手のひらサイズの…

𝐄𝐢𝐜𝐡𝐢

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手のひらサイズのイタズラ

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「よし……! できた!」

 永石ながいし 美沙みさは、手に持っているお手玉ほどのサイズの人形を目を向け。
 達成感を感じている様子で、満足げに息をはいた。
 だが、そのわりには、人形の出来はそれほどでもなく。

 目がなければ、口もなく。服は簡易的に縫い込んでいるような感じだ。
 そして、なぜか――鼻だけしっかりとつけており。
 なんとも奇妙な人形だった。

 そして、美沙はその人形をおもむろに、尻のほうへ持っていくと――、

「ふぅんっ……」

 ぷううぅぅ……!

 放屁音。
 なんと、彼女はようやく完成させたであろう、手作りの人形に、思いっきり屁をこいたのだった。
 そして――もわっと……。
 部屋に、硫黄のような臭いが漂う。
 だかそれは、散った分の、ほんのわずかな臭いであり。
 人形の綿の間に留まっている分は、それとは桁違いに、濃厚だろう。

 憂さでも晴らしているのか。
 人形が気の毒になるような所業だ。

 そして、人形へのひどい仕打ちは、まだ終わらず――。
 美沙は「うんっ……、ふんっ……」と、息み声を漏らし、

 ぶううぅぅ……! ぶびぃ……! ぶふううぅぅ~~……

 と、屁を連発し。
 それから――。
 美沙はなにやら、部屋の側面の壁の、その向こう――隣の部屋へ、耳を済ませた。

 その行動に何の意味があるのか。
 彼女は関連性の見えない行動をし、

「うーん……。失敗、したのかなぁ……?」

 なぜか残念そうな美沙。

「今日は、ニンニクとかニラとか、いっぱい食べたし、色々と“仕込んで”おいたから、成功してたら、何かしら反応があると思うんだけど……」

 美沙はぶつぶつといいながら、考え込む。
 それから――「あっ」と、顔をあげると、お腹をゆっくりとなで、

「きたきた……。よし、これなら……」

 まるで、ビックウェーブのガスでも降りてきたかのような、そんな様子の美沙。
 その感覚に、美沙はどういう感情なのか、なぜか少しだけ息を荒くし、

「これは、絶対に……」

 美沙はそうつぶやき。ふっふ、と笑い声をもらす。
 まるで、腹の中に毒ガスでも生成したかのような、悪役じみた笑みだ。

「けど……、これで反応がなければ、たぶん失敗だね……」

 彼女はそう言って、手に持っている手のひらサイズの人形を再び、尻へと持っていくと――、

「やばい……、ちょっと、興奮してきた……。ああ、こんなの嗅いだら……、嗅いじゃったら……、――健人のやつ、大変なことに、なっちゃうんじゃないの……?」

 はぁはぁ、と。
 息を荒くし、なにやら誰かの名前をつぶやき、悪巧みでもしているかの様子だ。
 ただ、その言葉からでは、彼女が何を企んでいるのか読み取るのは難関といった感じで。
 自室の部屋の中でひとり、彼女が何を目的にそんなことをしているのかは。
 まったくの、なぞに包まれていた。

 そうして――。
 彼女は、握りっ屁をするように、人形を尻にあてると――、

「本当に……、こんなの嗅いだら、たぶんひとたまりも……。――ぬぅ……んっ」

 と、美沙は息み、

 むっしゅううううぅぅううううぅぅぅぅ~~……
 ふすううぅぅううううぅぅううぅぅ~~……
 すっかああぁぁあああおぁぁ~~……

 それは……。
 長い、すかしっ屁だった。
 タイムを計ったなら、なかなかの記録をたたき出せたのではと思うような。
 十秒を少しこえたかのような、そんな長さで。
 そんな、いかにもキツそうな屁を放出し、美沙は満足げな息を漏らした。
 と――そのとき、

 バタバタ……!

 人の足音のような、あるいは転倒したかのような物音がなり。
 そん物音が、先ほど美沙が耳をすませていた――隣の部屋から響いてきた。
 美沙はその音にすばやく反応すると、耳をその壁にぴたっ……、と。くっつけた。
 すると、

『おっ……! おええええぇぇぇぇ……!』

 そんな、少年のような声がしたあと。
 びちゃびちゃ……、という。フローリングの床が濡れたような音が、美沙の耳に届いた。
 その様子に、美沙は鼓動を高ぶらせ、息をますます荒くし。
 そして――。
 彼女は小さく、ガッツポーズをとったのだった――。
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