう――なんだか――はずかし――すね」
女将のそんな声がおぼろ気にきこえた。そのすぐあと――右手が僕の鼻からはなれ、今度は女将さんの左手に、僕の鼻が包みこまれる。
「――――」
どうやら、今度は音を消したようだ。
きっちりと無音で――しっかりと暖かく――ねっとりと鼻に、そのニオイはまとわりついてくる。
耐えられないほどではないが、精神の限界を試すような、濃厚なニオイだ。
あと少し苦しかったなら――発狂していたかもしれない――胃の中身を吐き出してしまったかもしれない――泣きだしてしまったかもしれないが、それはまるで、計算されたかのように、その濃度を保っていた。そして――
「それでは――つぎ――しめです」
すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
空気の抜けるような音が聞こえた――ような気がして、嫌な予感を覚える。
やばい、やばい、やばい、やばい。
三秒だっただろうか。五秒だっただろうか。もしくは――
いくらなんでも、それは、意識がこわれてしまうのではないだろうか。そう思わせるようだ音だった。――それならまだいいかもしれない。へたに意識をたもってしまい、それをまともに感じてしまったら……。
聞いただけでわかってしまった。
理解してしまった。
感じてしまった。
「それじゃ――いきます――ちょこーっと――くるしいかもしれ――ですけど……良薬は、――ですよ」
――
――
――
呼吸をした瞬間――世界が溶けた。
自分の鼓膜が何にたいして振動しているのか、自分がいま、何を思っているのかすら考えることもできず、思考は――“くさい”に埋めつくされていき、“臭い”と理解することすらできず、脳に走る衝撃だけを、僕は理解する。
何が起こったのだろうか。
僕は疑問を覚え、その感情を覚えてしまったことを――すぐに後悔する。無意識に現実逃避をし、なかったことにしていたはずのものを、思い出してしまったからだ。
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酔いつぶれてしまったときのように視界はぐにゃりと歪んでいて、聴覚は鈍い。意識が朦朧とするほどの悪臭を嗅覚に嗅いでいるにもかかわらず、嘔吐してしまわずにいられているのが不思議である。そして、手足は――硬直していた。神経を支配されている気分だ。抵抗したところで、なんの意味もない――
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明滅する意識の中、
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何をされているのか、
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何をしているのかもわからずに、
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僕はしばらく、ニオイをただ理解するだけの人形のようになっていた。
暖簾をくぐり、引き戸をあけたさきで、快活な女性の声にむかえられる。その女性――【握】という店の女将さんは、ぱっと表情を明るくして、楽しげに口をひらく。
「よかったです、もう来てくださらないかと思っていました。先週は、その……あっ! ……そ、その手に持っているのは、もしかして……!」
僕の持っている寿司屋の袋をみて、くりっとした目を見開く女将さん。期待に瞳が、きらきらと、輝きをはなっている。あまりにわかりやすい表情をみて、思わず、いたずらでもしたくなってくるが、
「あ、あの……星川さん?」
「…………」
僕は一言も発することなく、呆然としていた。
一週間のあいだ、この場所は確かに存在していなかったはずで、店に入ってからも、そのことによる戸惑いの感情が、僕の中で渦巻いたままなのだ。
「やっぱり、何か、後遺症がありました?」
「……ああ、いや、あれはただの冗談……とは言い難いですが、もともとタマゴも大根もあまりたべないですし、それほど困りませんでしたよ」
先週、僕がいった軽口のことだろう。そのことについての話題だとおもったのだが、
「いや、えーと……」
なにやらいいずらそうに、女将さんは口ごもる。なんだか、話題が違うといいたげだ。
「もしかして――記憶のこと、ですか?」
女将さんの反応をみて、僕はもう一つの、思い当たる話題について触れてみることにした。
記憶がどうとか、女将さんが先週いっていた気がする。記憶を消すとか、消さないだとか、そういった冗談のような話をしていたが、本当に、冗談だったんだろうか。女将さんの屁をかいだときのことを思えば、ありえないと、否定しきることができなかった。
あの時は、あまりの臭いに驚いたが、考えてみれば、たった一発嗅いだだけであり、もしあれが軽めの一発だとするなら――加減しだいでは、記憶だって消滅させられるのではないだろうか。
とはいえ、そんなことを――まともには、思考してはいない。それらは、豆粒のように小さなわだかまりでしかなく、冗談にしては――なぜか笑えない、というだけのことなのである。
ただ――財布の中にあった見知らぬ和紙――覚えのない予約――初めてこの店に来た日の、店を出た記憶がないこと。
忘れている――もとい消失しているのであれば、つじつまがあう……のではないだろうか。そうおもって、僕は話をうながしたのだが、
「記憶……ですか? すみません、ちょっと話が見えないんですけど……」
「え? あ……いや……なんでもないです」
何かの事情があって、意図的に、記憶を消したのではないだろうか。そんな僕の考察はまったくの見当違いだったらしく、僕は言葉をつまらせながらこたえる。
「はあ」
あいまいな返事をする女将さん。
どうやら、彼女を混乱させてしまったようで、僕は話を戻そうと口をひらく。
「ちなみに、先ほど言っていた、後遺症って、何のことですか?」 いいながら、僕はテーブルのうえに寿司屋の袋をおき、席にすわる。
「いやあ、別に……なんでもないですよ?」
なんでもない、というには目が泳いでる。
女将さんに視線はきょろきょろと、僕と――主に、稲荷寿司のあいだを行ったり来たりしていた。よっぽど稲荷寿司が気になるらしい。話を逸らしてるふうにも見えなくないが、これだとどちらなのかわからない。まあ、それはさておき、
「これ、今食べます?」
『ガサァ』と僕が袋を持ち上げる。
「え、いいんですか?」
「いや……まあ、そのために持ってきたので、良かったらどうぞ」
「そ、そうですか。では、すみませんが、お言葉に甘えさせていただきます」
目を輝かせ、あからさまに嬉しそうな顔をする女将さん。
……やれやれ、まるで子供のようだ。
そんな女将さんを見ていると、微笑ましくて、ごちゃごちゃと考えていたことがどうでもよくなってくる。
僕はプラスチックのパックに巻かれた輪ゴムと簡易的な包装をはがすと、パックの口をあけ、袋にはいっていた割り箸といっしょに、稲荷寿司を女将さんの前にさしだした。
「ありがとうございます。では、いただきます」
「どうぞどうぞ」
いいながら、僕は僕で、べつに買っておいたおにぎりを取りだす。
見た目だけは飲食店のこの場所で、買ってきたものを食べるっていうのは、なんだか変な気分だが、まあ、いいんじゃないだろうか。そうおもいながら、僕は手にもったツナマヨネーズが入りのおにぎりに口をつけ、それほどかからずに、僕はおにぎりを一つ、たいらげた。そして、一息ついた僕は、会話の続きをしようと口をひらき、
「それで、先ほどの話……」
……なんですけど、といおうとして、僕は言葉をのみこんだ。
バイト終わりだったこともあり、お腹がすいていたので、わりと急いで食べたはずなのだが、それよりも早く、同じくらいのサイズの六個入りの稲荷寿司が、五つ、なくなっていたのだ。
「お腹、空いてたんですか?」
「いえ、そんなこともないですけど?」
女将さんはそういうと、残り一つの稲荷に口をつけ、持ってきた分をすべて平らげてしまう。
そんな彼女に驚きつつ、僕は気を取り直して会話をつづけた。
「ところで、一週間のあいだ、どうしてたんですか? その、お店自体がなかったようでしたけど、あれって……」
「――っ!」
唐突にのどをつまらせる女将さん。
「あ、これ、どうぞ」
僕はとっさに、袋にいれておいてあったお茶の入ったペットボトルのキャップを『カチカチ』とまわしてあける。稲荷寿司と一緒に渡したつもりだったのだが、よっぽど慌てて食べていたのか、気づいていなかったようだ。その新品のお茶を渡すと、女将さんは返事をする余裕もなく、こくこくと、小さくお辞儀をし、ペットボトルを受けとり、急いでお茶をのどに流しこんだ。
「すみません。もしかして、僕、なにか変なこと言いました?」
僕が尋ねると、女将さんは困惑したような表情を浮かべる。
「変と、いいますか……星川さん。もしかして、先週のことを覚えてないんですか? なんだか、まるで……」
「いや、それが、よく分からないんですけど。多分、そうかもしれないです。先週は、お店の中にいたはずなのに、気づいたときには店の外にいまして……女将さんなら何か知っているのかと思ったのですが……」
この店は普通ではない。僕に起きた奇妙なできごとの原因として、この場所――もしくは、女将さん以外に考えられなかった。
「…………」
黙りこむ女将さん。
僕の声がきこえなかった、なんてことはないはずだ。
「あの……女将さ――」
「もしかすると、反動で、記憶が飛んでしまったのかもしれません」
「……反動、ですか?」
僕がきくと、女将さんは「はい」と首肯し、話をつづけた。
「元の場所に戻る際なんですが、精神に、ちょっとした負荷がかかるんです。恐らくその時の反動で、記憶が飛んでしまったのかもしれないです……」
「な、なるほど」
……よくわからない。
そのときの記憶ごとないのだから、説明をされても、いまいちピンとこないのだ。なんらかの精神的な苦痛があったどころで、覚えていないのだから、それは何もないのと一緒であり――
「ちなみに、その精神への負荷っていうのは、どれほどものなんですか? 覚えていないってだけで、実は五億年ぶんの苦痛に耐えていたっていうことは……ない、ですよね?」
例の、一度押せば百万円がもらえるボタンの話みたいなことになっていないだろうか。冗談半分――どころか、九割冗談で訊きながら、その話を思い出して、ぞっと寒気を覚える。そんな戯言に近い問いに、冗談にすらならなかったのか、女将さんはあきれたようすで肩をすくめる。
「なんですか、そのこわい話。うーん、長ければ、一分ほどかかってしまうかもしれませんが、短ければ、一瞬ですむと思いますよ」
「ほお……」
五億年と比べたことで、そのスケールの違いに安堵しかけたが、長かった場合、一分というのは、なかなか辛いのではないだろうか。まあ、苦痛がどれほどのものかにもよるが。
「心配しなくても、大丈夫ですよ。本当に、ちょこーっと、だけですから」
親指と人差し指でアルファベットのCをつくり、女将さんはその程度を伝えてくる。だが、そこまで強調されると、なんだか――
「もしかして、私の言っていることが信じられませんか?」
「い、いえ、そういうわけではないん、ですけど……」
「ですけど?」
女将さんはぬっと、至近距離で僕の目を覗き込んでくる。考えないようにしていたが、女将さんは美人だ。その整った目鼻立ちを意識してしまったとたん、なんだか気恥ずかしい気分になってくる。僕は視線をそらしたくなるのをこらえ、口をひらいた。
「あの……いえ、なんでもないです」
「そうですか。それなら、よかったです」
女将さんはそういうと、上体をひき、距離感をもとに戻す。そして、ふと何かに気づいたように首をひねった。
「あれ? なんだか、疲れていませんか? うーん……そろそろ――頃合ですかね?」
「へ? 頃合といいますと、それって……ああ」
僕は女将さんのいっている意味を理解する。
見た目だけは和風の料理屋であるこの店は、飲食を目的としてくる場所ではない。アロマテラピーの店なのだ。それも――悪臭をもちいた、特殊なアロマテラピーの店であり、頃合というのは、恐らく――先週体験した、“あの”時間が始まってしまう、ということを意味するのだろう。
忘れていた、というわけではない。考えないようにしていたのである。僕はこの場所に、なんとなく居心地のよさを感じ、約束をしていたこともあって、軽い暇つぶしのつもりで来てしまったのだが、
「いや、今日は――」
「まあ、どちらにしても、鮮度が落ちてしまうといけないので、そろそろ始めさせていただきます。急がないと、今食べた分が、混じってしまいますからね」
女将さんはそういって穏やかな笑みを浮かべる。そして、僕が何かを答えるまもなく――いつのかにか背のほうに回していた手を――目にもとまらぬ速さで――音もなく――風圧さえけして――僕の鼻先へもってくると、その手の中に、僕の鼻を閉じ込めてしまった。そのさい、手の付け根で僕の口をおさえ、口呼吸をさまげるという、器用なことまでやってのけている。
行動の奇抜性を除けば、ぞっとするほどに優美な動きであり――僕はおもわず、呼吸をとめてしまっていた。そして、遅れてやってくる感覚――
……鼻が、温かい。
手の中には、握っているものを“散らさない”ようにか、小さくたたまれた、手ぬぐいが握られている。そのこともあり、熱がなかなか冷めることがなく、ねっとりと、あるはずのないねばり気を感じるような空気が、僕の鼻を包みこんでいた。
湯気が立ちのぼっているのではないだろうか。そう思えるほどの熱だ。そして、熱と臭さが比例していることを、本能的に理解するが、それを脳が理解する時間すらなく、そのことをしっかりと把握できたのは、呼吸をしてしまった――あとだった。
「――――」
肺の動きでも、読んでいたのだろうか。そうおもえるほどに、タイミングがぴったりであり――息を吐ききったタイミングだったのだから、僕の呼吸器官は、当然のようにその空気を受け入れてしまっていた。そして、しっかりと体内に収めてしまってから、ようやく、僕の脳はニオイを理解し――
「――――」
「もの凄い、臭いでしょう? これだけ凄いと、嫌なこととか、不安とか、余計なこと考えてる暇もないですよね?」
そういって、女将さんはたのしげに笑うが、それに反応する余裕は、今の僕にはない。それがわかっているのだろう。女将さんは僕の様子を特に気にすることもなく、
「それに――今日はしっかりと、準備をしてきましたから」
ひとあじ違うでしょう、と続ける。
確かに、なにかが違う。濃度は前回とさほど変わっていないようだが、質がなんだか違うのだ。なんというか、鼻腔になじむ、ニオイなのである。毛穴一つ一つにまとわりついてくるような、効率的に、嗅覚がいじめられているような感覚があり、ひとことでいうなら――狂いそうなほどの、腐卵臭であった。しかし、なぜだろうか。苦しさで埋め尽くされていく思考のなかに、ほんのわずかだけ、安堵のような感情があり――臭いのに、なぜかほっとしてしまうという、奇妙な感覚を、僕はそのニオイを嗅いで、おぼえていた。
「……ぁ……はぁ。……相変わらず……とんでもないニオイですね」
ちかちかと明滅する意識のなか、僕は力なくこたえる。
「当然です。一週間、しっかりと調整してきましたからね。それに、このくらいでないと、脳を刺激するなんてできないです」
「はあ……」
女将さんのことばに、僕は曖昧にうなずく。
滅茶苦茶なことをいっている。そうおもいつつも、否定することができなかったのだ。
肩が軽くなった気がする。普段、肩こりを意識することなんてそれほどなかったが、ほぐれてみれば、その違いをはっきりと感じられた。というか、これは本当に――屁なんだろうか。
先週、彼女はそれを――「握りっ屁」といっていたが、僕と女将さんのあいだにあるカウンターは、女将さんの手前側が高く、下半身がすっぽりと隠れるつくりになっている。そのため、尻から出したのを実際にみたわけではなく、女将さんの発言とニオイから、連想したに過ぎないのだ。それに――
「あの……女将さん」
「はい、なんでしょうか?」
「今更なんですけど……これって、ほんとうに……その……女将さんの、オナラのニオイ……なんでしょうか?」
「…………」
黙りこむ女将さん。その顔がじんわりと赤くなっていく。
……へ?
「もしかして……恥ずかしい、とかじゃないですよね?」
「いやあ、面と向かって言われると、流石に……」
予想外の女将さんの反応に、僕は困惑する。
――「私の屁は、世界一臭いですからね」。そういってた彼女に、羞恥心なんてないものとばかり思っていたのだが、人からいわれるのは、別なのだろうか。
「つまり、僕に嗅がせたニオイって……」
「はい。お気づきかと思っていましたが、すみません。嗅がせたのは、私の……その……」
「い、いいです! みなまで言わなくてもいいですから!」
女将さんの顔が気の毒なほど赤く、その表情を見て、僕はおもわず声をあげた。
「けど、それにしては……なかったですよね? 音とか」
僕がそうたずねると、
「そ、それは……」
「それは?」
「あの……。す……す……」
「もしかして、すかしたんですか?」
それ以外にありえないだろうが、にしては、見事に音が消えていた。にわかに信じられず、僕がきくと、
「…………」
黙りこむ女将さん。
顔の赤みはさらに増していく。
「いや……あの、すみません。音がないのが、少し気になってしまいまして……」
会話の流れで、つい余計なことを口走ってしまったが、これ以上の質問はやめておいたほうがいい気がする。話題を変えよう。そんなふうにおもっていると、
ぷぅ す――
まのぬけた高音が、短く、場にひびいた。
「……え?」
目のまえから聞こえてきた音に僕が困惑していると、またしても――早業。その動きを僕は視界にいれていたはずなのに――鼻が包み込まれるまで、気づかなかった。
女将さんの右手に鼻を押さえつけられながら、僕が呆然としていると、
「少しだけ、音を出してみましたが。どうで――」
「――っ、ぁ!?」
まるで、脳を侵食していくようなニオイが、鼻腔から入り込んでくる。卵に近いような――大根に近いような――どちらでもないような――悪臭。それを、さらに何十倍にも濃くしたようなニオイが、僕の――嗅覚を刺激し――視覚を揺らし――聴覚を鈍らせていく。
「やっぱ――おとが――しまう――なんだか――はずかし――すね」
女将のそんな声がおぼろ気にきこえた。そのすぐあと――右手が僕の鼻からはなれ、今度は女将さんの左手に、僕の鼻が包みこまれる。
「――――」
どうやら、今度は音を消したようだ。
きっちりと無音で――しっかりと暖かく――ねっとりと鼻に、そのニオイはまとわりついてくる。
耐えられないほどではないが、精神の限界を試すような、濃厚なニオイだ。
あと少し苦しかったなら――発狂していたかもしれない――胃の中身を吐き出してしまったかもしれない――泣きだしてしまったかもしれないが、それはまるで、計算されたかのように、その濃度を保っていた。そして――
「それでは――つぎ――しめです」
すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
空気の抜けるような音が聞こえた――ような気がして、嫌な予感を覚える。
やばい、やばい、やばい、やばい。
三秒だっただろうか。五秒だっただろうか。もしくは――
いくらなんでも、それは、意識がこわれてしまうのではないだろうか。そう思わせるようだ音だった。――それならまだいいかもしれない。へたに意識をたもってしまい、それをまともに感じてしまったら……。
聞いただけでわかってしまった。
理解してしまった。
感じてしまった。
「それじゃ――いきます――ちょこーっと――くるしいかもしれ――ですけど……良薬は、――ですよ」
――
――
――
呼吸をした瞬間――世界が溶けた。
自分の鼓膜が何にたいして振動しているのか、自分がいま、何を思っているのかすら考えることもできず、思考は――“くさい”に埋めつくされていき、“臭い”と理解することすらできず、脳に走る衝撃だけを、僕は理解する。
何が起こったのだろうか。
僕は疑問を覚え、その感情を覚えてしまったことを――すぐに後悔する。無意識に現実逃避をし、なかったことにしていたはずのものを、思い出してしまったからだ。
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
酔いつぶれてしまったときのように視界はぐにゃりと歪んでいて、聴覚は鈍い。意識が朦朧とするほどの悪臭を嗅覚に嗅いでいるにもかかわらず、嘔吐してしまわずにいられているのが不思議である。そして、手足は――硬直していた。神経を支配されている気分だ。抵抗したところで、なんの意味もない――
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
明滅する意識の中、
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
何をされているのか、
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
何をしているのかもわからずに、
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
――くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい
僕はしばらく、ニオイをただ理解するだけの人形のようになっていた。
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